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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第九章・女神達の過干渉。

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第209話 天井を見上げる吸血姫。


「例の島は小国連合の最奥なのね」


 神殿島をあとにした二番船は定期的な調査の末に判明した航路を進む。そこは決まった航路を進まないと辿り着けない場所にある小島だ。

 並行世界の話で動揺していたナギサ達も目的地が近づくにつれて冷静さを取り戻した。


「神官団が頻繁に出入りしていたお陰でしょうか?」


 私はナギサの問いを受け流しつつ調査報告書を一瞥した。

 そしてニナンスから聞いていた事情を語る。


「ええ。災い、数多くの争いが起きるたびに神託を求めていたようね。でも、その大半がニナンスの言葉を無視して、己が解釈で決めていたらしいから意味の無い神託となったそうよ、悲しい事にね」

「度し難いですね」

「本当にね」


 それならば神託など不要ではないかと思うのだが、信仰心が無くなるとそれはそれで困るので無意味でも伝えるしか無いという。

 私やシオン達のように生物が生きていくうえで切っても切れない関係ならば信仰心など不要なのだけど、それぞれが(つかさど)る性質に依っては不要とも取れない現状らしい。

 言い知れぬ沈黙が室内を覆う。


⦅そこの角を右です⦆


 ニナンスもナビのように念話しなくても。


「そこの角を右よ」

「面舵、十五度!」

「はっ!」


 いや、助かるけどね。この場所では測位すらも適用出来ない幻惑結界で覆われているから。

 隠さねばならない代物が奥にあるから仕方ないのだけど。結界があっても〈夢追い人〉はその場所すらも封じたのよね。数十年は封じたがどれも長持ちせずに次なる封じ核を求めた。


(封じ核という名の巫女達、か)


 魔力を持ち得ていない器だけが大きな幼女。

 惑星の大魔力を受け入れる者だけを欲した。

 そんな簡単に受け入れられる物量ではないのだけど、壊れようが止められれば問題無いとしたのでしょうね。


(それを繰り返して封じ核を交換してきたと)


 直近ではクルルの妹達を寄越して魔力を蓄える道具としたが、間一髪で人形と交換された。

 自分達の目論見のためなら人命は無視か。

 世界を壊す事になっても攻略を主とする。


(ホント、度し難い者達ね・・・)


 そのまま直進すると目的地の岸壁が見えてきた。その地は既にニナンスの手によって人払いがされていた。船速を落とし接岸準備に入る。

 この海域に無駄な深さがあるのは大型船で乗り入れる事があるからだろう。


「地下神殿の侵入時間は決まっているから今から三十分後に侵入班は甲板へ集合しなさい!」

「『了解!』」


 侵入班は私とマキナ、タツトとクルルだけ。

 そのほかの人員は船上に待機して周辺警戒を行うことにしている。人払いしているといってもこれから向かう場所は教会施設のただ中だ。

 すり抜けて入ってくる者も居るだろうしね。




  §




 侵入準備の間、私は情報収集と題して、


「たちまちは神力選別陣を通り抜けさせましょうか。総数は全部で八十億。相当量の魂魄ね」


 この中から転生待ちしている〈夢追い人〉を探す事にした。全ての記憶から魔力量と出力上限値の初期値を割り出さないと話にならないから。


「選別陣で詰まらないよう噛み合ったら別の保管庫へと移して濾過陣を介して初期値の記憶情報と攻略情報のみを抜き出すと。異世界の各種記憶はゴミだから全て経験値に置き換えてすりつぶせばいいわね。あとは経験水の糧にして」


 それらの精査も時間加速結界で覆い、一瞬で終わるものとした。時間に限りがあるからね。

 およそ八十億もの魂魄から四十億もの問題児が出てきた。


「なんて数よ!?」


 ほぼ半分じゃない⦅うひゃ⦆ミアンスはお尻ペンペンね⦅うそぉ!⦆おっぱいペチペチが良かった?⦅お、お尻でいいです⦆では三女と共にペンペン刑ね⦅⦅なんで!⦆⦆連帯責任よ。

 精査後に魔力膜で結果を見たところ、


「総じてレベル1、初期魔力量は平均して三千万MP。出力上限値は三十だから大した魔法は使えない、か。魔力消費の無いスキルを除くとレベルが低すぎて使える物が何もないわね?」


 驚くべき結果が現れ⦅⦅設定ミスった? 知識持ちの魔力量は。あ、お尻差し出します⦆⦆

 ミアンス達の呟きが聞こえたが、今は無視!


「魔力量を基準にしつつスキルオンリーになっている割に魔法の選択肢を選んでいないわね」


 一部のスキルは最低限の魔力が消費される。

 主に魔力利用が必須のスキルに限るけど。

 それは〈錬成〉や〈錬金〉が当てはまる。

 魔法でも同様の事が可能だが場合によってはスキルの方が早い時もある。それがあるからスキルオンリーで運用していたのだろう。物によっては生命力や体力を使うスキルもあるが。

 私達なら空間跳躍(くうかんちょうやく)とか〈希薄〉や〈遠視〉が、その最たる物だ。


「レベルアップを行うも意味ない物と捉えた」


 出力上限値を魔力膜で表出させるには専用の詠唱が必要になる。それは魔族達にしか教えられていない禁術なので人族達は知り得ない。

 唯一知る方法はギルドの魔道具のみ。

 それでもギルドカードには名前と年齢、レベルと魔力量、ランクと罪歴しか載らなかった。


「総魔力量を推す流れを帝国内で創り出す動きが発生した。ん、ギルド本部って帝国? あ、各国に本部があって個々に連携しているのね」


 そこからはレベルの概念をぶっ壊す動きに発展して皇帝の勅命でもって異国民であろうとも強制されたと。そののち、およそ数百年の月日で魔力至上主義が世界中に蔓延したのね。


「転生を繰り返して過去と同じ過ちを犯さないよう注意した。魔力至上主義となっても、魔法ありきの考え方は抜けなかった、か」


 そこである〈夢追い人〉が硫黄を発見した。

 発見して自分達なら勝てる手段を造った。


「銃器の開発に勤しんだ。ん? こ、これは」


 ただ、最後に不味い代物の名称があった。


⦅自ら滅びの道を歩もうとしてるぅぅぅ!!⦆


 アインスうるさい!

 続きを読むと時間が書かれてあった。


「洋上国近隣の海域で水上実験? 時間は」


 あの時、待機していた軍船はそれ?

 海域は神殿島付近で行うとあった。

 それがマキナの直感で回避された。


⦅マキナちゃんに、ご褒美あげちゃう!⦆


 だから黙ってって!

 要石と人魚族の物理的排除を目論んだのね。

 水質汚染が起きて自滅するだけなのに。

 あれはバカに持たせたら駄目な兵器よね。


「幸か不幸か実験前に虎の子を消し飛ばしたのね。開発責任者諸共。ブツは帝国ではなく氷上国内に大量に眠る。それならば、片付けの後に照準を合わせて、中心核以外の全てを滅してあげましょうか。二度と開発が出来ないように」


 魔力が復活しそうになったから封じを行い物理的に強化した。復活したら需要が魔法に傾くから? 復活して困る勢力は武器商かしら?


「資金源から手繰れば何処が発端か分かるけど簡単には尻尾を掴ませないでしょうね・・・」


 そして、どれも行き着く先は浮遊大陸のダンジョンのみ。そんな危険物の実験を行う主な理由は二番船あるいは私達の排除が目的だろう。

 今回の実験地点から察するに、ね。


「肝心の名前は偽名でしょうね。武器商の拠点は氷上国、帝国、小国連合か。帝国が空飛ぶ槍の開発元と思われているのは幸か不幸がそいつが居るからなのね。精々、逃げ惑いなさいな」


 最悪、還元爆弾を投下して武器商の関係者のみを消し飛ばす予定も視野に入れておこう。

 この国の拠点ならば片付いたあとに全て破壊して全て更地にしてしまえばいいしね。


「何はともあれ、商人の割り出しが急務ね。危険物の開発に着手したのなら、殺される覚悟は出来ているだろうから、楽しみにしてなさい」


 こちらは痛みなく対象が物理的に消える魔力分解だから環境に配慮した至高の爆弾だもの。


ミナンス(三女)達の尻ペンはあとで行いますか」


 ボソッと呟いた私は風船魂魄共を濾過魔道具に通して、魔力と経験値への総還元を始めた。


⦅膨大な異世界知識だけは貰いまーす!⦆


 これで人格も記憶も全てが粉微塵となる。

 そして篩い分けられて全てが濾過される。

 今後は分類した経験水の糧で活きるだろう。

 こいつらの異世界知識だけはミアンスが回収していったけれど。全く、手の早いことで。


「ブクブク肥ってリソースを奪っていた罰よ」


 一時的に回収されたからといって転生出来るものと思うなかれね。お前達は世界を混乱の坩堝に落とした大罪人〈夢追い人〉なのだから。

 最後まで潰しきるのに、二十分もかかった。

 魂魄の片付けの後は侵入作戦の開始である。


「意図が判明して良かったととるか・・・」


 悪かったととるか、悩みどころよね。





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