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第43話 女神様の提案で眠る吸血姫。


 その後の私はユランスと共に真夜中〈常陽(じょうよう)(こく)〉の真っ只中だから時間的には真夜中でも明るい空の中、例の中央大陸・〈ミルーヌ王国〉の王都に移動した。


「へぇ〜。ここが中央大陸の一番高いところなのね〜」

「そうですね。見晴らしとしては最高の場所になりますが・・・」


 今は例の結界石設置のためユランスと王城の天辺・・・監視台を訪れている。なお、この時間帯は衛兵以外は寝ているため、定期的に訪れる見張り以外は誰も居ない。

 私は〈希薄〉で存在を隠し、ユランスは女神様の権能で見えない事にしているため誰何(すいか)そのものはないけどね?

 ともあれ、ここから先は私とユランスの共同作業である。


「では設置しますか」

「そうですね。一時的にこの場を時間停止空間と取り替えて・・・」

「衛兵達が完全に止まったわね。元の石はどうするの?」

「魔力還元で消してしまってもいいですよ。交換すると同時に稼働中の結界と瞬時に入れ替わりますから」

「なるほどね・・・設置場所の接着は?」

「台座そのものに専用の接着機能がありますので、補強するだけで問題ありません」

「りょうかいよ」


 私はユランスの指示通りに結界石・・・ミアンスの裸婦像を設置した。前の物は彫像といいながら、ミアンスの美しさを愚弄するような見た目だった。あれではミアンスとしても苦笑というか嫌悪感しか湧かない物だったろう。

 そのうえで結界機能を壊されたのだから、やりきれない話である。今回からは真っ白なミアンス像となるので見た目も華やかな綺麗なミアンスの御登場である。

 いや、実際にミアンス御本人がね?


「やっと下品な彫像とおさらばしたわね〜」


 この場に顕現(けんげん)したのよ。

 交換して結合促進と接着補強を(ほどこ)した直後、古い結界と新しい結果が入れ替わった瞬間にね?

 どうも、気になって出てきたみたい。


「時間停止空間解除っと・・・」


 そしてユランス自らが空間解除を行うと同時にミアンス像の頭上から壊れた結界を補修する魔法陣が発動し、壊れた結界が消えつつも新しい結界が浮遊大陸全土を覆った。

 ただ、その直後にね?


「脱獄者が元の流刑島に戻りましたね?」


 ミアンスが状況を確認して、脱獄者の居場所を把握していたの。見るからに各国の中枢に入り込んでいたみたいね?

 だがこの瞬間、転移したように牢へと跳んだのだから翌朝の牢内は大変な事になるだろう。

 各国の要人ではないので問題は無いが。

 それだけならまだいいが次が問題であった。

 それは──、


「流刑島の全容、再確認完了」


 ユランスの事務的な言葉の後に私は〈遠視〉して唖然(あぜん)とした。


「あらら、結構な数の兵が並んで寝てるわね?」

「変質者達が使えないとして数に物を言わせるつもりだったのでしょうね」


 ミアンスは(あき)れのある表情で首を横に振る。ユランスも溜息を吐きながら(あき)れていた。


「それも結界展開が終わった今なら・・・」

「行動こそが無意味よね?」


 私もその言葉尻を繋ぎつつ、物理的に出られなくなった者達を哀れんだ。これで本来の勇者であっても戦闘終了となるまで内側に向かう事は不可となった。

 なお、先んじて出ている私や回収者・捕縛者達はその範疇(はんちゅう)に含まれず、流刑島に居座ったままの者達は等しくあの島から出られなくなった事を意味する。

 それでも食い扶持(ぶち)に困って冒険者として出ようとしても、勇者召喚された者という目印が魂に記されているので結界に(はば)まれ当人達は一生出る事が出来ないのだ。

 斥候(せっこう)として出ていた者達も、戻った瞬間に外には出られなくなるらしい。

 但し、一度死んで転生した者や流刑島以外から入ってきた商人達や冒険者達は除くが。

 するとミアンスはヤレヤレという様子で──


「あとは本来の意味で外敵が来るのを待つしかないでしょうね?」


 希望的観測を(のたま)ったのだけど、そのニュアンスは本気の色を占めていた。

 私は嘘っぱちだと思っていたため呆気にとられたまま問い返す。


「外敵なんて本当に居たの?」


 するとミアンスは驚くような言葉を口走る。


「ええ。この惑星」

「この世界って惑星なの!?」


 そら、驚くだろう。

 浮遊大陸のある世界と思ったら惑星ときた。

 つまり、この大陸の下に陸上の世界が存在するという事だ。ミアンスは苦笑のまま白状するかのように──


「ええ・・・言ってないけどね? 〈魔導書(アーカイヴス)〉でも封じを掛けてたから」


 〈魔導書(アーカイヴス)〉の封印を解除した。私はその瞬間、膨大な量の知識に埋め尽くされ・・・察してしまった。


「はっは〜ん。それで時間軸が四十八時間と」

「夜と昼の異常性はここが北極にあるからですね」


 ユランスも仕方ないという素振りで現在地を明かす。私はその言葉から今の〈常陽(じょうよう)(こく)〉の正体を知った。


「ある意味での白夜だったのね〜。太陽が二つあるから通常よりは明るいけど・・・」

「いえ、太陽は実質・・・四つありますよ? 普段は見えてないですけど」


 いや、正体を知ったのだが、想定外の言葉をユランスから聞いた気がした。


「へ?」

「公開出来る情報ばかりってワケではないからね? カノンにだけ教えたのよ。これから協力してもらうのだから」


 どうもこの惑星は特殊な四連星の中に存在しているようだ。ミアンスも渋々という感じではあるが話が通っているという意味で教えたのだろう。


「ははは・・・なら船として正解だったという事ね。海があるなら帆船として機能するし」


 私は意図せず用意した飛空船が本来の用途で使える事になり、なんともという感じに落ち着いた。




  §




 そして早朝。

 私はミアンス達と王城の天辺で別れ、ログハウスに戻った。ただ、この時に知った情報はシオンとの共有は可とされたが眷属(けんぞく)達には状況の変化によるため、たちまちは伏しておくようにとも言われていた。

 まぁ言えないわよね?

 この浮遊大陸でも手一杯なのに、その下に地面がありますって話をして旅立つ気持ちになるとは思えないもの。私や眷属(けんぞく)達の国作りが終わり次第ならともかく、今の下界には一切興味がないわね?

 そもそも、異世界と大差ない気がするし。


「さて、二発目はなにを作ろうかしら?」


 錬金工房に戻った私は鎮座した〈錬金釜〉の前で考える。〈魔核球〉の魔力残量を見るかぎり使った分量は微々たる変化だった。

 それこそ一人を復活させる分量を使ったはずなのにまだ残っているのだから、どれだけ圧縮されているのか怖いとも思った程だ。

 それが残り二十九個存在しており、当面は保有魔力を使わず錬金出来る事には安堵した。

 それであっても2メートルを超す大物は難しいのでたちまちは──、


「ナディの作業机でも作りますか」


 そう、ナディがメイドとして色々やるための机を用意する事にした。

 角を尖らせて──ナニ用ではないわよ?

 アイロンも用意するからアイロンがけ用の机でも使えるものね? あとは衝角めいた機能を持たせて有事の際に盾とする物としたの。

 これは亜空間以外で作業をする時の物ね。

 ナディも保管魔法を覚えたいと言ってたし。

 ちなみにナディとアンディの寝室は私達の寝室の屋根裏である。本人がそこで良いと言っていたから急遽用意したけれど・・・アンディと同室で良いのかと聞けば拘束するから問題無いと言っていたのを覚えている。

 おそらく緊縛めいた事をしているのだろう。

 どちらに対してかは謎だけどね?


「とりあえず出来たわね。シオンが見たらこすりつけそうだから後でナディに手渡さないと」


 完成した防弾仕様の作業机を取り出した私は自身の亜空間庫に収めた。というか、まだ寝てないのでどこかしらで寝る必要があるのよね?

 私はミアンスから聞いた方法で寝るけどね?

 それは時間加速魔法で十六時間寝るとして外では十六分しか経過しないそうだ。

 これは時間は有限という意味では重宝するそうで・・・確かに、あっという間という感じがした私である。


「寝た気がしないけど、眠気は吹っ飛んだわね」


 代わりに十六分経って目覚めて、微妙な気分に(おちい)ったわね?





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