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第23話 吸血姫はバカ妹に引いた。


 ひとまずの私は助けだしたシオンにあっけらかんと問い掛けた。


「それはそうと、前の肉体どうする? 今のままだと隷属して体だけが動き回るけど?」

「消して! あれも確かに愛着はあったけど、銀に侵された身体とか勘弁ならないから!」


 シオンはそれを聞くや否や処分をお願いしてきた。今は戦闘装束のままだからこそ切羽詰まったようにも見えるしね?

 それもある意味では気のせいだけど。

 私はシオンの願いを軽々しく聞き入れ、アッサリとした表情のまま肉体を消し去った。


「そ? 判ったわ・・・でも、魔力還元した途端に術者が慌ててるわね?」


 ただ、消した矢先に〈銀塊〉と繋がった者が顔面蒼白となった。それは真祖の肉体が消失したのだ。死滅、そう思っても不思議ではないだろう。こちらの世界の認識でいえば核となる心臓そのものが消え失せたのだから。

 すると、私の言葉を聞いたシオンが怪訝となりながら問い掛ける。

 リンスも興味津々というご様子である。


「術者?」


 私はシオンの問い掛けとリンスの視線をひとまず流し〈遠視〉により繋がりを探る。


「ええ。問題の経路は・・・第七十五浮遊大陸の王宮医師に繋がってるわね?」


 魔力そのものは(そら)属性のもので、見えない類いの魔力だった。問題の術者の役職を伝えるとシオンとリンスは絶句した。


「え? バクスが?」


 私はシオンの絶句に対し、あっけらかんと問い掛ける。


「知り合いなの?」

「前大戦後に私を治療した者の子孫ね。本当は治療は不要だったけど、しつこかったからお願いしたの。それと定期検査もと言って聞かなかったから・・・」


 正直、王宮医師という者達に身体を預けたいとは思わないのだがシオンも元々はそんな感じだったのだろう。渋々という印象が見てとれた。私は子孫と聞き(あき)れてしまった。


「子孫・・・ね? 真祖のそれを眷属(けんぞく)のそれと同じ物としたのでしょうけど表層核に惑わされるとはね?」


 すると、今度はリンスが問い掛けてきた。

 この段階でリンスは髪色を元に戻したためシオンは別の意味で絶句したけれど。


「あの? 表層核とは?」


 私はリンスの問い掛けに対しシオンに目配せした。シオンは一瞬考えたのち、苦笑して頷いたので私は教える事にした。


「私達ってね。心臓そのものを(おとり)としてるのよ。本体は別に存在するって意味でね。下手に触れれば〈死滅(・・)〉を引き起こす代物だから同族・・・私以外は触れられない代物なの。女神ですらもね。ある意味で神殺しの神器だから」

「お、(おとり)・・・」


 これは私達の本質に繋がるから神器云々は言わずとも良かったけどね。実際にリンスは(おとり)のところで絶句し、そこから先は聞いていなかった。

 私は呟くリンスの言葉に首肯を示しつつも視線はシオンに向けながら問い掛けた。


「そうね。で、シオン・・・戦闘装束から私服に戻したら?」

「あ、そうだった・・・それはそうとカノン? 今の下着薄すぎない?」


 シオンは思い出したように戦闘装束を消し去り、裸に戻りながら私の下着を生来のスキルで〈透視〉したのだろう。薄いというか、この子の価値観は数千年前から変わってないようだ。


「蒸れないからそれでいいのよ。シオンも大きく育ったら、追々用意してあげるわ」


 私は下着の特性を示しながら徐々にだが膨らみつつある、今の胸や尻を眺めて言ったのだけど、当人は気づいてなかったため嫌そうに反応した。


「今更、育つと思う?」


 ある意味で幼児体型と言ったも同然だから。

 なので仕方なく隣に座るリンスを示した。


「リンスが育ったから大丈夫よ」

「リンス? まさか!」


 すると、先ほどからチラ見していたシオンはこの時点でなにかに気づいたようだ。


「ええ。私達の血を受け継いだわ、属性も同じになったわね?」

「「!!?」」


 私はシオンが願っていた事をあっさりと告げた。リンスは属性が増えた事に驚きを示した。

 シオンは喜びの渦中に居ながら、黒い下着と黒銀のドレスを羽織り、楽しそうな表情でソファに座った。

 私はシオンに対しリンスとの出会いを話す事にした。


「まぁ出会いこそは第八十八流刑島で死に掛けてたリンスを助けた事にあるけどね?」

「え? カノンもあそこに居たの?」

「いやいや、そこで召喚されてきたのよ。たまたま異世界の旅行に参加してた間にね?」

「え? 召喚で?」

「そ、召喚で」


 シオンも流刑島に居たからなのか、きょとんと(ほう)けたの。だから事の経緯を軽い調子で伝えると唖然(あぜん)とした表情のままオウム返ししてきた。


「勇者召喚・・・ある意味で成功してるって事ね」


 シオンは私からの回答を得ると思案気になり〈ある意味〉という言葉を使う。私も〈ある意味〉という意図を理解しながら実情をシオンに伝える。


「ある意味ではね? ただ、残りの全ては変質してるから殲滅戦になるわよ?」

「せんめつ? どういう事なの?」


 シオンは私の言葉を聞き胡乱(うろん)げになるので詳細を明かした。

 最後は解放手段を提示すると──、


「勇者だった者達の解放ね? まぁ異世界に飛ばされてきた段階で帰れない事は判りきった事ではあるけど、汚染された精神を削りとるか存在そのものを消し去るかしか助ける方法が無いという事ね。魔法陣を見た限り不完全な術で行使してたから」

「やっぱり、あれしかないのね」


 シオンは私の意図を読み、苦渋の表情を浮かべた。私は近ければ頭を撫でるところだが今は対面に居るため苦笑しつつもシオンに告げた。


「それしか無いでしょう?・・・苦手なところ悪いけど私の経験値も複製したから失敗する事はないと思うわよ?」

「ホント? それなら、少しやってみるわ!」


 シオンは私の言葉を聞くや否やきょとんと(ほう)けるも、少しだけ自信がついたのか立ち上がりながら例の王宮医師を視認した。

 今は私と同様、距離は関係無しで行使できるため亜空間経由で捕縛したわね?


「よし! 確保!」

「なら、次は魂めがけて」


 私も同じく反対側から補助して捕縛したので、シオンに次の方法を伝えた。

 するとシオンは目を見開き──、


「甘〜い! 血液と違ってこんなに美味しかったの!?」


 悪意の味に酔いしれた。

 それこそ、苦手意識を払拭するくらいの風味はあったのだろう。いや、結構美味しいわね?

 私は王宮医師の記憶はともかく味見した。

 これは〈触飲(ドレイン)〉と〈隷殺(レイサツ)〉スキルの併用技だから、甘さの中の渋みのおかげで旨味が更に増した感じがするわね。


「悪意の塊だもの。王宮医師はどの時点で入れ替わってる?」

「えっとね? 数年前ね・・・あー、あの時に埋め込んだのね」


 シオンは王宮医師の入れ替わり時期に気づいたようだ。頭痛の始まりはシオン自身も覚えてなかったようだもの。

 延々と続く〈精神干渉無効〉それは時に精神に負荷を与え続けるものだから。〈痛覚耐性〉や〈痛覚無効〉でも精神へのダメージは(くつがえ)せないしね?




  §




 それからしばらくして──、


「シオン様が二人居る!?」


 大使と職員が戻ってきた。

 というか、ようやく戻ってきたというのが正しいかしら? 一人は浮かれ気味であり一人はゲッソリとした様子だった。

 シオンの顔を知るのは職員の方であり大使は知らなかったようだ。

 私はひとまず自己紹介だけした。


「どうも。シオンの姉です」

「姉!? え? もしや、あの? カノン様ですか?」

「ええ。あの?」


 シオンの身内とだけ明かすのだ。

 しかし、シオンが本名を含めてなにかを伝えてたようで驚愕の職員はシオンに向き直り問い掛けた。するとシオンは問い掛けられて視線をそらした、私から。


「あのってなに? なにを教えたのかしら? シオンちゃ〜ん?」


 私はアルカイックスマイルでシオンを(にら)みつける。すると空気を読んだ職員が暴露した。


傍若無人(ぼうじゃくぶじん)でドSとか言ってましたよね?」

「ほほう。シオンちゃ〜ん? あとは判るわね?」

「は、はい」


 まぁ、あとは判る話であるためシオンは顔を赤く染めながら(うつむ)いた。

 ある意味で性癖のための下準備よね?

 ただ、心核経路からは感情がアリアリと伝わってくるの。嬉しいってね? アレコレして!

 って言葉というかシオンの願望がね?

 私が引き()るくらいには溜まっていたようだ・・・精神負荷のストレスが。





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