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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第三章・異世界旅を始めよう。

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第69話 吸血姫は先々を不安視する。


 ともあれ、大きな船舶を用意した私は女神様達と共に飛空船に戻った。飛空船内ではムニャムニャと・・・ユーコとサヤカが抱き合って眠り、フーコとナツミは全裸で絡み合って眠っていた。それは組んず解れつという姿といえば判るであろう。

 ちなみに、ユーマはシオンとログハウスに戻り、今日の待ち番はこの四人となった。

 一応、私だけ亜空間で作業していたが、それも一瞬の事であるため、外に出ると時刻は一秒にも満たない変化が現れているだけだった。

 そして、ここからは・・・先ほど用意した船舶に(きょ)を移すので私は背後で楽しそうに会話する女神様達に声を掛ける。


「じゃあ飛空船を片付けるので内部で・・・」

「いえ、ここで見てますよ?」

「気にしなくていいわよ?」

「そう? いえ。では始めるわね」


 声を掛けたのだが、見学を申し出たのでそのまま甲板に座ってもらい私は作業に入った。

 それは従来の飛空船の隣に船舶を取り出して浮かせ下部倉庫の扉を開けて飛空船をワイヤー固定で引っ張り上げた。その際に飛空船を軽く浮かせてフジツボを結界ごと引き()がし、余計な水分を拭ったのち内部に収めた。

 空間固定で停泊する船舶は波で揺られても揺れる事はなく下部倉庫の扉を閉じて海水に着水させた後も問題なくその場を漂っていた。


 これは例の力のお陰で水漏れもなく、ドラゴンの(うろこ)のお陰でサビも発生しないので、万々歳と思った私であった。

 そもそも一枚板から作った外装であり、各種扉も〈無色(むしき)の魔法陣〉により亜空間経由で開け閉めする物なので水漏れする事は一切ない。

 下部倉庫の扉も亜空間側に設置しているので仮に水物が空間面に触れてもその場で削ぎ落とされて内部に水が浸入する事は一切ないのだ。

 それこそ魔法でどうにかしています!

 という話である・・・それは置いといて。

 私は飛空船のメンテナンスをするつもりで船員達を新しい船の中に片付けた。


「とりあえず、船内に居るユーコ達は個別に割り当てた部屋へと転移させて・・・この船は施錠っと」


 転移後のフーコとナツミは向きが逆になり、互いの股に顔をうずめていた。他意なくそんな格好となったのだから事後に眠るのはナシとすべきであろう。それはともかく。

 片付けを終えた私は女神様達と向かい合い、今後の方針を話し合った。


「たちまちは本土に向かうけど、なにか指定とかある?」

「そうですね・・・では一件だけ」

「一件?」

「ええ。近い将来ですが・・・」


 アインスは神妙な表情を浮かべ私に語る。

 ミアンスも心苦しい表情で私を見つめた。

 アインスは妹神の神託を伝えてきた。


「近い将来・・・貴女達の進路上で大嵐が起き、老朽化した帆船(はんせん)が転覆する。助かる者は一切おらず、後々甚大な被害を招く」


 アインスはそののち、己が願いを語る。


「その際に出来るだけ、魂を救い出して欲しいのです。もちろん救い出した魂の処置はお任せしますので」


 それは保管庫が満杯だからという面もあるだろうが不必要な死者は望まないとする願いが見てとれた。私はその要領の得ない神託と願いから一つの可能性を導き出す。


「ま、まさかだけど・・・?」

「はい。彼等は確実に死にます」

「それって神罰的な?」

「人為的なものですね。私達も鬼ではありませんし、多少の悪事は目をつぶりますが、人族達にとっても、なにかしらの思惑があるようで」

「あー、身から出た錆って事ね?」

「命令した者は(すで)に地位が剥奪されておりますがね?」


 私は可能性と思っていたが確定した事案だった。甚大な被害に関しては呼んだ意味がないという扱いだった。人材不足により他の者達にシワ寄せが訪れるという意味で。

 私はアインスの言葉から一点を想定する。

 それは私とシオンの能力に関係するからだ。


「それなら死亡後の魔力は?」

「完全回収となりますね・・・もっともカノン達が授けるなら話は変わりますが」

「ま、まぁ、そうなるわよね? ミアンス?」

「ええ。亡くなった者なら仕方ないわ。生者であれば受け入れ拒否するけどね? 今は時期じゃないもの。これはユランスも同意見よ」


 結果、助けた者・・・不死者となった者は例外として受け入れるというミアンスであった。

 ただ・・・しばらくの間は船での生活が主となるだろう。上界に上がるにはそれ相応の知識と教養が必要になるのだ。特に勇者(・・)という地位に拘らない者だけが優先されるから。




  §




 そして翌朝。

 女神様達が神界に帰った後、私は残りの装備品を作り続けた。それは今後増えるであろう眷属(けんぞく)の下着や装備を上部倉庫で、せっせと用意していた。

 すると、上部倉庫近くの個室からユーコの大声が響いた。


「えー!? どこなのここ!? フーコは居ないし、窓? 海が見える?」


 私は作業もそこそこに声がした部屋を訪れ、(あき)れながらもひと声掛ける。


「おはよう。朝から元気ね? 相変わらず」

「おはよう・・・って、ここどこ?」

「ん? 新しく造った船の中」

「造った船?」

「そ。船体自体は前の数十倍大きくなったけど、今後の事を考えてね」

「こ、今後?」

「ええ。地球の倍の大きさがある海を行き来するのに、あれでは何十年経っても終わらないからね?」

「そ、それで?」

「まぁ他の面々が来たら内覧会するから、その時にでも驚くといいわよ」

「う、うん。判った」

「それより服・・・着たら? 丸見えよ?」

「あ。お見苦しいものを・・・」


 終始呆然としっぱなしのユーコは丸見えの胸等を隠しながら室内に戻った。私はユーコですらこの反応ならと、フーコの部屋を訪れたのだが・・・こちらは満面の笑みのまま眠り続けていた。その際にナツミが真っ赤に染まり(もだ)えていたのは見なかった事にした。

 だが、ここで・・・私はふと思う。


(分離体の反応が少しだけ変化した? やっぱり私のレベルアップが影響してるのかしら? いえ、魂の残滓が影響してるのかもね。完全に断たれたニナ達と違って生きながら肉体だけを複製したから・・・分離体と混じった事で完全な個を確立したのかもね、きっと)


 私はナツミ達が従来の変人ではなく、マトモな精神を発現させた事に驚いた。これも一つは記憶改ざん後のため、元となる安曇(アズミ)二階(ニカイ)が持つ生来の人格が現れたためであろう。

 そうなると、人格が歪む原因はなにか?


(多分、一年強の教育が悪かったとしか思えないわね? 一組は担任がずっと同じだから)


 そう、禿馬(はげうま)と変わった教師の思想が彼女達の人格を歪めたのだと。もし再誕させるならば禿馬(はげうま)の悪しき記憶だけ消し、他の思想を植え付けようと思った私であった。





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