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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第十一章・ゴミ掃除は前途多難。

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第260話 吸血姫は掃討案に悩む。


 セイアイ魔国を滅した後、


「船体偽装、展開!」

「了解! 船体偽装、展開」


 三番船は荒れ狂う海上を進みつつ船体形状を覆い隠す特殊な結界を展開した。

 これは風があれば帆船に偽装し風が無ければガレー船に偽装する大変画期的な結界である。

 今は帝国領の手前だ。帝国船籍の船が行き交う場所を進むため、大変目立つ金属製の大型船のままではいられなかったのだ。

 奪いに来る可能性があるから。


「これを展開したのは初めてだけど、無事に帆船に見えているかしら?」

「俯瞰して見ない事には分からないね?」

『内側から見ると三番船のまんまだよ?』

『滑走路はそのままだし。各種兵装もね』

「人族から見るとそう見える仕様だから?」

「出くわしてみない事には分からないかもね」


 そう、船橋内にて自分達の置かれた状況が分からずじまいだった。

 すると船橋内に、


「問題ないですよ。上から見ても帆船でした」


 ポンコツ女神の一人が顔を出した。

 笑顔で微笑みかけて私の隣に立っている。


「「え!?」」


 私とマキナは突然の訪問に目が点だ。


「え? 実況中に降りてきたの?」

「途中で退出しました」

「そう」


 他の者達は誰だろうという顔である。

 顔立ちはエロフのユウカを更に美しく整形したような感じだ⦅ユウカに失礼では?⦆例えようの無い美貌の持ち主と言っているのよ。

 別に⦅自画自賛ですね⦆好きに言って。

 セミロングの青銀髪に白い肌。

 垂れ目の茶瞳。綺麗な鼻筋。

 Gカップの胸と特大級のお尻。

 マキナより少し背の高いお嬢様が現れた。


⦅やっぱりお尻が大きいんだぁ⦆

⦅姉上は私達よりも小さいよね⦆

⦅お母様と同じで96センチよ⦆

⦅お父様の好みって事なのねぇ⦆

⦅お父様の好みでこのお尻とぉ⦆

⦅ミカンスがうるさいってさ!⦆


 ちょっと黙りなさいよ。ポンコツ女神共!

 それと人のお尻サイズを語るんじゃない!

 服装は白ブラウスと青いプリーツスカート。

 黒ストッキングを穿いて青いローブを羽織っていた。腰には短杖(スタッフ)もあった。

 するとマキナが顎を上下させながら、


「えっと、お母様。この場合はどう呼べば?」

「あー、あちらの、戸籍上の名前でいいわね」


 私に問うので私はミカンスに問いかけた。

 それは何故か存在していたあちらの名前だ。

 いやね、私も偽名使う必要が無いじゃんって思ったのよ。それを使えば普通に入学が出来たのだから。実は私にも、国籍があったの。

 マキナやシオンにも当然あって、ね。

 あちらに行った時は開いた口が塞がらなかったわ。そちらでは神月(カヅキ)夏音(カノン)って名前だった。シオンが至音(シオン)ね。二人揃って夏至ってね。夏至で分裂したから、そう名付けたとか言っていたわね。

 マキナは幹菜(マキナ)だったけど。

 そんな自分語りはともかく。

 ミカンスは笑顔で応じてくれた。


「問題ないですよ。カノン姉さん」

「普通に姉さんでいいわよ。シオンに対しては名前付きがいいでしょうけど」

「分かりました。ではそう呼びます」


 私はそのうえでこちらに来た経緯を聞く、つもりだったが、船員達が『誰なの?』と言うように顔を出したので、紹介を行う事にした。

 先ずは会った事のある者達に釘を刺す。


「リンスは一人だけ会った事があったけど」

「え? 一人ですか?」

「そうそう。この子達の長女の方ね。リリナ達はかなり前に会ったけど」

「「あっ!」」

「名前を言葉には出さないでね」

「「は、はい!」」

「お二人が会っていて?」


 リンスが過去を思い出そうとする。

 地上に降りてきた時だから、思い出すのに時間がかかりそうね。

 するとその直後、ルーナが駆けてきて、


「あー! 魔じ」


 大声で叫びそうになったのでマキナが割って入り口元を覆った。ここにも知る者が居たか。


「ルーナ、ストーップ!」

モガモガ(なんで)? モガモガ(ちょっと)モガモガ(苦しいよ)!」


 そういえばユランスが頻繁にルーナの元へと遊びに行っていたわね。

 ミカンスもこれには苦笑であった。


(地上民で会った事のある者はもう居ないと思うけど)


 そう、思ったらアオイとサラサも居たわ。

 ミアンスとユーンスの元眷属だから。

 アオイはルーナと共に来ていて、


「ぐすん」


 涙目になって拝んでいた。

 マキナはアオイにもツッコミを入れた。


「アオイ! その(ひと)違うから!?」

「ふぇ?」

「「・・・」」


 サラサ達は気づいていたが沈黙していた。

 思惑があって現れたと思っているみたい。

 それでユーンスが頻繁に降りて⦅いました⦆本人からの暴露で判明したわ。

 私はリンスに耳打ちだけして、


「!?」

「内緒よ?」

「は、はい!」


 姿を知る者達に釘を刺し終えた。

 名前だけなら問題は無いけどね。

 今はあくまで⦅一人のエルフで⦆見ろと。

 そうしないとアオイみたいな事になるから。

 そしてミカンスの他己紹介を行った。


「この子の名はミカ・カヅキ。故あってこの世界に住んでいるエルフの一人よ」

「どうも、ミカ・カヅキと申します」


 所作だけは綺麗よね。いや、所作も含めて綺麗なのよ。元々王族とか聞いた事があるしね。

 略礼でいいのにカーテシーで挨拶してるし。

 詳しい紹介をすると予の女神・土壌神ですって言っているのと同じだから、伏せたけどね。

 そしてここからが本題だ。


「それで、急にどうしたのよ?」

「お力添えに来ました」

「お力添え?」

「ええ。ここから先は領分ですので」

「はいはい。そういうことね」


 領分。これは管理地って意味ね。

 何処に何が存在していて、何処が危険か教えるために。あとは⦅経験水をお願いします⦆それが本題なのね。どうせ⦅不完全を⦆下位互換だとかシオンが言っていたわね、そういえば。


⦅憑依体もそれ用に調整済みです⦆


 どちらにせよ、この地のゴミ掃除が終わるまでは、私達もいただけないけどね。

 その後は彼女(ミカンス)の案内で運河を遡上していく。

 この運河を通り抜けると北極へ出るらしい。

 但し、


「あまり早い速度で抜けないように。この先に船速を計測する監視網がありますから。少しでも超えると超過分が停泊税に加算されます」

「了解よ。微速で維持」

「了解! 微速で自動航行します」


 通り抜ける際の速度だけは厳しいらしい。

 何かあったのかしら? 帆船で出せる速度なんて微々たるものだと思うけどね。

 飛空船でもそこまでの速度は出ないし。

 特にこの氷の大地ではほぼ魔法的な要素は使えないだろう。計測方法は⦅目視と精密時計ですね⦆ああ、線と線の間で測って計算すると。

 精密時計も⦅機械仕掛けです⦆あらら。

 そこだけは魔法的な要素は抜きと。


「それなんて道交法?」

「聞くだけなら道交法だと思う」

「一種の取締装置があると?」

「いえ、全て人の手で行われています」

「人海戦術かぁ」

「人海戦術で常時監視していると」

「都合の良い部分だけ取り入れたのかぁ」


 船橋の船員達も気にはなっているようね。

 ミカンスの言っている事の真偽をね。

 そして言っている側から双眼鏡の向こうに、


「あ、あれ?」

「あれですね」

「橋桁に倒れたオッサン達が見える」

「オッサン達の大半は伸びてるけど」

「あれかな? 暴風を浴びた的な」

「だろうね。よく無事で居たもんだ」

「それとさ運河の両端に鉄塔があるよ」

「色つきのワイヤーが張られているね」

「距離にしていくらだろう?」

「1キロ強の等間隔で並んでいます」

「ノットで割り出すつもりかぁ」

「そうなりますね」


 監視網の一角が見えてきた。

 おそらくこれが数十箇所あるのね。

 頻繁に引っかけては超過税を徴収すると。


「加算税はいくらなの?」

「3ノット上限でノット毎に大白貨十枚です」

「は?」×16

「最微速に切り替えて! 今すぐ!」

「りょ、了解!」


 危なっ。この船の微速は5ノットだ。

 3ノット上限を軽く凌駕してしまう。

 最微速で2ノットだからギリギリだった。

 まだワイヤーの手前だ。

 減速してからでも間に合った。

 ミカンスも説明不足だった事に申し訳ない表情に変わった。いや、私も聞かなかったしね。


「て、停泊税は一日・大白貨一枚です」

「確か、大白貨って一番上の貨幣で」

「十億リグね。円換算すると」

「百億円ですね。それが十枚必要です」

「そこに停泊税が追加されて」

「一日の停泊税を含めたら十一枚かぁ」

「ボ、ボロ儲けじゃないの?」

「その税の使い道は?」

「派兵用の軍事費ですね。停泊税と加算税が支払えない者は投獄されるか、船が奪われます」

「おぅ」


 マキナまでも船員達と同じ反応だわ。

 支払えない事はないが亡国となる帝国に支払うつもりなど毛頭無い。精々、停泊税までだ。

 一先ず速度で引っかかると船の上部へと書簡を飛ばしてくるそうなので甲板人員には警戒してもらった。

 その間の私はミカンスと作戦会議した。


「とりあえず、帝都に近い箇所までは」

「ええ。船で進んだ方が良いです」

「帝都に近づくと停泊して」

「潜入ですね。亜空間の裏道を抜けて直接片付けましょう」

「う、裏道? そんなのあったの?」

「姉上が緊急で設ける通り道です」

「ああ、直接帝城に行くわけではないのね」

「ガチガチに固めている中を進んでもいいですが、近づけば即座に蜂の巣ですから」

「え? 警告はないの?」

「無いですね。人民であれ完全無視です」


 想定外とはこの事か。

 他国では割とザルだったけど帝国はバカ皇帝のお膝元だけあって防御に徹しているらしい。

 おそらくはスキルの全ても封じられているだろう。それは神のスキルでも⦅同様です⦆適用しているのかぁ。度し難いわね。


「亜空間からの通り道は問題ない?」

「出た先に何か有りそうですが、亜空間だけはダンジョンコアでも、どうする事も出来ませんから、気にするべきは」

「亜空間の出口に注意っと。陽動は?」

「終わった後に全面掃討で良いと思います」

「ああ、権限を奪い返してからね?」

「はい。そうしないと帝国人に適した状態のままですから」


 となると船員達には待機させておいて、開放後に殲滅戦を行えばいいわけか。

 ただこれも、上手くいけばいいけどね。





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