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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第九章・女神達の過干渉。

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212/276

第212話 吸血姫は温泉地で天を見る。


 ニナンスに示された地、温泉島。

 そこは活火山で栄えた巨大な島だった。

 小国連合の中心に存在する大きな島。

 目的の航路からは一旦外れてしまったが、


「活火山がとても大きいわね」

「ですね。噴煙も上がっているようですし」

「だから温泉島か。もしかすると火薬は」

「あ〜、かもしれませんね?」


 二番船から見ても大きな島である事が分かった。語彙が崩壊するくらいには大きいのよ。

 噴煙をモクモクと噴き上げる活火山がね。

 今も反対側で火砕流が起きて海水と交わった場所で土地が拡がっているような気がする。

 私達が近寄った港は北西部。例の場所は北東だったから少し距離が離れていた場所だった。


「帝国船籍の船舶が多いから誤魔化すには丁度良い街でもあるのね。でも深さはギリギリか」


 今のまま進入すると底部を擦るわね。

 これは仕方ないかもしれないが、入れないとして沿岸で我慢するしか無いだろう。沿岸警備隊に見つかると入港しろと促されそうだけど。


「交代人員を見極めて空気浮揚艇を二台出しましょうか。多人数で行き来すると面倒事に巻き込まれるから、人選は任せるわ」

「承知しました」


 私はナギサに任せて船橋から甲板に降りた。

 今から行うのはクルルの妹達の処置である。

 温泉に浸かりたいとするのはいいのだけど、


「とりあえず姉妹の寿命を取っ払うのが先ね」

「「!!?」」


 片手間に行う事でも無いのだが、時間が惜しいためその場を時間停止下に置いたのち半裸の姉妹を横たわらせオーガ族への転生を行った。

 再誕と以前は呼んでいたが完全に転生よね。

 今では工房で行わずとも良くなったし。


「姉はマルル、妹はメルルと名乗りなさい」


 名付け方はこちらもクルルに合わせた。

 前の名残が残っていないのは仕方ない。

 姓は末妹達と同じ。レベルやら何やらも同じ物を指定した。別々指定が面倒だったもの。

 古い身体は不要なので魔力還元した。


(全ての容姿が末妹達と同じだから髪飾りで変化を与えた方がいいかもね? いえ、個性が現れるなら、それに委ねた方が無難かしら?)


 今のままの見た目だとクルル以外は判別が出来そうにないけれど。天然物の双子だしね。

 三つ子や四つ子と違って分かりづらいし。

 するとマキナからツッコミが入った。


「安直な名付けだぁ」

「これでクルルの姉妹だって分かるでしょ」

「まぁそうなんだけどさ。もっとひねりが」

「それならマキナが行っても良かったのよ」

「あ、ごめんなさい」


 謝るならツッコミを入れなくても。

 いや、分かるけどね。うん。

 当のクルル達はそうは思っておらず、


「良かったよぉ」

「「姉さん!」」


 三人で抱き合って泣いていた。

 ようやく一緒に過ごせるようになったもの。

 名付けの些事は気にも止めていないようだ。

 そしてナギサの発案でメンバーが決まった。


 第一班は以下。

 ───────────────────

 一号車:カノン、ナディ、リリナ、シン

     フーコ、フユキ、ユーコ、アキ

     ナツミ、サヤカ、マルル、メルル

 二号車:マキナ、リンス、リリカ、ウタハ

     ユウカ、ユウキ、ゴウ、ロナルド

     タツト、クルル、アルル、エルル

 ───────────────────


 第二班は以下。

 ───────────────────

 一号車:シロ、セツ、ハルミ、サーヤ

     カナ、アコ、ココ、アナ、ニナ

 二号車:ミズカ、マーヤ、ルミナ、ソラ

     ミーア、ルー、ルイ、アン、

 ───────────────────


 第三班は以下。

 ───────────────────

 一号車:ナギサ、ユーマ、ニーナ、マサキ

     ショウ、レリィ、コウシ、リョウ

     アイミ、レイ

 二号車:マイカ、ケン、マリー、ルーナ

     ミキ、コノリ、キョウ、ミズキ

 ───────────────────


 私は班員一覧を眺めつつ思案する。留守と温泉に浸かっても意味ない者達は除外みたいね。


(シオンもこちらに戻ってくれば温泉に入れたのに可哀想に・・・)


 コウとクウとミュウは子育て後に連れてくれば良いだろう。


(それか魔王国にも大きな温泉があるそうだからルーナの案内でそちらに向かうのもありね)


 これを決めた時のナギサの気分は引率だったのかもしれないわね。元教師でもあるからね。

 私が筆頭で向かう第一班はフルメンバー。

 十二座席が全て埋まる形となった。

 第二班は少し減らしているが女性が多い。


(第二班のシロが若干可哀想過ぎるわね)


 男風呂に一人で入らねばならないから。

 第三班は残りのメンバーが収まった。


(最終は何処が良かったか判明するものね)


 それは時間を無駄にしない決め方に思えた。

 その後、甲板上へと総員に集まってもらい、


「温泉地の行き来に際しては〈変化(へんげ)〉が必須よ。気が緩んで解けないよう注意すること! 私達はあくまで魔族と亜人だからね。ここは敵地のど真ん中でもあるのだから」

「はい!」×58

「では第一班から乗船して! 残りの第二班以降は各班員が戻るまで待機で!」

「はい!」×35


 注意事項と共に空気浮揚艇の乗船を促した。


(改めて見ると、総勢五十八名は多いわね?)


 ここに魔王国に残る十名と留守の五名が加わるのだから。そのうえ転生待ちも結構居るので将来的には百名手前にいくのでは無いかと思われる。


(増員の二名を加えた七十四名・・・)


 全員の乗船を確認した私は操縦席に座って試運転を始める。甲板で浮かせたまま方向転換したり前進後進を行ったりね。問題が無ければ発進する。クルルが運転したのは格納庫へとしまっている三号車なのでこの二台とは異なるが。


「浮遊開始!」

「おぉ! 先ほどの浮遊感と大違いですね」


 隣の助手席にはナディが居て楽しげだった。


「今は浮遊魔法の方だもの。気取られないよう後部から降りて、戻る時も後部から昇るわよ」

「船首からだとバレバレですもんね」


 それは二号車のマキナも同じ操作を行って背後から付いてきた。助手席の人員はクルルね。


「さて、ここからは風圧のみで進むわよ」

「おお! 滑るように進みますね〜!」


 リリナも初めての乗り物なのか楽しそうだ。

 海水に浸かる事も無いまま水上を進む。

 行き交う帆船を避けながら進入する。

 こちらの船籍も当然ながら帝国船籍だ。

 あんな船があったのかと驚かれているわね。


「ぶつかるって思ったら避けていくから」

「あちらも堪ったものではないですね〜」

「予想よりも船舶の行き来が多すぎるのよ」

「それで入港先はどうします?」

「砂浜へ突入するわ。それが手っ取り早いし」


 それを聞いたシンは青ざめるが、


「普通なら座礁したと思われそうな気がする」


 私は微笑みながら砂浜に突撃した。


「座礁したと思わせて砂浜を進めば驚愕よね」

「カノンが人の悪い笑みをしてるよ〜」

「フーコうるさい」

「そんなぁ!?」


 後続のマキナは私以上にグルングルンと避けまくっているから、吐き出す者が現れそうね。


(ウタハは見るからに三半規管が弱そうだし)


 なお、現時点で二番船は〈希薄〉状態に移行して沿岸部に停船中だ。いつでも出港出来るよう魔核(コア)の出力は待機状態のままね。

 早々に見つかってどうこうは無いはずだ。


(というか、この温泉島は魔力経路的にはどうなっているのかしら? あ、部分的に影響を受けてはいるけど、外れにあって問題無いのね)


 影響を受けていたら噴火が酷くなっているでしょうね。それでも部分的なら⦅最近まで湧き出す湯量が減ってましたね⦆少なからず影響が出ていたのね。


(それに気づけないバカ共か)


 砂浜に上陸した私は浮遊状態で停船させた。


「降車したら片付けるから、忘れ物が無いようにね!」


 案の定、二号車から降りてきたウタハは顔面蒼白だった。少々、土気色にも見えるわね。

 介助はユウカとユウキが行っていた。


「うぅ、吐きそう」

「ここで、マーライオンしたらいいよ」

「ひ、人目に付く場所では、ちょっと」


 一応、良く効く酔い覚ましもあるにはあるが、温泉の前に飲ませるのは少々不味いわね。

 上から吐くか下から吐くかの違いだが。

 私はそんなウタハ達の様子を眺めつつ、


「これから三時間は自由時間だから、各々で気になった温泉に浸かりなさい。入浴料は探索者ギルドで下ろして各自で支払うこと! 以上」

「はい!」×22

「は〜い」


 大事な注意点だけ伝えた。

 今は資金ゼロの者が多いからね。

 自由時間と聞いて各々で行動を始めていた。

 私の元にはマキナとリンスとユーコが合流した。リリナとリリカとロナルドはユウカ達と回る予定だろう。ゴウとナディはシン達と共に。

 それぞれがグループを作って移動を始めた。

 それと帰投時間は三時間後だが既に伝えてあるので言わなかった。

 温泉は何時間も入れるものではないもの。


「エステをしてトントンかしら?」

「エステを選ぶ人って居ますかね?」

「居ないかもね〜。ナディは肌が敏感だし〜」

「リリナ達は浸かった段階で吸引するもんね」

「でもそのエステという物は気になりますね」

「似たような物ならフーコがやってるけど?」

「あれは少し違うのでは?」

「というよりフーコのそれはかなり違うわね」


 そう、各々が砂浜から移動を始めたのだ。

 途中までは探索者ギルド支部に集まったが。


(お金を下ろさない事には始まらない、か)


 ちなみに、私達の所属は合国のままだったが神殿島が出来た際に、帝国と小国連合の探索者ギルド支部が開設されたので、小国連合の方で所属変更手続きを終わらせている。

 これを行わないままだったら膨大な額の資金が下ろせないところだった。

 合国本部との連携は一応生きているが信用面で少し不味い事になっていたのよね。

 手数料を多く取られて下ろしたお金が減額されるとか。大変不都合極まりない対応を知ったので早々に見限って変更したのだ。


(合国を潰した私達が言うことでもないけど、これも必要なこととして、受け入れるしかなさそうね。今後は潰す国家が無いことを祈るわ)





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