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1.プロローグ
ハァ… ハァ…
もう、どれほど走っただろう。森の中を走り続け、今までにないほど心臓は脈打ち、足は草木で切れ血が滲んでいる。
でも、立ち止まってはいられない。この子の未来を守るために、命に代えても。絶対に。
腕の中にいる暖かな存在を決して離さないように、何者からも守るように、腕に力がこもる。
バゥッ!ワオーーーン!!
「っ!!!」
追手が近づいてきている。血の匂いで場所を特定されたか…。ここで追いつかれるわけにはいかない。
後ろから草木を走る音が聞こえる。獣特有の息遣いも微かに聞こえ、近づいてい来ていることがわかり、冷や汗が止まらない。
闇雲に走っていると…微かにザァザァと音が聞こえた。
「っ!?川…か!?」
最近雨が降ったため川の水が増水してる可能性がある。
一か八か、賭けに出るしかない。
「っハァ!、神よ、お救い、ください!…ハッ、私たちの希望……生きて…くれ。どうか…!!」
木々の先には予想通り氾濫した川があった。
腕のぬくもりが離れないように抱きしめると、そのまま川へと身を投げたのだった。




