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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第十章・氷結大地に植樹しよう。

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225/276

第225話 吸血姫は邪魔者に遭う。


 それから数日後の朝。

 ようやく王都門の開門日が訪れた。

 朝食を終えた私は拠点をそのままとし、


「先ずは哨戒班とドローンを飛ばして」


 一号車内にある指揮所にてナギサに命じた。

 命じられたナギサは各員に命令を飛ばす。


「了解! リョウ君、ゴウ君、アンさんは現地に向かって下さい」

『『『了解!』』』

「リリナ様、ニナさん、レイさん、ドローンを」

「「「了解!」」」


 真っ昼間から人目に触れる場所で哨戒させないといけないのは少々心苦しいが、今回は縛りプレイにも似た状況なので仕方がないのだ。

 ドローンも常陽向けを新規で造って用いている。こちらは黒い箱ではなく水色の球だが。

 なお、哨戒班には〈希薄〉を基本に〈獣化〉は無しで飛んでもらっている。

 大きな鳥が飛ぶと、それはそれで圧巻だけど王都の騒ぎを起こすのは彼らではない。

 先んじて移動を開始している陽動班だから。


「各員、視界共有の魔道具を装着せよ」

『『『了解!』』』

「視界映像をゴーグルに展開せよ」

「「「了解!」」」


 陽動班の全員にゴーグルを装着させ装備も白い迷彩コートと雪中行軍向けの装備で向かわせている。この格好は氷上国軍の装備に似ているので傍目からは軍人にも見えるだろう。

 ゴーグルには王都の地図と哨戒班から得た視覚映像・敵となるべき衛兵の場所などが表記され、各自の会話もゴーグル越しで行われる。


『陽動一班、侵入成功。ポイントDに向かう』


 実は事前にユーンスから得た王都情報を元に何処で騒ぎを起こすか決めており、陽動班の人員は定時連絡を行うことにしているのだ。

 この定時連絡も例の神器経由で行っている。


「了解、陽動一班は引き続き行動せよ」


 場所の特定が出来ないよう動きながら行う。


『了解!』


 なお、陽動班の人員は初期人員に少しばかり追加を行った。少しというか行きたいとする者が増えたのよね。主に経験値欲しさの者達が。


「無事に侵入成功。国軍の装備品という扱いが功を奏したのでしょうね」

「ユーンスからの情報だから間違いは無いわ」


 そのユーンスも、時々ポンコツなんだけど。


⦅耳が痛いです⦆


 ポンコツ(ミアンス)よりマシだから気にする必要は無いが。


「さて、着替えて向かいますか」

「お気を付けて、主様」

「ええ、行ってくるわ」


 陽動が騒ぎを起こし始める前に私達侵入班も王都門前に徒歩で向かう。私達の格好は軍人ではなくユーンスを崇める神官達の容姿でね。

 全員が人族に〈変化(へんげ)〉したのち、水色の僧侶服、首には四角形のペンダントを提げ、頭には顔が見えない水色ベールを羽織る。

 下には何も着けず全員が裸のままだ。


「この格好、女神達の普段の格好では?」

「色違いだけど(ほとん)ど同じね」


 大変寒々しい格好だが、これが水脈神を崇める者達の普段の格好なのだから、驚きだろう。

 ペンダントの形状はそれぞれに異なるが。


 ───────────────────

 続:種:神  名:ペンダントの形:別名

 ───────────────────

 長:調:アインス:三角形の赤金板:炎熱

 次:伝:ユーンス:四角形の白銀板:水脈

 三:促:レナンス:五角形の白金板:医療

 四:知:ミアンス:六角形の黄金板:錬金

 五:魔:ユランス:七角形の青銅板:魔法

 六:素:ニナンス:八角形の黄銅板:迷宮

 七:予:ミカンス:九角形の赤銅板:土壌

 ───────────────────


 ちなみに、私とマキナ達のペンダントは銀青色のロザリオだったりする。形状はナギサがそれを用いた事で確定したようなものね。銀青色は銀髪と碧瞳から選ばれたようなものだけど。

 私達は僧侶服の内側に積層結界を張りつつ、


「自由度が増して少々辛いな、マサキ?」

「そ、そうだね。ケン君」


 ケンのセクハラを聞き流し王都門に向かう。

 足下は自由らしいので例のブーツを履いた。

 素肌の上に薄い僧衣、ブーツだけって変態?

 私達はそうでもないが男性は少々酷らしい。


「セクハラも大概にしなさいよ、ケン!」

「ニーナ、その物騒な右手はしまってくれ。玉がヒュンとしそうだ」

「握りつぶしてあげようとしただけでしょ。自由度が増したなら根元から潰せばいいんだし」

「そもそも女性の中で発する一言ではないよ」

「可能なら私が握り潰してあげてもいいわよ」

「ユ、ユーコもその両手の動き、やめれ!?」

「それならセクハラ禁止ね?」

「そうそう、男一人、女七人なんだから」

「ぼ、僕は男ですって!?」


 マサキはどちらかと言えば男の娘よね。

 私とマキナもニーナ達と目配せして、


「男一人、女七人なんだから」×6

「「全会一致!?」」


 男達が驚愕する一言を吐いてあげた。

 ともあれ、そんな騒ぎを行う間に門前へと着いた。


「待機列が無駄に長いわね」

「最後尾は何処でしょう?」

「せめて看板が欲しい!」

「最後尾はここっていう!」

「「流石は元レイヤーだわ・・・」」

「「レイヤーは関係無くない!?」」


 関係は無いが、その案は⦅採用です⦆ね。

 列を作っていても後ろの方は散けていて並ぼうものなら「割り込むな」と慌てて並ぶから。

 それは列から離れて暖を取るからでしょ?


「欲望丸出しだわ。また暖を取りに戻ったし」

「これは野営者達が先んじて向かったから?」

「どちらかと言えばあの子達が並んだから?」

「慌てて並んだ結果って事ね。強欲というか」

「何というか。自分勝手極まれりね」


 陽動班は私達が入るまで内部で〈希薄〉したまま無期限待機だ。一応、寒くならないよう身体が温まる簡易食を手渡してはいるけどね。

 文句を垂れる間、男達はそれらを同情した。


「それだけの寒さの中で過ごしていたなら」

「温まりたいと思っても不思議ではないよ」

「不思議ではないのは分かる、けど・・・」

「列が進んでも戻ってこず、動こうものなら」

「割り込むな! そこは俺の列だ!」


 またも文句を言って元に戻る始末である。

 物理的に始末していいかしら? 邪魔だし。

 離れる者を見て苛立ち気にユーコが呟く。


「それなら並んでいればいいでしょうに。バカなんじゃないの? 寒さ対策も無しでこの国にわざわざ来なくてもいいでしょ?」


 マキナも思考を読んで納得していた。


「実際にバカなんじゃない? 神官風情がとか思っているみたいだし」


 その際に私達は周囲の熱視線に気づく。

 ユーコ達だけでなく、私達に向かう視線に。

 全体的に嫌悪というかなんというか?


「まさかとは思ったけど、この国の神官って」

「結構、地位が下になってない?」

「分かる。捕縛結界を延々維持していたり」

「寒々しい中で待機させるのも神官だから」

「今では嫌悪の象徴と化したのね」

「元々は奴らの行動が原因だけど」


 神官の格好なら問題無いと思っていたら、大問題が顔を出して邪魔してきたわね。やっぱりユーンスもポンコツ女神で間違いないわね。

 私はその反応から長引くと不利になると思った。このまま延々と侵入が叶わないと国が詰むから。邪魔する商人も消えてなくなるから。


「全員、〈希薄〉ののち先に進むわよ」

「え?」×7

「こんな馬鹿げたやりとりで手をこまねいている時間は無いわ。入都に必要な税だけ落としていけばいいでしょ」

「は、はい!」×7


 最初からこれを選択していれば良かったわ。

 無駄に長く待機させると、陽動班が暴走しかねないもの⦅間一髪でした⦆やっぱりね。

 どうせフーコとユーマが暴走仕掛ける状態だったのかもしれない⦅いえ、全員ですね⦆は?


(これは危うくという感じね・・・)


 内部で何が起きているのか知らないけど、急いだ方が良さそうだ。まぁ意図せず暴走していたら全員を罰していたけども。





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