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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第十章・氷結大地に植樹しよう。

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第228話 想定外に困惑する吸血姫。


 私は三番船の大浴場だけを開放した。

 一応、タラップだけは回収したけどね。

 これは不法侵入対策でもあるから。


「さぁ、入って入って」

「うわぁ!? ひろーい!?」×5


 最初に浸かるのは侵入班だけとなったが。

 身体を洗ったあとは揃って湯船に浸かる。

 ニーナとウタハがプカプカと湯に浮かび、


「生き返るぅ〜」

「汗が流れるぅ」

「ニーナの尻尾がピクピクしてるぅ」

「そう言いつつ握らないで、あん!」

「反応と感触がいいわね。もう少し揉んで」

「ち、ちょ、ちょっと!? や、やめ!」


 サーヤとユーコが私とマキナの隣で寛ぐ。


「湯船が無駄に広〜い」

「過去最高じゃない?」

「これは大人数向けに用意したもの」

「確か上界に居る者達も降ろすんだっけ?」

「ええ、赤子を含めて九十一人でしょ。女性陣だけでも六十五人だし、必要だと思ったのよ」

「六十五人!? 急に増えたわね〜」

「そんなに人員が居たんだぁ」

「十四組を除く、一部の者達が揃ったらね」

「ああ、そういえばそれくらいは居たかぁ」


 本当に居たのよね。

 それくらいの人数の学生達が⦅居ましたね⦆何故、四女が反応す⦅後輩でしたから⦆はい?

 それはともかく、


「私を除けば、総勢六百十六人だもの」

「その中から死亡と人格崩壊が現れて」

「転生で生き延びた私達も居ると」

「学生に紛れ込んでいた私は除く」


 しみじみ思い返せば結構救ったわね。

 一人の人物から複数人に分裂したりしているから数が増えたようにも思えるけども。

 するとマキナが神妙な表情となり質問する。


「でも、大丈夫なの? まだ教育途中だったんじゃ。降ろすとしても知識無きままは困るよ」

「大丈夫よ。全員が高成績を出したからね。これもレイキ達に触発されただけだろうけど」


 マキナが質問した通り、この風呂場は全員を降ろすつもりで用意した規模の大浴場だ。

 女風呂は大所帯ともあって大きくなった。

 男風呂は二十六人なので規模は小さめだ。

 全員が身体を洗って、浸かっても問題ない規模だとこれくらいが妥当なのよね。風呂場だけは二番船から移していない区画でもあるし。

 すると知らない名前だったのか、隣の二人がきょとんとオウム返しした。


「「レイキ、達?」」

「ええ、ウタハとルミナの彼氏でもあるわね」

「か、彼氏? ルミナに彼氏?」

「あ、あれって本当だったの?」

「実際にウタハ達と会いに行ったしね」

「「・・・」」


 直後、沈黙が湯船を支配する。


(ああ、嘘だと思っていたクチかしら?)


 マキナは我関せずで無視を決め込む。

 ニーナはピクピクと浮かんだままだ。


(尻尾を揉み揉みされた弊害かしら?)


 温泉に流れては不味い代物だけは自力で魔力還元させているけれど。器用な事をするわね。

 ウタハはジト目が刺さって明後日を向く。

 音の出ていない口笛を吹いて天井を見る。

 しかし、


「「そこのエロフ、くわしく教えなさい!」」

「は、はいぃぃぃぃ!」


 背後から両肩を握られて、怒れるユーコ達によって端っこへと連れられていった。

 そんな温泉での騒ぎを隣で聞いていたのは、


『大所帯になったなぁ』

『そうだね』

『男だけでも二十六人ってびっくりだ』

『そうだね』

『マサキって、そこはデカいのな』

『僕の何処を見てるの!?』


 唯一の男達であった。

 壁一つで区切られているだけだから、それぞれの会話が丸聞こえなのよね。流石のケンもマイカから注意を受けているからか、危険を承知で覗きに来るような真似はしないようだ。

 マサキの股間を覗き見ているのは微妙だが。


『これがニーナと?』

「『そういう事を想像しないで!?』」


 ニーナも起き上がってツッコミを入れた。

 まぁ情事を想像されるのは恥ずかしいわね。

 私とマキナは騒がしい湯船の中で、


「広くなった分、隣同士なんだね」

「こればかりは仕方ないわ。水周りはね」

「配管を一極集中させていると」

「何カ所にも分けたら保全がね」


 船内設備について話し合う。

 今回建造したのは私だけだからね。

 マキナも知りたい部分があるのだろう。


「今回は船内の案内はするの?」

「ナギサに丸投げしてるからするでしょうね。船内へ入る前に、命令だけはしておいたから」

「そうなんだ。結構、様変わりしてるから、迷う者が出そうな気がする。シロとかシロとか」

「O字の廊下だから迷っても元に戻るわよ」

「ああ、それで」


 というところで、脱衣所から大声が響く。


『ひろーい!? あ、これ、ユーコのパンツ』


 声の感じからしてフーコかしら?

 ユーコのパンツを伸ばしてそうだわ。

 そして大声が大浴場に近づいてきて、


「ここもひろーい!? って、カノン達が入ってるぅ!?」


 フーコと共に案内されてきた面々がぞろぞろと入ってきた。拠点には誰も居なさそうね。


(この分だとキャンピングトレーラーがお蔵入りになりそうだから風呂場と医務室に間の区画に娯楽室を移設してくるしかない、かしら?)


 それか上界に持ち込んで休息所として使うのもありだろう。今は余剰設備として使わなくても今後は使うかもしれないしね。

 何はともあれ、総勢四十四人の女性陣が風呂に入ってくるとそれはそれで凄い事になった。

 元々入っていた私達は湯船の端に移動して、


「今はシオンとクウ、ナツとサヤ、アンコとコウコが居ないだけだけど・・・」

「これはこれで多いって思えるよ」

「ここに赤子を含めて九人が追加、か」

「本当に大所帯になったよねぇ」

「あそこにサーヤの元お尻も居るもんね?」

「う、うん? そう言われるとちょっと微妙」

「このぷりんとしたお尻から、サヤカがねぇ」

「マキナ! 何処を触ってるのよ!?」


 続々と入ってくる船員達を眺めた。

 クルルは知っていたからか気にせず湯に浸かってオッサンめいた格好になっているけれど。

 それは隣の男風呂でも巻き起こり、


『マ、マサキに負けた・・・』

『『『タツト、どんまい』』』

『ぼ、僕の何処を見てるのさ!?』

『以前は隠していたコマサキだ』

『!? え、えっち!』

『うっ!?』×8

『何その反応!?』

『い、いや、同性なはずなのに』

『急に気恥ずかしくなったな』

『そういう風に見えないのは何故なんだ?』

『種族違いなのにこんな気分になるとはな』

『実に不可思議な感覚だ』

『オーガ族まで誘惑する兎、か』

『こ、これがニーナの誘惑スキル?』

(つがい)にまで影響を及ぼすとは侮れない、な』

『「なんでやねん!?」』


 アンディを含めて風呂に入ってきたらしい。

 会話は少々聞くに堪えない内容だったが。

 十二人の男達でもかなりの騒ぎになるわね。


『『『・・・』』』


 元女子のロナルドはリョウと空気を読んで共に端っこへと寄っているみたいだけど。


「本当の意味であちらはすっからかんかしら」

「おそらくそうかも・・・あぁ、シオンお母様が一人でポツンと一号車に居るみたい」

「あとでお留守番ご苦労様と伝えましょうか」


 この分だと、こちらに全て移管した方がよさそうね。


(どのみち、出港準備も必要だし)





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