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18.目覚め

 ーーーーーーーーーーまた、夢を見る。


 暗闇の中に浮かぶ光。繋がったからなのか、今ならそれがソレイユ様だとわかる。

 その光にエルピスはそっと近寄り両手で掬うと自分の胸元へと持っていく。


「ソレイユ様、あの時は力を貸してくださりありがとうございます。」


 光は返事をするように明滅すると、エルピスの顔の周りを飛び回りまた手に戻ってきた。エルピスの顔にも笑みがこぼれる。


「ルア様が、ソレイユ様が自力でセレニテの元から出ることができないと。元に戻りたいと願っているとおっしゃっていました。元の居場所は、器の方はどこにいるかご存じですか?」


 光はその言葉を聞くとエルピスの胸の中に入り、消えてしまったーーーーーーーーーーー





 瞼を開けると、そこにはセレニテの寝顔があった。あれからずっと眠り続けている大切な妹。

 もうすぐ太陽が昇る時間帯。焚火の残り火がセレニテを照らし、今にも起きるのではないかと錯覚してしまう。

 エルピスは起き上がると、セレニテの手を両手で握りしめ自身の額へと押し当てる。


「セレニテ、セレス、起きてくれ。目が見える様になったんだ。…話したいことも、一緒に見たいものも、いっぱいあるんだ…セレス。」







「…………エルの泣き顔、久しぶりに見た………」


 弾かれた様に顔を上げると、セレニテがエルピスを見上げて微笑んでいた。


「……泣いてないよ……ちょっと、あくびが出ただけだ。」


 泣き笑いのぎこちない笑顔のエルピスにセレニテは手を伸ばし頬を拭う。


「……おはよう、セレス。」

「……おはよう、エル。」


 雲の隙間から太陽が覗き、二人の朝を告げた。



 ーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーー



「本当に心配したんだからな!!!!」

「力強い強い!!!ちょっと!女の子なんだから、もうちょっと手加減してよね!!!」


 起きて早々にセレニテに熱い抱擁をしているリヒティは、セレニテが嫌がっても離さず、頭もこれでもかと撫でまわし髪をぼさぼさにしている。

 エルピスはそんな二人に温かい視線を送りつつ、王女と一緒に朝食の準備をしていた。


「リヒティがあそこまで笑ってるの、久しぶりに見たかも。」

「えぇ、旅の間ずっと気を張っていましたし、セレニテ様が目覚めて本当に良かったです。」


 眠るとき以外は常に気を張り、旅の先頭にたって指揮をしていたリヒティは、村にいたころよりも精悍さが増し、笑顔は少なかった。やっと一息つけると思った矢先に村は滅び、村長とアパルは化け物へと変わり討伐することになってしまった。さすがのリヒティも昨日の顔は一段と暗く、思いつめた表情をしてはため息を吐いていた。

 それが、セレニテの目覚めにより、村にいたころと変わらない満面の笑みを浮かべている。肩の力が抜けているようで、苦労を掛けさせた分エルピスにとっても喜ばしいことだ。


「そういえば、オラクル様はどちらに?」

「オラクル様は丘に行っております。祈りを捧げるのも祭司の務めだと。」

「……僕も後で行ってくるよ。」

「えぇ、皆で行きましょう。」


 少ししんみりしてしまった空気を変える様に、王女は一つ手を打つと話題をエルピスに振る。


「そうですわ!ずっと気になっておりましたの。私とオラクル様の敬語は…しょうがないとして、エルピス様の私達に対する話し方を変えて欲しいと、リヒティのように気楽に話しかけて欲しいと思っておりました!だって、これからも旅をする仲間なのですから。」

「これからも…一緒に行っても良いんですか?」

「当たり前です!まだまだ解決していない問題は山ほどありますから。エルピス様のお力を頼りにしております。それと、私の呼び方も”エーデル”と。旅先で私が王女だと知られてしまいますと少し大変なので。」

「……うん!わかったよ、エーデル。」


 エルピスが気恥ずかしそうに名前を呼ぶと、エーデルの頬が色づきエルピスの頭を優しく撫で始めた。


「おぅ…エーデル、なに?」

「いえ、可愛さを堪能しておりました。気にしないでください。」

「え?あ、うん…?」


 困惑しつつもエーデルの手を受け入れ満足するまで待つことにしたエルピス。だが、なかなか手は離されず、やっと離れたのはオラクルが合流し、リヒティがセレニテにあれからのことを話し終えた後だった。



 ーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーー



 オラクルからも呼び方と話した方の訂正をされたエルピスとセレニテは、全員で森から花を摘みとって簡易的な花束を作ってから皆が眠る丘に来ていた。

 墓に摘んできた花をそっと添えると、村の皆を思い祈りを捧げる。


(父さん、母さん、みんな、セレニテと一緒に帰ってきたよ…。)


 誰がこんなことをしたのか、なぜこんな惨いことをしたのか。分からないことだらけだが、今回の器探しに関係していることは想像がつく。こんなことをした犯人は絶対に許さない。仇は必ず討つ。


「そろそろ、行こうか。」

「…えぇ…。」


 墓を背にし歩き出す。ふいに、少し冷たい風が背中を撫でた。歩みが止まり、後ろを振り返りたくなったが、エルピスはぐっと堪えまた歩みを再開させる。


 墓に添えられた花が寂しそうに5人を見送り、風に揺られ花弁を散らした。

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