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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第三章・異世界旅を始めよう。

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第65話 想定外に困惑を示す吸血姫。


 それから数日後。

 私は集めるだけ集めた情報を精査し今後調査する魔力循環路の大まかな地点を特定した。

 今の私は胸を(さら)したままテーブルに置いた羊皮紙を眺め(うな)っていた。


「・・・やっぱり本土に向かわねばならないのね。これは陸上移動の魔道具を用意しないと」


 その場所は〈中立国・アイネア合国(ごうこく)〉中心国家にある合都(ごうと)ネイリア。

 王宮近くの神殿地下が該当地点であり、直接向かわねば意味がない場所だった。そこは空間跳躍(くうかんちょうやく)しようにも距離があり、途中には合国(ごうこく)というだけあって数多くの小国が存在し、個々に魔族対策の結界が作用しているため、不必要な捕縛だけは避けたいと思った私であった。

 すると、シオンがトップの紐を縛って欲しそうに背中を向け、私に声を掛けてきた。


「とりあえず、カノン? 今は目先の事に尽力しましょう?」


 私はひとまず先々の事として調査を一旦保留とし、時期として早朝より始まるであろう戦いに意識を割いた。もちろんシオンと共に水着へと着替えながら・・・だが。

 どうも、この下界でも〈常夜(じょうや)〉と〈常陽(じょうよう)〉が部分的に存在し、人族は相変わらず昼間のみを行き来しているようだった。それは勇者達とて同じであり、魔族に至っては夜のみで行き来しているようだ。私達は一旦ネアレ島から離れ、海上で夜を明かした。

 それはようやく勇者達が勇者として本来の仕事を行い始めた事を把握し、私達は船を沖合に停泊させ、小島の反対側へと陣取ったのだ。

 水着に着替え終えた私とシオンは全裸で突っ伏すユーコ達を眺めつつ甲板に立つ。

 すると私の隣に立つシオンが〈遠視〉して呟いた。


「敵さんの中に魔族が居るわね・・・種族は淫魔族だけど」

「人族も一枚岩じゃないって事でしょうね? しかし、淫魔族か・・・」


 私も同じく〈遠視〉と〈鑑定〉を行い、どういう意図でそこに居るのか悩んだ。

 ちなみに今日の待機番は私とシオン、ミラー姉妹とフーコである。他の者達は海上へ出た直後より、上界に戻り冒険者の仕事やら、ログハウスでの作業に戻った。

 ナディもログハウスの維持が仕事として存在し、ショウと役割分担して掃除中である。

 すると甲板で日光浴のように横たわるユーコが、隣で寝転ぶ同じ姿のフーコに問い掛けた。


「淫魔族っていうと・・・サキュバス?」

「確か男の精気だけで生きる種族だよね?」


 フーコはユーコの問い掛けに首肯を示し、悩む私に視線を向けて問い掛ける。私はシオンやフーコ達の視線を受け流しながら、相手の意図を推し量る。


「ええ。ただ、精気だけが目的じゃないみたいだけどね・・・」

「「「どういう事?」」」

「回収した魔道具・・・それそのものが目的みたい。下界ではどう足掻いても作る事が不可能な物品が(ほとん)どだから・・・」

「なるほど・・・魔力消費が大きい分、創造系も苦労するって事か」


 シオンは私の想定から察し下界の魔族達を哀れむ。ユーコ達は亜空間庫から水着を取り出して身につけ、思案しながら私に問い掛けた。


「とすると、強奪出来るならドサクサに紛れて・・・」

「奪う、てこと?」


 私は今回の敵は小島の人族だけと思いリンスを除く同族のみをこの場に残した。それは状況に応じて〈触飲(ドレイン)〉すれば良いと判断しての事だ。だが、実際には〈触飲(ドレイン)〉が効かないとされる・・・否、効きはするが淫魔族も吸引に特化しているため力の度合いによっては拮抗する事が予見出来たのだ。

 そんな淫魔族までも相手にせねばならず、私達はどうすればよいか話し合った。


「ええ。宝物庫とした倉庫の周囲で嗅ぎ回っているみたいだから・・・」

「となると、淫魔族に渡る前に消す?」

「それが無難でしょうね。あちらも〈触飲(ドレイン)〉みたいなスキルが使えるし。でも魔道具と魔具の一つ一つを正確に把握するためには・・・」

「周囲の邪魔な小舟を落とすしかないと」


 下手を打つと魔族とも戦わねばならず、私達は攻めあぐねる結果を予測した。

 だが、上界の魔道具や魔具は回収不可としなければならず、ミアンスが追加で指示してきた事案だけに頭痛のする思いであった。

 このミアンスの指示も探索者ギルドに登録した直後に追加された後始末の指示である。


『北極で得たなにか』


 という受付嬢の言葉から察したミアンスがメッセージを飛ばしてきたのだ。だから私の方でも小島を監視し戦力が揃う頃合いを見計らっていたのだ。勇者達もその点を見越していたらしく、ダンジョン攻略で資金稼ぎをしていたのもそれであろう。

 もっとも技量不足が目立ち過ぎて他の探索者達から〈接収〉で奪い取っていたようだが。


「ひとまず、勇者達(陽動)が動き始めてから行動を開始しましょうか」

「「「りょーかい!」」」


 ともあれ、戦闘が開始されるまでの間、私達も日光浴にしゃれ込んだ。私とシオンは白黒の色違いビキニで、フーコは緑のワンピースで。

 ユーコは・・・間違えてユーマのトップを着けていたようだ。胸を(さら)したまま甲板に出てきたユーマから怒られていた。


「姉さん、そのトップ、私のなんだけど〜?」

「へ? あぁ・・・ごめんごめん。同じ亜空間庫使ってるから、つい」

「ついって・・・サイズが同じだからいいけど〜」


 ユーマも先ほどまで船内で刀の手入れをしており、頃合いを見て出てきたようだ。

 抜刀することはないだろうが、流れ弾が飛んでくる事を予見しての事だろう。それでも物理防御結界で弾かれるので余程の事がない限り待機状態なのは変わらないが。




  §




 それからしばらくして、戦端が開かれた。

 初撃は小島側からネアレ島の岸壁に立つ勇者達を狙って砲弾が撃ち込まれた。普通ならそこで爆散して亡くなるのだが勇者達は砲弾の性質を知っているため、物理防御結界を展開して耐え(しの)いでいた。

 その後、迎撃として火弾を上空に複数個展開し小島に向けて放つ。放たれた火弾は別の勇者が補助した風魔法に乗り、小島へと爆発力を(おとろ)えさせる事なく着弾させた。

 それは小島側の火薬庫に対しての着弾であり狙いを定めて撃ったのだから地頭だけは相変わらずのようだ。ただ、普段との落差が激しいだけに周囲の兵士達は呆然と見守っていたが。


「策は・・・まぁまぁね。前大戦で攻めてきたアイツらの方が練度が高いけど」

「でも一般人を巻き込むという点は頂けないわね? 今も大怪我を負った者が多数ね?」


 なお、戦闘が開始された小島の裏側では私達が〈遠視〉で戦況を把握していた。先ほどまで水着で日光浴していたが今は装備を身につけ戦いの準備を行っていたのだ。


「小島に一般人は居ないと思ってるんじゃない? 流刑島そのものだから」

「流刑島だとしても商人や一般兵も住まうから、その点を失念してるなら仕方ないかもね? クソ兄貴とかなんとも思って・・・忘れてしまえ! クソ兄貴!」

「元々残念な一組ですし、今更ですよね?」

「どのみち、このあとに出る舟で戦況は変わるでしょ? ほらね?」


 そう、私が把握していた小舟が浮遊魔法を発動させ、小回りの効く速度で制空権を奪うようにネアレ島の周囲に展開した。


「小舟が浮いたって驚いてるわ〜。照準を合わせようにも飛び交うから外しまくってる〜! クソ兄貴なんてウケる〜、凄いアタフタしてる〜! 魔力切れたってアタフタしてる〜!」

「飛空船自体は軍船として存在しているけど、滅多に見られる物でもないからね? しかしまぁ・・・今や固定砲台と化してる勇者達とは策の面で雲泥の差ね・・・袋叩きし放題ね?」

「特に飛空船タイプの小舟は存在しないみたいだし、兵達も初めて見るという事で絶叫する者が多数ね?」

「いやいや、それを見ただけで判るカノンとシオンが例外・・・」

「「は?」」

「な、なんでもありません!」

「姉さん・・・」

「まぁユーコの言葉も理解出来るけど、私がというよりカノンが例外だからね?」


 私達も見てるだけというのもあれだったので私はシオンのツッコミを軽く流し、操船部に移動して飛空船を浮遊させる準備を行った。


「はいはい、そうですね〜。とりあえず私達も浮かせるわよ〜。今のまま見てたら還元魔法陣に巻き込まれるから」


 ただね? 長い間、船体を海水に(ひた)していたためか、例外なくフジツボが張り付いていたので物理防御結界を多重展開させながら、古い結界と共に()ぎ取る私であった。どうも、船体に結界があろうがフジツボには関係ないようだ。

 なお、ツッコミを流されたシオンは──、


「スルーされた・・・」

「シオン、ドンマイ」


 しょんぼりとユーコから(なぐさ)められていたのは言うまでもない。





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