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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第十章・氷結大地に植樹しよう。

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第223話 吸血姫は一泡吹かせる。


 偵察試験機の準備を終えた私とマキナは〈ティシア王国〉内の空港を訪れた。

 空港に着くなりマキナのテンションはいつも以上に高くなり、溜まりに溜まったフラストレーションを試験で解消している事が分かる。


「試験機を滑走路にてんか〜い!」

「完全遮音機能の試験から行うわよ」

「りょうか〜い!」


 ここは試験機を飛ばしたりするためにリンスの考案で用意された人気の無い空港だ。滑走路やら発着場があるだけで、周囲には何も無い。


「まずは遮音無しでの浮上試験ね」

『いくよ〜!』

「抑えめにスロットルを動かして」

『わかった!』


 空港の周囲も殺風景かつ何も存在しない盆地となっていて、中で何が行われているのか一切気づかれない場所となっている。

 まぁ轟音が響いたら何かの試験を行っているのだろう事はバレバレなんだけどね。


『浮上、開始!』

「轟音が凄まじいわね。分かっていた事だけど」

『完全遮音でいくよ!』


 バレバレだから何かが侵入したっぽい。


「外側の轟音が消えたわね」

『中は左右の稼働音が少し響く程度だね』

「無事成功っと。次は浮上しつつ前進して」


 マキナは私の指示通りに、


『りょうかい!』


 垂直離陸して加速ののち上昇させる。


『あっぶな!』


 ただ、途中でヒヤッとする事が起きたけど。


(ああ、これは機能追加が必要かもね。機体は稼働中だけど、ここで付与しましょうか。水分補給の水筒に亜空間路を通じて繋げて)


 ちなみに、今回は改良というより、


「それで浮上時の操作感はどう?」

『エンジンの位置が変化した新型機だから慣れるのに少し手間が掛かるかな? でも手応えとしては以前よりも自由度が増したかも。離着陸も風圧陣に丸投げした甲斐があったね?』

「下手に物理的な可動部を設けるよりはマシという判断は当たりだったわね」


 途中から新型機として開発する方向に変更したのだ。翼の下のエンジンを動かすと翼に無駄な負荷が掛かったのと、脱落が起きたから。

 だから今度はエンジンを縦長に伸ばし、薄い楕円形状に造り換えたのち、機体中央に双発として並べたのだ。


『吹き出し口が小さくなった分、爆発的な加速が可能になったけど』

「けど?」


 そのうえで空気浮揚艇のように風を真下に向けて発するだけの風圧陣もとい風圧浮上陣を底部に設け、翼も大きくエイのように変更した。

 着陸時は逆噴射で減速しつつ車輪を出し、底部の風圧浮上陣から段階的に噴射して着陸するという方法を採った。

 見た目のうえでも以前よりもスマートかつ異世界の戦闘機に似てきたわね⦅一緒だぁ⦆三女も同意見らしい⦅ステルス爆撃機みたい⦆白銀だから少々違うけど見た目だけはそうかもね。

 翼の大きさからも分かるが最大積載量も増えた。増槽が不要な機体だけに載せる物など限られているが⦅ミサイルオンリー?⦆かもね。

 そして今は追加した機能に関する議論中だ。


『先ほど追加した吸気孔前の還元陣は必要なくない? いざという時は風圧陣で回避すればいいんだしさ、燃料にしたらもったいないよ?』

「言いたいことは分かるわよ。でも、刻印を護るためには必要なのよ。吸い込んだ異物が刻印を傷つける事だってあるから。それで飛べなくなったら元も子も無いわ。それに還元魔力はそのまま稼働魔力に変わるから一石二鳥でしょ」

『その燃料化がもったいないんだけど?』

「それは経験値の面でって事?」

『うん』

「それなら心配しなくていいわよ。経験値だけは濾過して操縦席に設けた水筒に移るから」

『そのための水筒だったのぉ!?』

「元々は上空で喉が乾いた時の水分補給用よ。そこに経験値投入機能を追加しただけよ。そもそもの話、機体の目前に立つ方が悪いわ。眷属やら魔族は反対側に転移させるけど、滑走を妨害するような人族は不要でしょう?」

『た、確かに。本音を言えば、少し怖かった』

「まぁ、あわや大事故、だったからねぇ」


 これを取り付ける原因となったのも試験中に第零の間諜が入り込んだため、だったりする。

 滑走路に飛び出してきて大事故になりかけたから。マキナが咄嗟に風圧浮上陣を稼働させて明後日に飛ばして事なきを得たけど、ティシアの産業として航空機が売り出されるようになったから可能ならばと盗みに来たのでしょうね。


「さて、残りの試験を終わらせて戻るわよ」

『りょうかーい』


 なお、明後日に飛ばされた間諜は、またも滑走に戻ってきて、機体の燃料に成り果てた。


『間諜の経験値、ごちそうさま!』

「結局、喜んでいるじゃないの?」

『それは、それ! これは、これ!』


 とはいえ、機体の前方に出てくるって単なる死にたがりにも見えるわね?


⦅急加速する機体はありませんから、近くで見て可能とあらば、奪うって事だったのでは?⦆


 今回の間諜の行動はユランス達が苦笑するほどの滑稽な行動だったようだ。空港に居る職員達ですら危険性を理解しているのにバカよね。


 


  §




 そうして造船所に戻った私とマキナは引き続き問題点を洗い出し、新型機の量産を始めた。


「三女達のブツを優先に用意して」

「ところで旧型機はどうするの?」

「そのままでいいでしょ。新型機は希望者のみとすれば量産する手間も少なくて済むし」

「そうだね。なら、私とお母様だけで」


 というところでシオン経由で噂を聞きつけてきたクルルが造船所に顔を出して、物申した。


「私にもお願い! 大体、新型機が出来たなら私にも教えてくれるって話だったでしょ!?」

「あ、忘れてた! ごめん、クルルン」

「まったくもう!」


 この「まったくもう」はあだ名に対してなのかマキナのすっとぼけに対してなのか?

 何はともあれ、クルルの合流にあわせて、複座型と共に合計十七機の準備に取りかかった。

 量産手順は旧型と同じだが、


「マキナはエンジンをお願いね」

「ほーい!」

「私は機体を造るから」


 機体形状が出来てくると、クルルが機体を見上げて、口をあんぐりと開けていた。


「こ、これは、ステルス爆撃機じゃない!?」


 試験機は既にバラしていてこの場には無いからね。部品創造用として私が保管してるから。

 左右のエンジンを機体に組み込んでいるマキナが浮かせた機体の真下からクルルに微笑む。


「そうだね。エイのような見た目の機体だし」

「次は空飛ぶ白銀エイと言われるでしょうね」

「はわわわわ。この場合、複座というより?」

「ええ、両隣で操縦する形式になるわね。試験機では単座だったけど」

「け、計器は? 計器はどうなっているの?」

「異世界式に近い見た目にしてるわよ。機能面でも近しいわね。これが組み立て前の計器ね」


 私はそう言いつつクルルに見えるよう、組み立て前の計器類を手渡した。そこそこの大きさだが浮遊魔法で浮かせているので問題は無い。

 計器に近寄ったクルルは嬉しそうに目を輝かせた。


「高度計、姿勢指示器、速度計、コンパス、旋回計、昇降計・・・ホントだわ」


 本当に操縦が好きなのね。

 乗りたくてウズウズしているマキナみたい。

 マキナはエンジンを取り付け終えると車輪の取り付けに入った。


「今回からは形状が形状だからね」

「どうしても詳細が分かる方がいいからね。他には魔力密度計も付いているわよ、真ん中に」

「本当だ! ここは高密度になってるぅ!?」

「濃すぎる場所だと数字が出ないのよ。下界だと0から5パーセントほどじゃない?」


 私は左右の翼裏に亜空間の扉を設けてミサイル類を収めていく。バルカン砲も一緒にね。

 女神の機体は訓練弾を収めた⦅あざます!⦆受け取りは⦅今から伺います!⦆ユランスね。


「これはこの世界特有の計器でね。上空に行くほど濃くて地表に行くほど薄いの。魔力密度の状況に応じて、機体の加速に影響するからさ」

「た、確かに、場所によっては」

「加速の効かない場所もあったでしょ」

「そういう事情もあって魔力密度を把握して魔核(コア)からの魔力供給を開始するのよ。上界だとほぼ動かさなくてもいい魔核(コア)だけど、下界はそういうわけにはいかないからね」

「そ、それで魔核(コア)は何処に?」

「全て亜空間の中よ。そのまま搭載すると鹵獲された時に大惨事になるからね?」

「ほっ、搭載しているのかと不安になったわ」

「そんな大ポカをお母様が犯すわけないよ〜」


 マキナはそう言ってくれるが、当初の予定ではそのまま組み込もうとしていた私である。

 その後、ミスに気がついて即座に切り替えたけどね⦅カノンでもボケると⦆ミアンスの尻ペンがまだだったわ⦅あっ⦆逃げた。


「あとは上空の神器と繋がった自動操縦と」

「トイレ付きだね」

「い、至れり尽くせりね」


 そんなこんなで全ての機体の準備を終えた。

 ユランスが機体を受け取って帰ったあと、


「丁度良いから上界で飛んでみる?」

「「!!? 是非!」」


 私はマキナとクルルに提案した。

 旧型機の試験飛行は下界だったが、氷上国で飛ばすわけにはいかないからね。だから今回は上界の空港から飛び立って、第零上空を通り抜け、強奪指示を出した者を消しに向かうのだ。


⦅位置情報を送りま〜す⦆


 ユランスからも位置情報を貰ったしね。

 例の神器は上界でも使えるから。





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