表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第十章・氷結大地に植樹しよう。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

219/276

第219話 吸血姫は大急ぎで向かう。


 この大地の寿命が発覚した事で、急ぎ大陸中央部へと向かう必要が出てきた私達だったが、たちまちは有言実行を優先する事にした。


「なるほど湯量が貯まるまでの待ちだったと」

「そうよ。外に取り出してから湯船に湯を張りだしたからね。丁度良い水温になる間は、掘りごたつと床暖房でナディ達を暖めていたけど」


 それは休憩を終える前に一号車と二号車の温泉だけ解禁する事だった。ここから先は好きな時に入浴が出来るので交代で温泉に浸かりに来る者が溢れるだろう。ただ、運転手と助手席に座る者は休憩時間でしか浸かれそうにないが。


「ナギサも次の休憩時に入ったらいいわよ」

「お、お言葉に甘えさせていただきますが」

「ああ、解放が先ってことね?」

「ええ、そうしなければ安心して浸かれそうにないです。いつ何時、足場が崩壊するかヒヤヒヤして気持ち良く浸かれそうにないですから」

「ごもっともな話ね。確かに安心出来ないわ」


 解禁後、私とナギサが廊下を進む間も、人員達のキャッキャウフフな楽しげな声音が響く。

 ただ、外で現実を示された者達はそういう気分にはならないのか騒ぎの中には居なかった。

 神妙な者と能天気な者達と分かれた感じね。

 私達は外には出ず、そのまま担当する車両に戻る。マキナ達も沈痛な面持ちで待機中だ。


『・・・』×29


 ナギサが運転席に座るゴソゴソ音だけが静かな空間内へと響く。息遣いはあるから寝ている者は居なさそうだけど。セツとウタハも酔っている場合ではないと酔い止めを飲んだようだ。

 どうも成分的には酔い覚ましと同じらしい。

 その分、身体が無駄に火照ってしまいシロが謎のオモチャを二人に与えていたようだけど。

 一体、何のオモチャを作っているんだか。


「出発するわよ。準備して」

『はい!』×29

『絶対、封印を解放するぞ!』

『おー!』×27

『ケンの意気込みは買うけど先は長いよ?』

『マキナ、それを言うなよぉ!』

『アハハハハハ』×27


 ある種のセクハラ要員でもこういう時は頼りになるわね。マキナにツッコミを入れられる事が多いケンの謎の明るさというか何というか。

 お通夜のような空気が霧散した各車は一号車の発進ののち続けて発進した。

 私は発進直後から事情を知る者を優先的に、


(解放人員は指揮にナギサ、リンス、ルーナ)


 選択していった。先ほどの話を知らない者達に危険地帯へと行ってこいとは言えないから。


(侵入は私とマキナは固定で陽動に)


 街道に出ると同時に自動運転に切り替えて全車を空間連結で縦に並べる。

 そして人員一覧をタブレットで作っていく。

 温泉で浸かる者達は帝国戦で活躍してもらう事にした。今回は拙速に尊ぶが如くだから。


 ───────────────────

 指揮:ナギサ、リンス、ルーナ、マイカ

 補助:リリナ、ニナ、レイ、

 侵入:カノン、マキナ、ユーコ、ケン

    マサキ、ニーナ、サーヤ、ウタハ

 陽動:シン、アキ、シロ、セツ、ナツミ

    サヤカ、アコ、ココ

 後詰:ユウカ、ユウキ、マルル、メルル

 哨戒:リョウ、ゴウ、アン

 ───────────────────


 今が常夜ともあって街道を進む者が居ないわね。何もない暗がりの拡がる氷の大地だった。

 地図上では間に街が在ったりするが、見た感じ廃れていて、誰も居ないゴーストタウンだ。

 (ほとん)どの住人が中心部で過ごしているのね。

 極一部が港のある街で生活をしていると。


(寒々しい見た目が余計に寒々しいわ)


 その分、中心部までは最大速度が出せるので多少の雪煙が出ても影響は無かった。中央まで一直線の街道だから助かったともいうけれど。


(時速300キロ。普通の雪道では絶対に出せない速度。ホントに魔法で何とでもなるのね)


 途中で野生動物を飛ばしたような妙な振動もあったけど、今は気にするだけ損である。

 すると、


『ふぇ、転生申請が来た。なんで?』


 マキナの元にお知らせが届いた。

 今は手が離せないから放置したらマキナの元に向かったのね。というか先ほどの野生動物ってそういう⦅見事に飛ばしてました⦆事かぁ。


「ま、まさか、居たの? そんなところに?」


 呆気に取られた私は前方の先を覗き込む。

 前方の積層結界に赤い氷が付着している。

 ドドドンッて三連続だった気がしたのは三匹居たという事なのだろう⦅六匹でしたよ⦆は?


『お母様? 何をしたんですか?』

「いや、自動運転で街道を進んでいたからだと思うけど、まさかこんな暗がりを歩くバカ共が居るとは思いも寄らなかったわ。今が新幹線並みの速度だったから、そこそこ飛んだようね」

『ああ、それでなんですね。放物線を描くように数本の彗星が街道脇まで飛んでいったのは』

『あれは見事な赤い放物線でしたね〜』


 意図せず〈夢追い人〉を滅してしまった。


(何れ殺す相手だったし気にしたらダメね)


 ナギサが嬉しそうに『放物線』と言うと元の職業を思い出すわね。数学教師、侮れないわ。

 そんな唐突な衝撃を忘れるように、


「送信っと」


 私は作ったお知らせを全員に通達する。

 助手席に座るリンスと後ろに座るルーナにも届いたようでフムフムと唸っていた。


「残りは温泉休息ですね。羨ましいですぅ」


 通達が届いた事で『うそぉ!』という声があちこちから響く。温泉に浸かる者が多数だが。


『全員が現実を知って大慌てなんだけど?』

『ユウカ、レリィ達が顔を出したよ? それとアイスクリーム』

『ホントだ。ユーコ、ありが』

『『聞いてないよ!?』』

『言って無いし。ユーコ、ありがとう』

『いえいえ。お礼ならレリィ達に』

『お礼はいいから、どういう事か説明して』

『姉さん達には、私が説明します』

『『あ、うん。お願い、レイ』』


 六号車は毎度の如く大騒ぎね。

 五号車のケンと四号車のシンも話し合う。

 自動運転と知ってから全員が緩りと寛ぎだしたけど。ハンドル持てる位置には居なさいね。


『七日以内に片付けろって罰ゲームだわな』

『この場合、どちらの罰ゲームなんだろ?』

『氷国人か〈夢追い人〉か。現実を見ていない者も含まれるか?』


 そしてマキナが二人の会話に応じつつ、


『多分? 国家存亡の危機に暖かな室内で』

「現実逃避中に凍結して共々消滅コースね」


 私がオチを示した。

 直後、新しく張り直した積層結界に連鎖的な衝撃が走った。


「あっ、あ〜!」

『連鎖的な赤い放物線が空を舞う〜ぅ!』

『ここまで見事なのは見たことないですね』


 早速、新しい放物線が出来たわ。

 暗がり行軍をしていた謎の大部隊の背後からボウリングのピンのように飛ばしていった。

 今が流線型に尖らせた結界だったからか避けるようにビュンビュンと飛んでいった。

 それと同時に転生申請が連鎖的に届く。


「総勢五千人? 何をしてたわけ?」

『訓練帰りとか?』

『いや、それだけの規模なら港帰りじゃね?』

『どうせあれじゃない? 採掘しようにもブツが無かったからトボトボと帰都中だったとか』

「シンとケンの推察も可能性としては高そうだけど、ユウカの推察が一番近そうね」

『そう、言われたら』

『そうかもしれない』

「まぁ街道脇に積み上がったみたいだから」

『そのまま植林でもしましょうか? このまま鉢植え無しって、出来ますかね?』

「今までの傾向から察するに魂だけにすれば。いえ、落ちた衝撃で遺体が凍結して粉々だわ」

『氷の大地が、お膳立てをしてくれたと』


 私とマキナは半々で一括拒否を行った。

 背後では氷の大地でウネウネ動く大きな木々が生えているでしょうね。これも元の大地になったら、そのまま根を張るんじゃないかしら?





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ