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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第九章・女神達の過干渉。

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第216話 神の罰を下した吸血姫。


 洋上国は単純に言えばイカダの集合体だ。

 海中に重石を沈めてワイヤーで固定しているような海洋国家だった。


「ルーシス王国と大喧嘩したら大事ですね?」

「そこは不干渉条約でも結んでいるんでしょ」

「でも一時期不味い時期がありましたよね?」

「例の水上実験ね。あれもアインス経由で滅びを招く代物だと伝えたそうよ。お陰で自国の利益のみを追い求める帝国憎しが増えたって」

「でしょうね。海水が汚染されて魚介類が食べられなくなって困るのは洋上国と氷上国ですから。ルーシス王国を滅ぼそうとした事で漁獲量が激減したとの噂が聞こえてきますし」

「ブツを提供した帝国だけは汚染の薄まった自国海域で獲れるからね。結局は他人事なのよ」

「度し難い存在ですね」

「困った事にね」


 イカダもダーク・メイプル製でその上に普通の材木で出来た建物が複数軒ほど建っていた。

 王宮も当然、材木のみで出来ており、


「火事に遭ったら大惨事ですね」


 マキナが危惧する問題が起きても不思議では無かった。あとは嵐に遭って崩壊するとかね。

 それであっても気にする必要は無いだろう。


「そこはアインスの加護で護られているんじゃないの? 曲がりなりにも炎熱神なんだし」

「そういえばそうでしたね。忘れてました」


 アインスに⦅失礼な!⦆話題で花が咲いた。

 そんな失礼話を行いながら目的となるダンジョンの入口へと向かう。場所は王宮の一階だ。

 どういうわけか合国の時といい、ダンジョンの上に王宮を建てたがるのよね。簡単に潰れないから良いものの、所詮は人族ということか。

 自国の利益のみを追い求めるのは合国も帝国も洋上国も大差が無いと。あの子達の興す国家はそうでない事を願いたいもの⦅ですね⦆ね。

 問題の入口へと到着した私とマキナは、


「〈希薄〉をそのままに神力結界だけ」

「解除ですね。何か妙にスッキリしますね」

「力を封じているだけだもの。開放感があっても不思議ではないわ」

「あ、門が勝手に開きましたよ?」


 解除後に許可が下りた門の中へと入った。

 許可無き者、レベルが低い者は門扉自体が開かないらしい。


「認められたってことね。門兵達が驚き過ぎて固まっているけれど」

「何か女神様が訪れたとか、言ってますが?」

「似たような事が前からあったんじゃない?」

「ああ、保守とかで出入りしてそうですね?」


 私達が入ると門は閉じた。

 内部は材木で出来たイカダの上にあるはずなのに全て大理石の建物だった。


「あまりの造りに、世界観が崩壊しそうだわ」

「ダンジョンだと片付けるとそうでもないよ」

「今は二人しか居ないからって、まぁいいか」

「これは仕方ないもん! 油断するとタメ口になるけど」

「その口調も矯正していかないとね」

「善処します」


 大理石の建物内を進むと⦅わぁお!⦆天使が居た。誰の発案なのか天使が襲ってきたのだ。

 だから最低レベルが550指定なのね。


「け、剣と槍を振るいだした!?」

「でも、止まって見えるわね。遅すぎる」

「あ、ホントだ」

「封じた状態で見ると速く感じるけど」

「今のレベルだとそうでも無いね」


 5000オーバーだから倍近く遅く見える。

 天使達を超える速度で抜刀した私はあっという間に天使達の胴体を何本もの輪切りにした。

 血は出ずに全て大理石のような見た目だ。


「頭と胸、腕と太腿、お腹とお尻、脛と足」

「僧衣も破れて、羽根も全てが細切れよ」


 私はそう言いつつ、切り出した胸とお尻を拾い上げた。大きさからしてミアンスと⦅何処を拾ってるのよ!?⦆同等に見えるわね。


「胸の感触は悪くないわね。ここは無性か」


 胸とお尻を揉むと顔がピクピクと反応し、


「お母様、この状態でも生きてるよ?」


 真っ赤な顔で最後は変顔になった。

 顔立ちからしてミアンスね⦅アインス、あれは何!? は? 罰ゲームだぁ!?⦆ミアンスが荒れてるわ。ただ、このままにするのもあれなので天使の身体を用いて置物にしてあげた。


「一応でも天使ってことね。さて、ここをこうして、こちらにこれを置いて、胸をここに」

「お母様、股に頭を置かなくても・・・」

「オブジェには丁度良いと思わない?」


 そう言いつつ何体もの置物を壁際へと置いてあげた。どうせ数時間後には元に戻るからね。

 私達が主になるのは確定だし。


「ものすごい前衛的だね。天使達も無駄に感じているのか、顔がすっごい変だけど」

「褒め言葉として受け取っておくわ」


 天使を片付けた私とマキナは奥へと進みボス部屋の門前に辿り着いた。本当なら300層もの階層を通り抜けないといけないのだけど、初っぱなから最下層へと飛ばされたようである。

 ボス部屋に入ると中に居たのは、


「だから550が最低と」

「天使達も雑魚中の雑魚だったんだね」

 

 レベル2000の大天使だった。

 普通ならば絶対に勝てない相手よね。

 見本はお尻のデカい⦅ミナンス?⦆かもね。

 大天使は天井付近から睨んでいる。

 視線がお尻に向いたからかもしれないが。


「ダンジョン内だから身内で片付けた?」

「そんな気がするわ。ここはいっそのこと堕天使にしてあげないと!」


 私はなかなか降りて来ない天使の羽根目がけて斬撃を見舞う。


「大天使が地面に落ちてきた!」

「そのまま輪切り刑よ!」

「!!?」


 降りて来ないのはレベル差があって怯えているように見えた。睨むのも威嚇っぽいしね⦅弱者と思っていたのにぃって痛がってる⦆大天使よりレベル3000も上だものね、マキナは。

 最後は天使と同じような置物刑となった。


「また置物刑をやるの?」

「ボス部屋はドロップ品が出ないもの。行うなら感触だけでも味わって、ね?」

「まぁ気になるから私も触るぅ」

「!!!」


 足を真下に、お尻を載せて股座に頭を置く。


「おっぱいの中から二つの魔核だけ抜いて」

「!!?」

「あらら、この子ってば偽乳だったの?」

「断崖絶壁じゃないの」


 腕と脛で胸を支え、お腹を上に置いた。

 最後に太腿を真上に二本立てた。


「完成っと!」

「こちらも前衛的だぁ」


 何はともあれ、置物刑を済ませた私は魔核で扉を開けてダンジョンコアの部屋へと入った。

 そこには例に漏れずな状態の石像があった。


「汚れたアインス象と御対面」

「ここも精巧に作り替えているね」

「封じには触れられないから、ダンジョンコアを弄って、レベル上限だけを引き上げたのね」

「汚すぎて触れたくなかった、と」

「直視出来るものでも無いでしょ」

「自分の身になるとそう思えるよ」

「そうね。経験者は語る、と・・・」

「差し替えたら私の石像になるもん!」


 マキナは荒れたがこれは通過儀礼なので無視した。私の幼い姿がマキナそのものだからね。

 こういった事を受け流すことも大事である。

 封じを壊し、要石を交換して、石像を置く。

 あとは勝手に更新されて下半身が隠されたマキナ象が現れた。前回の更新でそれが適用されたのだろう。全く、便利なことで。

 そうして片付け後、転移門から外に出る。

 外に出ると見覚えのある場所だった。


「王宮の形がにゅるにゅると変化したね?」

「びっくりしたよ〜。何があったんだろう?」

「あ、カノン達が戻ってきた!」

「お早いお戻りだぁ。行って直ぐだよ?」

「数十分? そんな感じだよね?」

「飛んで直ぐって感じだった!」


 出口は王宮ではなく二番船の甲板上だった。

 監視台の有翼族(ハーピー)達が大騒ぎだから。

 数十分って事は時間加速もあったのだろう。


「ホント、気前の良いことで」

「王宮で騒ぎにならないようしてくれたのでしょうね? 出た先で犯人はお前か! 的な?」

「そうね。その可能性も、あったでしょうね」


 そう、洋上国の王宮で騒ぎが起きていた。

 私達は洋上国の方向に向き直り、


「王宮が置物と同じ形状になってる・・・」

「ボスを倒すとそういう変化をもたらすのね」

「大天使自身が王宮の化身だったと」

「ええ、精霊と同じだったのかもね」


 形を変えた王宮を苦笑しつつ眺めた。

 ダンジョンの入口は頭で封じられていた。


(何処に設けてるのよって言いたくなるわね)


 その代わり、口から奥に向かって通り道が出来ていた。ただ、頭の部分に謁見室があるようで腰を抜かせた国王達がそこから現れていた。

 胸の部分に居室と役所があったのか役人達が大慌てだった。この国が出来て何年経つのか知らないが、はじめての変化なのかもしれない。


「ま、まぁいいか。今日はこのまま出港して氷上国へと向かいましょうか?」

「ですね。私達にはどうすることも出来ませんし、これも罰だと思ってもらいましょう」


 神罰と認識して貰えれば万々歳である。

 但し、王宮以外は変化なしだけど。





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