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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第三章・異世界旅を始めよう。

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第71話 出航のち大嵐と吸血姫。


 それからしばらくの間、眷属(けんぞく)達は〈スマホ〉のマニュアルを読みながら扱い方を学んだ。それは担当とする場所毎のマニュアルであり、内覧会では示してなかった機能などを知り、ユーマの大興奮はとんでもない事になったが、ユーコが背後から胸先を(つま)み、ユーマを黙らせていた。

 それとナツミ達にも機能制限版の〈スマホ〉を手渡すと色んな意味で驚いていた。二人はこの世界では使えない・・・否、勇者達の私物は即座に兵達から奪われたそうで手元に残る物は身一つだけだったという。

 そのうえ下着や制服までも奪われ、サイズが合わないにも関わらず、王妃達が好んで着ているそうで、その事実を知った私達は同情したほどである。

 そんなやりとりがあった後ではあるが、私は配置についた者達を把握すると一声発した。


「各員通達! 出航するわよ!」


 これは気分よね? 別に言わなくてもいいけど不意打ちで動くと騒ぐ者も居たりするので。

 それは担当外の者も船橋(せんきょう)やら監視台、後部甲板で(くつろ)いでいるため、空気を読んで発した言葉である。

 以降は私とユーマだけの会話ね?

 元男子としてこういう物は興味の範疇(はんちゅう)だったそうだ。


「微速前進・・・水流操作陣、五パーセントの出力で維持」

「わわわ・・・凄い、動き出した〜」

「今はまだ試運転だけど暖機運転が出来次第、速度をあげていくから」

「でもこの船速って帆船(はんせん)よりは速いですよね?」

「まぁね? 風魔法を使わず水流操作だけで(まかな)っているから。前方にある海水を左右から取り込んで背後から放出するって仕組みね?」

「転舵はどうするのです?」

「左右の流れを調整して外側の水流操作陣も稼働させるの」

「直進だけは真ん中だけで?」

「そういう事ね。今はまだ海賊達も居ない海域だけど・・・この船ってね、常時探索魔法を打ち消すから視認されるまでは相手に気づかれる事がないのよ」

「そ、それって・・・ステルスでは?」

「ある意味そうかもね? レーダーの代わりが探索魔法だし」


 というこの場でしか判らない会話を行っていると監視台のユウカから報告が入る。


『10キロ先に船影あり。帆船(はんせん)です! 乗組員は・・・勇者達だけです』

「ここで現れたか・・・」


 私は報告を受けユーコ達と共にいるナツミ達に視線を送る。なお、乗員の件は二人から事前に聞いていたので私自身に驚きはないが勇者達だけと知り、驚く者多数であった。

 ただその際にナツミ達を見ると(おび)えと共に腹を括っているようにも見えた。

 それは本体・・・否、分裂する前の自分達が目と鼻の先におり、数時間後に亡くなるという事実を知ったからだ。

 だから救い出せる可能性を示唆(しさ)すると、二人は泣きつくように懇願(こんがん)し、本人とご対面する可能性を示すと、構わないと言ったので私は(なぐさ)めながら二人の願いを受け入れた。

 分裂していても根幹は本人なのだろう。

 名前と人格は別だが、魂のパスはどこかしらで繋がっているようだ。こちらは変質した魂なので本人達とは異なるが姉という感じで見ているのだろう。すると、操舵員のユーマが困惑気味に問い掛ける。


「どうしたのですか?」


 私は思案しながらユーマに指示を飛ばす。


「・・・これから数時間の天気図を確認して!」


 それは〈操船用スマホ〉に追加した〈確定天気〉という未来視の天気図だった。


「は、はい!」

「どのタイミングで大嵐がくるかよね?」

「カノンさん。天気図を見る限り、この先ずっと(なぎ)です」

(なぎ)ですって? どういう事?」

「この海域で自然現象として起こりうる嵐は三ヶ月後のようです」

「自然現象・・・じゃ、じゃあ魔法で起こりうる嵐として再検索してみて」

「はい・・・ヒットしました! さ、30秒以内・・・この海域の帆船(はんせん)を中心とした風魔法の暴発が原因のようです!!」

「30秒以内ですって?」


 私は結果を知り、早すぎると思った。

 近い将来と聞いたが日時が大雑把過ぎたため、おおよそで本日の数時間後を予測した。

 今は昼過ぎ、出航したのは昼食後だった。

 だが現実は余りにも無情であった。

 そう、目と鼻の先で風魔法の嵐が暴発し、中心となった帆船(はんせん)が無残にも砕けて沈んでいったのだから。

 私は慌てながらもユーマに指示を飛ばす。


「〈転生の(うず)〉が現れる前に時間停止結界を帆船(はんせん)の残骸を中心に20キロ四方の範囲で展開! 海底も忘れないで!」

「は、はい!」




  §




 その後の私はフーコ達と共に結界内で止まった勇者達の肉片と魂を回収していった。

 勇者達の肉体は見るも無惨に砕け散り、瞬殺だった事が判る状態であった。骨は粉微塵に砕け、肉片の一つ一つが海中に沈み、原形を(とど)めていないのだ。

 唯一残っていたのは私とフーコが差し上げた装備品だけで血糊と共に原形を(とど)めていた。それだけが皮肉以外のなにものでもなかった。

 フーコは〈鑑定〉を用いて、兄と安曇奈津(アズミナツ)の肉片を拾いあげ涙ぐむ。


「お兄ちゃん、なっちゃん・・・」


 ユーコは〈鑑定〉を用いて、二階紗綾(ニカイサヤ)の胸先を拾ってボソッと呟く。


「さやきち・・・」


 私は〈鑑定〉を総動員し、個々の肉片だけをこの場に集め、二人が回収した肉片もろとも、最上級ヒーリング・ポーションによって壊れた身体だけを修復していった。修復した肉体の内、勇者ではない者が居たため、魂を喰らって事情を知った。


「人族達の悪意・・・しかと受け取ったわ」





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