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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第十章・氷結大地に植樹しよう。

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第234話 植樹の準備に入る吸血姫。


 私は一度、ログハウスへと戻る。


「混在族に存在する皆殺しにされた吸血鬼族でいいわね。本来なら転生させる必要があったけど保留数が増えすぎている現状だとリソースを増やすためには仕方ない話でもあるし・・・」


 ブツブツと呟きながら混在族に収まる魂魄を千個単位で封印水晶に押し込めていく。

 皆殺しにされた吸血鬼族は十万人も存在していて、予備で用意していた未使用の封印水晶百個に全て収めた。この封印水晶も以前の憑依体で使うつもりだった代物だ。今の憑依体になってからは使う事のない魔道具に成り下がった。


「押し込めた後は人格と記憶の漂白を行って」


 千人もの数だが一個の漂白は一瞬だ。

 それを九十九回も繰り返す。

 有罪者、無罪者と存在するが元魔王の眷属として連れて行かれた者達故に、その罪は同罪である。そういう名目で漂白を行った。


「保管庫のリソースを増やすためとはいえ、もったいないわね。これでもまだ億単位の魂魄の一部なんだから遣り切れないけど。上で行われる勇者召喚。それがリソースの圧迫に繋がっているとなると、こちらが片付き次第、片付けるしか無さそうね。というか行けって言われたわね・・・」


 勇者召喚とは別の並行世界から連れて来られる可哀想な拉致被害者だ。拉致というと酷い話だが、本当の事だから仕方ない話でもある。

 だがこれも、別世界の神々の許可が得られているから出来る事で、許可無しではどうあっても呼び寄せる事は出来ない。


「空間的な繋がりがある場所からのみ呼び寄せる。この場合は、お母様の世界が(ほとん)どだけど」


 信者に願われる四女も願われた以上は行わねばならず、苦渋の選択であると理解出来る。

 理解は出来るがいい加減にしろとは思う。


「お母様も許可を取り消せば良いのに何故残しているのやら? 世界構築時に行う最初の取り込みはともかく、忘れていそうな気がするわ」


 本人が聞けば⦅忘れているんじゃないの必要だから開けっ放しなのよ⦆とか言いそうだが。

 いや、何で上に来てるのよ?⦅焼き芋のお裾分け⦆本当に焼き芋が大好きな時空神だわ。


「それはともかく、漂白完了。魂魄統合を行って千個に均等分割、完了。範囲展開で〈銀灯樹〉に転生するよう指定。一本あたり底面半径1メートル、高さは10メートルで指定。それをランダムで千本展開。これを残り、九十九回行って・・・」


 ある意味、これはこれで重労働。

 同じ作業を淡々と行わないといけないから。

 自分が望んだ事だから仕方ない話だけどね。


「全指定完了。次は三番船の周囲、荒野を地図魔法に展開して街道と成すべき場所を省いて展開地点を選択。千本の木々を百カ所植えるつもりで範囲シミュレーション」


 広範囲で植えていかないといけないわね。

 自動二輪で駆け巡る必要がありそうだ。

 運転手を選んでマキナと共に各五万本。


「三番船が通り抜ける予定の街道を挟んで植えていきましょうか。水を与えても絶対に消える事の無い半永久的に燃え盛る焰の森林を」


 段取りを終えた私は封印水晶を亜空間庫に片付けて三番船に戻る。今はまだ常陽ともあって外は明るい。


(本日中に全ての植樹を済ませれば採取開始の暮金(くれきん)には間に合うわね)


 私は船橋に戻る足で底から順に中を見回る。


「マキナは何処かしら?」


 今はサラサを案内している頃だと思うから船内に居るのは確かだろう。エレベーターではなく階段を使って各階を見回る。されど、何処を見て回ってもマキナ達は居なかった。

 風呂にも医務室にも食堂にも居ない。

 小厨房に顔を出すと、レリィから「ありがとう!」と感謝されたけどね、大厨房の事よね。

 そのまま船長室に向かうとナギサが居て、


「マキナ様なら格納庫にいらっしゃいますが」


 と、報告を受けた。

 船長室の中にある自室にて寛いでいると思ったら偵察機を見せていたとはね。

 個人的に飛べるサラサには必要の無い代物だけど。有翼族(ハーピー)達も自力で飛ぶ事を好むしね。

 私が格納庫へと赴くとサラサの声が響いた。


「これが空を!?」

「そうそう。こちらの小型も大型も飛ぶよ?」

「し、信じられません・・・」

「私もこれを初めて見たときは転げそうになりましたよ。といっても、小型の方だけですが」

「大型はまだ数回しか飛ばしていないからね」

「い、一体、どのように飛ぶのです? 私ならこう、翼を・・・あら? 翼が無い!?」


 今度は別の意味で驚いていた。

 目覚める前は出し入れしていたのに今は無いと驚いている。認識すらしていなかったのね。

 制服も翼が収まるような物ですら無いのに。

 無意識で着替えて今知ったって事よね。


(意外とポンコツなのかもしれないわね)


 私は仕方なくサラサの背後に忍び寄る。


「肩甲骨を意識しなさい」

「ひゃん! うわぁ!?」

「お母様。〈希薄〉したまま現れなくても」

「は? 〈希薄〉スキルは使ってないわよ?」

「「え?」」


 失礼ね。それではまるで私の存在が薄いって言ってるようなものじゃ⦅カノちゃん、魂魄に触れすぎて憑依体ごと神体化してるわよ⦆は?


(もしかして、憑依体の高次化が起きてた?)


 サラサに触れた事で⦅元に戻ったの。魂魄に触れるのは出てから行いなさいね。戻れなくなると面倒よ⦆そんなデメリットがあろうとは。

 サラサにポンコツと言っていたが⦅カノンもポンコツだった!⦆ミアンスが何か言ってる。

 レリィとナギサに気づかれたのは⦅感謝の念を持つ者と信奉者だけには見えるわ⦆それで?

 と、ともあれ、私は二人のきょとんを受け流してサラサの背中を撫でる。


「マキナにはあとで教えるから。スキルではないからマイカには使えないけどね」

「う、うん」

「そうなのですね」

「サラサ、自身の翼があった時を思い出して」

「翼があった時・・・」


 するとサラサの背中に黒銀翼が生えた。

 それは背中に繋がっているようで繋がっていない、付け根が透明の不可思議な翼だった。

 マキナとマイカもこれには驚きである。


「「あ!?」」


 今は空を飛ばないので綺麗に折り畳まれているが、広げたら身体を浮かせるに足る、大きさになる事が見てとれた。

 サラサも背後に視線を向けて翼に気づく。


「あ、有った!?」

「それはそうでしょ。私達も必要があれば」


 私はそう言いつつ魔力だけで創り出した二対の銀翼を拡げて⦅女神の翼だ!⦆魅せた。


「こうやって展開出来るしね」

「凄い薄くて透き通ってる・・・」

「お、お母様にも、翼があったんですね?」

「それはあるでしょ。リンスのお父上にもコウモリみたいな翼があるし。これは持ち主がイメージした形状に出来るのよ」


 私は一対のサラサのような翼に変化させた。女神の翼は滅多に示せないからね。


「通常は一度でも使うとその形状で固定化されるけどね。マキナはまだ飛んだことが無いからいずれ教えるわよ。他の者達と共に」

「わ、私は航空機で飛ぶ方がいいかな?」

「それならそれでいいわ。でも、緊急避難時には飛ぶ必要も出てくるわよ? パラシュートを用意しているわけではないからね?」


 だからクルル達と偵察に向かう時には飛べる者を一緒に付けるのだ。ルイとかね。


「あ、それを聞くと覚えた方がいいかも」

「でしょ? 今度上界に行ってから教えるわ」

「うん!」


 マキナも翼の重要性に気づいたようだ。

 今回は必要があって示しただけだけど。

 するとマイカも自身の翼を展開した。


「そ、それで、なんですか。私もコウモリなんですが」

「マイカ様も!?」

「吸血鬼族は飛ぼうと思えば空を飛べるのよ。必要があればって言ったでしょ? こちらでは魔力消費が大きいから、飛ぶ者は少ないけど」

「そうだったのですね」

「マイカの翼も念じれば同じ物に出来るわよ」

「え!?」

「通常はって言ったでしょ。私の眷属になると変更可能よ。中には〈変化(へんげ)〉スキルで有翼族(ハーピー)になる者も居るけど」

「で、では、サラサ様と同じ・・・」

「へ、変化した!?」

「私も絶対、覚えよう!」

「綺麗ね。問題なく黒銀翼になったわよ」

「こ、これで怖がられなくて済みました」


 この呟きはどういう意味なのだろう?

 それはともかく、本題を忘れそうになったので私は翼を霧散させたのち、マキナに伝える。


「そうそう、このあと植樹するからハルミとサーヤを呼んできてもらえるかしら?」


 マイカとサラサはきょとんとしたまま船橋へと向かった。私の発した植樹と他の人員の名前が出たから空気を読んだだけかもしれないが。

 マキナは笑顔で手を振りつつ頷いた。


「植樹? うん、分かった。でもハルミとサーヤって?」


 が、私に振り返って怪訝(けげん)な視線を向けた。


「自動二輪の運搬要員よ。植樹範囲が広いから運転手になってもらうの。私達でしか植樹が出来ない代物を準備したからね。外のアレよ?」

「外のアレ? あ! そういうこと?」


 それでようやく納得したマキナだった。

 ハルミとサーヤも自動二輪を乗りたがっていたし丁度良いと思うのよね。

 これだけ荒れた大地だもの。オフロード車を出して二人乗りすればいいでしょ。

 そうしてマキナと後部下倉庫に向かい、


「「乗る乗る!! やったぁ!」」


 七号車の荷降ろしを終えたハルミ達に命じると大喜びした。二人の胸が震えているわね。

 歓喜でぶるんぶるんと上下に何度も何度も。





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