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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第十一章・ゴミ掃除は前途多難。

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第249話 吸血姫は後始末を楽しむ。


 旧竜王国を封じた私とキョウは合流したミズキとアンを連れて湖の近くまで飛んでいった。

 その際に水神殿が見えてきたので着地して、


「ここがそのまま生神殿に変わると」

「今は誰も居ないからゴーストタウンみたい」

「ホント、そのままゴーストタウンだね」

「人の営みがあった形跡を残したまま忽然と消えたって事だよね」


 四人で水神殿の近隣を見て回った。

 そこは湖畔の小さな街として存在していた。

 近くにプカプカと死体が浮いていて、死者の亡骸は還元の影響下に無い事を改めて知った。


(サラサの父親が最後まで生き延びるとはね)


 魂魄が無くなっているから死んではいるが。

 私は水面に浮かぶ死体を魔力還元で消しつつ呆然と見て回る三人に、


「それはそうと、神殿脇に丁度良い空き地があるから、いただいていきましょうか」

「「「はい?」」」


 あっけらかんと意味不明な思惑を語った。

 意味不明に捉えているのは三人だけね。

 実はニナンスからそこは神殿の所有地となっていると示されたのだ。所有地に死神殿までの通路を設けるつもりらしく、隠すための建物が無いので適当に用意して欲しいと願われた。

 願われたから、魔王国関連の施設でもと話し合って、今回用意する事になったのだ。

 私は地面に触れながら、近くの街道を視界に入れて、一人で思案する。


(大きさ的に、操車場に使えそうね)


 三人は呆然とだだっ広い所有地を見ているだけだった。その間の私は随分前に暇つぶしで創っておいた大きな魔道具を選択する事にした。

 本当は上界向けに用意した代物なのだけど。

 そして敷地周囲を鉄条網付の柵で覆いつつ、


(先ずは転車台っと。そのまま固定敷設式の)


 1435ミリの固定式線路を地面に並べて結合させていく。レバー式の転てつ機を間にかませて、必要数の屋根付ホームを並べていく。

 神殿裏に建物を取り出し敷設品に杭を打つ。


(ニナンスが早速気づいたわね。建物内の奥にダンジョンの門が出現っと)


 柵を跨ぐように神殿裏へと渡り廊下を繋ぐ。


(あとは焰の森にある広場へと門を開いて魔王国の経路を繋ぐ。広場の方はあとから設置ね)


 私は一人で粛々と作業を進め、線路端。

 鉄条網の一角に空間的な大穴を開けた。

 まぁ局所的に近代的な代物が現れたから、


「え? な、なに?」

「て、鉄道が出来てきてるぅ」

「こ、ここにきて? なんで」


 三人は呆然顔から疑問顔に変化した。

 私は三人の反応に応じる前に最後の大物を並べていく。銅製の大型タンク車が数百台。

 貨物車が数百台、馬小屋付台車が数百台。

 最後に動力車が十台、車庫内へと並んだ。

 この動力車の主機は大型四輪駆動車に使っている爆発式の魔導エンジンとなっている。

 微量の空間魔力を取り込んで変速機で速度を変化させる仕様ね。減速は逆噴射のみで行う。

 金属摩耗での修理が面倒なので摩耗しない付与も与えている。一応、鉄道以外では使えない防御機能付だ。勝手に奪われて空を飛ぶ事に使われてしまったら堪らないからね。

 最後に必要台数の車両を繋げていき、


「いっちょ上がりっと!」


 事前に打ち合わせしていた相手に通知した。


「開通をリーナに伝えて、了解と来たわね」

「カノンさん? これは」

「「なんで鉄道がここに?」」


 そしてようやく三人の疑問に答えてあげた。


「魔王国との貿易路よ」

「「「貿易路!?」」」

「実は今回から亜空間のトンネルを貿易路にするつもりなのよ。ここから魔王国の南端は割と近い位置にあってね、そこに専用の操車場と魔王国を走る鉄道の始発駅があるの」


 そう、これは亜空間を用いたトンネルだ。

 このトンネルは文字通り亜空間を経由しているが、通ったとしても魔族や亜神が停止する事はない。但し、悪意や偽善を持つ人族は除く。


「いつの間に?」

「ま、まさか?」

「滞在中に拵えたの?」

「そのまさかね。まぁ全ての領地への敷設だけは出来ていないから、今のところは王家直轄領を通る南端と王都までの経路しか無いけどね」


 今のところはそれだけしかない。

 実はルージュ領内にも場所の確保だけは出来ていてあとは線路を繋ぐだけとしているのだ。

 寄港時に工事を終わらせて出港する運びね。

 あとは楼国(ろうこく)内へと繋ぐ経路も準備中で、そちらは⦅私にお任せあれ⦆ユランスが絶賛工事中である。これが開通したら海賊に怯えなくて済むわね。但し、帝国領は除く。


「今回は丁度良い品物があるから、魔王国内に居る亜人族向けの商品にもなるでしょ? 元々は上界と下界を通す貿易路でもあるのだけど」

「これが、じょ、上界にも繋がるの?」

「大丈夫なの? 昇りたい勢が居るのに」

「何か心配になってきた」

「失礼ね。最初から亜空間のトンネルって言ったでしょ?」

「「「あっ!」」」


 心配する気持ちは分かるわよ。


「そこは不死者しか通れない経路よ。普通の人族が通れるわけがないでしょ?」

「そういえば」

「そうだった」

「あはははは」


 これを三女と話し合っている時も、ミアンスが猛反対した⦅懐かしいわね⦆何か言ってる。

 最後は制限を持たせる事にして許可が出た。


「まぁ例外措置はあるけどね」

「「「例外措置?」」」

「ええ、既存の魔族と亜人は不死ではないから例外的に生神殿の銀青色のロザリオを持てば私とマキナの加護が加わって、いつでも通る事が可能になるの。当然ながら悪意を持てば弾かれて偽善であれば、その場で酩酊する罰付きよ」

「「「はわわわわ」」」


 あとはロザリオを所持せず通る事は叶わずであり、化けた人族やただの人族が持てば銀青色のロザリオに魂魄が吸い込まれ、即死となる。

 人族が私達の加護を受ける事は実質不可ね。

 例外は特大級の徳のある者くらいだろうか。

 そんな者はこの世界には居なさそうだけど。

 そうして私は最後に一言だけ付け加えた。


「それと、あとで魔王国からの車両が到着するわよ。あとはこの操車場の柵外は生者は出られないからね。外は一種の亜空間と化しているから。例外は渡り廊下で繋がった生神殿までね」

「この場所だけがある意味で異界と」

「だから周囲を封印したのね・・・」

「不必要に侵入されないように」

「それもあるけど、一つはサラサ達の思い出の地だからね。だから建国までは封印は継続よ」

「「「なるほど」」」


 そうこうしている内に、


「あ、音が響いてきた」

「ディ、ディーゼル?」

「一応、気動車だからね」

「ガタンゴトンの音もすると」


 魔王国から車両が到着した。

 それは前後の気動車に挟まれた十六両編成の貨物だった。


「「お待たせしました!」」

「「「シンゴとケンゴ!」」」


 運転席に乗っているのは鉄道オタである。

 実は、あの四人は鉄道オタクだったのよね。

 これらの敷設に関して一番頑張ったのは、


「おぉ! 凄い規模の操車場が出来てる!」

「ようやく、魔王国と、繋がったのですね」


 私達を陰ながら応援していたケン達だ。

 ルージュ家との繋がりがあってこそね。

 空を飛びながらこちらに向かってきた二人。

 ケンは歓喜、マイカは複雑そうな顔だった。

 一応、二人にはこの件を伝えてあった。

 現地を見てからの判断だったけどね。


(ここが一時的に大使館にもなるから、丁度良いと言えば丁度良いかもね・・・)


 実はマイカからは先の魔国の行いから領有権を主張する真似はしたくないと言っていた。

 だが、国交を持つ以上は大使館が必要になる事も伝えたところ渋々と了承してくれたのだ。

 なので貨物駅兼用の魔王国大使館とした。

 ここに住まう者は神官となりそうだけど。

 気動車から降りてきたシンゴは気動車の真ん中へと収めている運搬車を取り出して、貨物車に載ったパレット毎、大荷物を降ろしていく。

 クリップボードを持ったケンゴは、


「補給品の最終確認をお願いします」


 私に署名を求めてきた。


「はいはい。確認するまで待っててね」

「承りました」


 これはルージュ領に向かう間に消費されるであろう人員達の食料である。まぁ肝心の第一便が私達の補給というのは少々あれだけどね。


(水耕栽培が可能な種子と、根菜類、牛肉と羊肉もあるわね。数にして、三ヶ月分はあると)


 もちろん、一人頭の分量で、だけど。

 現在地からルージュ領まで最大で三ヶ月はかかる。これは普通に進めばの話ね。これが戦闘船速になると三週間で到着してしまうけどね。

 確認を終えた私は署名を行って待機するケンゴに手渡す。


「確認したわ、ありがとう」

「では、私達は戻ります」


 ケンゴは復路の気動車内に戻り、荷下ろしを終えたシンゴは運搬車を固定して自身が乗ってきた往路の気動車内に戻った。

 そして、操車場の信号を確認したケンゴ達を乗せた貨物車は亜空間トンネルを抜けて魔王国内へと戻っていった。

 その様子を見ていたキョウ達は、


「あ、あれが全部」

「ふ、船への補給品?」

「どうやって持ち帰るの?」

「ん〜? 操車場の位置的に岸壁が近いし、三番船に戻ってきてもらおうか? カノンさんの亜空間庫に収まる分量であっても、なぁ?」

「そ、それがいいかもしれませんね」


 積み荷を眺めて呆気に取られていた。

 確かに戻ってきてもらう方がいいかもね。

 三番船なら結界内でも行き来が可能だし。

 その後の私はナギサに命じて遡上してきてもらう事になった。


(どのみち広場への追加設置も必要だし、可能なら今日一日だけ停泊して明日にでも出港すればいいでしょう。シオン達の戻りも不明だし)


 するとその直後、ミアンスの念話が届いた。


⦅第九からシオン達が降りて参りま〜す!⦆


 念話の後にガタゴトという音が響き、


「えーっ!?」×4

「あ、あれは!?」

「な、なんです? あの箱は?」

「客車、だな」

「客車、ですか」

「ああ、一両編成の・・・あっ!?」

「運転手はトウヤだぁ」×4

「おいこら、ガチ勢が運転してんじゃねー!」

「うっせ! 俺は運転士になるのが夢だったんだからこの機会に運転してもいいだろうが!」


 呆然顔のシオンとサラサ、ラディとアオイを乗せた気動車が姿を現した。ショウ達は慣れたものなのか、座席に座って駄弁っていた。

 但し、運転席に座ったトウヤは除く。


「客車のみの車両なんて創ってないのだけど」


 おそらくこれは⦅サプライズ成功!⦆三女とユランスが創った代物だった。魔導エンジン一号機の用途はこれだった⦅てへぺろ!⦆のね。

 というか上界経路すら用意してないのに。


⦅第九の地下に専用駅を用意しました!⦆


 そこから専用経路を通って降りてきたのね。

 ユランス自らが用意したなら問題はないか。

 一両の地下鉄とか驚き以外の何ものでもないわ。


(ここが上界へと上がる唯一の経路か)


 人族だけは通り抜ける事が出来ないけれど。





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