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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第四章・出会いと再会に驚愕。

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第91話 吸血姫は世界の理を示す。


 それから数日後。船は本来の目的地手前。

 最後の寄港地であるムアレ島へと到着した。

 今回は人員補充の関係で予想外に食材が減ったので食材などの補給が主な目的だが、それと同時に人魚肉卸販売業者への報復も忘れない私達であった。この報復はリリナの希望ね?

 これまで数多くの同胞を殺されて食肉とされていたのだから。一つはクラーケン大量発生の原因でもあり、一時期は国を挙げて討伐を行ったそうだ。その時にも大量の同胞が亡くなったとして、原因除去を行いたいらしい。


 ただ、人族が生きている以上はどこかしらで同じ者が現れると伝えたけれど、たちまち知ってしまった以上は過去の要因に対する弔い合戦として申し出たのだ。

 ちなみに今現在の船は島へと近づく前に船内待機のシオンが〈希薄〉で(おお)い、周囲から気づかれないようにした。

 そして、航路から外れた場所に停泊し、船を中心とした周辺5キロに多重結界を張った。

 これは狙われないようにするためだ。


 私はブリーフィングルームと化した講義場にて各員に指示を飛ばす。

 買い出し班は、レリィ、ナディ、ユウカ、ショウ、ミキ、コノリという前回と同じ人員。

 ダンジョン攻略班は、私、ニーナ、ハルミ、サーヤ、タツト、ケンという人員。

 情報収集班は、リンス、リリナ、シロ、シン、アコ、ココという人員。

 残りの船内待機班は、シオン、ナギサ、ユーコ、フーコ、ユーマ等、残り全員。

 今回は元勇者組を主に組み込んだ。

 それはこの島の事を知っているという面も大きいが、再誕後の実戦経験を与えるためでもあるのだ。あとは、ある程度の情報が集まると同時に有翼族(ハーピー)の三名とリリナ、リリカの探索者登録を済ませて出航するという段取りである。あくまで段取りね?

 その通りにいくかはこの島の領主次第なのだから・・・それはともかく。

 私は注意事項として全員に改めて指示を出す。


「では、各員の連絡は〈スマホ〉のみで行う事! 念話は下手すると傍受されるからね? 一応、船内や多重結界内は時間が止まってるから、内部はともかく外への念話は不可だけど」


 直後、ナギサを含む元勇者達が疑問気な表情を浮かべた。他の者達はいつも通りなので聞き流していたが。

 すると、サーヤが代表して問い掛ける。


「あ、あの? 傍受って?」

「・・・以前も教えたけど念話ってね? 魂を通じて魔力だけで発動している意思疎通の手段なのだけど、その属性は(そら)なのよ。これは亡くなった石頭が勇者達全員の意思疎通として最初に付与した魔法だったわよね?」


 私は詳細を語らず考えさせる事にした。

 なにをもって作ったのか?

 なにをもって付与したのか?

 その意図は教えられただけでは理解は出来ないからだ。頭は良くとも考える事を放棄すれば意味ないのだ。使わない頭に価値はない。

 すると、私の問いを聞いたサーヤは思い出しながら念話の説明を行う。


「そ、そうですね。今は誰も使ってませんが、それがあるからやりとりがどこに居ても出来ましたから。ね? ハルミ」

「うん。それに相手を指定すれば誰であれ連絡出来るし、拒否も可能でした」

「まぁ機能として通信アプリのような物だったのだろうけど・・・では、今から石頭が発した呪文を読み解くけど、これは一回切りの魔法として編み出された物だから、この場で発しても発動はしないから安心してね・・・多分」

「多分?」×43


 これは人数指定の呪文だった。

 一回限りの魔法として付与魔力は石頭が宿していた魔力量をキッチリ使い切る分量だった。

 この呪文は石頭の記憶にあったものね?

 正確に唱えなければ失敗する恐れのある危険な魔法だったのだから。そういう意味で一生懸命覚えたという記憶が残っていたのだ。

 多分と言った事で一同は不安気な表情を浮かべたが、私自身の表属性は(そら)(きん)のため、不意に付与しかねない可能性があったから・・・なのだが。

 ともあれ、私は静かに集中し、魔力を一切練らず、一字一句を正確に唱えた。


(そら)()べる精霊(せいれい)(もと)むる、我等(われら)意思(いし)(こころ)(こえ)を、転生(てんせい)(とき)まで(たましい)(きざ)み、意思疎通(いしそつう)(すべ)()す・・・此処(ここ)勇者(ゆうしゃ)となりし、四十四名(よんじゅうよめい)(きずな)(むす)び、(ちか)いと(ねが)いを此処(ここ)(しめ)さん。マイン・ド・カンヴセーション・・・問題は無かったわね。それで、この呪文で気になった点はあるかしら?」


 私の問い掛けに答えたのは三バカ男子ね?


「えっと、転生(てんせい)(とき)まで(たましい)(きざ)み?」

「いや、四十四名(よんじゅうよめい)(きずな)(むす)び・・・だろ?」

(ちか)いと(ねが)い・・・じゃないか?」


 部分的に問うても不正解なのだけど。

 すると、ナギサがなにかに気づいたのか手を挙げて質問する。


「もしや、とは思いますが・・・その呪文は四十四名を条件として、魂に強固な結びつきを与える魔法でしょうか? 先ほど、傍受と言われた理由は勇者の誰かに察知されるという?」

「それが正解ね。呪文自体は全てで一つとなるから空精霊(そらせいれい)・・・つまり最初は空間を統べる者に願うという意味なの。次に願う者の考えや心の声を〈転生の(うず)〉に巻き込まれるまで魂へと刻み、個々が繋がる術として専用回廊を設けて念話を確立する・・・ただ、この時点では求める措置を先に願っただけね? 次はナギサが気づいた条件の、勇者となった四十四名の(きずな)を結ぶ。それを願いと共に誓いを立てた。そして鍵言と同時に四十四名の魂に専用念話の魔法陣が刻まれ、互いにやりとりが可能となったの」


 この時点で元勇者達は絶句していた。

 再誕したとはいえ、私が回収したという意味で、正しい転生とはならないからだ。

 確かに、この者達の魂に魔法陣が刻まれているのも確かで、心核化した段階で私の経路を通じ念話完全防御結界で(おお)い、内外から一切の利用が出来ないようにしてあるのだ。

 ただ、この説明は行っていないため禁止しても意味は無いが念を入れて伝えたのだ。


 自分達の魂になにが書き込まれているかを知らせるために。実際には念話が使えないよう手は打っていた。この術陣はナツミとサヤカを救った後で、アインスを通じてユランスから(もたら)された物であり、下界の元勇者に関連する各人の魂にも当然(ほどこ)している。


「まぁ・・・肝心の精霊様に願えば魔法陣を消して下さるとは思うけど、そうすると条件付けされた他の者達まで魔法陣を消す事になるから・・・最悪、意思疎通が不可となるだけで阿鼻叫喚となるのは明白よね? それが戦闘中なら詠唱を止めて会話するか、誰かに防御結界を張ってもらうとするか? どのみち全員が大混乱するから戦闘も即座に瓦解するのは確かね」

「!?」×9

「想像、出来たわよね? あり得ると。ちなみに精霊様と言ったけど、ここで一つだけ訂正しておくわね。リンスは特に、よーく聞いてね」

「ふぇ?」


 私はあえて伝える、訂正として。

 先ほど話した「肝心の精霊様に願えば」の文言の意図を。それはリンスが稀に〈魔の女神〉を信奉したまま〈知の女神〉を(けな)す事があるので注意の意味を込めて伝えるのだ。


「この世界での精霊とは・・・七女神へと願う事なの。(そら)は〈魔の女神〉、(きん)は〈知の女神〉、火は〈調(しらべ)の女神〉というように個々の女神を精霊と呼称して、お願いする事がこの世界の呪文ね? まぁ私は無詠唱だから言葉で願った事はないけど」

「!!?」×42

「はぁ〜言っちゃった。必要な事ではあるか」

「シオンは黙りなさい・・・で、他にも、水は〈(でん)の女神〉、土は〈()の女神〉、光は〈(そく)の女神〉、闇は〈()の女神〉、計七女神へと願う事で発現する魔法が(ほとん)どなの。上界に(ゆかり)のある〈魔の女神〉と〈知の女神〉はともかく、他は全て下界。この地を守護する女神だから魔法を使う者はあまり(ないがし)ろにしないように!」

「あわわわわ・・・ど、どうしましょう、カノンさん」

「まぁ〈知の女神〉は気にしてないけど、あまり言い過ぎるのも妹神が気を悪くするから気をつけないとね?」

「へ? ど、どういう事でしょうか?」

「〈知の女神〉は〈魔の女神〉の姉だから」

「!?」

「それと以前・・・先日も船に現れた女神様は一番上の姉ね?」

「!!?」


 ひとまず、話は脱線したが・・・念話の危険性は重々承知してくれた元勇者達であった。

 なお、この念話は相手が死亡した事までが判る機能を有していた。だから私の独断で念話完全防御結界を(ほどこ)したのだ。

 生きている事を察知させないために。

 ただ、不意に戦闘で利用しアタフタする事を考慮したため言葉での禁止を伝えたのだ。

 直接顔を見せて驚かせるまでならいいが、生きている事が念話を通じて多方面に知られるというのは、なにが起きるか定かではないのだ。

 ちなみにリンスは終始お詫びの涙目だったが本気で反省してるなら女神達は許すと思う。

 私は不安がる者達へと改めて伝える。


「念話の危険性は判ったと思う。だからこそ〈スマホ〉を使う事が優先事項になるのね? これ自体は〈魔力場〉という〈知の女神〉の加護で護られているから、勇者であれ傍受は不可能だから安心していいわ。主に私達だけが使える魔道具だから」

「カノン(様)さんぱねぇ〜」×41


 私がすごいわけではないのだけど、どういうわけか私がすごいと言われる不思議。シオンは終始苦笑したままリンスを(なぐさ)めていた。こうして指示出しと補足説明を終えた私は準備ののち全員で人族に〈変化(へんげ)〉し、各メンバー毎に空間跳躍(くうかんちょうやく)した。





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