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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第十一章・ゴミ掃除は前途多難。

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245/276

第245話 状況を打開する吸血姫。


 竜王国から再度、斥候が訪れる前に、


(創る種族は鼈人(スッポン)族、蜥蜴族と亀人族の掛け合わせ、短命種、空は飛べないが水中速度はピカイチ、湿地に生息、弱点は塩水と冷水、寒気も追加っと)


 〈種族創造〉で地上のみに生息する新種族を創造した⦅更新しないと!⦆

 といっても、今はまだ種族情報だけね。これは竜神族の転生時に与える種族的な罰である。

 一応、爬虫(はちゅう)類なので住処は地上とした。

 地上のみに住まわせるのも、海中に生息する人魚族達の天敵としないためだ。

 クジラを狩られたりしたら堪らないしね。


(あとはシオンに伝えておいて。は? もう全有効化しなさいよって? そんな事したらあの子達の大事な仕事を奪ってしまうでしょうに)


 シオンから余計な茶々は入ったが了承は得られたので、今回消えた三十名は新種として生まれ変わるだろう。いつになるか分からないが。


(生息域が蜥蜴族と被るけど、これは仕方ないわね。新種として生存競争に生き延びる事ね)


 可能なら脳筋女王も現在地から転生させるのも手だけど、それは最終手段ね。ユーンスが再神託を発しているみたいだから、結果次第だ。

 そうして片付け後、マキナと共に滑走路へと出た私は遠方の大地を眺める。


「どうなる事やら」

「何がですか? お母様」

「水神が再説得を試みているそうよ」

「ああ、正しい情報を伝えていると」

「聞けば白旗が立つ、聞かなければ」

「誰かが飛んでくると? あんな感じで」

「あ、失敗したのね」


 眺めた先に〈竜化〉した竜神族が大量に飛んできた。それを見た私は諦めの境地に立った。


「ナギサ、還元ミサイルの照準を竜王国と向かってくる武装した大軍へと。全弾発射せよ」

『了解!』


 死にたがりが大量発生しているので、完全に消す選択を行った。元々滅亡だっただけに、これも必要な事でもあったのね⦅面目ない⦆神獣族の登録をお願いね⦅承知!⦆サラサが戻ってきたら(つがい)も用意しないとね。

 魔力充填が完了すると全百発の還元ミサイルが左右の発射管から飛び立った。

 私達は〈遠視〉ではなく双眼鏡で観測する。


「シオンに謝っておかないとね」

「ですね。優先順位は最初でお願いしますか」

「そうね。新種で転生させるしね」

「え? 新種って?」

「あとで教えてあげる」

「う、うん」


 指揮所では例の神器経由で情報を得ていた。


『前方、大軍上空で左翼の散弾型が炸裂』


 大軍の大半はこれで滅しただろう。

 だがここで、


「あら? 一人がギリギリで躱しているわね」


 落ちてくる散弾を躱す者が現れた。

 それは最後尾より飛んできた者だったが。


「へぇ〜。一騎当千の者も居るんだね?」

「竜王国の秘密兵器みたいな者かしら?」

「それを寄越したとしても勝てないけどね」

「先に国が滅びるもの」

『弾着確認、竜王国が滅亡しました』

「残り一人だけですね」

「そうね」


 滅びてもなお、攻めてくる気概は良し。

 女王から何を命じられているのか不明だが。


⦅討ち死にしろとだけ言われてますね⦆


 元より死するつもりで来ていると。

 精鋭を捨て駒に使うってやっぱりバカね。


「ナギサ、右翼の積層結界を部分解除して」

『りょ、了解!』


 私は大太刀を取り出して、突進してくる兵士を迎え撃つ事にした。構えは居合だけどね。

 マキナは巻き添えを食らわぬよう監視台の中へと隠れた。大丈夫と分かっていても。

 突進者は槍を構え突き刺そうとしていたが、


「シッ!」


 私は突進者の推進力を利用して殺った。

 というより大太刀の間合いに入った瞬間から負けは決まっていたのよね。

 私の大太刀は風刃を乗せる事が出来るから。

 突進者が滑走路へと近づく前に見えない風刃が飛び、突進者の口から尻尾まで切り裂いた。

 身体が上下に分断され、勢いのまま落ちた。

 私の目の前では大量の血液が海を赤く染め、


「魂魄はこちらで回収っと。使える者は使わないとね」


 残りの臓腑が海底へと落ちていく。


「それと蘇生先を指定しておかないとね」


 するとマキナが監視台から出てきてニコニコと問いかけてきた。


「ところで、先ほどの話は何だったの?」

「ああ、駄竜共の転生の話よね?」

「うん!」


 可愛いわね、ホントにもう。

 私はスキルの事から用意した種族の事までマキナに打ち明けた。マキナが本来はどういう神であるかもね。最後はポッカーンだったけど。


(それとは別に、魂魄はサラサと同種で転生させたらいいわね。そうすれば登録も直ぐに済むでしょう。国家と成すには最低限の人員が必要になるから、それは善人から選びましょうか)


 雄だから(つがい)としても丁度良かった。

 シオンも全員は無理とメッセージを飛ばしてきたので、半分は私が処理すると返信した。

 サラサの国に民達が居ないと困るしね。

 脳筋女王だけは最優先と伝えたが。

 マキナは呆然から涙目になっていた。


「わ、私が、お婆さまの?」


 笑顔の涙だから嬉し涙ね、これは。

 私はマキナの涙を拭いつつ微笑んだ。


「私もシオンも、だけどね。空間適正がある時点で分かるでしょ? 味噌っかすだった頃のシオンには無かったけど、今はあるし」

「そう、なんだ」

「まぁ、行う事は変わらないわよ」

「う、うん。私も頑張る!」


 最後は使命に燃えるマキナだった。

 ただこれも、あの十四(にん)が大ポカしなければの話だけど⦅肝に銘じます⦆そうしてくれると嬉しいけどね。


「しかしまぁ、人族共の信仰対象になると、亜神も地に堕ちるのね。本当に肝に銘じないと」

「そうですね。あれは魚の餌ですが」

「そうそう、魚の餌ではなくて、回収した魂魄の記憶を覗いたら、サラサの婚約者だったわ」

「え?」

「次期女王の(つがい)だったって事よ」

「そうなると魂魄分割せずに済むと?」

「そうみたい」


 意図せず得てしまったサラサの元婚約者。

 元々は刺客でしか無かったが、想いあっていた過去がきちんと有ったようだから、再会させてあげようと思った私である。蘇生後の説得はサラサに丸投げだけど。


(この分だと天神族も、やらかしているわね。たまにはシオンに片付けさせますか・・・)




  §




 ど、どうも、お尻が絶賛痛いミアンスです。

 と、唐突? いやぁ、シオンがね、こっちも教えてあげてくれって、連絡を入れてきてね?

 メタ? うん、私もそう思うけどね、うん。

 シオンとサラサは現在、第九浮遊大陸・ルティマ〈ティシコ王国〉のギルド支部を訪れているのだけど、こちらもこちらで騒ぎになっているのよね。

 それは、


「し、し、神獣族!? ほ、ほん、本当に?」


 登録時にようやく反映された種族情報を知ったサラサの歓喜の騒ぎね。

 他の者達は『何言ってるんだおめぇ』って表情で苦笑するシオンと眺めているけれど。


「少し落ち着きなさい。元、でも王族でしょ」

「あ、し、失礼しました」


 サラサはシオンから窘められてようやく状況に気がついた。

 実は今回、シオンがこの地を選んだのは第一から第三十一、第六十五から第七十五の各地を巡って何処で種族登録するか選ばせていたの。

 上界観光ともとれる強行軍ではあったのだけど、最終的に選んだのは私の眷属である天神族が大事にされている第九となったようである。

 ただね、下界でちょとした騒ぎが起きて、時を同じくして登録完了と同時に機を見たシオンが、ギルドへと連れて行ったのだから、


『姉上達、使ってる?』

『シノンス姉上は使ってるよね。カノンス姉上は使っているようには見えないけど』


 きょとん顔の妹達の考えも理解出来るわね。

 カノンが完全未来予測は使えないって言ってるけど〈不完全〉は使えているって事だもの。

 完全未来予測とは数千年先まで見通す時空神の持つ絶対的なスキルなの。

 そこらの生来スキルとは一線を画するというとんでもないスキルで〈不完全未来予測〉だけでも使えるというのは、お母様の下位互換的な位置づけにあるミカンスにとって、脅威そのものよね。末妹をそう言うんじゃないって妹達から怒られたけど。


『姉上、酷いです』

『ごめんごめん』

『でも、カノンス姉上が使えないって言ったのは?』

『何か制限的な物があるのかもね』


 私達がそういう話を行っていたら、


⦅10000になってから使えただけよ⦆


 話題の渦中に居るシオンから念話が来た。


⦅カノンも使っているわよ。時と場合を選んで、だけど。私の場合はいつ頃魂魄が流れてくるか知るために使っただけね。覚悟が要るから⦆


 レベル10000。それが〈不完全〉でも利用可能にした制限解除って事なのね。


⦅私達もあと一回、初回のみの濃厚な経験値をいただいたら、使えるようになるかもね。帝国領には残りが大量に居るらしいし、先ごろの比ではないかもね、知らないけど! じゅるり⦆


 知らないけど! って言いつつ涎を拭う音が響いたのだけど? おそらく、いただけるものと知っているから言える発言よね、これ?

 それはマキナも同じって事よね、うん。

 そうなると妹が姉上と同じ境地に立つには相当なまでに経験を得ないといけないって事か。

 ん? 経験?


『も、もしかして?』

『ああ、二千年の時を生きた者の濃縮経験値を際限なくいただいたから?』

『時間的な制限が実質無効になったと?』

『ミカンス、帝国領に姉上達が着いたら降りなさい。降りて案内して経験水を貰うのです!』

『アインス姉上、それは可能なんですか?』

『姉上達が出来て私達に出来ない事はないわ』


 何かとんでもない話になっている気がする。

 出来ない事はないけど、姉上の要素を加えた憑依体を用意しないと無理だと思う。経験値を経口接種で神体に反映させるって話は、ね。

 お母様が許して下さればの話でもあるし。


⦅ミアンス、そう思うなら創ってあげなさい⦆


 って思ってたらお母様から指示が出た件。

 これって私が創るって事よね。


『ミナンス姉上に協力していただこうかしら』

『呼んだ? お尻を腫らしたミアンスちゃん』

『呼びました。同じ状態になったのでコツは掴みましたけど。姉上がポカしたら覚悟してね。そのふわふわのお尻を、焼き餅にしますから』

『えーっ!?』


 ともあれ、シオン達は何やかや言いながら第九浮遊大陸の観光へと戻っていった。

 このまま天神族の元へと向かうのかしら?


⦅種族情報を拾ってこいって言われたの。竜神族と同じような事をやらかしたから⦆


 やらかした?

 そういえば最近、あの子達を見たかしら?


『ミアンスも私と同じ気持ちを味わうのね』

『天神族も祀り上げられている間に』

『程度が変化してますね、可哀想に』

『『姉上、こちらも良いですが』』

『神託を発しなさい! 今すぐ!』

『は、はい! 姉上!』


 シオン達と接触する前に、大急ぎで神託を発した私だった。更新済みだからきちんと伝わると思う。うん、思う。

 でも、やらかしたと言ってたし?

 って、思ったら起きていた件。うそぉん!


「ちょっと、観光客を受け入れないってどういう事よ? 最近までは誰でも入れたでしょう」

「今は大事な時期なのだ、貴様達のような余所者は入れるなと命じられている!」


 シオンとサラサは猫獣人族に〈変化(へんげ)〉して訪れているのだけど拒否されていた。

 これが吸血鬼族なら門前払いだものね。

 常夜に生きる種族だからって事で。

 今は違うけど。


「大事な時期って何があったのよ?」

「それは言えぬ!」

「シオンさん、今回は止めておきませんか?」

「いえ、今のタイミングを逃すと次は無いわ」


 次は無い? どういうこと?


「政変があったんでしょ。祀られるのはこれで終わりだと発起した姫が〈ティシコ王国〉に宣戦布告しそうになって、祀られる間に私服を肥やした国王と王妃が殺害された。姫はそのまま堕神化した衛兵に処されて、姫を唆した堕神化した公爵が臨時国王になった」

「な、何故それを知っている!?」


 まくし立てるように事実を語るシオン。

 だから種族情報が必要だったと。

 堕神化しているから正しい情報が要ると。

 堕神化、人族の血が混じった者ね。

 観光地とした事で入り乱れていたと。

 王族だけが血統を維持したが贅沢三昧で精神面が堕神化していたと。それを姫が嫌がっていて堕神化した男に利用されたって事ね。

 姫は普通の天神族で居たかったみたい。

 祀らないでと願うなら戦い以外を望めば良かったのに。え? 聞く耳を持たない?

 竜神族と同じで神聖視されていたら無理と。

 ああ、ナギサ臭。なるほど。


「アオイから聞いたもの」

「は?」

「シオンさん? それって?」

「サラサと同じよ。ここに居るし」

「ああ、ホントだ」


 シオンの左隣には金色の魂魄が浮いていた。

 あの子を拾ったうえで呼び寄せたのね。

 ミアン国の元第一王女、アオイ・ミアンを。

 猪突猛進気味な幼女だけど。私に似てる?

 そ、そうかもね、うん。


「それと貴方も堕神化した者よね?」

「!?」


 ああ、政変で堕神化した者達に王権が握られたと。私もユーンスを拝んでいい? だめ?

 もう遅いと? 遅い、うん、遅かったかぁ。


「で、現時点で放置すると臨時国王が『姫の意志を継いだ』と宣って宣戦布告するもの。この大陸の覇権狙いでね。そんな状態で盟国の民は入れられない。思惑を外に漏らしてしまい最悪は軍を派兵され神域も無くなってしまうもの」

「き、貴様、間諜か!?」

「間諜ではなく観光客なんだけど? 今、まさに門前払いを喰らっている者が、内部事情を知るわけがないでしょ。こちらの憶測で図星を晒したのは貴方の反応じゃない、バカでしょ?」

「ぐっ」


 聞いたと言ってたのに憶測と返すシオン。

 意味が分からないとしたのを利用したのね。

 すると衛兵は何を思ったのか、


「わ、我らの思惑を知られたからには、ここで消えてもらう!」


 シオンを相手に抜剣して剣先を向けた。

 呆れ顔のシオンは〈無色(むしき)魔力糸(まりょくし)〉を伸ばして一瞬の内に相手の魂だけ喰らった。転生させないつもりと。

 魂を奪われた衛兵は地に伏した。


「貴方がね。う〜ん、美味!」

「シ、シオンさん? 今のは?」

「以前、経験値を食べた時と同じ方法よ。(そら)属性の魔力で行うと簡単には見えないからね。属性を持つ者でも見慣れていないと判別出来ないわ」

「そ、そうだったのですね」


 シオンはそう言いつつ、呆然のサラサを連れてミアン国へと入っていった。国と言いつつ範囲的には山中にある小国と大差ないのだけど。





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