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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第四章・出会いと再会に驚愕。

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第95話 大事な愛娘を助ける吸血姫。


 ひとまず、その後の私はダンジョン攻略後にメンバー達と一旦別れ、リンス達の元へと向かい、その際に得た情報を精査しリンス達には先に船へと戻ってもらった。

 そして情報とは別にムアレ島支部にて回収した貨幣の受け渡しを終えてきたのだけど、買い出し班と合流したメンバーの背後から空間跳躍(くうかんちょうやく)で近づいたところ、不意打ちでマキナから抱き着かれた。


「お久しぶりです! カノンさん!」

「おわぁ!? マキナ、急にビックリするでしょう? 大きくなったのは胸と尻だけね?」

「はい! 部分成長しました!!」

「それはそうと・・・マキナ? 身体に異常はないの?」

「へ? どうしたんですか?」

「気づいてないの? まぁ・・・私の方で隔離(・・)してるからいいけど」

「え? ちょ? カノンさん・・・まさかですけど?」

「そのまさかね〜。やっと気づいた?」


 マキナはようやく気づいた。

 今は周囲の面々が困惑するほどの顔面蒼白気味な表情を浮かべているのだから。実は先ほど気になる事があって、私はマキナの心核隔離を行っていた。これはシオンに行った事と同じで物理的に切り離し亜空間庫に移動させたのだ。

 隔離してても身体を動かすという一方通行の経路は残るから、本人も言われるまでは気づけなかったようだが。


 では、なぜ隔離に踏み切ったかと言えば、マキナの肉体に異物があったからに他ならない。

 場所は取り出した心臓とは無関係の場所。

 首の後ろ・・・表層付近に米粒よりも小さい魔石が埋まっていた。普通は気づくものだけど、一切感知出来ないという特殊な魔法陣を宿したものだった。だからそれも一時的に私が時間停止結界で隔離して肉体に影響が出ないようにしたのだ。それであっても、なにが起こるか判らないので心核隔離を先に行ったけどね?


「な、なんで?」

「キチンと答えるから。少し待ってね? 一旦、この場を時間停止結界で(おお)って・・・マキナは隣に新しい肉体を用意して」

「え、ええ。判りました・・・」


 マキナは私の指示を受け、多少の困惑が残る中・・・意識を心核本体へと移した。直後、マキナの古い身体は私に抱き着いたまま、重量も持った肉塊へと変化した。

 すると、その様子を見ていたナディが代表して私に問い掛ける。


「カノン様? マキナは一体どうなされたのですか?」

「あとで説明するから、とりあえずこちらの古い身体を地面に横たえて」

「は、はい」


 しばらくすると、マキナの準備が整ったのか亜空間庫内の本体から外を〈遠視〉し、私の真横に立つように心臓が露出した。

 そして・・・魔力源、魔力経路、骨格、神経、臓器などが徐々に構成され始めた。

 タツトはマキナの筋肉が構成される段階で凝視するケンに気づき、ケンの目を潰して海岸側を向いた。


「ギャー!!」

「女の裸を見るとか、お前はアホか!」


 その行動を見た私を除く女子全員はサムズアップして褒めた。


「ナイス、タツト!」×9


 私はそんな一同を苦笑しながらも眺める。

 マキナの完全な裸体が構成されたあと、私はマキナの本体を戻しつつ問い掛けた。


「マキナも一応、女の子だものね?」

「・・・一応って、カノンさん失礼です!」

「新しい肉体に違和感はないわね?」

「そうですね。問題ありません・・・ですが、なぜ急に?」

「それよりも、まだ裸だから・・・先に下着を身につけてね?」

「あ! ありがとうございます〜。カボチャってどうも慣れなくて。あ! ブラもある〜」

「さっさと身につけてね? あと服はいつも通り(・・・・・)でいいわね?」

「助かります〜。あの衣装、バスに置きっぱなしですから〜」


 マキナは嬉しそうに下着を身につけ、黒銀のゴスロリ衣装を羽織った。そしていつも通りのツインテールではなく銀髪を後ろに流す、完全に印象の異なる見た目で現れた。直後、マキナのゴスロリ姿を見た一同は目が点となる。

 目潰しされたケンも回復していたようで、タツトと共に(うな)っていた。

 すると、ニーナとレリィが目配せしてニーナが代表でお願いしてきた。


「わぁ〜。マキナちゃん可愛い! カノン? 他にも衣装作っていい?」

「・・・まぁ船に戻ってからならいいわよ?」

「よっし! 許可も貰ったから戻り次第、マキナちゃんの採寸しなきゃ!!」


 私からの許可を得たニーナとレリィはガッツポーズを行い、本題よりもマキナに合う衣装の相談会を始めた。

 ひとまず、マキナに事情を明かす事にした。

 今は元勇者勢の四人がこの場に居るので丁度良いと思いながら・・・だが。


「これから事情を打ち明けるけど、マキナ・・・だけでなく、ハルミとサーヤ、タツトとケンも関係する事だから良く聞くようにね?」

「へ?」×5

「ナディ、マキナの古い身体の向きを(うつぶ)せに変えて」

「は、はい! ただいま・・・よいっしょっと」

「今から説明するけど、マキナのうなじ付近を今から軽く切開するわね?」

「???」×5


 私は一時的にメスとピンセットを作りだし、該当箇所に一本の切り傷を作り出す。今は時間停止結界内で行うので流血はないが、これも問題物を取り出す際に影響がでないようするためである。摘出を見ている一同は絶句であり、私も〈鑑定〉を行いつつ怒りがこみ上げてきた。


「次は傷にピンセットを差し込んで・・・シャーレを作って、よっと!」

「!!?」×5

「かなり小さいけど、これは魔石ね。異物感を持たせない特殊魔法陣を周囲に(ほどこ)し、内部には細切れ魔法が付与されてるわね」

「えっ!?」×5

「作用は(そら)属性魔力を与える事で、特殊魔法陣が解除され一瞬の内に内側から切り刻むというやり口ね。これはいくらマキナといえど本体が確実に潰される危険物だわ」

「うそ・・・い、一体いつのまに?」

「どうせ、寝てる隙でしょう? 無意識下の者に強制転送魔法を使うと内部へ簡単に送り込めるらしいから。これも施術者以外の魔力に反応するみたいでね? マキナがシロに食べかけリンゴを送る前に隔離処置してて正解だったわね? (そら)属性魔力を(まと)っただけで発動してたから」

「ヒッ!?」

「まぁ助かったのは結果オーライね? マキナが全属性ではなく光と闇を持っていた事も要因の一つだけど〈擬死(ぎし)〉スキルを使って死亡を演じた直後にね? この魔石が不可思議な動きを示したの。それは・・・死亡判定すると大体三十分から一時間後に自動発動するというものだったわ。(そら)属性魔力以外でも発動する機能有しているという点では用意周到だけど、心核隔離と時間停止隔離が影響して発動は出来なかったみたいね」


 なにを思ってこのような異物を入れたのか?

 それこそ(にえ)の一言に尽きるだろう。

 すると、ケンがなにかを察したようでオドオドしながら質問する。


「も、もしかしてだが、俺等の前の身体が切り刻まれたのって?」

「これの所為(せい)ね・・・暴発だけでは肉体が細切れになる事なんてないもの。肉体の部位が各所に残っているはずだから。それが骨諸共一瞬で砕け散ったという点で異常過ぎるからね? 大体、上限値レベル90の装備を身につけたハルミとサーヤが暴発だけで肉体が砕け散る要因こそ不明だったのだもの。あれは外部からの攻撃を積層結界で(おお)うという、特殊結界を付与していた魔具だから」

「「!!?」」

「驚き以外のなにものでもない・・・でしょう? 内側から砕け散るなら外側の結界なんて役に立たないもの」


 そう、私は結論付けた。

 勇者達は総じて、この魔石を植え付けられ・・・死亡時には一時の猶予、装備品回収ののち細切れに解体する予定だったのだろう。

 それは船に乗った者達の証拠隠滅を計ったともとれる手法であった。海の藻屑、魔力を回収したのち不要になった肉体は魚の餌にするという、大変素晴らしい外道な行いなのだから。

 あとは・・・石頭だけは(そら)属性を持っていたが、与える魔力指定が異なっていたのだろう。こちらはトリガー指定だろうが。

 その直後、マキナは盛大に泣きじゃくった。

 こういう点で言えば年相応である。


「うわ〜ん! 助かってよかったよぉ〜」

「はいはい。泣かないの! 鼻水まで垂らして・・・はい、チーンして」

「チーン! うぅ・・・お母様〜、この御恩・・・私は一生付いて行きます〜!」

「今度は放置しないから安心なさいな。貴女はいつまでも私の愛娘だからね?」

「ありがとうございます〜、グスッ」


 私はマキナを(なぐさ)め、報復を決意した。そう、魔石を与えた主を見つけだし、処罰の段取りを行った。


「さて、この魔石はどうしましょうかねぇ〜。付与主は・・・例の魔導士長? これは丁度いいじゃないの。それなら付与内容を書き換えて、トリガーは私の全属性で指定して奴の心臓内部に強制転送! 上手く心筋内に埋まったわね? とりあえず処罰は追々としましょうか」

「カノンさん? 一体なにを?」

「ん? とっても面白い報復を(ほどこ)したの」


 マキナや周囲からは絶句というか不審な目で見られたけど、幸いかな私が処罰する予定だった〈夢追い人〉の一人だったので私の魔力を得た瞬間、楽しい事が巻き起こるであろう。

 すると今度はレリィが興味深げに聞いてきた。元勇者勢はなにがなにやらという様子であったが。


「一体なにを(ほどこ)したの?」

「う〜ん? 獣人アンデッドを城内で暴れさせるというものね? しかも魔力源は残すから魔導士長クラスの者が変じるとあれば」

「阿鼻叫喚の地獄絵図?」

「そういう事ね? 本来の目的完遂後に魔力を与えるから、面白い事になるわよ〜?」


 そう、主に行った書き換えはトリガーの特殊魔法陣を少しだけ変更して細切れ魔法を消し去り、獣化という魂に付随する特性から肉体を書き換えるものとした。

 心臓に送ったのも人族の魂がその場にあるからという利点があり、魂の生命力も肉体の書き換えに利用し、最後まで使い切るという物だ。

 その後はもぬけの殻となるため、そこらの悪霊が入り込んで完成という流れである。


「カノンさんぱねぇ〜」×11

「とっても大事な愛娘を殺されそうになったのだもの。母親としてこれくらいの報復はまだ甘い方よ? この国家を滅ぼす事だって私には出来るけど立場があるから今は出来ないしね?」


 今は出来ない。

 どうにも出来ない立場があるから。

 それをすると私の身が危ないから。

 ともあれ、その後の私は本体を失い傷だけが残るマキナの古い肉体を魔力還元で消し、嬉しそうに抱き着くマキナや一同と共に船へと戻った。





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