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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第三章・異世界旅を始めよう。

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第55話 吸血姫の仕事が増えた件。


 調(しらべ)の女神・アインスが現れた。

 リンスはいきなり女神様と言われてもワケが判らないまま問い掛けたのだが──、


「め、女神様?」


 これは致し方ないであろう。


「はい。貴女が(たてまつ)る魔の女神とは似て非なる者と申せば判ると存じますが」


 それは浮遊大陸の神として〈知の女神・ミアンス〉および〈魔の女神・ユランス〉しか居ないと思っていたからだ。

 だから当然、地上でも同じ女神様達が(まつ)られている事が信じられなくても不思議ではなく他の女神様が居るなんて話は寝耳に水である。

 それこそ浮遊大陸・人族の神官が聞けば邪神だなんだと騒ぐのは明白で、その時点で私の仕事が無駄に発生するのは確かなのだから。


「魔の女神様と?」

「ええ。似姿だけであれば同じ・・・ですから。ただ名前だけが異なり、管理する場所もまた違うのです。今回の件で言えば・・・知の女神、魔の女神の管理下から〈中立神域〉とされる北極海の一部を抜けた事で・・・」

「あー、今は貴女の管理下に居ると?」

「はい。そういう事ですね」


 移動に際し、いつの間にかミアンスおよびユランスの管理下を離れていたようだ。

 ただ知識を管理するミアンスはともかく、ユランスの力の範囲は無限であり魔力のあるところそのものが彼女の領域のため亜空間などを介してであれば干渉は可能なのだが。

 引き続き調(しらべ)の女神・アインスは語る。


「それと今回の依頼を受けて下さり、ありがとうございます」

「受ける受けないという話ではないから」

「そうでしたね。失礼。では単刀直入に申しますが・・・この先の小島ではなく、隣・・・本島に向かう事をオススメ致します」

「本島?」

「はい。小島の方は・・・貴女方でいう流刑島に(るい)する島で御座いまして本島の方であれば小島以上に情報収集が可能となりましょう。それと・・・今後下界で活動するうえで身分保障のギルド登録をお願い致します」

「なるほど。流刑島と同類なら危険しかないわね・・・リンス?」

「そうですね。であれば本島が・・・ですがギルド登録というのは?」

「それは貴女方が所属する冒険者ギルドとは別物の組織なのです。こちらのギルド名は〈探索者ギルド〉と申しまして目的の一つは浮遊大陸の探索も含まれますが、基本はダンジョン攻略を主とする者達の事をいいます」


 そう、調(しらべ)の女神・アインスは仰有(おっしゃ)った。話の流れとして行き先を指定するのはなにが起こるか判らない小島よりも比較的安全な本島で色々準備しろという事なのだろう。

 冒険者ギルドの事にしても互換性めいたものはなく、新規取得という(てい)は少々大変かもしれないと思う私であった。

 なにより、外敵の斥候(せっこう)(るい)する者達のため、リンスの立場で言えば少々厳しい話かもしれないのだ。

 すると調(しらべ)の女神・アインスは言う。


「リンスの考えていることはわかります。自身が祖国を裏切る可能性を考えての事なのでしょうが、それは心配御座いません。確かに浮遊大陸を探索する者達が居るのは確かですが、それは極一部の者達だけで、(ほとん)どの者達はダンジョン攻略を行っているのです。ただ・・・」

「「ただ?」」

「その極一部の者達が喧伝(けんでん)している事の中に上界・・・浮遊大陸そのものがダンジョンであると間違った認識が伝わっているため(まれ)に支部にて似たような話を聞く事になる・・・それだけは覚悟しておいて下さい」

「なるほど・・・承知しました」

喧伝(けんでん)ねぇ? まさかだけど?」

「はい。その喧伝(けんでん)を耳にした国家が得たり賢しというように上界の魔力源を奪うという馬鹿げた行動に出たのは確かです。ただ、その極一部の者達の妄想に乗ってるというのも哀しい話なのですが」

「それって・・・まさかだけど?」

「ええ。大戦の原因そのものですね。(わたくし)の方でも何度となく神罰を与えておりますが、一切()りておらず・・・今なお探索に夢見る者達でもあるので困っていたのです」


 なんという事だろうか?

 リンスはその言葉を聞いて絶句している。

 女神様の言葉そのものだから嘘はない。

 だからこそ私は察しアインスに問い掛ける。

 それはある意味で行動方針の確認であった。

 私もリンス同様、唖然(あぜん)としたままだけど。


「となると、今回の件は・・・」

「はい。魔力循環路の調査と異物除去に加え、上界干渉を行う者達の排除も含まれます。本来であれば・・・あと数百年先から国交を結ぶ流れとなっていたのですが私達(わたくしたち)の思惑を離れ、勝手に戦端(せんたん)を開いたため、手に負えない状態となっているのです。他の妹達も同様に対処はしておりますが各国間の争いも頻発している現状で私達(わたくしたち)もその者達の対処が出来ず困っていたのです」

「となると・・・戦死者が多くて転生に時間をとられ干渉者を追えないと?」

「はい。そういう事ですね。転生処理が追いつかず一日に亡くなる予定だったものを軽く凌駕(りょうが)しているのです。そのため魂の保管庫が満杯となる始末でして」

「人族の欲望は計り知れないわね・・・」

「それもあって俗に言う〈夢追い人〉と呼ばれる干渉者の一覧を・・・〈魔導書(アーカイヴス)〉に記録しましたので出来る限りで排除して(いただ)けると助かります。その者達は転生させても夢を追う(ごう)を背負った〈女神に(そむ)きし咎人(とがびと)〉ですので転生させず魂ごと召し上がって下さっても構いません」

「転生不許可者って事ね・・・判ったわ」

「では、よろしくお願い致します・・・姉上」

「ちょ!」


 そう、言ってアインスは頭を下げながらこの場から消えた。最後の一言だけはリンスもきょとんとしていたが、私はなぜその単語を選んだのか疑問に思うばかりであった。


(女神様って意外とポンコツなのかしら?)


 私は進路を小島から本島に向きを変更し、念のためシオンにもメッセージを飛ばした。

 それは「仕事が増えた」という意味で「手伝え」という一言のみを送りつけて。




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