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プロローグ・その2 エピソード・レッド

 生徒会室前にオレンジ色のバンダナをし、鈍く光るサングラスをしたこの学園の生徒が立つ。

「入るぞ」

 ノックもせずいきなり入室。そこには下着で白い髪の、生徒から見れば美少女と言える彼女が着替えていた。

「何だ猩々緋朱(しょうじょうひしゅ)、たまにはノックしたまえ」

 男子に下着姿を見られたにも関わら、恥ずかしがる様子もなく、普通にスカートを履き、上着をかぶることなく珈琲に手を伸ばす。

「たまには女子っぽくしたらどうだ? 葉山瑠菜はやまるな

 葉山はふん、とだけ言いそっぽを向く。黒の珈琲を飲みほしてようやく制服を羽織る。

「……はぁ、僕を呼んだんだろ?」

「そう! これから先、緑川という少年が入学してくるはずだが」

 猩々緋は眉間にしわを寄せる。この名前はとても聞き覚えがあった。だが聞く気はしなかったので話の続きを聞く。

「そいつを監視しておけ」

「は? あんな生意気なやつ嫌いなんだけど!」

 二杯目の珈琲を飲む手が止まる、ホワイトチョコレートを食べながら目を細める。

「知り合いか、なら話が早い」

 苦虫でも噛み潰したように猩々緋の口は引きつった。これはまた余計な言葉を言ったなと後悔。

 彼女が4つ目のチョコを頬張った所で用事があると言い退室。

 特にする事もないのでさっさと猩々緋も学園を出て帰宅につく。道中炭酸飲料を買いにコンビニへ寄る。

 そこで飲料水のコーナーにあの緑色の髪をした彼が何を買うか悩んでいた。

 さっさと炭酸飲料を取り場を去ろうとしたが。

「あ、猩々緋さんじゃないですか。また会いましたね」

「うっせーな。絶対超絶優しい高校に入学するんじゃねーぞ」

「そう言われましても事情が事情なので……申し訳ないですぅ」

 悪意のある笑顔に見えた。猩々緋はとにかく腹が立ってしょうがない。

 かれこれ数分いがみ合っている二人の元に一人の女性が歩み寄る。

「倉家刑事!」「姉貴!」

 この時気づく、緑川優は姉とも知り合いである事を。世間の狭さを身を持って体験。

「やーやーお二人とも、仲がよくて羨ましいですなぁ」

 どこが!? と心の中でツッコミを入れ、緑川を横目で睨む。相手からも睨まれてる気がした。

「倉家刑事、それは誤解というものでは」

「うちの神秘的な超パワーをなめない事! まあ、舐めたら不味いと思うけど」

「それは言わない約束だぜ、おやじからも言われたはずだが」

 風音は表情を曇らせ「ごめん」と言って棒つきの飴をお詫びで猩々緋に手渡す。

 この年頃なら多少は恥ずかしがったり、跳ねのけたりするが、姉から貰う飴はとても嬉しいようだ。

 緑川がにやにや笑顔で。

「へー、猩々緋さんそういう……」

「やめろ、身長155もなさそうなお前に言われたくない」

「そうですよ、自分153cmしかないですよ、悪かったですね!」

 喧嘩らしき会話に風音が割って入る。

「というわけで今日お酒飲みに行くからよろしく」

「お金は持っていけよ。なんたって4回分は払ってないんだからな」

 へいへい、と明るい笑顔で返事され、商品棚にある飴を一通り買ってコンビニを出て行った。






 夜でも都市は明るく、人間たちは忙しなく動き回る。

 そんな中、静かな街路で街灯がほんのり灯っていた。同じように、こぢんまりとした居酒屋もまたほんのり灯っている。そこに猩々緋と風音の兄弟が入り、嫌そうな表情をする店主に適当に挨拶。二人いつも通りのメニューを頼んで、静かなパーティ? が開かれた。

「美味い! 久しぶりの酒は美味い!」

 未成年の猩々緋には理解できなかったが、嬉しそうにビールを飲む風音を見て、いつか自分も飲んでみたいと思うようになる。

 今日は久しぶりに静かなパーティに、一人のゲストが居酒屋の扉を開ける。

 短い緑色の髪をなびかせ、黒い厚手のコートを着た緑川優が、風音の姿を見るなり安堵の表情を浮かべる。

「倉家刑事と……貴様もいたのか」

 貴様、は猩々緋に向かって発せられた。いつの間に貴様呼ばわりになったと思うが、楽しそうな姉がいるので不機嫌になるのはぐっとこらえる。

「いつも姉貴を連れ帰るのに連れてこられるんだよ。それより、何でお前が?」

「邪魔しに来ました」

「なら帰れ」

 こればかりは余計な事をしでかしてくれたと姉を恨んだ。自分は兄弟水入らずの時間が欲しいのだと叫びたかった。

「というのは半分冗談で、その姉貴に呼ばれたんです。人は多い方が楽しいだろうって」

「ふ、ふーん」

「よっ! ミドリんも来てくれたんだね!」

 緑川は同様した素振りを見せるも、すぐいつもの笑顔に戻り、堂々と風音の隣に座ってメニューを拝見。

「そうです。弟さんと違って明るくて元気な刑事の頼みですから!」

 媚びてるようにも見えたが、多分嫉妬なのだろうという事で自分を落ち着かせる。僕か、僕が知らずにアイツを嫌ったから悪いのか、そうなのか。頭を抱えて悩んだ。

「帰る」

 今出せる結論がそれだった。店主は「困るよ」と不満を漏らしたが、聞かずに居酒屋を出る。

 出てしばらく歩いた直後、猩々緋に怪しげな影が近づく。






 プロローグシリーズ Fin.

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