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私の彼女はあたしです  作者: 寄川優⾳
8/8

僕の姉…君の姉…俺たちの姉

姉の怒りと疑念、そして笑いの混ざった表情をどう説明すればいいのかわからない。どうしてこんな状況になったのか。ユイと私は姉の前に座らされている。まずはここに至るまでの経緯を振り返ろう。


姉のエアリに荷物を取りに来るよう伝えたとき、彼女は不機嫌そうだった。実は姉は元々の自分の部屋を物置代わりに使っており、母は彼女が戻ってくることを期待していたが、エアリはただ荷物を置きに来るだけだった。姉は1年前に職場の同僚と結婚し、父はすぐにその関係を認めたが、母はあまり気に入っていなかった。そして今、彼女は荷物を取りに戻ってきたのだ。


学校では特に変わったこともなく1日が過ぎたが、クラスメイトたちの視線が背中に刺さるのを感じた。間違いなく、みんなユイの「彼氏」である私を恨んでいる。帰宅すると、姉のコンパクトカーが家の前に停まっていた。小さい車だが、荷物はたくさん積めそうだ。


家に入ると、意外にも母が早く帰宅していた。

「マコト、学校はどうだった?」

「うん、まあまあ。母さん、今日は早いんだね」

「今日はちょっと休みにしたの。それに、姉さんの荷物整理を手伝おうと思って」

「そうか。いい匂いがするよ、何作ってるの?」

「姉さんの好きなカレーよ」


母は明らかに嬉しそうだった。姉が結婚したことは母にとって大きな出来事だったのだ。私は親ではないからわからないが、子供が離れていくのは親にとってどれほど辛いことだろう。姉は母と同じくとても美しい。たぶんそれは遺伝だ。だから、別の世界の「私」もこんなに美しいのかもしれない。


「ねえ、マコ……じゃなくて、ユイ。ちょっとリビングで待っててくれる?姉さんの手伝いに行くから」

「わかった。すみません、マコさん……」

「『お母さん』でいいわよ」

「は、はい……お母さん」


ユイの顔が赤くなるのを見て、少し安心した。ユイをリビングに残し、2階に上がって姉の荷物整理を手伝う。

「こんばんは、姉さん──」


突然、枕が顔に直撃した。

「バカ!ノックもせずに入るなって何度言えばいいの!」

「痛い!なんて迎え方だ!」

「着替え中だったらどうするの!」

「別に姉さんなんて見たくないよ」

「失礼ね!私は多くの男性の憧れの的なんだから!」

「盲目か狂人だけだろ」

「殺すぞ、ミサキ」


姉とのこんなやり取りは久しぶりだった。喧嘩ばかりだが、実は少し懐かしかった。


「あなたたち二人、静かにしなさい!お客様がいるでしょ!」


家の最高権力者である母の一声で、私たちは黙った。父ですら母には逆らえない。


「ふう、母さんに助けられたな」

「あなたこそ」

「で、姉さん、最近どう?」

「まあまあね。仕事で忙しいけど、なんとかやってるわ」

「結婚生活は?」

「うん。なんで?」

「ただ、大切な姉さんがどうしてるか気になって」

「私も心配よ。弟が突然女の子を家に連れ込むなんて」

「そんなつもりじゃないよ。ただ助けたかっただけ」

「まあ、少なくとも女の子と話せるようになったんだから進歩だわ」

「からかうなよ」

「でも、家で不純なことはしないでよね。妹の手本にならなきゃ」

「だから、僕たちはただの友達だって!」

「その赤い顔が物語ってるわ」

「もういい、手伝うか?」

「ははは、そんなに怒らないで。この荷物を車に運んで」

「わかった」


「えっと……すみません。『お母さん』がお呼びです」


ユイの優しい声が姉との会話を遮った。


「ああ、この子が私の部屋を使うのね。可愛い子だわ。大事にしなさい、ミサ──」


突然、エアリはユイの顔をじっと見つめ始めた。

「んー……」

「どうしたの、お姉さん?」

「ミサキ、今すぐ部屋を出なさい」

「え?でも姉さん」

「言うことを聞きなさい!」


この家の女性たちはどうしてこうも気性が激しいのか。末っ子の妹だけは違うが、姉の真剣な表情には驚いた。仕方なく部屋を出ると、中にはユイと姉だけが残された。


「ミサキ、入っていいわよ」

「わかった。でもなんで──」

「……」


部屋に入ると、中央に私そっくりの少年が座っていた。その顔は真剣そのものだが、姉の表情はさらに厳しかった。


「今すぐ、この状況を説明しなさい」

「ど、どういうこと……?」

「『私の腕前』を使わせないでよね、弟くん」

「わからないよ」

「彼女のことを言ってるの」


姉が指さす先には、少年……ではなく、メイクとカツラで変装したユイがいた。


「ユイ、何された?」

「何も。ただメイクとカツラをつけられた」

「エアリ、何したの!」

「ミサキ、長年この仕事をしていると、隠し事はすぐわかるのよ」


そうだった。姉の職業は警察官、しかも刑事だ。私たちの嘘は完全にバレたようだ。


「姉さん、本当のことを話すよ」

「全部ね。省略なしで」

「彼女と私は……同じ人間なんだ」

「ふーん、そう」

「ええ……へへへ」

「……」

「……へへ」

「そんなバカな話あるわけないでしょ!」


「本当だよ。私の部屋に来てよ。彼女をこの世界に連れてきたマシンを見せるから」

「何言ってるのよ!」

「でも姉さん、どうして気づいたの?」

「何年も一緒に生きてきたのよ。あなたが太ろうが痩せようが、顔の特徴は変わらない。彼女の顔立ちはあなたとそっくり。それに、このおでこの小さな傷……あなたのと全く同じ」

「でもメイクとカツラまでする必要あった?」

「確認が必要だったの。そして……本当に瓜二つだとわかった。さあ、詳しく説明して」

「わかったよ、姉さん」


ユイの小さな声が沈黙を破った。メイクとカツラで変装したユイは、まるで鏡を見ているようだった。姉にすべてを説明するのは難しい。まさか自分の姉に尋問されるとは……。


確実に、私は殺される。

皆さん、私の小説を読んでくださって本当にありがとうございます。今週の新章を楽しんでいただければ嬉しいです。できるだけ早く次の章をアップし、休載分を取り戻せるよう頑張ります!

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