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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第四章・出会いと再会に驚愕。

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第74話 吸血姫は悪意達を知る。


「今から、このあとの予定を指示するわよ?」


 ともあれ、その後の私は船橋(せんきょう)を施錠し船体を停泊モードへと切り替えたのち乗員全員を後部甲板に集めた。

 まず行ったのは元勇者勢に対する指示ね?


「元勇者勢は先日渡した装備に着替えて、この島の支部で新規登録ね? 人数分の貨幣はナギサに預けるから登録出来次第、船に戻ること! 顔付きだけは偽装しても〈変化(へんげ)〉しても直接見られると以前の(めん)が割れてるからフードを常に被って行動するように! 勇者達の死亡は(すで)に伝わってるみたいだからね?」

「承知致しました。主様」

「承知しました!」×8

「あとはランクがAに下がると思うけど、不貞腐れないように」

「いや〜、身分不相応だってイヤというほど学んだな」

「ドラゴンに勝てないって点でもな」

「そのドラゴンを一蹴してたユーコに惚れ直した!」

「サーヤ、判ったからひっつくな! 胸はあとで存分に揉ませてあげるから! ユーマが!!」

「姉さん!? そこで私を出さないで・・・ほらぁ! サーヤが抱き着いたし」

「ユーコもユーマも大好き!」


 オチはサーヤの百合百合しい反応となったが今回の新規登録はミラー姉妹が〈希薄〉しながら同行し不審者の洗い出しを行う事となった。

 先の帆船(はんせん)爆破事件の主犯がこの島の領主らしいから要警戒でね?

 次いで指示を飛ばすのはミラー姉妹以外の既存メンバーに対してである。


「コホン! 話を戻すわよ! 残りのメンバー・・・レリィと獣人組は食材の買い出しね? ルーとコウは船の監視台から〈遠視〉スキルで領主館を覗き見て。事前に〈スマホ〉の〈遠透視記録〉を起動させる事を忘れないように! 〈透視〉スキルに切り替えれば内部構造も把握出来るから」

「了解(〜ぃ)!」×6

「ドワーフ組とアンディは鉄鉱石の買い出しを。この後、船内の鍛冶工房を解禁するから手当たり次第買い取ってきて。貴女達の亜空間庫に放り込めばそのまま鍛冶工房の倉庫に送られるから」

「「判りました!」」

「・・・コクリ・・・」

「そして最後、私とシオンとリンス、フーコとユウカは・・・この島のダンジョン支部に向かうわよ。積み荷のポーション瓶を納品する事と攻略してこの島の資金源を断つわよ!」

「「「判りました!」」」


 そして一通りの指示を飛ばしたあと、それぞれに船を降りたり残ったりした。

 ちなみに復元組の人族達は外が危険なので船に残し、調理場にて夕食の下拵(したごしら)えをして貰う事となった。

 すると準備を行う私達の中、疑問気なシオンが質問してくる。


「カノン・・・断てるの?」

「シオン・・・まぁ断てるといえば断てるわね? ネアレ島ではユーコ達の後にダンジョンが一時閉鎖されたから」

「え? あのあと閉鎖されたの?」

「フーコも気づいたと思うけど、得られた貨幣はどれだけあった?」

「確か・・・総数で九千枚だったと思う。ユーコと少ないね〜? って、話してたから」

「そうね。実はこの世界のダンジョンってね、踏破者が出ない場合はずっと貨幣回収が可能なのだけど一度でも踏破者が出てしまうと貨幣供給が止まって内部にある貨幣を取り尽くしてしまうと、不活性化後に一時閉鎖されてしまうのよ。それにともなって私とシオンが踏破後に一億一千枚ほど回収してるから二度も踏破者が出たAランクダンジョンは」

「スッカラカンだ!」

「そ。貨幣がなくなれば一時閉鎖とする原則通りにね? あの島にはAランクダンジョンが一つしかなく他は味噌っかすなFランクダンジョンが二つあるだけだった。一番の収益源が失われたとなると・・・島は早々に」

「干上がると?」

「ええ。今は領主も代行も死滅してるから、新領主が現れない限り荒むだけ荒むわよ?」

「となると、荒むとそちらに治政を注がないとダメで・・・」

「外に意識が向く事はない?」

「ユウカとフーコ・・・大正解ね! まぁ完全に向かないわけではないけど上からの指示に対して即座に動く事は不可能となるでしょうね?」

「カノンってば、ぱねぇ〜」


 そう、ネアレ島のAランクダンジョンは一時閉鎖済みだ。その事実を知ったのは先日、アインスが訪れた時だった。これは一種の神罰だそうでボスを倒す者は同類(・・)でないと不可能としていたらしい。

 ユーコ達の二度目に関してはボーナスとしていたらしいが、それも取り尽くすまでの間であり、ユーコ達がダンジョンから転移した直後より『一時閉鎖しました』とのアナウンスが流れ、探索者達を強制転移させたらしい。

 そして、このダンジョンが再活性化するのはこの先・・・数百年後との事である。

 ちなみにこの国の合王(ごうおう)(すで)に穴蔵へと逃げており、勇者に指示を出すのは王太子である。それは代行者が現れた事を知り、女神様が寄越したとして(おび)えたようだ。罪の意識があるだけ儲けものだけどね? 意識のないまま指示を飛ばす王太子に問題があるだけで。


「という事で、この島のAランクダンジョンも早々に干上がらせるわよ!」

「「「はい!」」」

「これも女神様達を騙した末路か・・・」


 こうして、私達は港湾兵達の監視がある中、後部甲板より空間跳躍(くうかんちょうやく)した。




  §




 一方、留守番組・・・もとい監視組のルーとコウはというと──、


「さーて、お仕事を始めますか!」

「お〜! がんばるよ〜!」

「ルイが後で来るし、とりあえず用心のために・・・監視台の〈防犯回避結界〉起動っと!」

「ルイちゃんのおにぎりたのしみ〜」

「そらなら、サッサと終わらせようね!」

「うん! あっ! あとで拾ってね〜」

「近いの?」

「うん、ムズムズしてきた〜」

「おk、仕事が終わり次第、交互に拾おうか。私もムズムズしてきたし」

「拾ったら〜戻ってきたレリィに持っていこうね〜」

「そだね〜。洗浄魔道具も忘れずに!」

「うん!」


 私達が空間跳躍(くうかんちょうやく)する前より、指示通りの作業を始めていた。

 ちなみにハキハキ喋る方がルーであり、語尾だけ間延びするのはコウね? ムズムズというのは種族特性の・・・とある行動で洗浄魔道具とは清浄魔法専用の魔道具である。

 用途は──この二人専用──とだけ記す。


「建物外の倉庫に危険物発見! やっぱり勇者達を()る前提だったんだね?」

「私兵詰め所に風爆陣のスクロール〜。(そら)属性の転写式で元々は凄い小さいんだね〜」

「館の外でこれだけ揃ってると黒としか言えないね?」

「だね〜。次は内部だね〜〈透視〉モードオン〜、おぉ〜!? あるよ〜中にも沢山〜」

「どれどれ? よくもまぁコレだけ毒物を蓄えてるわ。もしかすると風爆陣が回避されたら」

「毒殺する予定だったのかもね〜」


 二人はその後も次々と反逆の証拠を洗い出していく。なお〈防犯回避結界〉とは覗き見対策で(ほどこ)されている防犯魔法に(るい)する捕縛と隷属(れいぞく)を完全除去する結界であり、一種の予防手段として講じている結界魔法陣である。

 この防犯魔法自体は全属性持ちには一切影響しないのだが、この船内には復元組という人族が居るため、出入りの際に影響を受けさせないよう設置しているのだ。


 基本はこれも常時起動なのだが、今は船橋(せんきょう)が施錠されているため、手動起動という扱いになった。この結界を起動すると白い内部壁面が一瞬で黒く変化し、暗闇の中で監視するという状態になるのだ。

 これも未起動時と起動時の違いが見ただけで理解出来る仕様である。

 ともあれ、その後の二人は集めるだけ集めた写真を見つつ監視台の機能をフル稼働に切り替えた。


「領主館の情報は拾えるだけ拾えたね〜」

「だねぇ〜。たださ〜?」

「あぁ・・・やってきたね?」

「ご苦労様だね〜?」


 そう、予想通りというか・・・誰も居ないと思った港湾兵達が意気揚々と桟橋の周囲に群がり気持ち悪い笑顔のままタラップに足を掛けて登ってきた。この世界には兵達の不法侵入が当たり前に起きるのだろう。

 実際に停泊中のクルーザーであれ、他の帆船(はんせん)であれ、勝手に乗り込んでアレコレ盗みを働いていたようだから。

 私達の船に乗ったバカは早急に沖合ドボンの刑なのだが。


「強制転移陣起動、転移先は沖合100キロの海中っと。除外者は船員のみっと」

「仮に転移しても自力で戻ってくるけどね〜」

「先のシロみたく?」

「だね〜。ナディが除外者の指定を忘れて〜、夜中甲板に出たシロが跳んだ件だね〜」

「あの時はずぶ濡れで戻ってきたから、皆大笑いだったわね?」

「ナディは平謝りだったけどね〜」


 まぁ希に身内同士でのミスもあったけど、一人、二人と甲板に足を乗せた瞬間、ランダムに指定した沖合100キロにドボンしていったので最後の一人が飛んで、誰も乗る者が居なくなっても継続稼働させたようだ。

 余計な死者を出すつもりはないが、これも略奪を行う者に慈悲はないという機能の一端(いったん)である。





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