表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第十章・氷結大地に植樹しよう。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

233/276

第233話 植樹案を思案する吸血姫。


 そうして元魔王の処遇が決まった。

 漂白してそのまま転生とすると甘い処置になってしまうので鉢植え刑に処する事になった。

 肉体が無いから鉢植えにはならないが。


「竜王国に丁度良い湖があって良かったわね」

「うん! 中心に封印水晶を投げ入れてっと」


 今回は〈夢追い人〉と同じような処置でありながら少々異なる罰だった。マキナが封印水晶自体を湖底に投げ入れた途端、転生陣が発動してウネウネと一本の大木が湖面に生えた。

 ここまでは例のマングローブ共と同じだ。

 違う点は人格と記憶と弱点を残した事だ。

 これは罪を意識させるための購罪とした。


「太陽の光を浴びて燃え始めたわね。樹皮やら葉が赤く色付いて煙なき燃える大木となった」


 それとこれは吸血鬼の弱点を最大限に利用した罰である。太陽の光と銀が主な弱点だしね。

 今回は燃える痛みと、断続的な苦痛を味わい続ける罰とした。それだけではわかり辛い罰よね。他の材木刑と何が違うのかって事だから。

 マイカは私の右隣でしみじみと見下ろした。


「これが燃えながら成長する大木、ですかぁ」

暮金(くれきん)では消火するけどね」

明空(あけそら)から燃え始めるよ?」


 一方のマキナは説明する私の左隣で銅剣と木箱が乗っかった小舟を弄っていた。

 マイカは興味津々な表情で見ているが。


「燃え続けるわけではないのですね」

「燃え続けると燃料が得られなくなるもの」

「ね、燃料、ですか?」

「うん、燃料だよ。お母様、準備出来たよ」

「ありがとう。浮かせてくれる?」

「はーい!」


 マキナは私から許可を得ると湖面に向かって小舟を落とす。落とされた小舟は中心より少し離れた場所で〈希薄〉して見えなくなった。

 私はその様子を眺めつつマイカに教える。


「最初の三日間に燃えるのは樹液を造り出すために光合成を行うためよ。残りの四日間では樹液を蓄えて次に燃えるための燃料にするの」

「ああ、それで燃料と。ですがそれだと余計な事を考える時間を与えそうな気がしますが?」

「そうでもないわよ。先ほどの小舟が断続的な痛みを与えるから」

「痛み、ですか? それで浮かせたと?」

「あれは常夜の三日間のみで稼働する採取魔道具なんだよ。明日の暮金(くれきん)だけは直接採取するけど」

「採取? ま、まさか?」


 マイカは採取の時点で気づいたようだ。

 マキナは笑顔になりつつ続きを教えた。


「夜日でしか採れない特殊な樹液だからね!」

「燃えるための樹液でしたっけ?」

「そうだよ。実はね・・・」


 この大木の樹皮は銅剣にのみ反応する特殊な樹皮となっていて銅剣で傷を付けると、中から鮮血にも似たドロドロの樹液を流すのだ。

 そしてこの樹液は銀に対してのみ反応する樹液で、瓶に入れた状態で銀棒を挿すと日中と同じ明るさの光を、燃料が続く限り延々と灯す。

 採取前なら太陽の光にも反応するが、銅剣で太陽の光に反応する闇性質が失われるため、採取後は太陽の光に当たっても燃える事はない。


「あ! そ、それで燃料っと?」

「そういうこと! (すす)も出ない優れ物だよ?」


 ただ殺すだけではもったいないもの。

 半永久的に痛みを味合わせながら有用な素材を造らせる。仮に恨みを念じたら燃焼性質が向上し少量の燃料で長持ちする代物となる。

 逆に恨みの念が消えて悟りを開いたらドロドロの分量だけが跳ね上がるのだ。


「しかも、用途が灯りのみに制限されているから、他の用途で使おうとしても火が消えるの」

(すす)の代わりに、魔力へ戻るともいうけどね」

「炎の熱も感じないし、火傷もしないんだよ」

「但し、大木に近づけば火傷だけはするわよ」


 これは元々、マキナがアインスから聞いていた火山地帯にのみ生えるという炎熱樹から着想を得た代物だった。それのサンプルをアインス経由で受け取って私が〈概念改良〉を行った。

 そして灯り用途でしか燃えない燃料とした。

 銀にのみ反応し他の金属では燃えないのだ。

 そのうえ神聖光という特殊光を常時発する。

 魔族やアンデッドにとっては眩しくて近づけない代物になるわね。私の眷属達は除くけど。

 仮に名付けるなら〈銀灯樹〉という品種ね。

 おそらく⦅と、特殊個体で登録した⦆お尻を腫らしたポンコツ達が大急ぎで更新したわね。

 そんな代物にマイカも驚きを隠せない。


「ゆ、有用過ぎませんか? それ」

「完全に有用品だと思う」

「教会が知ると挙って採取に来ると思うわよ」

「常陽の住人は暮金(くれきん)でしか採取が出来ないけどね。そこらの常夜の住人にとっては、触れるだけで手を洗いたくなる、気持ち悪さを持つし」


 鮮血に似たドロドロの液体だものね。

 吸血鬼族でも嫌悪を示す概念を与えている。

 但し、私の眷属達は除く。

 一応樹液なので舐めたら甘みを感じる。

 それと銀歯には反応しないわよ。

 口内から火が出て面白い事になるから。


「り、竜王への詫びとしても十分過ぎますね」

「とはいえ、これの元が何であるかは伏せて」

「新種を見つけたと報告する方がいいですね」

「た、確かに元魔王と示すとどれだけ有用品でも自ら潰しに来ますね。直情的な脳筋ですし」

「自国領に鉱床があっても無視するというね」

「国内通貨を外に流出させる愚王でもあるし」


 私達が湖を見下ろしたまま会話していると、


「これまた、従来の吸血鬼族にとっては地獄な罰を与えたわね〜。私でもこれは勘弁だわ〜」

「勘弁と言いつつ余計な事、考えてない?」

「か、考えてないわよ? ホントよ?」

「「嘘だ」」

「うぐっ。姉と娘が鋭い」


 挙動不審となったサラサを伴って、シオンが船内から出て来た。一応、船員の制服を着せたのね。先ほどまでは下着にローブだったから。

 ここまではログハウス内の直通転移鏡を通ったのね。内部を示すには私の命令が要るから。


「こ、こ、氷の大地が無くなってる!?」

「反応するのそこ!?」×4


 てっきり大木に驚いているかと思ったわ。

 ああ、解放される前に死亡したものね。


「知らないのは仕方ない、か」


 その後は本当の経緯を伏せたまま大地で巻き起こった事案を語ってあげた。当事者である事を語って混乱させるわけにはいかないもの。


「そのような出来事があったのですか!?」

「あれは凄かったねぇ」

「一瞬で暖かくなりましたもんね」

「私は見てないけど凄かったらしいわね」

「お陰で極寒装備が不要になったのよね」


 仮に竜王国内に問題児達(夢追い人)が居て悪さしていたなら話は変わるが魔国のみに居座っているとの話だし⦅竜王国で人族は目立ちますし変装魔具も適用外になりますから⦆ね。

 何でも一度入り込まれて眷属を殺されたそうで、怒った⦅ユーンスが全解呪結界を展開⦆したそうだ。私に説明させてよ⦅てへ⦆ぐぬぬ。


(アインスがてへって可愛いわね・・・)


 その代わり、竜王国内では竜王とて〈竜化〉が一切出来なくなったらしいけどね。最大戦力を発揮するには自らが国外に出るしか無いと。

 なお、私達の〈変化(へんげ)〉は対象外となるようで、現時点で影響が出ていないのがその証拠である。全員が森エルフの姿だから。

 元々の森エルフ共は素で監視台に居るが。


『あの子何? すっごい可愛いんだけど!?』

『俺にとってはアキの方が可愛いけどな?』

『もう! そういうことを言って、嬉しい!』


 バカップルがバカっぽい事をやっていたわ。

 一先ずの私は大木の様子見も兼ねて、


「さて、今日明日ここで野営しましょうか、常夜になってから本来の目的地に向かうわよ!」

「『了解!』」×3


 この場での休息を入れた。

 森林国の王都からはかなり離れたしね。


「さて、私も子育てに戻りますか」


 シオンもストレッチしたと思ったら有翼族(ハーピー)に〈変化(へんげ)〉して船内へと入っていった。

 サラサは一瞬のことで驚いていたが。


「え!?」


 私はそんなサラサを無視して二人に命じる。


「マキナ達はサラサの案内をお願いね」

「はーい」

「承りました」

「???」


 私も船橋に戻りながら周囲を見回した。


(相変わらずの荒野よね。同一の樹木をここら一帯に植えるしかないのかしら? 新種でもあるし、一本だけだと特殊過ぎて問題があるし)


 行うことは増えたが休息も必要だしね。

 ここが竜王国の中でもあるから、しばらくは休めるだろう。魔国は竜王国を超えないと向かえない場所にあるから仕方ない話でもあるが。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ