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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第十一章・ゴミ掃除は前途多難。

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第250話 将来を見据える吸血姫。


 三番船が大運河を遡上してきて直ぐ、


「異世界に駅がある (だと)!?」×50


 鉄道の事を知らされていなかった者達が大声を張り上げた。知っているのは半数だものね。

 工事に関わった者、設置時に知った者。

 上界から乗ってきた者、運転していた者。

 商会の者、守秘義務を額面通り守った者。

 最後は妹が関わっているから会話の中で知ったのよね。漏らすと刺激的な罰を与えると脅したら首を何度も縦に振って同意していたわね。

 どう刺激的かと言えば、


「これで魔力糸(まりょくし)循環を喰らわなくて済む」×6


 以前、リンスが行った魔力強制流入を与える予定だったのだ。吐いていれば実行が出来たものを、残念。誰もが安堵の声音を吐いていた。

 一先ずの私は後部下倉庫から運搬車を取り出し後部上倉庫の起重機を外に向けて展開した。

 そして倉庫人員と手持ち無沙汰の男手に、


「レイキ達は経験者だったはずだから、これに乗ってホームの貨物を岸壁側に持って行って」


 二台の黄色運搬車の横に立ち指示を出した。

 私も乗れない事はないが他にやる事があるからね。駅の設置という大事な仕事があるから。

 まぁ案の定きょとんをいただいたけども。


「「え? 免許持ちって言ってたっけ?」」

「言わなくても転生時に読み取っているわよ」

「あ、ああ、そういうこと?」

「わ、分かりました」


 私が呆れながら教えるとそれだけで納得したレイキとコヨミだった。

 二人はそのまま運搬車に載せてあるヘルメットを被り、エンジン音を響かせながらツメを動かしてパレット毎、岸壁へと移動させた。

 次いで、楽しげに線路がどーのと語り合う、


「これも適材適所ね。そこの適材適所(シンとケン)も働きなさいよ!」

「「は、はい! ただいま!」」

「残りのトウヤとシュウも、アレが気になるなら二人を手伝ってあげて。連結方法は同じよ」

「「!? 分かりました!」」


 余りまくっている男手をあえて利用した。

 シンとケン、トウヤとシュウ。

 鉄道オタクと運転士希望を。

 他の男手にはポイント切り替えを命じた。


「ゴウとタツト、シロとリョウ、ランとリュウは転てつ機の側に立って、四人の指示通りに動かして」

「了解!」×6


 最後の五人だけは手を汚せない業務を熟しているのと格好的に作業が出来ないので別の仕事を与えた。マサキは男の娘のスカート姿だし。


「ユウキとマサキとフユキは、あとで私と共に付いてきて。少しだけ遠出するから」

「「「は、はい!」」」

「「「・・・」」」

「ぶー垂れるユウカとニーナとフーコもね。別に獲って喰おうとか思ってないわよ」

「「「よかったぁ〜」」」


 胸をなで下ろすってどういう意味よ?


「何よ、その反応? 失礼ね」

「「「ご、ごめんなさい」」」


 そりゃあ、色々と気になるところはあるけど眷属の男達を寝取るつもりは毛頭ないわよ!

 ま、オマケが付いてきたがこれは仕方ない。


「さて、コウシとトウカは積み荷の確認。今回の補給は食料が(ほとん)どだからね」

「「了解!」」


 レリィ達も気になるのかコウシ達に付いていった。自発的に動く者に指示出しは不要よね。

 後上部倉庫の人員も自身の仕事が出来たので移動を開始した。後部下倉庫の者達も手伝いに向かった。今回は物量が物量だからね。

 最後の人員だけは手持ち無沙汰なまま、


(ホームのベンチに座ったり、客車に入って寛いでいるわね。あれで制服を着ていたら女子高生だわ。いや、女子高生だったわね・・・)


 それぞれが思ったままの動きを示していた。

 シオンとマキナ、ナギサとリンス達は大使館となった駅舎に入っていったけどね。

 ルーナとマイカもそちらに入っていった。

 このまま中で打ち合わせを行うのだろう。

 魔王国以外もそこに入る事になるから。

 今回はマキナとナギサに任せているので、


(客車の人員連れて行きますか。降ろすのも面倒だし。それとタンク車も連結しないとね)


 運転席に移動してユウキ達に手招きしつつ乗ってもらった。オマケ人員が大量に増えたが。

 しかも、ホームで寛ぐ者まで乗り込んだし。


「うわぁ。ボックス席だぁ」

「私達も最初見て驚いたわよ」

「座席の質感まで同じなんだよ」

「自動ドアとつり革と網棚付きだしね」

「精巧に作りすぎでしょ? これ」

「「「???」」」


 アオイもサラサもラディも降りてないわね。

 座った者達の言葉を聞いてきょとんだから。


「トウカ、タンク車を十両連れていくから」

「了解しました。シン達に伝えておきます」


 私はタンク車を連結して客車を前進させた。

 それは広場へと待機させる予備タンク車ね。

 今は昼間の時間帯だから採取は出来ないし。


(今後は十両ずつ入れ替えていく事になるかしら? ああ、そうか、駐在大使だけでなく商会の交代人員も置く必要が出てきそうね・・・)


 たちまち三番船から定期的に行き来すればいいけどね。主に採取時くらいしか訪れないし。

 封印解除するまで国交どころではないから。

 徐行しつつ、信号を見て、停車する。

 そして近くに立つゴウへと命じ、


「北側に向かうポイントだけ切り替えて」

「りょうかいっす!」


 切り替えと信号が変わるまで待つ。

 鉄道オタクと運転士達の知識が役立つわね。

 その際に背後を一瞥すれば懐かしの制服に着替える者が多数だった。サラサ達が呆然だわ。

 私は呆れ顔で振り返る。


「あらら、異世界に女子高生が居るわね」

「元女子高生相手に失礼でしょ!?」


 反応したのはユーコだけだったけど。

 ユーコ以外の面々は苦笑していた。

 女子高生だった事を忘れているみたいね。

 それは私もだけど。


「そういえば女子高生だったわ。私も」


 するとユーコが反対を向いてボソッと、


「御年」

「あん?」


 呟いたので殺気を飛ばしてあげた。

 殺気で青ざめるユーコ。


「な、なんでもございません!」


 ユーマは姉の行いに溜息を吐いていた。

 ホント、ユーコは失礼よね。

 私とマキナ達の年齢を問うのは御法度よ。




  §




 それからしばらくして、


「今はまだトンネル内だけど降りてね」


 私達の乗る客車は広場の手前で止まった。

 私に促されたユウカ達は、車外へと飛び降りて客車の前から足下を眺める。


「ああ、線路がここまでしかないんだ」


 私も客車から降りてユウカの問いに答えた。


「これから、こちらにも操車場を置くからね」


 すると植樹に関わっていた二人が反応した。


「以前、見た時は何のための広場なんだろうって思ったけど?」

「このために空けていたんだね」

「そういうことね」


 私達が居る現在地は街道から奥まった場所にありサラサの父親を倒した場所でもあるのだ。


(あら? ラディが驚いたまま固まってる?)


 周囲に燃える木々が立ち並んでいるものね。

 サラサは事情を語り、納得した顔になった。

 燃える木々の側には大運河も通っており、これから行う作業のあとにでも、岸壁と桟橋を整備する予定である。小舟向けの桟橋だけど。

 今回は予定よりも多く付いてきたから、


(意外と早く済みそうね。アキ達もいるし)


 私はそれぞれに仕事を与える事にした。


「元ドワーフ族は線路の敷設をお願いね。敷設する専用線のブロックはこちらに置いておくから浮かせながら設置しなさい。これが図面ね」

「は、はい!」×4

「信号と連動する転てつ機もあるから注意よ」

「分かりました!」×4

「元エルフ族は大物だけど、貯蔵タンクの設置をお願い。アキが責任者として指示してね」

「は、はい!」

「りょうかーい」×4

「サラサ達は新女王と婿として現場監督ね」

「現場、監督ですか?」

「それは何をすれば?」

「怠け者が出たら私に報告すればいいわ。のちほど大変刺激的な罰を怠け者達に与えるから」

「「わ、分かりました」」

「ひっ!?」×9


 最後は暇そうにしている二十九人を相手に、


「私とハルミ、サヤカとミズキを中心に大運河へと岸壁と桟橋の設置を行いましょうか。〈潜水〉スキルを持つ三人は、水着に着替えてね」


 大運河で必要となる残りの作業を命じた。


「み、水着、あったかな?」

「お姉ちゃん達は持っていたような気がする」

「必要なら自分で創るのもありよ?」

「「そこまでスキルレベル上げてないよぉ」」

「慣れたら、これくらいは創れるでしょう?」


 ドライスーツに着替えたら文句が出たが。


「「あー! ズルい!?」」

「それならこのドライスーツを着る?」

「「うん、そっちがいい!」」


 結局、私が提供する事になった。

 他の者達は苦笑しつつ、動きやすい作業着へと換装していたけれど。

 するとミズキがおどおどと質問した。


「カ、カノンさん? 私の〈潜水〉スキルは」


 おそらくミズキはスキルレベルを引き上げていない事を言いたいのだろう。

 過去の教訓で潜らないとしているのかもね。

 だが、私はスキルを持つ者を遊ばせておく事を良しとしないため、処置済みを知らせた。


「カンストさせておいたから安心なさいな」

「えっ!?」

「人手が必要な時に新たに取得させる暇は無いもの。〈潜水〉スキルは取得条件が厳しいから複製も叶わないしね」

「ああ、それで」

「さて、ミズキもドライスーツを着なさいな」

「あ、ありがとうございます」


 そうして、ちょっとしたひと悶着もあったが私達も岸壁と桟橋設置の作業に取りかかった。


(追々必要な代物だけに雑には出来ないわね)


 サラサ達、神獣族は昼間に生きる種族だ。

 魔族から派生した種族と異なり、この樹液が生命線になるはずだから。

 魔王国への売り物以外でも、当たり前に使う品物になるだろう。

 現在行っているこれらの作業の大半は、その思惑も加味しているのだから。





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