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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第二章・気ままな異世界生活。

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第29話 吸血姫は友の食欲に幸福を見る。


 私とシオンの正体に関しては置いといた。

 女神様達は別の意味で絶句中だけどね?

 それは別の話なので割愛するけど一部の生来スキルが復活したので少しばかり嬉しい私とシオンであった。今はダイニングの席に座りながら、私はこれからの事を二人に問うた。


「ところでユーコは料理は出来るの? フーコは知ってるからいいけど」

「料理ってどこまでの? シェフレベルは無理だよ?」


 実はこれから夕食の用意をするのだけどリンスの獲った魚が大きすぎて三人では調理に時間がかかると思ったの。

 だから今回は助けて・・・調理要員を増やしたわけではないわよ? 本来は二人の未来を見て肉体だけを残して助けたという事ね。

 結果は御覧という有様だったけど当人達も宿ったままあれは勘弁だったでしょうしね?

 話は戻るが、シオンはユーコの言葉を聞いて安堵を示した。


「それなら問題ないわね?」

「そうね。酷い者なら料理どころか・・・災害を()()らそうとするから」


 私もシオンの言葉に首肯を示し、遠い目をして過去を思い出す。

 すると当時を知る者がここにも二人いるため──、


「あぁ・・・フーコと共に上枝(カミエ)と調理実習で同じ班だったっけ?」


 ユーコが引き()りながら思い出し、フーコが青ざめながら思い出した。


「あー、あれは最悪だった。米研ぐのに洗剤使ったり」

「油の温度が高すぎるからって水を入れようとしたり」


 私が羽交い締めに入ってフーコが水を取り上げたのだ。

 そしてフーコが言葉を繋ぎユーコが頷きながら当時を思い出す。


「包丁で他者を(おど)したり・・・王寺(オウジ)と同じ班だった者にね?」

「それから上枝(カミエ)には料理させるな! って空気になったのよね〜」


 私はその事を思い出し二人に問い掛けた。


「というか、あの時に採決したの私だったけど、誰も覚えてないの?」

「あ! そういえば・・・」

「そんな気が・・・」

「普段から沈黙しすぎてたのね・・・面倒避けが悪い方に作用してたかぁ」


 結果は苦笑という反応を(いただ)き、私は昔の自分に(あき)れるしかなかった。するとシオンが空気を読んであっけらかんと私達を促した。


「まぁ過去は過去よ! それよりもリンスが待ってるから、進めましょう?」




  §




 肝心の調理はスムーズに進んだ。

 手順を知る者が多いだけでここまで手早いとはね? シオンとリンスは知らないから補助に回ってたけど日本人が・・・元日本人が二人居るから出来た事でもあるのね?


(いただ)きま〜す!」×5


 今は大鍋に並べた巨大魚の魔物をグツグツと煮ているのだけど巨大魚の骨やアラから採った出汁が凄い濃厚なのよね〜。

 驚くほど(かつお)だったわ。


「うまぁ! 異世界で鍋と聞いて驚いたけど、このプリプリとした食感いいわぁ」

「うんうん。お出汁も大根と絡んで美味しい!」

「生まれ変わって良かったぁ!」

「魔物の生肉の記憶がないから助かった〜」


 ユーコとフーコの二人は大絶賛ね?

 吸血鬼族とはいっても私達の場合は食事で済ませる事が出来るから。最初は吸血行為が必要なのかと聞いてきたので性欲が高まった時に起きるけど衝動無効で回避可能だと言うと安堵してたもの。

 すると私は思い出す──、


「そうだった! ユーコ達は牛肉は好き?」


 私自身がそうだったからという感じでもあるけどね?


「「好き! 大好き!」」


 うん。完全に二人は肉食系よね?

 今も魚肉を頬張ってるし・・・令嬢?

 この場合は・・・やはり誤令嬢かしら?


「牛の魔物肉があるけど食べる?」


 餌付(えづ)けの様相(ようそう)ではあるけれど食べられないものと思ってた食事でもあるしね? 二人は私からの提案を聞き目を見開いて驚くも食い入るように求めた。


「「!!? 食べる!!」」


 普通なら食べられない肉だしね?

 これもSランクに相当の魔物だし。

 ともあれ、その後の私は席を立ち近くに用意した鉄板で肉を焼く。

 二人はその間もこちらを見つめ焼ける肉の(かお)りを楽しんだ。


「おまたせ〜。ヒレ肉のステーキね。タレは岩塩しかないけど我慢してね?」

「「!!? (いただ)きます!」」


 うん。凄い幸せそうな表情ね?

 ユーコは満面の笑みでモグモグとフーコは愉悦(ゆえつ)な表情で少しずつ口に放り込む。シオンはガッツリとリンスはフーコと同様に上品な素振りで肉を味わう。


「ごちそうさまでした!」×4

「おそまつさまでした」


 こうして食事は無事に終わり、私は片付けを行いながらリンスとシオンに目配せし満足した素振りのユーコ達に提案した。


「二人はお風呂に入ったらいいわよ? まぁシャンプーとかコンディショナーはまだ準備中だから無いけど汗をかいたでしょう? ねぇ? フーコ」

「!? お、お風呂があるの!?」

「一応ね? シャワーもあるから好きな時に使っていいわよ?」

「「!!?」」


 二人も一応は女の子ですから。

 食事の準備中も「汗くさくないかな?」ってフーコがユーコに聞いていたもの。

 生まれたての肉体だから異臭はしないけど、やっぱり気になるものだしね?

 一応、清浄魔法を教えるつもりでいるけどたちまちは慣れ親しんだ方法を伝えたのだ。

 私は用足しの場所も必要と思い──、


「それにトイレもあるから・・・シオン案内してあげてね?」

「判ったわ〜。二人とも、こっちよ〜」

「トイレがあったぁ」

「よかったね? ユーコ」


 シオンにお願いして案内してもらった。

 今のままだと・・・だったしね。

 やりかねない雰囲気がユーコから漂ってたもの・・・やっぱり誤令嬢の方が正しいわね。

 すると、片付けを手伝っていたリンスが私の元へと向かってきた。


「カノンさん? お二人は一体?」

「自己紹介はまだしてなかったわね? リンスの妹分といえば手っ取り早いけど元人族で転生した者かしら?」


 それは二人の事への質問だった。

 私はリンスに対して顔合わせは行ったが名前や素性までは教えて無かった事を思い出し軽い調子で素性だけ明かした。

 するとリンスは怪訝な表情を浮かべる。


「て、転生・・・ですか?」

「ええ。元々が勇者召喚で呼ばれた者でね? 私も勝手知ったる者だったから救ったの」

「!? で、では、もしかして」


 そう、軽い調子で救ったと言った途端、リンスはそこで察した。勇者召喚で呼ばれた者。

 最近出くわした者と言えば理解は早い。


「そうね。昼間に上を飛んでた一味の二人ね? まぁ元々が闇属性持ちだったから」


 私は苦笑しつつも首肯を示しリンスに主な素性を明かす。


「! なるほど・・・隷属(れいぞく)陣の洗脳が不完全だった事とレベルアップに合わせてレジストしたと」


 リンスは目を見開き二人の状態を把握したような言葉を呟く。私は知らないなにかをリンスが知ってると思い興味本位で問い掛けた。


「なにか知ってるの?」

「はい。闇属性持ちの人族には隷属(れいぞく)耐性がありますから・・・それで護られたのでしょうね」


 すると、リンスはどこかで見た経験でもあるのか若干後悔の(にじ)む顔をしながら首を横に振りつつ苦笑で返してきた。


(過去に友達だった人族との間でなにかあったみたいね?)


 リンスの過去は追々という事で、私は回収時を思い出して嬉々として呟く。


「なるほど。不完全ゆえに浸透するのは魂の表層だったという事ね〜」


 それは魂を削り戻した時に内側が綺麗だった事にあるのだ。二人が知れば絶叫する手段よね。皮膚の薄皮を生きながらに削ったようなものだから。時が止まってなければおそらく発狂して消滅していたはずだもの。

 するとここで私の楽観を(くつがえ)す言葉をリンスが真面目な表情で発する。


「それでも付与した回数とレベル次第では書き換えも可能ですから回数がどの程度か・・・ですね?」

「そうなの? 最初期の洗脳以降は私が破壊したから一回程度のままでしょうね? ただ他の島までは判らないけど」


 私はこの言葉を聞いてきょとんと(ほう)ける。私は当時を思い出しつつ・・・他の島の事を改めて危惧(きぐ)した。

 それは他にもある事を忘れてたともいう。

 その直後、リンスが福音に聞こえる情報を私に教えてくれた。ただ、どことなく心配そうな表情になっているが。


「でしたら・・・隷属(れいぞく)履歴を(さかのぼ)るしかないですね?」

(さかのぼ)れるの?」


 私はその隷属(れいぞく)履歴なるものがあると知りリンスに問い返すと心配そうな表情のまま教えてくれた。


「はい。まだ肉体が残ってるなら、そこから把握は可能です」


 私は腐敗の始まった犯され中の二つの遺体を使い魔を通じて把握する。この時の私は〈魔導書(アーカイヴス)〉で調べて陰詠唱と鍵言を発したのだが、出るわ出るわだった。一応、第八十八流刑島に残る者達も総じて調べた。


「ちょっとまってね〜。ふむふむ・・・三回だわ、二人とも。他の者達は全員が五回ね?」


 気絶した他の三人の男子達は除くけど、全員が五回だった。ちなみに三人の男子達は去勢(きょせい)されて敵前逃亡として操舵手と共に犯罪奴隷で強制労働をさせられていた。酷い仕打ちをするわね?

 そんな結果はともかくリンスは回数を聞き少し安堵した表情をみせる。


「三回ですか・・・ギリギリというところですね。五回の者は(すで)に別人です。闇属性持ち以外は二回目で、闇属性持ちは四回目で心が崩壊して別人格が植え付けられるので」


 リンスの表情はともかく、その言葉はどこか嫌悪感を(にじ)ませていた。やはりどこかしらでその所業を見たのだろう。

 私は納得しつつも使い魔の視界や耳からトンデモナイ一言を拾った。


「そうなのね? なら二人だけがその付与を回避した・・・いえ、最初から捨て(ごま)だったみたいね?」


 それこそ強制労働の男子達も同様に捨て(ごま)という者達だった。流石の一言にリンスはきょとんと(ほう)ける。


「え?」

「使い魔からね。斥候(せっこう)としたのは国王の判断で素行不良だったから切り捨てたとあるわ。残りの者達は従順だったから引き続き書き換えを行ったみたいね。他の島も同じ事をしてるらしいから素行不良者の回収は必須になったわね」

「となると・・・」


 使い魔で見聞きした内容から私は思案しリンスに提案する。それは残りの島の状況から斥候(せっこう)が出ると予見したからだ。

 リンスもその言葉で察し私は亜空間庫から管理石板を取り出して付与変更した。


「ええ。他の結界仕様を変えて該当者の魂だけを回収しましょう」


 そう、魂だけ回収するのだ。

 中身の宿る肉体は不要だ。隷属(れいぞく)履歴で回数が少ない者のみを選ぶのも忘れずに・・・最低三回が限度ね。

 四回目は別人だから心に宿る記憶そのものも消え去っているとみて間違いないのだから。





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