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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第四章・出会いと再会に驚愕。

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第96話 罰ハーレムを与える吸血姫。


 そして翌朝。

 昨日はマキナの合流に際し、色々と擦った揉んだあった。否、私がマキナを揉んだ揉んだ。

 ではなく盛大に揉まされ続けたという方が正しいだろう。それはそれとして実は夕食時にマキナの自己紹介と今後の方針を伝えた私は本日の予定をサッサと終わらせる事とした。


 一つは元々の予定であった探索者ギルドへの有翼族(ハーピー)三名の新規登録、死亡届けが出た岳置牧凪(タケチマキナ)の代わりにマキナ・タツミという私の愛娘として再登録を行う事とした。

 もう一つは領主への処断。これはリンス達が得た情報であり、人魚族の解体に関して領主が裏で()んでいた。というか現領主がオーナーで禁止としたのは一族争いで亡くなった前領主だったらしい。


 一応、ムアレ伯爵としてやり手な面をみせていたが、その実・・・下位貴族のラアレ男爵を毛嫌いしていたようで都合が良いとして潰しに掛かった。

 残りは赤ちゃん勇者達への対応ね?

 今のまま放置すると追いかけてくる可能性があるため、王太子の思惑を削ぎつつ対処に出る事にした。代わりにアインスとも密約を交わし削ぐ分だけ地上界の平定にも関わる事とした。


 眷属(けんぞく)には勇者だった者が十名居る事も要因の一つだが他の者達も同様に勇者らしからぬ行動を起こしていても不思議ではないと話したためである。

 この情報は主にマキナから得たもだ。

 それは残り数名の良識派・・・マキナも良識派に入り、それ以外は役立たずとしたためだ。

 ともあれ、今回はスピード勝負だったので処断組は先んじて移動を開始し、新規登録組は打ち合わせののち──、


「まずはマキナとゴウ、キョウとリョウ、リリナとリリカの新規登録。並行してリンスとユーマ、ニーナとショウによる領主の処断を行うとして新規登録後は恐らく赤ちゃん勇者が絡んでくるから、私とマキナで対応を行い・・・」

「私とリリカはリンス様の元へ移動すればよろしいのですね?」

「ええ。有翼族(ハーピー)組の三名も護衛で付けるから片付けの際は召し上がってもいいからね? ただし!」

「〈隷殺(レイサツ)〉と〈触飲(ドレイン)〉だけですね?」×3

「判ってるなら、よろしい。〈魔力触飲(マナドレイン)〉は解放した魔力量を誤魔化せなくなるから勇者対応をしている間は余り使えないからね?」

「了解しました!」×5

「では移動を開始するわね。ナギサ、ハルミ、サーヤ、あとよろしく! ついでにシオンも」

「はい。承知致しました」

「「いってらっしゃい〜」」

「ついでって・・・」


 関係する者達と共に、後部甲板から支部へと空間跳躍(くうかんちょうやく)した。




  §




 ということで、支部前へと着いた私達は支部の近くで陣取る派手な装備を身につけた赤ちゃん勇者達を視界に収めながら支部へと入る。

 今は一同と共に〈隠形〉スキルで隠れていたが、それでも気づかれていないとするのはなんともな感じであった。

 そんな残念バカップルを放置した私は〈隠形〉を解き、代表して声を掛ける。


「すみません。船員の登録いいですか?」

「これはこれは。いつもお世話になっております。実はあれからすごい反響が出ましてね、本部の方でも需要がありまして本契約を急いでくれと指示が出まして」

「でしたら後ほど本契約を致しましょうか? 実は昼過ぎには旅立つ予定でしたので」

「それは助かります。でしたら登録の合間に書類をご用意致しますね?」

「よろしくお願い致します」


 開口一番は昨日の事ね? あれから時間が経ってないのに需要が出たのだから驚き以外のなにものでもない。一つは赤ちゃん勇者が原因だろうが、それでも要望が出たとするのは嬉しい悲鳴であった。

 すると、登録を行っていたマキナが申し訳なさそうに声を掛ける。


「かぁさ〜ん、意図せずSランクになっちゃいました・・・」


 私はそんなマキナの頭を撫でながら(なぐさ)める。今は娘という立場なので名前呼びではないが・・・実際に娘なんだけど。


「前回は三千万MPを借りてて、今回は保有魔力の総量・・・八千万MPが表に出るから仕方ないわよ。一応、過去最高だけど我慢なさいな」

「お母様達が登録した魔力量を超えてますし」

「気にしないの。私とシオンは出力制限を入れて登録したからね? 実際に十京なんて魔力量を見られたらなにが起こるか逆に怖いわ」


 そう、私の総保有量は表沙汰には出来ない。

 私の魔力目当てで例の王太子が動く可能性があるからだ。流石の私でも愛娘を人柱とするつもりは無いけどね? そんな私の気持ちを知ってか知らずか、マキナはしょんぼりしたまま先々を苦慮していた。


「八千万MPって魔導士長を超えてますし」

「へぇ〜。あれって幾らなの?」

「確か・・・七千万MPですね。レベルは10でしたけど」

「ん? んんんん? レベル10で七千万MP?」

「記憶を読んだ時に〈鑑定〉しましたので」

「となると・・・原因物でもあったわけか」


 私はマキナから得られた魔導士長の情報で合点がいった。それはこの世界の原因そのものであり、主犯そのものだった。原因が判ったとしても排除は別問題なのだけど。

 私は怪訝(けげん)な表情で見つめるマキナを改めて抱き締めた。


「なにか気になる点でもありましたか?」

「マキナ、ナイス! 助かったわ〜」


 マキナは抱き締められて逆に困惑した。


「ふぇ? ど、どういう事ですかぁ?」

「可愛い愛娘に感謝だわ〜」

「感謝するのは判りましたから、お尻は揉まないで〜」

「マキナも柔らかいわね〜」


 そんな私とマキナのやりとりの間、他の面々の登録も無事に済んだ。その代わり周囲の探索者達やリリナ達から苦笑を頂いたが。




  §




 その後は受付嬢が契約書を持って現れたので書面内容を再確認してサインした私である。

 そして革袋で契約金を頂いて、再確認していると・・・予想通りの者達が現れた。

 この段階でリリナ達は〈隠形〉で隠れ、リンス達の元へと向かった。


「おい、そこの探索者! その金を俺達に寄越せ!」


 私は(あき)れを示し、話が通じない前提で問い返す。


「またですか? でしたら、こちらは貴方の()の一切を頂きましょうかね?」

「は? なんでそうなる?」

「頭おかしいの? 貴女は私達に(みつ)ぐ事が筋でしょう?」


 相変わらず会話が成立しないため、マキナが(あき)れを見せながら──、


「相変わらずの残念バカップルね?」


 日本語で問い掛けた。

 するとマキナの容姿は銀髪なのに、残念バカップルは勘違いの反応を示した。


「!!? お、お前!! 死んだはずじゃ?」


 マキナはあっけらかんと否定し、私へと問い掛けた。


「誰かと勘違いしてません? ねぇ? お母様?」

「「お母様?」」


 赤ちゃん勇者達は私へと視線を移す。

 視線は(いぶか)しげなものだった。

 だから私も日本語で答えてあげた。

 以降は日本語だけの口喧嘩である。


「いい加減気づきなさい(・・・・・・)よ? 何度、返答すれば判るの? その頭は飾りなのかしら?」

「あ! その髪!!」

(だま)り姫!!」

「気づくの遅っ!」

「なんだと!? じゃ、じゃあなにか? 他の組まで居るのか!?」


 この時の私は周囲の邪魔になると思い、口喧嘩に応戦する前に私達と赤ちゃん勇者の周囲を積層結界と時間加速結界で(おお)い、ダンジョン内へと空間跳躍(くうかんちょうやく)したのである。この段階で周囲の景色が変わったのに一向に気づかないのよね〜。


「居たじゃない。現に粗相した後、オムツを穿()かせて貰えたでしょう? 今後は要らないだろうから、全て(・・)取っ払うけどね?」

「な!? お前等が!?」

「酷いじゃないの!! お陰で夜の営みが出来なかったのよ!?」

「だから取っ払ったでしょう? 今は素っ裸になったけど、今後は好きなだけ混ざり合えば(・・・・・・)いいじゃない」


 私は口喧嘩の応酬の間、赤ちゃん勇者の装備品だけ魔力還元した事を告げた。というか還元しても気づけないってよっぽどよね?

 マキナは(あき)れを通り超してるし。

 ちなみにマキナ曰く冷静さを欠いてる時は念話や魔法詠唱は不可能らしい。だからあえて(あお)る言葉を選び、魔法戦をさせない事にした。私達は二人の驚きの間に処置(・・)(ほどこ)した。


「「!!?」」


 なにをしたかはまだ秘密。

 種明かしも早く終わらせないと時間が無駄になるので(あお)りつつも告げた。


「さて、素っ裸になった事もそうだけど、いい加減・・・気づきなさいね?」

「「な、なにをだ!!」」

「相当にあれだね? 女の頭が悪いのかな?」


 マキナも楽しそうに(あお)る。

 (あお)られれば(あお)られるほど冷静さを欠き、互いの波長が一致し──、


「「はぁ!?」」


 混ざり合いが極限へと達する。

 私達は残念バカップルの状態を確認しつつも(あお)りを止めなかった。


「これはハズレかしら?」

「う〜ん? ハズレかもね〜」

「「どういう事だぁ!! !!?」」


 すると、男女のはずなのに互いの視界が同じ、否・・・口調が一致した事で気づいたらしい。


「お? やっと気づいた?」

「流石に鈍感過ぎるでしょうに・・・」

「「な、なにを・・・」」

「まだ気づけないの? 可哀想に」


 私はマキナと共に嘲笑(ちょうしょう)を浮かべつつ種明かしを行った。


「種明かしするとね? 貴方達には人形になってもらったから。男女の身体を縦に半々って感じでね? だから調(しらべ)は悦びなさいな? 柔らかいGカップの胸を右側だけつけてあげてるから。代わりにじゅんの方は無くなったけど・・・調(しらべ)と混ざって快楽を味わったらいいわよ?」


 私の種明かしを受けて、魂が混じりあった二人は声にならない声で叫んだ。波長が一致するまでは一つの個だった。一致した直後から人格と共に思考力も落ち、徐々に魔物へと変じた。


「「!!?」」


 するとマキナが興味津々で人形各部を触る。

 触られた方はなぜか感覚があるとして、またも変な声をあげた。


「ねぇねぇ、お母様? 胸や表面、中の球体関節もそうだけどコッチもナマモノなの?」

「「!?」」

「ええ。表皮や柔軟性を保たせる部分は基本ナマモノにしたわ。一応、食紅製の血糊も入れてるから切られれば痛みも出るし血も流れるけどね。それ以外は全部〈ダーク・メイプル〉で作ってるから表皮を突き抜けても外殻で刃こぼれしてしまうわね。あとは腕や脚にも暗器を持たせてるし、右胸が開いて〈魔力ミサイル〉の発射もあるわね。もちろん手持ち花火程度の火力だけど。それと・・・空腹感に困らないよう襲った探索者や魔物を好きなだけ味わえる仕様ね。中に鮫歯を付けてるけど、奥がクリティカルな弱点でもあるから注意ね〜」

「至れり尽くせりだ〜。良かったね〜調巡(しらめぐ)りん? 新しい身体が完全なるアーティファクトだよ?」

「「!?」」

「今ので新名が確定したわね・・・調巡(しらめぐ)りん。人形にはもったいないけど」


 私達は裸に()いた直後、時間加速結界を時間停止結界に切り替え、昨晩用意しておいた肌色の胸と表皮・球体関節を持つナマモノ分が多い〈傀儡体〉という人形の〈封印魔核〉へと二人の魂を宿した。


 その際に古い肉体を魔力還元し〈傀儡体〉を動かす〈封印魔核〉に魔力吸収させたのだ。食事は生存本能によって身体の各所に現れる複数の取り込み口から鮫歯で食べさせ〈生肉魔力還元機能〉を通じて一生この姿で生きながらえさせる仕組みとした。これも通常は頭部にある口から行うが戦闘中はその限りではない。


 扱い的に非道かもしれないけど、これは島民達の子育て・次世代の育成を妨害し己が欲望を主とした行為への罰だ。私は積層結界と加速結界を解除し、マキナと共に片付けを行った。


「さて、それじゃあ結界を解除して・・・ダンジョンボスを倒してしまいましょうか?」

「はーい! せーの!! 弱っ!?」


 肝心のダンジョンボスも人形だったが、マキナの拳一つで魂諸共砕け散り、一瞬の内に魔力と生命力・魂の欠片がマキナに取り込まれた。

 直後、その光景を目撃した〈傀儡体〉の〈調巡(しらめぐ)りん〉は驚いた。表情が動かない代わりに声だけで驚きを表していた。


「「なっ!?」」


 するとダンジョンボスが消えた事でダンジョン・コアが代替品を探しだす。この段階で代替品が居ない場合は一時閉鎖となるのだが──


「ダンジョン・コアが〈調巡(しらめぐ)りん〉を認識したわね?」

「うん。巻き付くように(しがらみ)の魔力が身体中に()ってるね?」

「「!!!?」」


 今回は類似する代替品を事前に用意していたため、ジワジワと巻き付くように〈傀儡体〉と混合した魂をダンジョンに縛り付けた。


「これでダンジョンが一時閉鎖されない限り一生開放もないわね〜」

「探索者達の成果を盗んでたのなら(あがな)いはダンジョンボスでって事で! 引き続き頑張って討伐され続けてね〜。美味しい餌は探索者達が持ってきてくれるから〜」

「「!!」」


 という感じで私とマキナは〈希薄〉し、その場から消えたようにその後の人形を見守った。

 以降は探索者がボス部屋に来る度に意識なく襲い、(むさぼ)るように頂いたようだ。

 ここが死に戻り可能なDランク・ダンジョンなだけに生きながら喰われるという、断末魔をあげざるを得ない〈断末魔ダンジョン〉と呼ばれるようになるのはそれから直ぐの事だった。




  §




 一方、リンス達はというと──、


「うっま〜い!!」×2

「美味しい!!」×3

「予想より甘〜い!!」×4


 領主館にて全てを終えていた。

 どうもトントン拍子で片付けを済ませ、御食事会を行っていたようだ。

 ゴウとリョウは雑兵達を。

 リリナとリリカは現領主と奥方を。

 キョウはメイド達と従業員を。

 リンスとニーナ、ユーマとショウは島を護る衛兵を召し上がっていた。

 四人が予想よりも甘いと言ったのは護りよりも汚職事会を行う者が多いという事だろう。

 その後、ダンジョンでの片付けを終えた私とマキナもこの場に跳んで来た。

 だが、(すで)に終わりが見えており、私とマキナはしょんぼりした。


「あら〜。(ほとん)ど終わってる?」

「残り無いの〜。残念・・・」

「お疲れさまでした。お二人の者は残してますよ?」

「リンスありがとう〜。それでどれなの?」

「こちらに・・・」


 すると、リンスが気を利かせてくれたのか、私達用の食事を用意していた。

 ただ、そこに居たのは──、


「「へ? なんでババア達が居るの?」」


 学校七不思議に数えられる双子のババア教師(八十才)が気絶していた。ちなみに七不思議には私の事も含まれているが、ここで話す事でもないため割愛する。

 するとユーマが満足気な顔で教えてくれた。


「なんでも、若返りのために人魚肉を求めに来ていたみたいですよ?」

「これで教師は全滅か〜。いい年超えて若さを求めるとはね〜」

「しわくちゃババアにとっては垂涎(すいぜん)のモノだもの、仕方ないわよ」

「ババア達より年上の人たちがなにか・・・」

「「ニーナ喧嘩売ってる?」」


 ニーナの丸尻尾に罰を与えた私は──


「な、なんでもないですよ? ひゃん!! 尻尾はだめぇ〜」


 マキナと共にババア達を頂いた。

 ただ、正直に言って不味いの一言だったが、背に腹は代えられないため我慢した。

 そうして死亡認定が出る前に首から上だけをユーマの〈魔刀〉で飛ばしてもらい、肉体と魔石は魔力還元した。

 すると、ニーナが丸尻尾を撫でつつ転がる頭部を眺めながら質問する。流石に遺体やらを沢山見過ぎて一同も慣れが出てきたようだ。


「それで、この頭はどうするの?」

「魂を一部だけ残してるから・・・ダンジョン人形の予備頭部で確保しましょうか」

「ということは、じゅんは完全なハーレムだね!」

「なんか、イヤなハーレムだな」


 後始末は微妙な感じとなったがマキナの呟きに対し、ゴウのツッコミが入った事で更に微妙な空気となった領主館であった。

 私は完全なる後始末を終え、私とマキナだけはムアレ島支部を経由しボス部屋で得た大白貨(だいはっか)百枚・一千億リグの回収報告を行い、半分の大白貨(だいはっか)五十枚・五百億リグを受け取り船へと戻った。

 どうもDランクダンジョンだけはボス討伐をすると、この手の報酬が得られるらしい。

 だから回収報告と同時に受付嬢へと手渡すと、それはもう大層喜ばれた。





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