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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第十章・氷結大地に植樹しよう。

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第226話 ひと仕事を終えた吸血姫。


 どうも、姉上(カノンス)からポンコツ女神と名付けられたユーンスです。

 それを言われて耳が更に痛くなりましたね。

 ポンコツはミアンスの専売特許だったのに。


「絶対に違う! 何で私なのよ!?」

「まぁまぁ、姉上落ち着いて下さい」

「お、落ち着いていられるかぁ!?」

「姉上のお尻ペンペンが延長ですよ?」

「うっ! 忘れていたのにぃ!?」


 絶対に違うと思うのは当人のみですけどね。

 何はともあれ、姉上(カノンス)達が〈希薄〉を用いて王都へと侵入を試みる直前、


「おっそい! 何してるのよ!」

『落ち着きなさい。主様を待つのです』

「待つといってももう、一時間も待ってるよ」

「確かに少し長すぎませんか?」

『待機場所でも人が溢れてきて』

『下手な被害者が出てしまいますよ?』

『分かっていますが命令なき行動はダメです』

「『そんなぁ!?』」


 待機人員の十人は荒れに荒れていた。

 姉上(カノンス)達は寒空の中、商人の妨害に遭っていただけだが、その妨害までは内部にもナギサにも伝わっていなかったようだ。

 こちらでもやきもきしているポンコツが、


「連携はとっていないの?」

「何でも別行動だから哨戒班に手信号を示すまでは動かさないとの話よ。ゴーグルの通信は陽動班と指揮所のみに割いているとの事だから」


 背後でアインス達とお話中である。

 そもそも侵入班が同じ通信を使っていたら同一組織だと示してしまうもの。複数の組織が個別に動いて衛兵を分断させる事にあるからね。

 なお、地下神殿のレベル制限の解除は行っておらず、僧衣とペンダントの所持で限定的に許可を出している。地下神殿に入る入口が教会施設だから仕方ない話でもあるのだけど。

 すると業を煮やした者が飛び出そうとした。


「も、もう、待てない!」

『こら!? フーコ!!』


 ナギサが制止するも同じように動き出す者が溢れそうになった。


「これ以上、増えたら死人が溢れるよ!」

『シオンさんにどやされるけど仕方ない』

『カノンの罰は甘んじて受け入れる!』


 その直後、


『陽動指示が出ました! 開始して下さい!』

「もっと早く動いてよぉ!?」


 姉上(カノンス)達が動き、グダグダ感のまま王都内の各所にて騒ぎが勃発した。

 フーコが文句を垂れるとニナが呆れの声音で物申した。


『何か、商人に邪魔されていたって』


 これはニーナと行った念話だろう。

 念話も極力封じているが侵入開始と同時に姉上(カノンス)が全員に解禁したようだ。


「はぁ?」×9


 すると今度は門側を哨戒していたリョウが直前の映像を一同のゴーグルに示す。


『待機列が進んでも、歩もうとしないバカが居たそうだよ。これがその時の映像ね』

「うわっ、列を離れて戻って離れてを何度も繰り返してる。なんて自分勝手な商人なの?」

『暖を取る場所が脇しか無いのが問題だね』


 それを一時間に何度も繰り返されていた。

 滅びを自らが望んでいるかのような対応ね。

 ポンコツも疑問に思いつつ背後で話し合う。


「あれって〈夢追い人〉なの?」

「違うと思う。あれは単なる商人ね」

「何処の所属よ?」

「小国連合みたいね。国同士の仲違いには商人は関係ないから」

「温暖な地域から極寒の地域までご苦労様ね」


 一番温暖な地域を担っているだけあるわね。

 この件が解決すると私の担当地域も昔みたいに温暖な地域になればいいのだけど。

 その間の陽動の五班は各所で暴れ回る。

 詰所ではフーコとユーマがバタバタと倒していく。背後から蹴り飛ばし、横から刻んだり。

 鍛冶区画ではシロとセツが炉の火を落とす。

 冷却水をぶちまけ水蒸気が立ち所に溢れる。

 モクモクと水蒸気が舞い、粘土の割れる崩壊音が周囲に響く。これで銃身やら弾頭を造り出す事も不可能になったわね。

 厨房ではシンとアキが魔物肉や食料を燃やしていく。氷を溶かし熱々の料理を置いていく。

 王宮内ではアコとココが王族の衣装を燃やしまくる。これも温暖になれば不要だものね。

 軍の詰所ではナツミとサヤカが複数の弾薬庫に向かってロケット花火を打ち上げていた。

 ドンドンッとはじけ飛ぶ火薬が多数ね。

 これらを隠れた状態で全員が行うから衛兵達やら軍人達は阿鼻叫喚だ。

 最後に帝国兵の持つ所持品をあちこちに落としていく。それは例の商会員の名刺と共に。


「これで全責任が新皇帝に向くと」

「商会店舗に衛兵達が向かったね」

『商会諸共滅びますように!』

『銃器の設計図も燃やしたぞ』

『回収した食料の一部を商会に送ったぞ』

『これで侵入したのが商会員になるね?』

『よ〜く燃えるドレスだらけだったわ』

『お陰で王宮内が無駄に暖かくなった』

『『軍の弾薬庫も発破かけてきたよ〜』』

「今回の件で経験値もガッポガッポで」

「私達も無事にレベルアップですね!」


 そうして最後の仕上げを終えた陽動班は、


『主様達の侵入が成功した。総員撤退せよ』

「『了解!』」


 ナギサの指示が入ると同時に空間跳躍(くうかんちょうやく)して外の待機場所へと戻っていった。


「陽動と言いつつ暴れたいだけでは?」


 ポンコツが何か言ってるが予定調和である。

 今回は必要箇所を全てボロボロにしたから。

 なお、厨房は氷を利用した料理しか無かったので焼きもあるんだぞっと示しただけですが。




  §




 何とか無事に地下神殿へと侵入した。

 侵入した地下神殿は氷で出来た聖堂だった。

 私達はダンジョンと思って入ったのに、


「ここはダンジョンってわけでもないんだね」

「ダンジョンだった名残があるだけなのかな」

「あちらこちらに出入口もあるにはあるが?」

「何処も氷で塞がっていますね」

「魔物も全て凍結してるね。これで割ったら」

「ドロップ品が出た!? 一応、倒せるのね」


 ダンジョン機能が局所的に残っただけの氷の聖堂と化していた。侵入班の並びは私とマキナを先頭に、サーヤとウタハ、ケンとマサキが並び、ニーナとユーコが最後尾で付いてくる。

 本来なら殿はマキナの役目だが、戦わずに済みそうだったため、先頭に寄越したのだ。

 マキナは振り返りつつユーコに問い掛ける。


「それでドロップ品は何だったの?」


 ユーコはドロップ品を拾い上げ首を傾げる。


「カキ氷のシロップね。ブルーハワイ?」

「そう見えるシロップじゃない? これ」


 ニーナはドロップ品を受け取りながら振っていた。容器的にはシロップよね、先が尖った。


「ちょっと貸して貰える?」

「ほーい!」


 私はニーナが振った瓶を投げてもらいつつ受け取った。鑑定した限りシロップとあるわね。


「ここでカキ氷を作って喰えと?」

「氷だらけだから出来ない事もないけど」

「寒い場所でカキ氷はちょっと」

「お腹と頭が痛くなりそうだわ」


 ここが氷だらけだからそういう方面に変化したのかもね。何が元ネタなのか知らないけど。

 そうして詳細を鑑定すると、


「ボスに振りかけるシロップだわ」

「はぁ!?」×7


 どういうわけか攻略アイテムが出てきた。

 ボスにシロップってどういう意味かしら?

 困惑を浮かべるマキナ達を連れて私は奥に進む。答えはボス部屋に控える魔物で判明した。


「ゆ、雪だるまって」

「ここにきてこれ?」

「風雪で雪塗れにするとか?」

「複数の雪玉が飛んできそう」

「ご、剛速球がケンの股間に」

「一極集中しそうね。そのまま女の子に」

「潰れて俺も女の子にって、なんでやねん!」

「あははははは」×6


 ま、まぁ、ニーナとユーコの冗談はさておき倒す方法は一つだけらしいから、ボスが動き始める前に〈希薄〉状態で背後に向かった私はボスの頭上から青いシロップを振りかけた。


「あ、ドロドロと融けていく」

「断末魔をあげることなく?」

「雪だるまに声は出せないでしょ?」

「あのシロップの主成分って何だったの?」

「解氷剤的な代物じゃない?」

「融ける姿が泣いているように見える」

「あ、雪解け水に何か出たぞ?」


 融けきった雪だるまの中から出てきたのは鍵だった。形状的にはシメジっぽいけど何故に?

 元々このダンジョンが何だったのか考えたら理解は容易いとニナンスからの答えが届いた。

 私はあえて男二人を見つめつつ、


「二人のブツみたいな見た目よね」

「ああ、二人のブツみたいだね?」


 マキナも察したのかボソッと呟いた。

 そして近くにある鍵を扉に挿し込んだ。

 鍵穴だけは至って普通の鍵穴だけどね。

 扉を開けたあとの鍵はウタハに手渡した。


「なんで持ち手がこんな形状してるの?」

「雪だるまが雄だったからとしか?」

「ケンもこの程度なのかしら?」

「なんでユーコは人の股間を見るんだよ!」

「マー君も標準時はこんなものよね〜」

「ニーナ! そんなに小さくないですよ!」


 ともあれ、さっさと中に入った私とマキナは卑猥な石像とまたも御対面した。


「む、胸が無いわね・・・」

「完全に削り取ってますね」


 遅れて入ってきた六人も愕然とした表情で神殿内を見回していた。


「石像の周囲だけ凍ってる?」

「溢れ出る魔力が変化したの?」

「というかここが一番寒いな?」

「水属性が氷に変化していると」

「ここだけ氷点下何度なんだろう?」

「さぁ? 温度計が欲しいかも」


 そしていつものように交換処置を行いマキナ像を設置した。

 すると、


「あ!」×7

「一瞬過ぎるでしょ!?」


 魔力と生命力が一瞬で溢れ出し、氷結空間だった神殿内から氷が消え去り、緑の溢れる暖かな空間へと早変わりした。外の魔物共も次々と動き始め、ダンジョン機能を取り戻していく。

 その変化は外まで伝わり、


⦅大地が活性化しました。空を覆う曇天が消えて大地の地面が現れ樹木共が根を張りました⦆


 神殿内が温暖に変わったと思ったら外も同じく温暖な気候に戻っていった。


「一瞬で寒さが消えただと!?」

「熱変動が瞬間的に起こるって不思議だぁ」

「改めてこの格好で良かったよね」

「うん。乳首が少し痛いけどね?」

「そんなに言うなら揉んであげるわよ」

「マー君に揉んでもらうから結構よ!」

「綺麗な水が湧き出した!」

「これ、経験水みたいよ?」

「それなら全員で飲もうぜ!」

「ケン、お先にどうぞ!」×5

「人身御供かよ!?」


 そんな六人の騒ぎを眺める私とマキナは一息入れつつ今後の予定を話し合った。


「そうなると残りはあと一カ所かしら?」

「そうだと思う。強化も上から消しているし」

「あとは放っておいても魔力圧で放出されそうな気もするけどね。再封じも不可になったし」

「でもさ、そうは問屋がって事もあるから?」

「そうね、行うしか無いのでしょうね・・・」


 残すところはあと一つ。

 帝国に存在する上界へ繋がる最後の経路だ。

 一先ずの私は、マキナと共に後片付けを行って、騒ぐ一同に命じる。


「さて、撤収して温泉に入るわよ」

「はーい」×5

「がぶ飲みしたからって限度があるよ?」

「いや、ぜ、絶対に、レベル、ウップ!?」

「ケン、汚い!」×4

「マーライオンは外に出てから行ってよ」

「うぅぅ、水、飲み、過ぎた、ウップ!」

「レベルアップしたのはケンの腹だけね」

「男のボテ腹って誰得なの?」

「水を飲み過ぎたぁ!」





※ 次話からは深夜0時のみの更新となります。

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