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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第四章・出会いと再会に驚愕。

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第93話 吸血姫は忘却の児に驚く。


 一方、買い出し班のレリィ達はというと──


「ねぇ? あの子・・・」


 予想外の人物に遭遇していた。


「天才児よね? いや、天災児か」


 それは一組に所属している若干十一才で飛び級入学した現十二才の天災児こと、岳置牧凪(タケチマキナ)という、なんとも当て字っぽい名前の少女だった。

 彼女の容姿は120センチの身長に腰までの白髪を黒銀のリボンで結んだツインテール。

 年齢にそぐわない胸と尻を持ったロリ巨乳と呼べる姿で赤瞳の綺麗な美少女である。

 その顔立ちは見覚えがあるけどね?

 ハッキリとは思い出せないけど。

 ちなみに一組でのアダ名は若いのに考え方が年寄り臭かった事でロリババアと呼ばれているらしい。本人の前で言うとタツトでさえ軽く空を舞ったらしく、他のクラスでは天災児と呼ばれているのだ。

 そんな彼女を見つけたのはレリィ。

 次に気づいたのはナディ、ユウカに続いてショウが反応したが牧凪(マキナ)と視線が合い困惑していたようだ。


「なんでここに?」

「それよりも・・・なんか気づかれてない?」


 ちなみに全員〈希薄〉しており、気づかれる心配は無いと思っていたようだがスキルレベルの関係で稀に気づかれるのだ。

 今が稀なのかもしれないが。

 すると、レリィ達は視線が合ったとして、逃げに転ずる──


「こっちきた!? どうしよう、レリィ?」

「ショウ、この際・・・隠れると面倒だ」


 が、なぜか回り込まれており、混乱した。


「なにが隠れると面倒なの?」

「「「「ひっ!?」」」」


 牧凪(マキナ)はそんなレリィ達を相手にしょんぼりしつつも応対した。


「怖がらなくてもいいじゃない。クラスは違えど同級生なのだし」


 すると、レリィは仲間と目配せして(おび)えながらも告げる。


「な、仲間達に知らせないでくれるか? 会うと面倒だから」


 牧凪(マキナ)はきょとんと(ほう)けるも──、


「う〜ん? どうしようかなぁ〜。よし! ちょっと待ってね〜。ゴフッ」


 なにかを思いついたのか、急に吐血した。

 いや、私も驚いたわよ?

 それこそ居たの? という気分である。


「「「「!?」」」」


 吐血以降の牧凪(マキナ)は白髪が一瞬で銀髪へと変わり、赤色の瞳が碧色に変化した。

 牧凪(マキナ)・・・否、マキナは口元をハンカチで(ぬぐ)いつつも、左手に(ブツ)を顕現させた。それは魔法ではなく〈擬死(ぎし)〉スキルでの表出であった。

 これは死んだ事と思わせる時に使うスキルで、私とシオンしか(・・)使えないはずなのだ。このスキルの有無から私は思い出した。


「なにを驚いてるの? 久しぶりに血を吐いたわ〜」

「そ、その銀髪、手に持ってるソレは・・・」

「ああ。代替品ね? 私とお母様達(・・・・)なら当たり前に出来る事だけど? 貴女達もだよね?」

「「「へ?」」」


 いや、先ほども述べた通り私とシオンしか(・・)使えないスキル・・・否、マキナも使えるスキルのため、三人は(ほう)け、レリィは受け流して問い掛けた。


「と、ところで、お母様って?」

「カナデさん、いえ・・・カノンさんね?」

「「「「!!?」」」」


 いつの間に居たの? というのが私の心境。

 攻略より、唐突に繋がった経路に驚いたわ。

 死んだと思ってたのに・・・いえ、どこぞで放置して、それっきりだったわ。

 彼女はマキナ。マキナ・サーデェスト。

 最初の眷属(けんぞく)にして、天寿を全うした・・・フリをしたがる超絶ドMな女の子。

 今も急に吐血して左手に(ブツ)を取り出して魅せたのだから、驚くほかないだろう。


 ちなみにマキナは分裂する前の私が二度(・・)産んだ血の繋がった娘だ。

 元々は私の眠りを管理していたシスター(本当の長女)で、流れ矢の所為(せい)で亡くなったため、その死後に魂諸共助けた。

 十二才までは私が人間として育て、マキナから願われた事で眷属(けんぞく)進化させたのだ。

 ゆえにその実年齢は推して知るべしである。


 あとは立場上、お母様と呼ばれているが私が名前呼びをさせているだけである。

 彼女と別れたのは、確か八十七年前・・・私が日本に渡る前、どこぞの山岳地帯で経路を切ってイッちゃうこの子を放置して、そのまま音信不通となってしまった。常に放置プレイが大好きな女の子だったから・・・それは置いといて。


 レリィは挙動不審となりながらもマキナの左手で鼓動を打つ(ブツ)に視線を向け続け反応に困った様子で問い掛ける。

 他の三人も終始・・・(ブツ)に視線が向いた状態で固まっていた。


「というかなぜ、急に変化したの? 勇者としてこの場に居るんじゃないの? あと、それ心臓だよね?」

「ああ。これ? 実はさ〜石頭の所為(せい)で〈贄魂(にえだま)〉に要らん魔法陣を描かれてさ〜。〈贄魂(にえだま)〉を放出しないと消せないからって事でね〜、これで念話は一切出来ないから安心していいよ? どうせアイツ等は死んだと思ってるだろうから。それに勇者とかってどうでもいいんだ〜平定なんて言ってるけどその実、ただの(にえ)だったからね〜。大体、借り物の魔力なんて私には不要だもの〜。あ〜肩の荷降〜りた!」


 そう言って、マキナは左手に持った(ブツ)を握り潰し、中に宿る〈贄魂(にえだま)〉と血液を〈紫色(ししき)魔力糸(まりょくし)〉で喰らい、己が魔力に戻した。

 そのうえで、右肩をグルグル回し年寄りくさい反応示す。


(あらら。アインス達も驚いてるわね? どういう事ってメッセージが飛んできてる。レベルも私ほど高くないけど、この子達が相手だと分が悪いわね?)


 マキナのレベル・・・それは288だった。

 恐らく異世界に居た時から〈贄魂(にえだま)〉を代替品に宿して、定期的に身体を操っていたのだろう。時の止まった世界では実際に止まっていたが、スキルやらなにやらが〈贄魂(にえだま)〉に宿されたとして、本体から様子見していたようだ。

 その後は適度に流し下界に降りた私とシオンの気配に気づいてから行動を開始したらしく、バカ達の相手をしつつも適度にレジストしていたらしい。〈贄魂(にえだま)〉のレベルは12だったが〈贄魂(にえだま)〉開放と同時に、本来のレベルとスキルが表に現れたようだ。


(これは・・・まぁいいわ。マキナもこの世界では経路を切ったら詰むって事を理解してるようね? まぁ一緒に居たいとするなら面倒をみるしかないわね。しかし、また増えたわ元勇者。今度は願って加わった者だけど・・・)


 しかも今度は私との経路を確実に結合して、現在進行形でスキル複製の要望を送りつけてきたのだから私としては仕方ないと受け入れた。

 今までは〈贄魂(にえだま)〉にしかスキルを保持しておらず、従来のスキルしか持って無かったためらしい。当然ながら勇者である間も〈隷殺(レイサツ)〉で敵方の隷属(れいぞく)行為を完全回避したり〈触飲(ドレイン)〉で悪意を喰らい、色々な記憶を得ていたらしい。


 これもスキルの代わりにどうぞって、マキナから渡された記憶ね? うん、やはり勇者達は魔力を得るための(にえ)だったようだ。

 この時の私は妙な動きをする魔力を感じ取ったので、マキナからの結合直後より処置(・・)だけ済ませた。ということで私はマキナに情報開示の許可を出す。


「よし! お母様からお許しが出たわ〜」

「「「「お許し?」」」」

「ええ。私の本名はマキナ・サーデェスト。お母様、いえカノンさんの実子であり、最初の眷属(けんぞく)よ。立場上は貴女達の義姉ね! 以後よろしく!」

「「「「えーっ!?」」」」


 急遽(きゅうきょ)合流した最初の眷属(けんぞく)・天災児のマキナ。

 元サーデェスト領・領主が長子のシスターにして私から二度も産まれた実子だ。そしてシオンをも超えるドMの(あるじ)が仲間に加わった。なお、船内で様子見していたシオンも急な事でアタフタしており、自室に戻ってアレコレ隠していたようだ。

 マキナとのこれまでのやりとりも〈希薄〉して行ったのだから、吐血やらなにやらは周囲に気づかれる事は一切なかったが。




  §




 一方、情報収集組はというと──、


「へ? 岳置(タケチ)がその場で死んで合流した? どゆこと?」


 問題の人魚肉卸販売業者の店の前で、シロが〈スマホ〉経由で固まっていた。

 すると、リンスがなにを思ったのか私からのメッセージを受け、あっけらかんと私達とマキナの実年齢をばらしてしまった。


「カノンさんから・・・へ? 私達の義姉にあたるらしいです。確か・・・実年齢でいえば三千百十七才のカノンさん達より、一千七百下ですから一千四百十七才で二番目に御高齢ですね」


 それを聞いた一同は絶句。シロはマキナの実年齢を知り、言ってはならん事を口走る。


「ロリバ、ぐぉ!? 食いかけのリンゴが目の前に」


 ロリババアと言おうとした矢先、マキナの食べかけリンゴがシロの顔面に直撃した。〈遠視〉による強制転送を行うのだから相手が悪いと思うしかないだろう。その様子を見ていたシンは(あき)れながらも遠い目をした。


「シロ、ドンマイ。いや、マジモノの天災児だったかぁ」


 すると、ココがきょとんとしたままリンスに質問する。


「カノンお姉様の義妹さん?」


 リンスは質問に対し、どうしたものかと悩みつつも答えたようだ。


「詳細は判らないんですが、妹ではなく娘だそうです。だからシオンさんにとっても実の娘みたいですね。元人族であるのは確かですが、異世界人であるのも確からしく・・・吸血鬼族でもあるそうですよ?」


 それを聞いたシロはマキナの食べかけを(かじ)りつつ、シミジミと昔を思い出した。


「モグモグ。割と身近な場所にも潜んで居たのか・・・って動いたぞ」


 だが今は、張り込み中ともあって意識は直ぐに目の前に向いたが。ただ・・・その後のやりとりで空気を弛緩させてしまった。


「マキナちゃんの食べかけいいな〜」

「やらんぞ? 俺が貰ったものだ」

「こらこら。変態紳士共、監視に集中して!」

「いいなぁ。リンゴ直撃とか・・・」

「アコも見とれないの! といっても、マキナもアコと同類らしいわよ?」

「え? そうなの!?」

「そういう、お前等も監視!」

「「あっ!」」


 三バカの二人とSMコンビという異色の組み合わせにより、一瞬で空気が緩んだ。その光景を見ていたリリナとリンスは苦笑しつつも不安になったようだ。


「大丈夫かしら? リンス様?」

「頭が良いのは確かですから・・・任せましょう。リリナ様」


 こうして、情報収集班は〈希薄〉したまま従業員の尾行を始める。しかし、その道中・・・オカシナ者達と遭遇したようだ。


「なんでここにいるの!?」×4

「お知り合いですか? シロさん」

「ええ。リンス様、あれは現役勇者です・・・ただ、あの姿は?」


 そう、オカシナ者達。

 私達が放置した者達が目覚めたらしい。

 そんな現役勇者の姿を目の当たりにしたリリナは困惑していた。


「見る限り、怒り心頭なまま白い布を()がそうと躍起になってるようですが」


 この場で絡むと面倒なため、シンは移動を(うなが)した。


「ま、まぁ・・・害がないようなら先を急ぎましょうか?」


 それを聞いたリンスとリリナは首肯し、勇者を放置して移動を開始した。


「「そうですね」」


 背後から歩むアコとココは怒りのまま胸を(さら)す者を見て若干同情気味であった。


「というか調(しらべ)・・・胸がなかったのね?」

「平面・・・を通り超して(えぐ)れてるわね? 可哀想に・・・」





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