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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第十章・氷結大地に植樹しよう。

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222/276

第222話 大掃除と移設を行う吸血姫。


 夕食後、温泉上がりのマキナを連れた私は造船所へと戻ってきた。これから私達が行うのは偵察機の載せ替えとエンジン可動部の改良だ。

 するとマキナがシオンと同じ表情で、


「あれ? この船」


 指をさして私に問い掛けてきた。

 私はマキナの問いに対し、二番船の格納庫へとタラップを繋げながら応じた。


「出来たてホヤホヤの三番船よ」

「さ、三番、船? いつのまに?」

「夕食前の三時間で造ったといえばいいかしら? 内部時間で言えば三年間で造った事になるけど。たった、三年間だったけど納得のいく代物が出来たわね。その分、偵察機の改良が必要になったけど」

「か、改良って?」

「垂直離着に改良するの。通常の浮遊魔法だけでもいいけど高度を取るには魔力不足になるからね。アレスティング・フックも付けるから」

「そ、そういうことなのね。妙に滑走路が短いから。大きさも大型船ぽくなってるし」

「とりあえず、載せ替えるから手伝って」

「うん。分かった」


 マキナも三番船の存在には驚いたが、今の興味は垂直離着式の改良に移ったようだ。一応、浮遊魔法を同時に用いる改良とするけどね。

 操作に不慣れだとバランスを崩しそうだし。


「私の愛機から改良するの?」

「試作機が先ね。そこから脆弱性の洗い出しを行って部品交換かしら」

「なるほどぉ〜」


 二番船から偵察機の載せ替えというが、全ての固定を解除するわけではない。格納庫の空間毎、三番船の格納庫へと移設するだけである。

 実は一人で行うには大変なのよね、これ。


「マキナは奥の三カ所をお願い」

「はーい! 他の工房は?」

「あとで全て移設させるわ。大物が先だから」

「分かった!」


 奥の魔法陣を解除して手前の魔法陣も同時に解除する。解除後の格納庫はその場から消え、格納庫は従来の広さを持つ空間へと復帰した。


「これが本来の広さなんだね」

「拡張していたからね。消えた格納庫はそのまま三番船に移設しているから、他の工房も移設するわよ」

「分かった!」


 そうして粛々と各部の移設を行っていく。

 船橋なども三番船に移設されるので、何も無い空間がその都度、二番船内に出来ていく。

 これらも追々個別に造らないとね。

 今は使い慣れた設備を移すだけになるから。

 私とマキナは最後に倉庫へと移動した。


「あら?」

「なんで?」


 すると倉庫の中に止まった人族が居たのだ。


「いつの間に侵入したのかしら?」

「積み荷の入れ替え時かな? 危険物感知結界にヒットしている形跡は無かったけど・・・」

「ということは危険物として認識されていなかったのね。人族も危険物指定しておかないと」

「だね。まさか、侵入されていたとは・・・」


 実はこの倉庫は空間毎隔離されていて、積み荷の出し入れ時以外は、船員達も一切出入りしない場所に存在するのだ。船員が触れて積み荷に問題が起きたら面倒だからね、信用面で。

 私達は固まった人族に近づいて観察する。


「見た感じ、衰弱してる?」

「積み荷を漁った形跡があるわね」

「あ、食べ残しがある・・・」

「不法侵入に窃盗、困った人族だわ」


 誰も積み荷に触れられない状態としていたのに、どこからともなく侵入者が入り込んで積み荷に触れて、全て台無しにしていた件はどうなるのかしら?⦅補償対象ですね⦆やっぱり?

 困った事に賠償金が必要になるようだ。

 一体、いくら吹っ掛けられるのかしら?

 私はどの積み荷に隠れていたのか探し回る。


「ああ、この積み荷の中に隠れていたのね」


 探し回った結果、人が一人が収まる大きな木箱の蓋が開いていた。全て釘打ちしているわけでもなく、蓋を乗っけただけの木箱だった。

 木箱の中は腐った食品が複数落ちていた。

 今が亜空間だから匂いはないけどね。


「何処に届ける積み荷なの?」

「えっと、セイアイ魔国みたいね。帝国領の」

「帝国領。ああ、温泉島の手前で停泊した小島で持ち込んだ積み荷か。セイアイ魔国の積み荷は亜空間庫に移すように言ったのに、誰が?」

「当時だと、シンとケンでしょうね。二人揃って頭の中身が桃色だった時期だからね・・・」

「気が緩んだ証拠だね。後で罰を与えとこ」

「洋上国で卸す荷が無かったからあれだけど、この分だど・・・ああ、氷上国の積み荷が」


 困った事にグシャグシャになっていた。

 絵画の表面を破って何かに用いた的な。


「ボロボロだぁ。これだと同じ積み荷を探し出して代替するしかない?」

「いえ、これは芸術品だから微妙ね。時間遡及魔法で戻らなかったら高額な賠償金が確定ね」


 私は時間遡及を行使して元の形状に戻した。戻した途端、例の木箱内に何かが落ちたが。


「何とか回避ね。ただの絵画だから良かったけど、魔法陣なんかだと大事だったでしょうね」


 マキナは苛立ちを浮かべて、立ちぱなしの人族を睨む。


「戻ったから助かったけど、要らん事をしてくれたねぇ、こいつは」

「こいつ自体は箱に戻して釘打ちしたのち亜空間庫に放り込みましょう。セイアイ魔国の積み荷って事はあれかもしれないし」

「ああ、子種用途って事ね」


 私は空間を操って強引に人族の身体を動かし押し固める。そして木箱の中へと顔面が下へ向くように落とした。マキナは釘打魔法で木箱を完全に封じて亜空間庫へと放り込んだ。


「食べかすの掃除も行わないと」

「それと食料品の賠償は確定ね」

「セイアイ魔国に吹っ掛けられそうで怖い」

「そうなるとユウカの酔い覚ましを大量に差し上げましょうか。食べられた品の(ほとん)どが魔族の性欲を引き上げる品みたいだし。人族には無害で美味らしいけど」


 そして二人で倉庫内の掃除を行いながら全ての魔法陣を解除していく。


「美味でも売り物を食べるってどういう神経しているんだろうね?」

「所詮は魔族の食い物って認識なんでしょ」


 一先ず、二番船の片付けは終了した。

 私達は二番船から降りて三番船に向かう。


「このまま偵察機の改良を行って」

「試験飛行はどうする?」

「上界でいいでしょ。氷上国だと面倒だし」

「ああ、見つかると厄介だね」


 本当の意味で厄介だからね。

 空飛ぶ槍と見るや欲するバカが多いから。

 こうして私とマキナはあーだこーだ言いつつも偵察機の改良を二人で行うのだった。





元旦は更新を休止します。

皆様、良いお年を〜。

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