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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第四章・出会いと再会に驚愕。

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第73話 吸血姫は元勇者を知る。


 そして翌日。

 私は回収した魂の保全として船内中央部に設けた再誕工房ならぬ亜空間工房へと足を運び、(よみがえ)らせる者達へと事情を打ち明けた。今回は男性陣も含まれているが、地上界でも女性ありきだと困る場面もあったりするのでエスコート要員で頼む事とした。

 本来なら男性陣は放置なのだけど地上界では放置が出来ないと判断しての事だ。

 ただね?

 フーコの兄に関しては即決したわね〜。

 種族は妹達と同じ指定ではあったけど勇者でなくなる代わりに女神様の御遣いの元で・・・っていうか神罰代行者の立場を彼だけは知っていたようだ。


 その関係もあって護衛とあらばと立候補したので素直にお願いした。それと同じく男性陣で言えば脳筋外道が驚くくらいに紳士だった事には驚いた。本人曰く、女性には手を挙げない信条で野郎のみの外道だと自負していた。

 これも〈無色(むしき)魔力糸(まりょくし)〉を通じて嘘が無いか調べたところ地で喋っていたので普段の行いが別の意味で払拭される話であり種族もオーガとさせて(いただ)いたところ本人も大変喜んでいた。

 その代わり、普段は〈変化(へんげ)〉で人族として居続ける理由を伝えると、仕方ないとして受け入れて貰った。


 ちなみに、残りの男性陣は不承不承という感じがあったため「ゴブリンになる?」と聞くと大絶叫ののちエルフになることを望んだ。

 ただ、飯嶋史郎(イイジマシロウ)の場合はエルフというより、ドワーフが向いていたので強制的にドワーフを選ばせた。

 これも〈魔力感知〉と〈鑑定〉スキルを持っている事が強みだったからだ。まぁ吸血鬼族とエルフ族に関しては〈魔力感知〉が標準で身につくけれど。


 そして残りの女性陣で言えば黒白コンビが犬獣人を望んだ。これは先の事案で禿馬(はげうま)の異臭を感じ取る事が出来なかった事に後悔し、選択したようである。

 次いで二階紗綾(ニカイサヤ)は種族指定をしているので、そこは聞かなかったが妹の話を聞いてきたのでありのままに話した。

 当然ながら尻肉を物理的にもいだ経緯を知って怒ったが、生前の肉体が妹として清いまま残っていると知り、渋々だが受け入れたようだ。

 どうも二階(ニカイ)としてもユーコ達双子の関係を羨んでいたらしい。意図せず尻肉をもがれたが、ユーコ達同様に双子の妹が持てたと、それだけで満足気な声音を発していた。


 それと共に誕生日が後という事もあってサヤカと同じ家名を望んだ。ここまでは大まかな面子の状況説明だったが今から打ち明けるのはフーコの義妹となった安曇奈津(アズミナツ)への説明である。


「翌日振りね? 元気だった?」

『えっと・・・どちら様?』

「酷いわね? たった一日で耄碌(もうろく)したの?」

『へ? ちょっと待って? (だま)り姫? よね?』

「その呼び名・・・まぁいいわ。私の名前はカノンよ。カノン・サーデェスト。これは本名の方ね? 間違っても巽夏奏(タツミカナデ)って呼ばないでね?」

『本名・・・』

「そうよ。それで、今は一人ずつ確認してたのだけど・・・貴女が最後でね? 安曇奈津(アズミナツ)さん。貴女は生まれ変わりたいと願いますか?」

『生まれ変わる? そ、それって?』

「まぁ昨日もチラッと言ったけど二階(ニカイ)さんと共に吸血鬼族として転生して貰おうかと思ってね? 一応、二階(ニカイ)さんからは了承が得られたから後は貴女次第って事で」

『私次第?』


 という事でフーコが意図せずもいだ両胸の事、妹の事、諸々の説明を簡潔に行った。

 これは事情的に詳しく話してもいいけど、その都度質問が入り、話が進まないとして問題ない部分だけを端折った。


『じゃ、じゃあ、今は私のおっぱいから別れた妹が居ると?』

「そうね。まぁ私も立場的に同じような妹が居るし気持ちは分かるわよ? ただ・・・あっちは人族(・・)としてだから、扱い上はフーコの義妹で通ってるけど」

『な、なら、私も義妹として転生します! 元々(・・)義妹ですし』

「判ったわ。フーコとしてもそれが一番嬉しいだろうしね?」


 こうして元一組九人の転生承諾を終えた。

 それと、今から三日間は〈魔力(マナ)炉〉を使って一日三人のペースで再誕させる事となった。

 第一陣はナツサヤコンビとナギ先生。

 第二陣は三バカ男子。

 第三陣は黒白コンビと脳筋。

 という順番で第一陣と第三陣だけは男女別の空間に分けて行う事とした。

 ちなみに各自が指定した新名は以下である。


 ───────────────────

 吸血鬼族

 新:ハルミ・エクサ

 旧:安曇奈津(アズミナツ)


 新:サーヤ・ミラー

 旧:二階紗綾(ニカイサヤ)


 新:ナギサ・エクサ

 旧:江草凪(エグサナギ)


 エルフ族

 新:ケン・リバー

 旧:川添健吾(カワゾエケンゴ)


 新:シン・キズス

 旧:錫木晋呉(スズキシンゴ)


 ドワーフ族

 新:シロ・イーマ

 旧:飯嶋史郎(イイジマシロウ)


 犬獣人族

 新:アコ・クロウ

 旧:黒田闇子(クロダアンコ)


 新:ココ・クロウ

 旧:白田光子(シロタコウコ)


 オーガ族

 新:タツト・ノーゴ

 旧:娯納起矢(ゴノウタツヤ)

 ───────────────────




  §




 それから数日後。

 私達は洋上を南下し一度目の補給地・・・ライレ島へと訪れた。そこは帆船(はんせん)で休まず南下した場合、ネアレ島から一ヶ月の距離となり、この船であれば微速のまま進み続け、おおよそ四日の道程で到着した。

 ちなみに再誕した者達は一度船内の講義場でリンスを相手に学んでもらい理解の進んだ者に対し、完全版の〈スマホ〉を手渡して船内作業に従事してもらった。

 一番最初に抜け出たのはナギサだったわね?

 これは唯一の教員かつ代行者を知っていたため、理解が早かったという点もあった。

 結局、レベルという概念が理解出来るか否かにあったのだから。


 ともあれ、船橋(せんきょう)で操舵を行っている私達とは別に後部甲板で港湾兵との交渉を行っていた執事服のナギサと後部甲板で積み荷を積み上げていたツナギ姿のハルミとサーヤ達は唖然(あぜん)としたまま岸壁に近づく様子を眺めていた。


「ね、ねぇ? サーヤ? 帆船(はんせん)ってこんなに速かったっけ?」

「いえ。ここからネアレ島まで休息をいれて一ヶ月半だったから・・・」

「想像以上に足の速い船だという事ですね。これは帆船(はんせん)ではありませんが」


 なお、上界からのメンバーは担当部署に居たので外の様子を見る事はないが元勇者達は警備と上部倉庫周りの管理を任せているので、この場で過ごす事の方が多かった。

 そのため、甲板上から岸壁への接岸作業となるまでの一同は港の兵達と同じくその様子を眺め続けていた。

 すると、後部甲板に設置したベンチに座って眺めるメイド服姿の犬獣人達とツナギを着たエルフ達は話し合う。


「でも主様が言うには、これでも微速のままだって言ってたわよ?」

「それと急ぎの旅ではないともね? 今回は補給と私達の新規登録が主だって言ってたし」

「急ぎの旅ではない・・・それで帆船(はんせん)を超える速度で到着すれば」

「並大抵の船舶ではないだろ? 聞けば指揮所もあるらしいし」

「ま、俺は一兵卒として有意義に過ごせたらいいわ〜」

「だな。死なないという点は嬉しい話だし」


 そう、最初の話にもあったがこの船には指揮所が存在し主要人員は夜と昼の船橋(せんきょう)員と監視員が入れ替わりで待機するので風呂や食事も交代制としているの。

 今のところ海賊やら他国の軍船には出くわしていないが警戒は常時行っているのである。

 それと彼等は一兵卒ではなく戦力的に現勇者を超えているので、いざという時は前線に出てもらう予定である。


「おーい! くちゃべってないで、積み荷の箱を倉庫から出してくれ!」

「シロの言う通りだぞ〜、ポーション瓶やら小物類もあるんだからな!」

「タツト一人だけで五人分は持てるから問題ないだろ?」

「大物類は俺でも問題ないが、小物類はガラスがあるからな。割るわけにはいかない」

「繊細な作業は苦手って事ね・・・ケン、作業に戻るぞ〜」

「ま、待ってくれよシン! あ、アコ達は引き続き港湾兵の監視を頼む」


 その後、私が接岸と同時に〈多重結界〉を船体周囲に展開した直後より、男性陣は倉庫からの荷出しを始め、女性陣とナギサのみ港湾兵達の監視に尽力した。


「はいはい。それにしても外も大騒ぎですわね? ココ」

「そうですわね? アコ。でも甲板の死角からもジロジロと見てますわね? ハルミ」

「そうね〜奪えるなら奪えって視線がダダ漏れね? サーヤ?」

「ええ。この島だっけ? 専用帆船(はんせん)を用意したからって」

「私達だけの単独行動を進言したのも、この島の領主ですね。思惑はその頃からあったのでしょう・・・主様が再検証した際に判った事ですが帆船(はんせん)自体に風爆陣がありトリガーは転移魔法の発動で指定されてましたから」


 そう、ナギサは私が伝えた言葉を元勇者達の責任者として伝えた。風爆陣も(そら)属性魔法である事から逃げに転じた際に消す・・・としていたようである。

 それを聞いたハルミとサーヤは辟易(へきえき)した表情で首を横に振る。


「まんまとハメられたって事ね? 勇者を呼んで不要とした者だけ消す・・・」

「やりきれないわ〜。拉致ったうえに捨て駒扱いとか・・・」

「ま、それがあったから、お姉ちゃん達に出会えたけどね?」

「ね? 昨晩一緒に寝たけど・・・ユーコの胸、凄い柔らかかった〜」

「相変わらずサーヤはユーコが大好きだね〜」

「もちろん! 他の子に懸想したから毛嫌いしたけど・・・それでもユーコが好きだわ、私」


 ま、まぁ最後の会話は聞かなかった事にしてあげた。なに気にサーヤにも記憶をいじる以前に百合百合しい性質があったようだ。

 ユーコが大好きというヤンデレめいた微笑みをたたえながら。ちなみに私達がこの世界に居る理由も事前に伝えていたので──、


「良かったね〜、しかし・・・まさか他の組まで召喚されていようとは・・・」

「異世界の人族は度し難いですね」

「「「「うんうん」」」」


 他組の者達が別の意味で人を捨て去った事を知り、彼等は(あき)れていたようだ。





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