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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第三章・異世界旅を始めよう。

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第70話 船内を案内する吸血姫。


 それから数分後。

 倉庫内の片付けを行った私はユーコ達をログハウスに送り届けた後、寝坊助(ねぼすけ)達を起こしにフーコの居室に向かった。


「フーコ、いい加減、起きなさーい!」

「うにゅ・・・? ふわぁ〜、あ!? なんで、なっちゃんの娘が目の前に? エロッ」

「お、お姉ちゃんが腰を抱いて離してくれないから! トイレ行きたいから離して!」

「あ、そうだったの? ごめんね、なっちゃん」


 転移後に折り重なったまま寝ていた二人は私が見に来た時と同じ体勢だったようで、ナツミに至っては目覚めていたにも関わらず、レベル差で起きられないでいた。

 おそらくこれはナツミとサヤカのレベルが複製した段階でのレベルで反映されており、両者とも40で据え置かれ、持ちうる魔力もレベルに見合った量が確保され、ニナ達同様に私の眷属(けんぞく)として供給を受けている状態であった。


 それもあってレベル98のフーコに押さえ込まれた状態だったのだから、力の差は歴然であり(もだ)えながらも尿意を我慢していたようだ。

 なお、二人の記憶も複製前の本体と同じ物を保持しており、ある意味で安曇奈津(アズミナツ)二階紗綾(ニカイサヤ)本人の個として存在していた。

 これは分離体と混じった事や名前を変えた段階で別人として認識しているようで、仮に本人と出くわしても混乱する事はないだろう。

 複製された本人達が混乱することは確定しているが・・・ともあれ。

 私は慌てて立ち上がるナツミを見送り、(あき)れながらもフーコに指示を出す。


「フーコ、とりあえず服着てログハウスに移動するわよ」

「ふぇ? 船で食べないの?」


 すると、慌てて外に飛び出した全裸のナツミが、股を押さえながら部屋に戻ってきた。


「お、お姉ちゃん、トイレが!!」


 私は説明がまだだったと思いつつも冷静に指をさしナツミに教えた。


「外ではなくて室内にユニットバスがあるから、そこで致してね?」

「ユニットバス? あ、あった、間に合った〜」


 ナツミは私の教えた場所の扉を勢いよく開け大慌てで致していた。なお、内部から聞こえた『ここにも懐かしのウォ〇ュレット!』という言葉は今まで地獄の中に居たような経験がアリアリと理解出来る安堵の声音だった。

 すると、そんな反応を示すナツミをよそに、フーコはユーコ同様に(ほう)けた。


「え? ここはどこ?」

「あとで説明するから、とりあえず着替えたら? 汗掻いてるならナツミとシャワーでも浴びたらいいわよ?」

「う、うん。わかった」


 フーコは不承不承という表情だったがトイレから出てきたナツミをユニットバスの中に押しやり、そのままの流れでシャワーを浴びた。

 その際に百合百合しいナツミの嬌声が響いたのは言うまでもない。


(フーコは攻めなのね・・・ユーコは基本受けだったし、サヤカが攻めという感じかしら?)




  §




 それからしばらくして、私は朝食後に内覧会を行った。一応、朝食前にナツミ達の自己紹介を行ったが、その反応は様々であった。

 それは結局、一組への偏見が悪さしていたともいう・・・そして今は──、


「という事で今後はこれで世界を回るから!」

「まるっきり戦艦だぁ〜! この双眼鏡とか〈遠視〉スキルを補強するし、凄い〜」

「ユ、ユーマ落ち着いて! 落ち着かないと、おっぱいの先、(つま)むよ?」

「あ、すみません・・・姉さん」


 船橋(せんきょう)上部に設置した、屋根と積層結界(ガラス擬き)の監視台から周囲を見渡し、ユーマが大興奮していた。

 この監視台もそうだが船体自体は雨や嵐の中でも過ごせる仕様としているため、後部甲板であろうが積層結界が作用し雨水や海水で汚れないものとした。

 各部屋の窓も積層結界(ガラス擬き)(ほどこ)しているので割れる心配はない。

 それと積層結界(ガラス擬き)もそうだが、この船内の魔力は基本的に亜空間内と同じなので魔力消費の影響を受けず、船外であってもドラゴンの(うろこ)が魔力消費を抑えるので下界において一番安全な場所となった。

 〈常夜〉のニアミス対策も万全だしね?

 私達は夜目(よめ)が利くから必要ないけど人族はその限りではないのだから。

 ともあれ、その後は階段を降り、船体中央区画にあるダイニングへと移動した。

 そして一同に個々の役割分担を指名した。


「操舵は基本自動操縦で緊急時と接岸離岸以外は誰も触る必要はないから。基本は私とシオンとリンスが操舵するわ。私達が居ない時はユーマとニーナが交代で行って」

「「はい!」」

「昼間の船橋(せんきょう)員はルーとコウ、探索員はミキとコノリ、操舵員はニーナね」

「「「「「はい!」」」」」

「それと、夜の船橋(せんきょう)員としてユーコとフーコ、探索員でナツミとサヤカね。ただし、イチャつくのは自室で行う事!」

「「「「はーい」」」」

「夜の操舵員はユーマね?」

「はい!」

「監視員は夜がナディとアンディ、昼がショウとユウカね? こちらもイチャつくのはお風呂でね? 有事の際に動けないでは話にならないから」

「「承知しました!」」

「・・・コクリ・・・」


 ここまでは全員が従順に応じていた。

 しかしユウカはだけは──、


「わ、私はショウと離してくれると・・・」


 怯えながらショウと距離をとっていた。

 私はユウカの席に近づき、亜空間庫から一つの魔具を取り出してユウカに手渡す。


「ユウカ、ショウが悪さするようだったら、この指輪を尻尾にあてがいなさい」

「これは?」

「獣人キラー・・・もとい、強制魔力供給の指輪だからイタズラが過ぎた際には猛烈な刺激を尻尾に与えて、漏らす事なく意識を目覚めさせるから。主に発情獣人用の魔具でショウやニーナ達が触れた直後、感覚だけがイクの・・・こんな感じで指輪の腹で三人の髪を撫でるだけでも効果覿面(てきめん)よ?」


 私は近くに居るショウとニーナ、背後から付いてきていたナディの髪の毛を一本ずつ触り、指輪をはめてお試しした。


「「「!!?」」」


 三人はビクンと反応し、ショウとニーナは真っ赤な顔で机に突っ伏した。ナディは恍惚とした表情のまま背後で座り込んだ。

 ナディの場合は腰が抜けたともいう。


「ね? 凄いでしょ?」


 ユウカはある意味で生き恥を食らった三人をみつめ、引き()った表情で指輪を受け取った。


「う、うん。獣人じゃなくて良かったと思える魔具だった・・・」


 一方、触られた三人は──、


「「「さ、触る前に一言、言って!!」」」


 真っ赤な顔で私を怒鳴る。

 ナディも本音と建前は別のようだ。

 私は三人からの本音が伝わってきたので、苦笑しつつもあえて問う。


「でも、気持ち良かったでしょ?」

「「「う、うん・・・」」」


 言葉とは裏腹に感じたのは確からしい。

 私は真っ赤な顔の獣人達を一瞥したのち、一同とユウカに注意した。


「これは獣人に〈変化(へんげ)〉している者も対象となるから注意ね!」

「!? はい!」×13

「ユウカは獣人に〈変化(へんげ)〉しないように。指輪を着けて〈変化(へんげ)〉すると何度もイクから」

「き、気をつけます!」

「最後にレリィは調理場で料理長をお願いするわ。ニナとレイとルイを料理人で使っていいから」

「承知しました!」


 ともあれ、途中で妙な脱線もあったが、各員への担当は決まった。基本は〈スマホ〉に()せたマニュアル通りに行えば操船等は問題ない。そして次なる話題は個々に住まう居室決めへと変じたのである。


「それとたちまち、個々の居室は・・・上部倉庫の近くにユーコ達の部屋を確保してるから、他の面々も気に入った部屋があれば、そこに住む事を許可するわ。早い者勝ちだから急いでね? 私とシオンとリンスは操舵室の隣に居室があるから、あとで移動するわよ」

「どの部屋でもいいの? ログハウスみたいにニナちゃんと別室じゃないの?」


 私の話に応じたのは落ち着きを取り戻したニーナだけだった。


「問題ないわ。個々に復元体を持つ者を配慮して、各居室は一人あたりで最大三人が寝泊まり出来る部屋としてるから、ユーコ達のように過ごす事も可能よ?」

「そうなんだ・・・よかったぁ。というかナツミ達は確定なのね?」

「あー、まぁね? 変化した人格以外の記憶はあの二人の物だけど染まる前の二人だから安心していいわ」

「染まる前?」

「そ。一組の連中は担任に染められていた被害者ね?」

「うへぇ・・・石頭の行動自体が洗脳だったのかぁ」

「困った事にね?」


 (かたわ)らで聞いていた面々もナツミ達を見て同情していた。私が始終困った顔で説明していたので理解が及ぶのは早かった。

 そう、一組の選民思想の由来は禿馬(はげうま)所為(せい)だったのだから。





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