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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第十章・氷結大地に植樹しよう。

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第220話 手持ち無沙汰になる吸血姫。


 氷国の中心部に近づくと同時に段階的に速度を落としていく。先端の積層結界も血肉で真っ赤に染まっていたので、新しい結界を張って視界をクリアにした。あれからプラス五千の部隊が三連続で続いて交換する余裕すら無かった。

 街道を行軍する総勢二万の軍勢を処したというのに〈夢追い人〉は最初の一万だけだった。

 大規模な部隊で採掘にあたっていたのね。


(帝国との関係が冷え込んでも商会は関係ないって事かしら? どちらにしても〈夢追い人〉が多すぎでしょう? まだ増えるのかしら?)


 今は風圧だけで浮かんで雪上を進んでいる。

 幸い、風雪のお陰で見えてはいないようだ。


「無限軌道はもう少ししてから稼働させた方がいいわね。あと60キロ、速度を落としたら着地と同時に運転再開ね」

『了解』×6

『そういえば今は浮かんでたんだぁ』

『それなら300キロも出せるわぁ』

『リニアではないのにリニアっぽいね』

『一列に並んでるから実質そうかもな』


 積層結界が無かったら難しい速度ではあったかもね。お陰で予定よりも早く到着したけど。


(この分だと陽動の必要性が無くなったかも)


 王都侵入を行う者だけが入都してそのままユーンスの地下神殿へと向かえば済む気がする。

 今回の素早い行動が功を奏した気もするが。

 しかし、想定通りとまではいかないようだ。


⦅常陽まで待って下さい。今は王都門が全て閉じられていますから。このまま侵入すると捕縛結界が働いて作戦の意味が無くなりますので⦆

 

 ユーンスの助言により常夜と明空(あけそら)の間は何も出来なくなった。早く着きすぎるのも問題があるのね。次の暮金(くれきん)までには片付けないといけないのに困った話だわ。

 私は手動運転前にタブレットを取り出し、


「となると王都近郊の野営地。いえ、そこには何らかのキャンプがあるだろうから、少し距離のある氷雪地帯へと、向かった方がいいわね」


 野営するための候補地探しを行った。

 すると(いぶか)しげな声音のナギサが問うてきた。


『そのまま入らないのですか?』


 私はナギサに応じつつハンドルを握った。


「困った事にね、ここにも捕縛結界があるらしいわ。早々に片付けようと思った矢先に、またも足止めを喰らってしまったわね」

『あぁ』


 今回は全員がそんなぁって感じだわ。

 いや、分かるけど。私もやる気が根刮ぎ奪われた感があるもの⦅すみません⦆いいのよ。

 それからしばらくして減速したので無限軌道を稼働させつつ着地し、空間連結も解除した。

 ドシンという衝撃と共にガタガタ揺れだしたわね。ウタハ達のうめき声が響きそうだわ。


「目的地は示した通りの場所よ。そこに着いたら円形に並べて数日待機ね」

『了解!』×6


 この数日はやきもきしながら温泉に浸かるしかないのね。極寒の地の結界って意味あるの?


⦅あれは前の国の名残です。大地が復活する事を願って大神官達が保守しているようですね⦆


 願ってというなら地下神殿の封印を解除すれば良いものを。どういう理屈で封印を放置しているのやら。まったく、その行動が謎だわ。


⦅地下神殿はレベル3000で入れません⦆


 アインスといい制限が極端過ぎない?

 どうせ怒りからって⦅ギクッ⦆やっぱり。

 何はともあれ、急遽空いた時間ということもあって今回も有効活用するしか無いだろう。

 氷上国が国家存亡の危機に瀕していても現時点で出来る事は限られるもの。


「到着っと。運転手は温泉で汗を流してね」

『了解』×6


 そうして到着後に待機状態へと移行した。

 各車両も指示通りに向きを変えて待機状態へと移行していった。円形になると空間を護るようにドーム状の積層結界が張られるからね。

 時々外に出て空気を吸うのも有りだろう。


『温泉入ってリフレッシュ!』

『ルーナ様の水着を用意して』

「裸じゃだめ?」

「カキ氷刑が待ってますよ。ルーナ様」

「あ、はい」

『ナギサさん。温泉でお酒は有りです?』

『無しです、リョウ君。アイスはいいですが』

『しょぼーん』

『セツ、一緒に入ろうか?』

『そ、その前に、ベッドに行きたい』

『え? も、もうエッチするのか?』

『寝たいの! 揺れで酔ったから!』

『ああ、そうか。すまん』


 そこで私は忘れていた事を思い出す。


「そうそう。ウタハは私と着いてきてね。ルミナも一緒に」

『『ふぇ?』』


 シロ達の気まずい雰囲気で思い出すとはね。


「リュウ・ナミル、レイキ・シロコ達が上界で待っているから、揃って迎えに行くだけよ?」

『そ、それって?』

『ま、まさか!?』

「他の面々も一緒に住んでいるけど、リンス達の教育で成果が出ているのは三人だけだから」

「「!!?」」


 二人ではなく三人ね。

 今回の再会で熱々の(つがい)がまたも増えるけど。

 この熱々で氷結が融ければいいけどねぇ。




  §




 ルミナ達は久方ぶりに上界へと移動した。

 そこは第六十浮遊大陸の一角だ。

 あれから開拓を進めていっているからか、そこには大きな城下街が出来ていた。

 王宮もあと少しで完成しそうな勢いだ。

 領民候補者の流入もかなりあるわね。

 金を持て余した冒険者が(ほとん)どだけど。


「うわぁ〜。大きなお城が建ってるぅ」

「あそこは誰が治める予定ですか?」

「たちまちはリンスかしら? これは眷属となった順番で決まっていってるからね。他の未開島だと第四十四も順次開拓中ね。そちらはユーコ達姉妹とフーコ達姉弟が南北で分割統治する事になるだろうけどね。火山島でもあるし」


 一応、ドラゴンの生息地等も開拓中だったりするが、この場では言わずとも良いだろう。

 統治者も眷属順で決まっていってるから、この二人の出番は最後あたりになりそうだしね。


「「なるほど〜」」

「但し、リンスの国の宰相はケンだけど」

「「えぇ!?」」

「反応に困るって? あれでも公爵だからね」

「「そうだった!?」」

「普段の行いが如何に大事か分かるわね」

「マイカさんが手綱を握っているから」

「今は大人しいけど、ねぇ?」

「うん。分かるわ、その気持ち」


 なお、各島の食文化は異世界特有になっている。レリィ達の寄越した異世界レシピで作る料理が多く最近では観光地の様相を呈してきた。

 ともあれ、私達三人は都となった街を歩き、


「リュウ君!」

「ルミ!」

(レキ)!?」

「「歌奈(カナ)!?」」


 事前に呼び出していた者達と再会した。

 再会場所は港。第六十五から繋がる専用港の一角である。港から少し奥にある管理区域に彼らの住処が在ったりする。

 ルミナはリス獣人のリュウと抱き合う。

 尻尾の大きなリスが並ぶと壮観ね。

 ウタハは森エルフとなったレイキと猫獣人のコヨミと抱き合う。これも仮に付き合うとしたらレイキの方になるだろうが。種族的にね。

 抱き合う様子を眺めていたら、


「熱い熱い」


 つい言葉が出てしまっていた。

 辟易とした表情と共に。


「あっ!」×5


 五人は気づいた途端に離れたけども。


「いや、ホントに熱いわねぇ」

「ああ、そういえば南極に居ましたもんね」

「寒い寒い南極から暖かい北極に」

「「「南極!?」」」


 男達は驚くが、これは本当の事だから。

 早く改善させて、温暖な南極で残存ゴミの片付けを行わないとね。





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