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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第三章・異世界旅を始めよう。

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第63話 吸血姫は眷属達を見守った。


 ひとまず、勇者達とのイザコザは一時的に小康状態となり、第三陣と第四陣の探索者登録は無事に完了した。

 私は当初の目的が完了したため、翌日以降に本来の目的へと移行した。それは情報収集が主となり、騒ぎが起きるまでの数日は支部で依頼をこなしながら各地で情報を集める事にした。


「今日は・・・ユーコ・パーティーは近くのダンジョンで素材集めだったわね?」

「ええ。たちまち集める品物は貨幣とポーション素材となってるわ」

「了解よ。シオン達は一旦上に戻るから、船に残るのは私達のパーティーだけね」


 今は本日の予定を確認しパーティーリーダーとなった面々と話し合っていた。このパーティーも登録時と同じ面子であり、唯一違う点はリンスの代わりにショウが加わった事だろうか。

 リンスは第四陣のドワーフコンビやアンディと共に予備陣営としてログハウスに戻っている。リンスも一応は姫殿下であり、なにかあると陛下から怒られる・・・事はないとしても公務が滞るとして渋々だが戻したのだ。

 ちなみに各パーティーの面子は以下である。


 ───────────────────

 第一:カノン、ユウカ、ナディ、ショウ

 第二:ユーコ、フーコ、ユーマ、ニーナ

 第三:シオン、ルー、コウ、レリィ

 第四:リンス、ミキ、コノリ、アンディ

 ───────────────────


 これは今後(よみがえ)らせる者達の事も考えた指定とした。希に構成や人数の変動もあるが、基本はこれである。

 ただ、(よみがえ)らせるとしても人格的に(・・・・)問題のある野郎共は永久放置なのだけど。


 ともあれ、ユーコ達は船から出て支部へと向かう。私はその間、小島・・・ネイレ島を〈遠視〉し相手方の動きを監視した。


(飛空船の動力から浮遊魔石だけ抜いてるわね? それを・・・砕いて小舟に乗せてる?)


 どうも今は回収した品々の解析と改良に行っているようだ。ただ、全てを理解しているわけではなく既存技術で転換出来る物だけを使っているように見えた。


(小舟を飛ばすという用途だけでなく槍や(もり)を浮かせて飛ばす事に利用するか・・・飛び道具としては及第点かしら?)


 仕組みとしては変幻自在に飛び回る小舟の上にクロスボウを二つ設置したものだった。

 それは発射前、各クロスボウが小船の周囲を漂い、紐付けされた小舟から遠隔操作により射点を隠して陸地や海上から撃ったように見せ掛ける武器だった。

 これも探索魔法を用いれば直ぐに射線からバレる・・・否、探索魔法すらも扱える者は少ない現状を利用しての対策だろう。

 勇者達も各属性の内、(そら)・・・空間把握の属性を有するのは石頭だけだから。


(まさか、意図せず主力を倒されたから、あのような奇行に走った? そういう理由なら・・・あり得るわね?)


 だが、それならもう一人予備人員を用意すれば問題は無かったように思えたが、あの石頭の性格を考えると予備は不要としたのかもしれない。選ばれた者・・・そういう理由で「一人で(まかな)える!」と豪語したのだろう。

 そんな事があり得る話なだけに一組の勇者達が可哀想に思える私であった。




  §




 一方、外に出たユーコ達はというと──、


「Aランクから入れるダンジョンってここ?」

「うん。一応あってるけど・・・」

「ダンジョンというより城よね?」

「内部がダンジョンとなってるみたいですね」


 依頼を受けてダンジョン攻略に来ていた。

 そのダンジョンは島唯一のAランクダンジョンであり、Sランクの者であっても軽く踏破出来ない代物であった。なんでも中では詠唱魔法として構築した魔力を瞬時に拡散させる結界が張られており、魔物と相対した際には逃げるが勝ちという場所らしい・・・それは置いといて。

 ユーコ達はダンジョンに入るや否や、先客が居る事に気がついた。


「ねぇ? アレって勇者達よね? なんで逃げ回ってるの?」

「姉さん、少しお待ちを・・・〈鑑定〉した限り、魔物相手だと逃げる事が得策とありますね? 指定レベルで言えばレベル60から入れるダンジョンですが」

「それは逃げた方がマシね? 40とか50の者からすれば負けは必定だから」


 そう、勇者達が逃げ惑い、魔物相手に魔法を放つ事のないまま右往左往していた。

 その様子を見たニーナがフーコの言葉に(あき)れつつも一同に問い掛ける。


「勇者って蛮勇という意味だったかしら?」


 ニーナは現在、兎耳で周囲の反響音を聞いて探索している。イルカもビックリ!?

 というような器用な事をやってのけている。

 すると、ユーコがニーナの言葉に(あき)れながらも応じ目前の状況が変化した事を悟った。


「アイツらだけが蛮勇ね・・・って、こっちに来たわ」

「・・・トレインとか酷いね? クソ兄貴が本当にクソに思えるわ〜」


 フーコは目の前を横切る勇者達を眺め、引き()った笑みをみせ、ニーナは出口に飛び込んだ勇者達を見送った。


「押しつけて逃げるって・・・〈希薄〉してたから、魔物以外には気づかれてないけど」

「倒せない事は無いですけどね? よっと!」


 ユーマはニーナの言葉に応じつつも、気づいた魔物相手に(ほのお)を宿した〈(ほむら)魔刀(まとう)〉を抜刀し一匹、二匹と元々持っていた〈剣術〉スキルのみで倒していく。手札として数多くの型をその都度選択し、袈裟切りや突きを行い魔核のみを一瞬で破壊していた。

 もちろん、オーク以外の魔物のみだが。

 そういう意味でユーマはこの場では最強かもしれない。ニーナも私謹製の〈魔槍〉を持って応戦しているが狭い通路だと前方向しか相対出来ないので少々苦しそうだった。


「勇者も程度が知れるって・・・こういう事かしら? クソ兄貴は元々程度が知れるけど」


 フーコは〈短杖(スタッフ)〉片手に無詠唱で火炎魔法を発現させ、迫り来るゴブリン達を瞬時に燃やしていく。会話を行いながらでも少々余裕が見てとれる感じである。

 ユーコも〈長杖(ロッド)〉片手に無詠唱で突風魔法を発現させオークを切り刻む。

 リーダーとして後の予定を口走りながら。


「ならサッサと終わらせて帰りましょうか? 結構な数のオークが居るし、カノンがオーク肉でトンカツ作ってくれるかもよ?」

「ユウカの米とあわせて、カツ丼もいいね!」

「牛肉と合わせてハンバーグも食べたいですね〜」

「久方ぶりの豚肉なら生姜焼きもいいわよね」


 四人は魔物と戦いながら・・・夕食のおかずを話し合うという不可思議な行動をとっていた。

 だから当然、同じように潜っていた探索者達は唖然(あぜん)と眺め、魔法をポコポコと撃ち、バッタバッタと切り刻む姿に驚きを隠せないでいた。なお、このダンジョン内では無詠唱であれば魔力拡散が除外となるのだ。

 それにいち早く気づき、対応出来る者でなければ攻略など夢のまた夢であろう。

 ちなみに私はこのダンジョンを踏破済みだ。

 それは登録後にシオンと潜り、簡単過ぎるとして、あっという間に最上階へと上り詰めた。

 その時の踏破報酬はユーマが現在振り回している〈(ほむら)魔刀(まとう)〉だった。

 これは〈剣術〉スキルを持つ者が扱わねば意味が無い代物のため私が差し上げた物だ。

 私も大太刀を扱うが、レベル上限的にポッキリ折れるから差し上げた。

 それと・・・今夜の夕食はカツ丼で決まりね!




  §




 それからしばらくしてユーコ達は無事ダンジョンを踏破したようだ。今は最上階のボスをあっという間に倒した後である。ミラー姉妹はボス部屋の中央に立ちながらユーマは納刀し、ユーコは〈長杖(ロッド)〉を亜空間に片付けて話し合っていた。


「流石に弱すぎでしょ? 一応ドラゴンよね」

「まぁレベル差もありますから。それよりも素材も貨幣も集まりましたし踏破報酬の〈短杖(スタッフ)〉も貰えましたし、そろそろ戻りますか?」

「そんなに疲れてないけど・・・それがいいか。(うろこ)もなにかに使えたらいいけど」


 すると背後からフーコが苦笑しつつも〈遠視〉を用いて二人に提案した。ニーナも困り気味で耳を動かし外の会話を聞いていた。


「出口に勇者達が居るからこの場から転移しない?」

「なんか石頭が勇者の権限使って奪うとか言ってるし、それがいいかもね?」


 そう、勇者達は勇者らしからぬ行動を起こそうとしていたようである。ユーコは二人の言葉を聞き辟易(へきえき)した様子でユーマは哀れみの表情を浮かべながら呟いた。


「権限って・・・それなら自力で上がって来ればいいのに」

「それが出来ないクズしか居ないからでしょう?」


 するとニーナが満面の笑みで提案する。


「それなら、このボス部屋に飛ばす? ボスなんて簡単だって石頭が言ってるし」

「賛成! ここも一応、死に戻り出来るみたいだし、仮に死んでも問題ないでしょ?」

「なら、全員〈希薄〉して強制転移と同時に様子見ね! クソ兄貴は瞬殺だろうけど〜」

「踏破者は襲われないらしいので技量を見るのも面白いでしょうね!」

 

 結果、全会一致で強制転移は実行され、ボス部屋に外道勇者達十名が現れた。

 ちなみにフーコは元兄に対し()られろと念じつつ回復途中の魔力を奪っていた。

 不味そうな顔で。


「どこだここ?」

「周囲になにもない? ただの部屋?」

「というか・・・」

「あれ・・・」

「ド、ドラゴン?」

「ま、魔法を!」

「い、い、イヤー!?」

「ま、魔力切れ? な、なんで!? 俺だけ!??」

「ナギ、それはいいから、さっさと逃げろ!」

「ヤマト、すまん! ギャー!?」


 以降は阿鼻叫喚の地獄絵図であった。

 一応は善戦・・・否、速攻で負け、両腕を噛みちぎられたり、ブレスで上半身だけ消し炭になったり、四肢が切り刻まれたり、股を爪で割かれて開きになったり、勇者全員が骨や眼球、各種臓腑を垂れ流したまま、その場で突っ伏し・・・光の粒となって出口に送られ気絶したまま復活した。

 なお、その様子を見ていた一同は──、


「流石に弱すぎない? クソ兄貴はともかく」

「あれで勇者って・・・女神様乙」

「まだ上のバカ達がマシに思えてくるわ」

「魔力量にあぐらをかいた末路ですね」

「でも、そんな勇者でも平定出来るって・・・」

「下界の民って弱すぎでは?」

「前大戦は奇襲をうけたというし、鉛弾ありきなら」

「勝てて当然よね? 卑怯という意味で」


 勇者達の行動と下界の民達を哀れんだ。

 上がマシと思える技量差を思い知りながら。

 ともあれ、その後のユーコ達もこの場から転移し、支部へと戻った。

 報酬は回収した貨幣の半分を(いただ)き、素材買取でも上質品が複数個あった事で、大いに喜ばれたそうだ。

 これも保管魔法が使える事にあるだろうが、私達の場合は手持ちのバッグ内と亜空間庫を繋げているため、保管魔法が使える事は誰も示していない。それと共に属性なども全属性持ちを公開しているがなぜかスルーされているため、探索者ギルドでは重要視されていないようである。


「ところで、この短杖(スタッフ)どうします?」

短杖(スタッフ)ですか?」

「ええ。踏破報酬の宝具なんですけど手持ちの方が使い勝手が良いので売りたいのですが?」

「ふぇ? と、踏破?」

「それとも、ボスの(うろこ)が良かったです? 一千枚ほど()がしてきましたけど・・・でもドラゴン肉はダメですよ?」

「!?」

「あら? 固まった?」

「ユーコ? ボスの事は黙っておこうって言ったじゃん」

「あっ・・・フーコごめん!」

「もう! おっちょこちょいなんだから〜」





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