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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第十章・氷結大地に植樹しよう。

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第232話 尻拭いを示された吸血姫。


 反省会を開いた。

 一応、シオンも呼び出して簡単に紹介したうえで眷属吹聴から決闘までに至った彼らの言い分を聞いていった。論外な言い分だったが。


「「結論、有罪!」」

「理由は、馬鹿げている!」

『そ、そんな!?』×5

「こればかりは魔神も同意しているわね」

「王籍を簒奪されるだけの罪もあるわね」


 紅茶がアホらしくて冷めてしまったわ。

 飲むのも忘れるくらいアホな言い分だった。


『何処の誰とも知れない人族共に罪を決められたくない! 何故、我らが今更終わった事で咎められなければならない! 竜王が勝手に勘違いしただけであろう! 我も亜神族になったとは言っていなかった。ただの勘違いで娘を寄越してきたのはあちらではないか! 失敬な!』

「・・・」


 その言い分にサラサは沈黙を守るだけだ。

 バカ共と知っていた風でもあるわね。

 だから拒絶して逃げ出して捕まって、ホブゴブが魔王になったあとで、機を待って飛び出して逃げた。逃げたが魔王の命令を受けた傭兵に殺されたって事よね。その傭兵も王女を殺した事に対してなんとも思っていないのかしら?


(いや、王籍を抜いて嫁いできた者だから魔王の意志に沿っただけなのかもしれないわね?)


 ホブゴブにそれだけの頭脳は無さそうだし。

 弱いからこそ傭兵を雇っただけともとれる。

 名を呼ばれるのを拒否したのは遺体諸共、捕縛者達に突き出されると思ったのかもね。


(そんな事はしないけどね)


 それはともかく、バカ達の反論は続いた。


『そもそも魔神様を敬称無しで呼ぶとか不敬だわ。貴女達が、どのような身分の者か存じませんが魔神様に罰して貰うのは貴女達ではないかしら? そこはお分かりかしら?』

『そちらこそ有罪じゃないのか!!』

『そうだそうだ!』×2


 外野を呼んだのは間違いだったかもね。

 近くで見てきた者達の言い分も聞きたかったから呼び出したけど、存在自体が不愉快だわ。

 マキナも額を押さえて溜息を吐いていた。


「言うに事欠いて、はぁ〜」


 それを聞いたシオンも不要と思ったようだ。


「とりあえず、元魔王以外は処分でいいわね」


 私もシオンに同意だったので、


「決定ね。マイカ、吸っちゃって」

「承知!」


 責任を感じている者に処分を委ねた。


『なっ!?』×4


 驚愕の間もマイカの〈金色(こんじき)魔力糸(まりょくし)〉は正妃と子供等に向かう。何をしているか元魔王に示すようにね?


『い、一体何を!?』


 私は元魔王に対し殺気を含んだ声音で脅す。


「私達は最初に語った。生死を(つかさど)る女神だと。生殺与奪権は私達にあるのよ。正妃と子供等は転生出来ないものと思いなさいね」

『!? そ、それはあんまりでは!?』

「魔神の名を敬称無しで呼んだくらいで、すり替えを行おうとしたのだもの、当然でしょう」

『ぐ、ぐぬぬ』

「悪しき行いをやっぱり行っていましたね。言葉では何とでも取り繕うことが出来ますから」


 マイカは正妃達を味わいながら記憶を召し上がって元魔王を睨む。ただ、相当なまでに美味だったのか、睨みながらも頬は緩んでいたが。

 そもそもの話、建国の動機からして本家を見返してやるとの主張で、氷上国へと連れて行った民達を奴隷としか思っていなかった事にも問題があった。

 見返すなら見返すで正当な理由で見返せばいいのよ。国王と民達が手を取り合ってというならまだ理解は出来る。それなのに圧政を加えて好き放題やりながらの開拓だから頭痛がした。

 すると、


「国内に争いの種を産んだ切っ掛けも原因ではありますが・・・」


 この場にユランスが現れた。

 亜空間内だから出入りは自由だが、今回はマイカ達にも見えるよう憑依体へと宿っていた。

 実は神体から誰でも見える状態へと顕現するには長時間神力を練らないといけないのよ。

 その時間を省く方法が憑依する事よね。

 私とマキナ達は一瞬⦅いいなぁ⦆だけど。

 ユランスの表情はお怒り状態である。


「亜神族にもなっていない者が勝手な振る舞いで他国にまで吹聴を行った事が一番の罪です」

『! ま、ま、ま』

「黙れ」

『!!?』


 珍しく命令口調を使うユランス。

 ユランスは怒ると真面目口調が無くなるのね⦅そうなのよぉ⦆ポンコツが何か言ってる。


「結果的に決闘を受けて大敗を喫して、不死ではないと自らが示して、一族郎党皆殺しになれば世話ないですがね」


 そうね、吸血鬼族は全て殺されてしまった。

 小さな子供も生まれたばかりの赤子さえも。

 その後の魔国は他の種族が統治している。

 圧政の中、吸血鬼族が心血注いで積み上げた開拓地、その国土があっさりと奪われたのだ。


「吸血鬼族の亜神化とはマイカのような者達の事を言うのです。遠縁の血縁の薄くなった者に伝わるものではありません!」

『!!?』


 かつてのマイカ自身も楼国(ろうこく)の血は流れていたけど反映はされていなかった。

 混血で血が薄まると伝わり辛いのよね。


「亜神化して不死と銀耐性が得られたと思い込み、弱者だと見下した結果が、今なんですよ」


 それを聞いた私とシオンは光景が浮かんだ。


「あ〜。ふんぞり返って貫かせたって事ね」

「勝手に自殺して一族を殺した罪は重いわ」


 マキナも元魔王を睨みながら罰を考える。


「一番重い罰を与えないといけませんね」


 終いには呆れ顔のマイカと、


「勘違いを吹聴しただけでなく思い込みで討たせたのならバカとしか言いようが無いですね」

「国王になる器では無かったって事ですね!」


 沈黙していたサラサが笑顔で苦言を呈した。


『・・・』


 言われまくる元魔王は沈黙というより(何故だ何故だ何故だ)って思考が巡っているわね。

 何故ここまで言われなければならないって。

 死人へと死体蹴りを与えているからね。


「最後に、婚約解消をする事もないまま帰らぬ者に成り下がり、ホブゴブリンとなった人族に全てを奪われた。竜王女との婚約解消を行っていたら罪が軽くなっていたかもしれませんね。ですが、姉上の竜王女(眷属)に槍を向ける切っ掛けを与えてしまいましたから、重罪は確定です!」

『!?』


 ユランスは元魔王に対して顎下で親指を切る動作を行った。元ネタは⦅姉上⦆また三女か。

 だがここで、宣告の中に謎の一文があった。


「は? 人族がホブゴブ?」


 私はユランスの言った言葉の意味が一瞬だけ理解出来なかった。

 ユランスは困り顔になりながら理由を語る。


「先の件で変化した者が進化して帝国に利用されたんです。それが現魔王です。後は南の地下資源目当てで例の商会が継続利用していると。その地下資源も危険物は消え去りましたがね」

「それで例の件に繋がったと? な、なら?」

「な、謎の傭兵って? そういう事だよね?」

「あらら、カノンの尻拭いが確定したわね?」

「おぅ」


 まさかこういうオチが来るとは予想しようがない。進化しないよう制限をかけていた気がするのだけど⦅同族喰らいしていたわ⦆それで!

 三匹から一匹に統合されたって事ね・・・。


「「???」」


 楼国(ろうこく)からの旅路で起こった出来事だからマイカ達もこれは知らないのよね。


(私の幸運値の低さが仇となったわね・・・)


 16という数値のサラサよりは高いけども。

 今は82に増えているから私よりも高いが。

 私は渋々と〈遠視〉スキルを発動する。


「仕方ない。心核滅却するか。眷属ではないけど私なら現魔王を消せるしね」


 現魔王は御用商会の誰かと商談していた。

 例の商会がここにもあったのね。


(丁度良いから出て行くまで待ちましょうか)


 一方、サラサは懐疑的な視線を向けている。


「け、消す? ど、どうやって?」


 シオン達は淹れなおした紅茶を飲んでいた。


「黙って見てなさい」

「そうそう。一瞬で終わるから」

「主様にお任せです」


 この空気の差よ、元魔王は愕然としている。

 するとユランスは言うだけ言って、


「残存もよろしくお願いしますね、姉上」

「はいはい。代わりにポンコツ一号とポンコツ二号のお尻ペンペンもよろしくね」

「承りました!」


 嬉しそうに戻っていった。

 しばらく上にあがれそうにないから私も丸投げしたけれど⦅ユランスに叩かれる!⦆二柱が恐怖のままに逃げ惑っているわね。

 何はともあれ、


「さてと、片付けますか」


 私はそう言いつつ魔国で傀儡となった者を照準して強烈な快感を与えながら消し去った。


(ダンジョンでもない場所に国があるのね。他の者達は魔族だから・・・これがベストっと)


 遺体は残し御用商会の名刺と血糊付きの短剣を転がした。それは商会員が出て行く直後の出来事なので部下達から確実に疑われるだろう。


(疑われて軟禁されたわね。それと傭兵の主は商会員だったのね。共に軟禁刑が確定っと)


 どうも不死のホブゴブと伝えたことで魔王にまで登り詰めたようだ。だが、一度も再生したところを示していないのか懐疑的な様子の者達が多かったみたい。今回の件で死滅したから宰相だった闇エルフが臨時魔王に就任していた。


「で、そのまま商会諸共、権利剥奪と捕縛か」


 シオンも〈遠視〉したうえで状況が変化した事を喜んだ。例のお得意様が元に戻ったって事だものね。傀儡魔王のままだったら全ての代金を踏み倒されていたでしょうから。

 するとこの場で唯一の当事者が口を開く。


「ところで地下資源ってどういう事ですか?」


 懐疑的な視線かつ王女の風格を滲ませて。

 問われた私はきょとんとしつつ応じる。


「地下に資源がある事は知らないの?」

「今、初めて聞きましたが?」


 なるほど。竜王達は何があるのか知らず貴重な資源は例の商会が勝手に回収していたのね。

 認知なき資源とは資源とは呼ばないし。

 私はマキナと目配せし資源が何か思案した。


「消えた例の危険物はともかく」

「この場合は鉱石になるのかな?」

「危険物の鉱床があったって事はそうでしょうね。危険物も鉱石には変わりないから」


 直後、サラサは驚愕して立ち上がる。


「鉱床!? で、では、我が国は他国から高額で買い付けなくても良かったのですか!?」


 これは本当に知らなかったっぽい。

 調査すれば良いものを、不要だと調査せずに買い付ける方に向かったのね⦅脳筋⦆だから。


「ああ、無知から出た錆びかしら」

「それは身から出た錆よ。シオン」

「言い得て妙ですがね」


 確かにそうかもね。

 その後、憤慨したサラサは自分の元父親を罵倒しまくった。愚王が立つと国滅ぶって奴ね。

 オチは下半身が緩まりそうなケンにとって、


「明日は我が身ですね」

「ケンの褌をギチギチに締め直してあげてね」

「そうします。貞操帯として徹底的に!」


 阿鼻叫喚となる未来が見えた私だった。

 女性の前だと愚者になるものね、ケンは。





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