第30話 吸血姫は友の成長と未来を知る。
「「えー!? ウォ〇ュレット!!」」
カノンがリンスと会話中の間、私に案内されていた二人はトイレの中で驚愕を示した。
いや、単に便座を見ただけでなく内部の広さにも驚いていたけどね? 元々はカノンが一人で過ごすだけの空間だったけどリンスが私が・・・という感じで今後も増えていく事を予見したらしく空間を拡張して、トイレの個数を増やしたそうだ。
私は驚愕のままトイレの前に佇む用足し者へと声を掛ける。
「それはいいから、ユーコ漏らすわよ?」
ユーコは赤面しつつも中に入った。
「あ! では失礼して・・・」
あとで遮音機能を付けて貰いましょうか?
新しい肉体のはずなのにどこに溜まっていた? というような・・・ね?
するとフーコが苦笑しつつもユーコの所業を私に伝える。
「ユーコ、最後まで出汁を飲んでたから」
「あー、あれの残り全部飲んだの?」
私は大鍋が空になった事に驚いたが、そういうカラクリと知り唖然となる。
「うん。大鍋だけど、その、滅多に食べられないからって。一度死んだ身だし、なにがあるか判らないからってね?」
その所業に至った経緯を知ると、私は二人に教えていない事に気づいた。
「う〜ん? まぁ身体を失っても本体が無事なら完全再生されるわよ? 全裸だけど」
リンスの場合は生まれながらの吸血鬼族だから、ある程度は常識と捉える話であるが彼女達は元々が人族だった。
それも私達がかつて居た異世界出身のね?
だからだろう──、
「え? そうなの!?」
「不死者だって言ったでしょう? 肉体を欠損しても・・・ね? 痛みなく復活するわ。但し、精神干渉は頭痛がするから痛覚無効でも回避出来ないけどね?」
実感が沸いていないのかきょとんと呆けるので私はあえて・・・洗面台の上で左手小指の先を切り落としてみせた。
落ちた指先は排水口に入る直前で血液に変化して流れていったけどね? そして痛みなく指先が生えてきたのを見たフーコは──、
「!? 人外だぁ!」
なぜか驚いた。
「いや、フーコもそうだからね?」
私は呆れながらフーコを諭すが精神干渉に関しては追々でいいわね?
あれは経験しないと判らない部類だし。
フーコはそれだけで納得したのか左掌に右手をポンと叩き付けてリアクションを示した。
「そうだった! というかユーコまだー?」
そして排出者の名を大声で呼ぶ。
すると妙にテカテカした顔で扉の中からユーコが出てくる。
「いやー、気持ち良かった! 生きてるって実感したわ〜」
「ナニしてたの?」
「ナニしてたよ?」
ナニしてたか私はあえて問わないわよ?
フーコはユーコの所業を把握していたみたいだし、ユーコもあっけらかんと返してたし。
やっぱり扉に遮音機能付けて貰おう・・・あえぎ声が私の百合心にも響いたから。
その後は先ほどの話ではないけど注意事項を真面目な顔であえて伝える。
「それと自身でもう判ってると思うけど本体の場所は口外しないようにね? 復活出来なくなるから」
「あ、あのなぜここに・・・あるんです?」
「うん。心臓だったような気がしたのに」
しかし二人は本体の場所こそ把握しているが疑問気だった。私は仕方なく囮と本命の意味を耳打ちして二人に教えた。
「・・・だから願わないと子供が出来ないって意味に通じるでしょう?」
「「なるほど、確かに!」」
「だからこそ口外すると不死者といえど消滅するから絶対に注意してね?」
「「はい! 判りました!」」
二人は閉じた口に手を添え左から右に動かす素振りを私にみせた。私は二人の素振りに苦笑を示したが。
(一応、この子達やリンスの本体にも〈死滅結界〉が付いてるけど言わぬが花ね?)
そう、それを伝えると最悪・・・命を蔑ろにしかねないのだから。
私はトイレから風呂へと移動し、ユーコはシャワーへとフーコは風呂へと入っていった。
ただね? ユーコはナニがお好きな子だと判ったのでダイニングで寛ぐカノンへと伝えたところ。
「いいんじゃないの? 別に害があるワケではないし、適度に性欲は満たさないとね?」
ユーコが隣に居た事に気づきつつも気にしない素振りで宣った。
ユーコ達は家主から許可が出たとして喜んでいたけどね? ただ私の事まで言及したので──、
「シオンも水圧上げて楽しんでるでしょ?」
内心では嬉しいのだけど大雑把に言われるのは恥ずかしかったです。だけど伝えるべきは伝えなければならず私はカノンに要望を伝えた。
「うっ・・・うん。それと扉の遮音付けてくれるとありがたいかなって?」
するとカノンはそれを聞いた瞬間、きょとんと呆けた。
「遮音なら便座にスイッチが付いてるわよ」
「「「「へ?」」」」
それを聞いて同じく呆けるのはカノンの真向かいの席に座る私と風呂上がりでダイニングの床に寝転ぶユーコ達とキッチンでリンゴを剥いていたリンスであった。
§
そんな一幕は置いといて。
急遽増えた人員向けに私はダイニングで寛いだ後、室内の拡張を行った。
一応、トイレや風呂場は早々に拡げたのだけど居室等はまだだったのね。
今は私とリンスとシオンが寝泊まりする部屋しかなく今後の事を考えると少し手狭になってきたのだ。そのうえ客間も無かったのでダイニング奥にあるスペース・・・トイレと風呂の間の空間に扉を設け、専用の客間と眷属用の部屋を用意したの。
客間に関しては女神様しか現れないと予見した設置なので言うに及ばずね?
それこそ来るかどうか判らないけど。
「ユーコとフーコは同室でいいわね?」
「おぉ! ダブルベッドだぁ!」
「これでいつでもイチャイチャ出来るね!」
私は増やした部屋の前で新しい同居人達を案内した。ダブルベッドとそれぞれの調度品を配置したので二人の驚きはひとしおである。
元々が誤令嬢ともあって見る目は確かだしね? 確かよね? うん、大丈夫。
「それは・・・ほどほどにね? それと居室から風呂場とトイレが直通になる扉を設けてるのとレベルが79とはいえ鍛錬は行わないとダメだから装備品類もクローゼットに入れてあるから。ユーコは神官の〈祈祷のローブ〉と〈長杖〉ね? フーコは魔導士の〈隠者のローブ〉と〈短杖〉をそれぞれの着替えを含めて入れてるから。下着類もチェスト内に収めてるし、服に関しては・・・今度街に出て買いましょうか?」
私は勢いに任せてまくし立てた。
シオン達からはシラけた顔をされたけど、ここは女神様達の行いを真似てみたのだ。
しかし二人は・・・聞いちゃいない。
「白いローブだ!! 〈長杖〉はアメジスト付き?」
「黒いローブ? 〈短杖〉でアメジストが付いてる?」
「それらは私の特別製で二人しか使えない物だから売らないでね?」
「売れないよぉ〜。こんな凄い物!」
「うんうん!」
装備品を見て大興奮だった。
アメジストというがこれは闇属性の魔石の事ね? これは二人のスキル運用に不可欠だったので追加したの。
二人のスキルは〈魅了〉と〈催淫〉という物だけど敵に対しては有効なのね? 前者は男であろうと女であろうとユーコの言いなりになるし、後者はフーコの一声で相手の冷静さが無くなり即座に足腰が立たなくなる代物なのだ。
それを二人の〈長杖〉や〈短杖〉に効果を拡げる魔法を付与しているの。主に人族に対して有効なもので亜人や魔族には効かないけどね?
「先ほども言ったけど〈祈祷のローブ〉は神官用ね。効果は治癒拡大と防御陣の強化にあるの。そして〈隠者のローブ〉は魔導士用で主に・・・」
「え? 居ない!? ひゃ! ど、どこを揉んでるの!?」
「あっ! 先っぽ抓んじゃだめぇ!?」
「・・・ね? 光学迷彩ではないけど無意識の陰に隠れるという物なの。どちらも感度は良好ね。ユーコがFでフーコがDと」
「「!!?」」
説明と実地を行いながら合法的に二人の胸を揉みました! うん、シオンとリンスから羨ましいという視線を戴いたけど、あとで二人もね?
サイズアップの原因は巨大魚にあったみたいね? 私も育っていたの・・・Hカップに。
その後は戦闘スタイルとか諸々を教え・・・今後の予定をリンスに問い掛けた。
「リンス、後日だけど大使館は大丈夫? 一応、例の件も報告入れないといけないし」
それは身分登録と回収者の事である。
リンスはガイア大使の予定を固定化したのだろう。人の悪い笑みを浮かべたから。
「はい。いつでも良いそうです。どのみち・・・全てが引っかかってますし」
そう、リンスは管理石板を見つつ報告した。
今はリンスに預けているからね。
「あらら、早いわね? その時は二人も連れて行かないとね? それらも含めて」
私はあれから継続して昇らせていた事を知り、対処していた事に安堵した。
するとリンスは管理石板に描かれた総数を読み上げる。
「ですね〜。回収者で言えば、女八、男二、不明一という感じですね。船はそれぞれ亜空間固定して戻さずに上空に放置ですが・・・八十七だけが全員乗ってますね?」
ただその時に完全な勇者様御一行が一カ所だけあったため──、
「八十七だけ? あぁ十四組ね・・・それは無期限で放っとけばいいわ」
詳細を調べたところ元々が素行不良共の巣窟だったので放置を選択した。
ちなみに彼等は不良の癖に修学旅行は真面目に参加していた不可思議な集まりだったの。
ユーコ達は理解不能のままきょとんと呆けたけどね?
「「???」」
だが、その中に不明が居たことで私は八組の男装女子の名前かと思案する。
「不明一? 冷水聖さんかしら?」
ユーコ達は名前で察したのか、学内で呼ばれていたアダ名を口走った。
「「!! ミズミズが居たの!?」」




