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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第四章・出会いと再会に驚愕。

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第81話 吸血姫は救命救急を行う。


 一方、市場に向かったレリィとユウカは──


「キャベツがある! こっちはショウガだ!」

「食紅まであるよ? あと、小ネギもある〜」

「となると・・・クラーケン肉が残ってるから、帰ったらたこ焼き器でも作ろうか?」

「賛成! あ! チーズも売ってるよ!!」

「変わりダネもいけるかもね? 魚のすり身を作ってカマボコとしてもいいし」

「なら山芋が・・・あった! あれ使って、つなぎとかいいよね?」

「ナイスユウカ! なら食紅で色を付けて紅白と行こうか?」

「うん! あ! レタスもあるよ?」

「予想外にあちらの食材が多いね〜。どれもこれも薬草的な効果はないけど食材としては助かるかも〜」

「人参とピーマンもあるね!」

「合い挽き肉で肉詰めもいけるな!」


 予想外の商品数に驚きながら買い物を続けていた。そして買い物を済ませた二人は一足先に合流地点に戻っていたミキ達に話し掛ける。

 ミキ達も二人の姿に気づき返答するが、少々お疲れ気味のようだ。


「「おつ〜」」

「「おつ〜」」


 すると二人の顔色を見たユウカが上級ポーションを取り出しコノリ達に手渡す。

 そして成果を聞いた。


「そっちはどうだった?」


 コノリはユウカからの問いに対して苦笑しつつも答えた。


「ありがとう。えっとね? 鉄鉱石は買えたよ。とりあえず困らない分量が」


 その言い回しは若干怒りが含まれていた。

 今度はレリィがコノリに問い掛ける。


「どうしたのコノリ? 含みがある言い回しだけど?」

「あー、売値でね? 予想外に品数が少なかったから値が張ってね? 何度価格交渉しても相手からの譲歩が得られなかったんだよ」


 コノリはレリィの問いに対して苦笑しつつも返す。ここでミキが不機嫌なまま──、


「車バカだよ。あ、ユウカごめん・・・」


 ユウカの(にら)みで押し黙る。


「いいよ、気にしてないし。それで掃除バカがどうしたの?」


 ユウカは眉間にシワを寄せながらも首を横に振るが、レリィからツッコミを受ける。


「気にしてるじゃん・・・痛っ、ごめんなさい」


 そう、ツッコミを受けたのだが、反撃として尻を(つね)ったようだ。ユウカは低音に近い声音に代わりドワーフ二人に問い掛ける。


「レリィ、一言多い。それで?」


 その姿は怒った時の私のようだ。

 子は親に似るっていうものね?

 以降は怒りのユウカに対し怯える三人の構図が出来上がった。


「う、うん。あれが勇者特権で集めまくってるんだよ。その所為(せい)で通常なら鉄鉱石100キログラムが大銀貨一枚・十万リグに相当するのに今の売値は同量で大金貨一枚・一千万リグだからね? 間の金貨・百万リグを飛び越して値が上がってるから、どこも材料不足で混乱してるんだってさ」

「ひ、酷い話もあったものだな?」

「ホ、ホントだよ・・・ここは勇者推進派のお膝元だから材料が一番無くなってる場所だって。この分だとこの国の鉄は奴に使い潰されるんじゃないかって・・・皆、表では口には出さないけど影でコソコソ言ってたよ?」

「これは早急にワサビ爆弾を送るしかなさそうね? でも、送ったとしても・・・それだけじゃ足りないかしら?」

「な、なら、さっきあった唐辛子、混ぜたらどうだ?」

「! そうよ! それよ! あのワサビは唐辛子を混ぜると、少量でも効果が倍以上になるから、半年のどころか一年・・・いえ、それ以上の期間、人や魔物を怒らせるわね! そのうえ本人には感じられない臭いだけが残るそうだから都度誰かを怒らせるバカってレッテルが張られるわ!」


 怒りのユウカ様の御誕生である。

 その怒りは相当なもので背後から来る私達に気づけていなかった。私はユウカの背後からショウと近づきローブ越しの尻を左右から揉む。


「ひゃうん!?」


 揉み続けながら私とショウはユウカを叱る。


「落ち着きなさいな。興奮し過ぎると〈希薄〉する意味がなくなるわよ? もう少し周囲に気を配らないと」


 ショウは舌なめずりして妖艶な雰囲気をユウカにみせつけた。


「まったく、私が居ないとすぐ暴走するんだから。ユウカはこのあとアレコレしないとね?」

「ご、ごめんなさい・・・」

「ん? ユウカのお尻、成長した?」

「あー、私が頻繁に揉んでるからですね?」

「あ! も、もう、そのへんで〜、は、反省しますから〜」

「あの? お二人とも? ユウカの〈変化(へんげ)〉が解けて若干エロフになってるから、そのへんで」

「「いいなぁ」」

「ミズミズがナディと同じ事を言ってる? そういえば熱した鉄を股に()てがってたような・・・」


 そんな百合百合しいスキンシップの後、引き()ったコノリの言葉で、ミキまでもドMである事が発覚した。

 なお、今回は数時間を予定した買い出しだったが、予想外に早く終わった事で私達は船の様子を〈遠視〉しながら街中を散策した。

 時には氷菓子を食べたり、この街だけで食べられる料理に舌つづみをうったりした。

 そして、一通り巡った後の私は──


(船の方はうまく()なしたみたいね? まだ数隻ほど周囲を巡回してるから・・・ん? この香りは?)


 船の様子を眺めながら周囲の異変に気づく。

 今は船の甲板に誰も出ていないが、周囲では小船がなにかを探しているようだった。

 その際に血の匂いが海上から流れてきたので私は買い出し組に指示を飛ばす。


「直ぐ戻る必要がありそうよ。皆準備して!」

「は、はい!」×6


 手元にはカキ氷を持ったままという緊張感の欠ける姿だったが私達はその足で船まで空間跳躍(くうかんちょうやく)した。




  §




 ひとまず、後部甲板に戻った私達は一旦甲板上に集まり上部倉庫から荷車と保冷庫を取り出して仕入れた品物を倉庫内に収めた。

 仕入れた物品の一つは氷だった。

 これは魔法で作る氷ではなく氷室に入れて丹精込めて作る(たぐ)いの純粋な氷で料理に使うとしてレリィがご所望した品である。

 もう一つは各種スパイスであり料理屋で売られてたので即買いした商品だった。残りは買い出しした時の食材だったり薬草だったり鉄鉱石も専用の棚に収め各員は自分達の担当部署に戻った。一方、その場に残った私は自室で休んでいたナギサを呼び出し、外の様子に気を配る。


「戻ったわ。ナギサ、中は変わりない?」

「お帰りなさいませ。主様、中は問題ございません・・・ん? この香りは?」

「気づいたわね? 海中からみたいだけど血の匂いがするわね?」

「血、ですか? でも、なぜ?」


 気を配りながら周囲を眺めつつナギサと会話していたのだけど異変の原因に気づいた私は指示を飛ばし周囲の船影に気づかれない措置を(ほどこ)した。


「よく分からないけどね? ただ、匂いのする方角が前部甲板の真下だから・・・!? 周囲の結界を〈多重結界〉に切り替えて! 今すぐ!」

「は、はい!」


 私は後部甲板上に物理防御結界を張り巡らせ原因物を転移させた。


「この子が血の匂いの原因ね」

「人魚族の女の子ですか?」

「息も絶え絶えって感じね? あと少しで死亡するところだったみたいだけど」


 だが、見つけたタイミングが悪かったのか、救い出した直後は仮死状態となった。時間停止結界に入るのだから必然的に止まるのだけど。

 ただ、助け出した段階で救う事が不可能なくらい傷ついていたので、私達は仮死状態の彼女の検分だけを行う事とした。

 今は〈多重結界〉で(おお)ったので魂はその場に(とど)まるけれど。

 私とナギサは全身を積層結界で(おお)い彼女を仰向けにひっくり返して確認する。


「これは・・・失血状態ですかね?」

「亜人や魔族といえど血液がある以上は人族と変わらないからね・・・でもこの傷跡は」

「切り傷ですね。しかも鈍い刃物で(えぐ)ったような・・・それに(うろこ)も全て()がされてますね。捕獲の際に()がしたとか?」

「おそらくね? となると、あの船の目的もこの子かしら?」

「あれは・・・港湾兵ですか。いえ、私達の元に来た部隊とは違いますね」

「なるほどね。では、ちょっと失礼して」


 私は傷跡を(えぐ)り、肉片を拝借して〈鑑定〉した。彼女の名は〈リリナ・ルーシス〉海底国家・ルーシスの王女だった。

 次は肉片を元に過去を洗う。


「勇者推進派の奥方様? 人族の貴族って(やから)は認識からして異常なのかしら?」

「なにか判りましたか?」

「ナギサも使ってみなさい。これは自分で見た方が早いわ」


 そう、私は過去を見た。

 そのうえで問い掛けるナギサにも見せた。

 ナギサは過去の見て──、


「はい。では失礼して・・・っ!? ひ、酷いですね・・・」


 途端に顔面蒼白となった。

 人族も極まればここまで酷い事が出来る。

 それを証明する仕打ちだった。先ほど支部で売った素材は彼女の血を混ぜるための素材だったようだ。(うろこ)はナギサの言うとおり捕獲時に探索者が()がしたらしい。

 あれも宝飾品の素材で使えるそうだから。

 捕らえられたこの子は奥方の管理する牢屋に送られ、メッタ刺しで放置されたようだ。

 この子は仕打ちに耐えかね、牢屋から抜け出し命からがら女神像のある船の元へと救いを求めた。だが、教会といえど亜人の迫害を行うため、最後の望みの綱として・・・ユランス像を掲げる我が船へと辿り着いた。

 亜人や魔族の主祭神は魔の女神。

 遠方からそれを見て気づいたとするなら相当なものである。頭頂部の二本のアホ毛は普通は見えないのだから。


「とりあえず、この子は再誕させますか。人魚族は不老であっても不死ではないし」


 そして私は処置を開始する。救いを求めたのなら救わなくてどうすると。ナギサは心配そうにヒレを見て確認する。


「よろしいので?」

「まぁ本人が望めば足だって生やすでしょ? それに(うろこ)を私達に(ゆず)った子でもあるし」

「あ! そういえばどこかで見たと思ったら」


 そう、彼女はクラーケンに追われ(うろこ)を私達に(ゆず)った女の子だった。

 おそらく城を飛び出したお転婆娘だろう。それこそリンスと息が合いそうな姫殿下である。


「不思議な縁もあったものね? とりあえず古い肉体から取った肉片で新しい身体を構築して分離体を入れて海中に投げ込みましょうか。そうすればなんとか生き延びるでしょう? ナツミ達のように自力で個を確立する事だってできるし。今は周囲に群がる者も多いし」

「デコイですか?」

「ええ。酷いようだけど人魚族単体を保護するには設備不足だからね? それに傷は光属性持ちみたいだから自身で癒やしたという事にもなるし。さて、放り込んだ後は古い肉体を魔力還元して・・・魂は封印水晶に吸引っと」


 こうして新たな仲間となる者を救った。

 この世界の種族は一様に同じ種族となる傾向があるため、異世界人とは異なり別の種族になる事はない。それをナギサも知っていたため、心配したのだろう。


(まぁバラスト水の中で泳がせるという手もあるけど・・・あれって純水だから大丈夫・・・みたいね・・・)





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