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第44話 女神様を四度も敬う吸血姫。


「さて、そろそろ手狭になってきたし、ログハウスの新築でも建てますか」


 そして、その日の昼間・・・。

 私は蘇らせる者達が増える前に想定する人数が住める建物を用意する事にした。本来なら一人で住まうはずの家だったのに、後先考えず救いだして賑やかになったためだ。

 一人目はリンス、二人目はシオンときたが、他の面々・・・回収者達も今や四人となり、捕縛者という(てい)では一人と一体が居り、総勢で言えば八人に増えた事になるのだ。

 そのうえ後続として回収者の九人が残り、捕縛者が十一人残るのだ。


 但し、回収者である十四組の四十四人は早急に第八十七流刑島に戻し、勇者として生を全うして貰う事とし同じく捕縛者の一人・第八十七流刑島の第三王女は論外としているので、この数には含まれない。

 この者達はどのみち面倒しか招かないからこの場に寄越す必要はないからね? 仮に眷属(けんぞく)にしても、逆に喧嘩をふっかけてきて何度も殺さねばならず暴力比べという時間の浪費を行わねばならない愚者の一団である。


 ともあれ、そのような理由によりログハウス隣の空間で魔力を最大量練り上げる。イメージするのは一応、ログハウスであるが今より大きな建物。そのイメージを具現化するために色々と設計図を書いたが、その通りに作るには一時的に魔力を使い切らねばならず、私は仕方なく〈魔力(マナ)炉〉の火を入れた。


(保有魔力量の増加確認、魔力総解放、錬金・・・開始!)


 そして現状の保有魔力の三千万を元に今までに食べてきた生命力を〈魔力(マナ)炉〉に焼べ、器上限のギリギリまで魔力を作り出す。

 普段の生命力も別に食べたからってそのまま消費してるわけではないのよ?

 全ては〈魔力(マナ)炉〉のための燃料として別口に保管していたものだから。それもシオンとの分裂後からの蓄えを使うから分量としては相当なものだけど。


(まずは地下階・・・錬金工房と〈錬金釜〉の保管場所、完了)


 その後は順当にイメージを構築し、イメージ通りの建物を作り出す。亜空間でありながら地下階が可能なのか? と思うけど、これは玄関を二階にした一階という感じになるのね?

 一応、専用の勝手口も用意したけど眷属(けんぞく)達には開けられないものとした。

 これは危険物を取り扱うための出入口ね?

 亜空間庫には入れられない代物や玄関を通せない物を出し入れする場所である。


(次は一階、玄関アプローチ、厨房、ダイニング、大浴場、個室トイレ、鍛錬場、完了)


 次点は一階スペース。

 地上から二階に上がる階段を設け、大勢が出入りしても問題ない物とした。室内もらせん階段で上り下り出来る物としたの。

 それとトイレと大浴場は男女別ね?

 ただし、スペースは男性用より女性用の方が大きいけども。基本は女所帯だもの男性はこの後に作る別室に(まと)めて住まわせるから。

 ただ、ミズミズがどちらに転ぶか謎だけど・・・ユーマの例もあるしね?


(次は二階、女子部屋と男子部屋、区分けは積層結界で異性は立入禁止として)


 そして二階スペース。

 部屋割は色々考慮して女子部屋を多めにとった。男共は一部屋に(まと)めたけどね?

 回収者はミズミズの状況次第ではあるけど確定が一名だけいるし、捕獲者も四名だけ存在するもの。そこにアンディが含まれたとしても、六名一部屋で問題ないと思うのよね?

 女子部屋も十九名となってるし二人一部屋とすれば問題ない・・・肉体向けの個室もたちまちは三部屋だけ作ったしね?

 あとは私とシオンとリンスの部屋もあって、男子部屋の周囲に女子部屋が囲む形とした。

 これも一応、積層結界が解除される事はないし入口は同じでも繋がる経路が内部で別れてるので不用意に侵入される心配もないのだ。


(最後は三階・・・屋根裏部屋で客室っと、ミアンス達しかこないから最大級の豪華さで)


 残りは来る者固定の部屋とした。

 あれでも一応は女神様だし敬意というか配慮はしないとダメだもの。

 そう、あれでも一応は女神様だから。

 そうね? 大事な事なので二度言った。

 ともあれ、私は出来上がった新築の建物の前で残存魔力を発散させた。生命力的には使い切ってないけど魔力自体は使い切ったので少しフラフラするのよね?


「ふぅ〜。完成したわね・・・あとはここに置く物品を〈錬金釜〉で作り出せばいいでしょう」


 すると私の背後から怯えたような声が響く。

 声音的に・・・ユーマの声だったと思う。


「・・・カ、カノンさん?」


 私は誰だったかと思いながらも背後を振り返る。確かにそこに居たのは顔が引き()ったユーマ・・・いや、ユーマだけではない。

 ユーコやフーコも居るし、ナディとニーナまで呆然と立ち尽くしていた。

 シオンはあちゃーという感じで呆れており、リンスは苦笑していた。アンディは物言わぬ置物なので放置で良いが、その空気感は──、


「ど、どうしたの?」


 私がやらかしたという雰囲気であった。

 私は怖ず怖ずというように問い返す。

 すると、ユーマは引き()った苦笑のまま理由を語る。


「いえ、膨大な魔力を感知したので見に来てみたら・・・」


 錬金中の光景を見て絶句したようだ。

 練った魔力量が半端ない事で怯えたともいう。


(確かに器の限界量・・・、三(けい)の分量を用意したものね)


 私は怯えの意味を悟り、どうしようかと悩む。しかし、悩んだからといって解決しないため、あっけらかんと伝える事にした。


「新築したのよ。住まう者が増えるから」

「新築したのよ。じゃないわよ!! どこの世界に真っ白なログハウスがあるっていうの!? しかもやたらと大きいし!! あと最後・・・あれを使ったでしょう?」


 しかし、伝えた途端にシオンから本気の説教をされた。あれとは補強のためのあれである。

 木材のような見た目をしているようで・・・その実、金属と化したのだから怒られるのは確かだろう。それでも外側表面だけね?

 内部はこの世界で一番堅い〈ダーク・メイプル〉の木材をイメージしたもの。

 これは下界に生えるという真っ黒な(かえで)で、主に船舶に使われる物らしい。

 このイメージも解禁された〈魔導書(アーカイヴス)〉の知識によるものね?

 ちなみにこの浮遊大陸には一切存在しない木材である。私はシオンの怒りを経路からも感じたので乾いた笑いの後、素直に頭を下げた。

 

「あはははは・・・ごめんなさい」

「「「「「カノンが謝った!?」」」」」


 だが、私が謝るとは思ってなかったリンスを除く眷属(けんぞく)達は大変失礼な事を言った。私だって謝る事くらいはあるわよ!?




  §




 ともあれ、そこから先は新築として用意したログハウスへの引っ越しが始まった。

 一応、内覧会をした感じ眷属(けんぞく)達の感触は良好であった。一つは大浴場やらトイレにあったと思う。使ってる魔道具はログハウスと同じだがバージョンで言えばこちらの方が最新型だ。シャワーも大浴場の洗い場に用意したし必要ないかもしれないがサウナ付きである。トイレも温水洗浄と温風乾燥暖房便座とした。それは、この世界の真実を知ったというのが原因であるかもしれないわね?


 この亜空間もユランス曰く、季節が存在しているそうで冬場は寒いらしい。だから普段は使わないがダイニングには暖炉を完備し、玄関と廊下には床暖房を用意した。

 個室やトイレ、大浴場にも床暖房と温風が出るような厳冬対策が万全で、夏場は夏場で冷風が出るようになっているの。


 ある意味、このログハウス内だけ局所的に時が進む空間という感じよね? 隣の古いログハウスも飛空船も元々そういう仕組みだけど。

 ひとまず、その後の私はナディと共に各自に指示を飛ばし、最後は錬金工房にて共有化の準備を行った。それは扉一つで行き来出来るようにするのね? 亜空間庫に片付けた〈錬金釜〉を扱うのは新築で、こちらは再誕専用とした。

 それ以外はポーション類の製造とか学習用途で残した。一応、回収者や捕縛者の中にも数名ほど錬金術士が居たからね? 彼等に経験を積ませるための空間が必要と思ったのだ。


「とりあえず、アンディは男子部屋に放り込むから、荷物は私が預かるわね?」


 すると、ナディがアンディの私物を手渡しながら疑問気に質問してきた。


「それで錬金工房の中身はどうするの?」


 この言葉使いは主従関係というより友達的な言い回しだろう。

 今は猫獣人ではなくエルフのままだが。

 私は現状維持という意味で返した。


「錬金工房は空間自体を共有させるから、そのままでも問題ないわ」


 しかし、ナディは私の言葉を聞きながらどこか、うわのそらであった。


「そう・・・」

「どうしたの?」


 私はそんな態度になるナディを見て怪訝に思う。まぁ昔からそこまで仲の良かった関係ではないしね? 気絶させてアレコレした事もナディ自身は覚えてないのだし。

 するとナディはどこか思案気味となり──、


「う〜ん? 改めて人外なんだなって・・・」

「なにを今更な事を言ってるの?」


 感慨深げに溜息を吐いた。

 私は余りにも、なんともな言葉を言われたので(あき)れながらナディの背後にまわり、育ってきた胸を鷲掴(わしづか)みした。


「ひゃん!? ちょ、ここで胸揉まないでよ!?」

「そう? 揉まれた瞬間、固くなってるけど?」

「私の意思じゃないわよ!? というかなにか懐かしいんだけど・・・?」


 ただ、本人の意思に反して身体は正直だった。私はいつもの調子で揉んだのにナディの懐古的な雰囲気から想定外な事態に直面した。


「あらら、身体は覚えていたかぁ」

「へ?」


 ナディからは振り向きざまの(ほう)けた視線を(いただ)いた。


(記憶は奪っても身体の経験は残るという事か。魂に残る情報は恐るべしね?)


 そう、奪ったはずなのに行動記憶そのものが残っていたようだ。決まった場所を触った瞬間だったから、開発の末の条件反射ともいう。


「というか、そ、そろそろ、止めない?」

「ようやく・・・気持ち良くなってきたのに?」

「し、仕事、出来なくなっちゃうから・・・」

「どのみち、ナディの私物は少ないから気にしても損よ。他の面々はもう自室で(くつろ)いでるし」


 私は好みであるナディを美味しく召し上がった。錬金工房でする事ではないけど一応は積層結界を張って布団を用意してね? ただ、肝心のピロートークは・・・私の過去の行為に対する懺悔(ざんげ)と共にナディから継続的に愛して欲しいと言われた。まぁ愛しますけどね?

 今は裸のまま猫化して顎下撫でるとゴロゴロ言ってるけど、このナディの経験が戻ったのもユランスが魂を復旧くれたお(かげ)よね? 本当に女神様には感謝しかないと思った私であった。そう、女神様に感謝して手伝う事を改めて決意した。





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