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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第十章・氷結大地に植樹しよう。

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第218話 吸血姫は気づきを与える。


 私達は雪が積もった大地を縦に並んで進む。

 一号車を先頭に車体を揺らしながら七台の雪上車が街道めがけて進んでいく。

 各車両には最小で八人、最大で十二人が搭乗し、各々が外の景色を楽しんで眺めていた。


『整地機能のお陰か雪煙が(ほとん)どないね』

『そうね。車内が暖かい割に結露もないし』

『積層結界様々ですね』


 最後尾の七号車ではマサキ、ニーナ、ニナ、ゴウ、アンが運転車両に座って景色を眺める。

 ハルミ、ミズカ、コウがキャンピングトレーラーに陣取って最後尾の景色を眺めていた。


『少しずれてるのに無かった事になってる』

『全体を通して形跡を消しているんだね』

『海がどんどん離れていく〜』

『ゴウとも物理的に離れてるけど?』

『それは別にいいの〜』

『なんだとぉ!?』


 これは気取られないための対応だからね。

 私達のこの行動は不法入国と同じだから。

 隠れながら進み、隠れながら片付ける。


(二番船ではバレてしまったけど、この国ではバレないよう進みたいのよね? 願望だけど)


 本来、この国の入国方法は整備された港から出入りしないといけない決まりがある。それは間諜であれなんであれ例外はない。

 ユーンス曰く、これは寒さから人族を護る意味合いで設けた入国制度との話である。


(主なる要因が大地の極寒にあると・・・)


 元々この大地は極寒とは無縁な土地だったという。それが〈夢追い人〉が現れて地下神殿の封じを行ったがため、魔力が消え去り極寒の地へと様変わりしたらしい。


(元の名前は森林国。洋上国や他国へと木々を提供する事で交易していた大国だった・・・)


 それが今では、よく冷えた氷のみを提供する小国に早変わりだ。いつぞやの氷室の氷も氷上国産というのだから、環境破壊の末に方針転換となった理由は推して知るべしである。

 そのうえ更なる環境破壊に繋がるブツまでもこの国から採掘し世界中に撒き散らそうとするのだから〈夢追い人〉という輩は木々の肥やしにしてやってもいいのでは無いかと思われる。


(肝心の〈夢追い人〉が一番多いのはこの国らしいしね。減らしたと思った矢先に溢れるって何人居るのよ。大半はブツの採掘だろうけど)


 そのブツは既に惑星表層には存在しない。

 ユランスの怒りの隕石で破壊されたから。

 走り抜ける路面がボコボコしているのもそれの所為(せい)ね。雪を溶かして大穴を穿(うが)ち、そこに雪が積もって硬い地面を造り出した。

 そのボコボコで三半規管が弱い者が叫ぶ。


『・・・』

『無理はするなよ? 辛かったら寝ていいぞ』

『・・・』

『揺れる〜。揺れるよ〜』

『ウタハのおっぱいも揺れるよ〜』

『ユーコ! 賑やかしはやめてぇ』

『いや、だって目の前でプルンプルンだし』

『ユウカ助けてぇ。変態が居るのぉ』

『変態って失礼ね。酔って私に吐かないでね』

『吐いたらユーコが百合を覚えるまで徹底的に調教してくれるって。上から下まで徹底的に』

『そうそう。私が百合を・・・って、なんで!? そういう扱いは主にフーコでしょ!?』

『『なんで!?』』


 それは六号車の騒ぎだった。

 四号車のフーコもツッコミを入れたけど。

 いくら懸架装置があってもこの酷い揺れだけは軽減出来そうにないらしい。これも街道へ抜けたら多少はマシになると思うけどね。

 そんな騒ぎを無視するのは二号車だった。


『暖かい中で食べるカキ氷がくぅ〜!』

『アイスクリームも美味しい!』

『ルミナの尻尾をテーブル代わりに使って』

『ルミナ、尻尾を揺らさないでね?』

『ちょ!? ショウもソラも何をするの』

『『アイスを食べる台座にした!』』

『そんなぁ!? トイレ行けないじゃん』

『ちょっと! 私にも残してよ!?』

『マキナの分は大事に置いてるよ〜』

『リリナ、アナが食べてないか見てきて』

『分かりました!』


 そうではなくて!

 六号車に居たはずのレリィとコウシが、


『このシロップをかけたらいいよ』

『!? このカキ氷、美味しい!』

『こちらの果物を載せると更に旨いぞ』

『ホントだぁ。シャリシャリしてて美味しい』


 キャンピングトレーラー経由で訪れてロナルド達に餌付けを行っていた。

 シャーベットを作ってから持ち込むとはね。

 暖かい中でアイスクリームとかガチでしょ?


(六号車には大厨房を完備しているから、暇を持て余して二人で作ったとしか思えないわね)


 それと他の乗員もあちこち出向いているわ。

 これはウタハ()のマーライオン回避かもね。

 運転中のシロの隣のセツも沈黙中だし。

 なお、一号車と二号車は温泉だが三号車と四号車は大まかな娯楽設備を完備している。

 簡易プールとか遊技場とか。氷上国は希に雪嵐が起きて一切進めなくなる事があるらしい。

 その際の暇つぶしを多数用意したのだ。


(マキナが新規で拵えただけはあるわね)


 三号車と四号車が静かなのは大半がキャンピングトレーラーに移動していて不在だからだ。


(四号車のフーコはプールに居るみたいね)


 三号車の運転手のナギサと助手席のリョウ。


『『・・・』』


 四号車の運転手のシンと助手席のアキは沈黙したまま運転に集中していた。


『静かだね』

『そうだな』

『今晩もする?』

『もちろん!』


 いや、シンとアキはイチャついていた。

 そして五号車と六号車は食料庫と大厨房で、


『俺もアイス食いてぇ!』

『二号車から受け取ってきましょうか?』

『マイカ、後ろの食料庫にあるから、それで』

『ああ、こちらに纏め置きしていたと』

『そうそう。アンディが護ってるから注意な』

『ああ、そういえばいらっしゃいましたね?』

『ま〜たアンディに負けた!』

『『アイス欲しいよぉ!』』

『何気に強くなってない?』

『『強すぎますぅ!』』

『ア、アンディ様って、最強?』

『いや、確かレベルがユーマと同等の200だったはずだ。たまに相手をしているからな』

『『私達より10も上じゃん!?』』

『『私達と同じ!?』』

『『勝てないよぉ!』』

『私も勝てそうにありませんね・・・』


 五号車は色々な意味で意気消沈していた。

 アンディのレベルに関してはユーマの相手をする以上、低いままには出来ないってだけね。

 最後尾の七号車は小型雪上車などを片付ける大車庫を設けた。自動二輪などもそこにある。

 ハルミ達はその車庫から外を見てるのよね。


(同じ猫でもあちらの猫は大人しいわね)


 反応から動きがあってしかるべきなのに。

 すると同じ一号車にて過ごすナディ達が、


「少し冷えたので、こたつに入ってきます」

「私もこたつにいきます〜」


 一号車の奥に引っ込んだ。

 二人の目当ては一号車と二号車しか存在しない掘りごたつであった。源泉の湯を冷やす名目で合計四つの掘りごたつを設置しているのだ。

 それと床暖房ね。二号車はそれで大騒ぎだ。


「またですか? あの二人、先ほどからずっと行ったり来たりですね」

「仕方ないわよ、リンス。あれは猫特有の弱さだから。ミズカはどうなっているの?」

『猫になって丸まってるよ〜』

『コウの羽毛布団の上でグーグーと』

「あらら。静かだと思ったら」

「暇すぎておねんねしてたのね」

「これからって時に皆さん自由ですね!」


 リンスのお怒りはごもっともよね。

 一号車も私とリンスとルーナだけが残り、他の面々は掘りごたつと床暖房の虜である。


「ハザードを焚いて、総員一時停車するわよ。一回目の休憩だから時計を確認後、可能な者だけが空を見上げること!」

『了解!』×6


 時刻は常夜の始まり。氷上国では夜時間だけ不可思議な天体ショーが常時見られる。

 その初っぱなだけは少し特殊だったりする。


「オーロラと共に魔力が拡散しているわ」


 それはオーロラ。

 上空をひらりひらりと舞う光のカーテン。

 運転手と可能な者達だけが空を見上げた。


「綺麗ですね〜」

「す、凄い・・・」

『魔力の拡散量が凄まじいですね』


 常夜の初っぱなだけは膨大な量の魔力等が大地から放出される⦅やばいやばいやばい!⦆

 女神達も大慌てね。ユーンスが特に。

 私も神力結界を解除したうえで視認した。


「・・・これはどちらかといえば大地の寿命が尽きかけているかもね」

「『え?』」×28

『うん。魔力に混じって生命力も抜けてるよ』


 マキナも同様に視認したらしい。

 戦慄したような声音だからね。


「ある意味で死の大地ね。全ての生物が氷に変化して最後は融けて消える。これを求めたのが〈夢追い人〉の思惑なら許せる事ではないわ」

「『・・・』」×28


 死の大地。その一言でマキナを除く空を見上げる者達は一様に沈黙した。


『早急に対処に出ないと不味いね。私達はともかく、この大地で生きる者達にとっては死活問題だよ。全体の流量から察するに・・・』

「七日以内に片付けないと氷上国が消えるわ」

「『!?』」×28





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