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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第九章・女神達の過干渉。

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第208話 重い腰をあげる吸血姫。


 神殿島を用意して二ヶ月が過ぎた。

 あれから全ての神殿が建立され、その周囲に商街が完成した。港には第一から第八までの埠頭も完成し、第一の二番船以外は第二から第四に停泊する魔王国の船舶が多かった。

 二番手は反対側の第五から第八に停泊する小国連合の軍船と帝国の軍船の一部だった。

 今はまだ完成したばかりだから人族国家は帝国寄りの国家を除いて立ち寄っていないわね。

 立ち寄っていないが、虎視眈々と神殿島の領有権を狙っている事だけは、判明した。


「今日も遠方から洋上国の軍船が監視中っと」

「更に遠方には氷上国の軍船が陣取ってるね」


 神殿島はあくまでルーシス王国が管理している島だ。生神殿の脇にルーシス王国の国旗と中立を意味する交易旗が海風で揺れている。

 この交易旗を見てどう判断するかが鍵よね。

 その間もロナルドを始めとする有翼族(ハーピー)達が監視台で口々に意見を言い合う。


「船籍を帝国としているから立ち寄れない?」

「どうだろう? すれ違いざまに複数の大砲が動いたよ。ただ、大きさに違いがありすぎて象とアリって感じだったね」

「水中から見ても大きいと思ったけど」

「この船って超大型船だったんだね」

「比較対象があって初めて分かるよね」


 私も改めて旗艦が小さいって思えたもの。

 二番船の見本は異世界の某空母だけどね。

 帆船からしたらデカいなんて物ではない。

 なお、洋上国軍の監視が始まってからは偵察機は飛ばしていない。安易に示せないもの。

 反対側には帝国船も停泊していて時折軍人達が二番船の近くまで訪れるから。


「我が国にこんな船があったか」

「見たことも聞いたこともないな」

「ほう。総金属でも浮くのか」

「これは研究のしがいがあるな」

「船首が深すぎて見えない」

「これの動力は何なんだ?」


 仮に研究したとして何世代も先の船体だから同じ物を造るのは不可能に近いけど。

 ともあれ、そんな軍人達の視線を浴びる中、


『離岸開始!』


 ナギサの声が船内と船外に響き、泡立つ水音を響かせ二番船が第一埠頭の岸壁から遠退く。


「おぉ!?」×6


 軍人達の目と鼻の先で後進し、他船に当たる事なく距離を取る。これから向かう先は監視中の洋上国ではなく小国連合なんだけどね。

 港を出るまでの進みは帆船と同等だが、


「お、おい!?」

「な、なんだ、あの速度・・・」

「凪なのに海が荒れてる」


 港から距離を取ると同時に向きを変えて加速した。凪の海を波立たせ帆船を揺らしまくる。

 超大型船が一気に動けば必定だろう。


「お、おい、見えなくなったぞ!」

「探索魔法の反応が返ってこない」

「なんて船なんだ・・・」


 距離を離すと同時に〈希薄〉して視認出来ないようにしただけね。そののち甲板上からマキナとクルルの偵察機が飛び出した。


「うぉ!? な、なんだ!」

「あ、あれは、空飛ぶ槍!」

「本当に飛んでいる・・・」


 向かう先は監視しているであろう、洋上国の軍船だ。今回は所属不明機として国旗を記さず攻撃を実施する。


「あ、洋上国軍の船が」

「木っ端みじんだとぉ!?」

「奥の氷上国軍も流れ弾で」

「ぶっ壊れやがった!!」

「なんつう戦術だよ・・・」

「か、勝てない。あれには勝てない」


 監視と称して神殿島を狙う輩だ。すれ違いざまに大砲を向けた事に対する報復でもある。

 偵察機は一定の戦果をあげると高高度に移して〈希薄〉したのち二番船へと戻ってきた。

 というか帝国軍は⦅南部戦域からの帰国前の補給ですね⦆補給で休養中だったか。

 私は〈遠視〉から船橋内へと視界を戻す。


「なるほどね。なんで帝国軍が居るのかと思ったら、連合軍の派兵帰りだったのね」

「先の包囲網が瓦解したからでしょうか?」

「おそらくはそうでしょうね。帝国船が攻撃を仕掛けてきたと最終報告が上がって」

「内部分裂を起こして連合軍の体裁が取れなくなったと。だから洋上国軍と氷上国軍があの場に居たまま?」

「それだけではない、気もするけどね。ともあれ、私達は私達の行動を起こしましょうか!」

「了解!」


 ナギサの返答後、偵察機が帰投した。


『船員が真っ青な顔で海に落ちていたわね』

『何人か残存が居たから食べてきちゃった!』


 偵察機はそのまま格納庫へと運ばれ、甲板上にはベンチ以外は何も無い状態へと変化した。

 この後のマキナ達は格納庫で過ごす予定だろう。訓練候補生はまだまだ沢山居るからね。

 私はマキナ達からの連絡できょとんとした。


「あら? 中にも居たのね〈夢追い人〉が?」


 殲滅したと思ったのにまだ居た事に驚いた。

 まるでGね。どこからともなく湧いてくる。

 ナギサも残存が居た事に驚きを示す。


「予想より人員が多そうですね。サービス展開は国内だけのクソゲーだと聞いていましたが」


 私はリンスの淹れてくれた紅茶を口に含みつつボソッと呟いた。


「どうせ、並行世界から訪れているんでしょ。それならば、どれだけ少ないクソゲー人口でも塵芥が集まってくれば、数だけは揃うからね」


 そう、思案しながら呟いたのだけど、


「はい? 今、なんと?」

「ん? 並行世界の事?」

「!!?」

「「『へ、へ、並行世界ぃぃい!?』」」


 マキナやリリナ達を除く船員達が驚いた。

 たかが並行世界で驚くような事なの?

 この世界もある意味で並行世界なのに。


(ああ、異世界の価値観がまだあるのね)


 自分達の世界だけが世界では無いってね。

 似たような人物が並行世界に居れば、似たようなゲームが生まれても不思議ではないもの。

 例外は私やマキナのような関係者だけね。

 管理者は一つの世界しか留まれないから。

 中には例外も⦅姉上達?⦆あったりするが。

 私は周囲の驚きを余所に、


(保管庫から風船共の選別をしないとね)


 このあと行う予定を考えていた。


(仕切り板を通過させて振り分ける? 記憶の有無で膨れ上がっているなら、そのまま濾過魔道具で押し潰して、経験値ごとに振り分けて)


 小国連合は上陸してからが鍵だ。

 それまでの間に片付けて、本番に臨むしかないだろう。殴り神官達の妹分の元に、ね。

 なお、帝国がある場所は合国があった大陸の北方、浮遊大陸の周囲にある大きな大陸だ。

 全然気にも止めてなかったわね。最終的には帝国へと寄るから帰りは完全な陸路なのね。


(連合が終わると再度南下して神殿島に立ち寄り、洋上国へと寄って南部の大陸を抜けると)


 氷上国は名の通り氷の大地みたいだけど。


(そうなると、無限軌道式に変更しておいた方がよさそうね。滑って事故ったら堪らないわ)


 それと最後部に整地機能を追加して、走った痕跡を残さないよう、注意しないとね。

 その間も二番船は決まった航路を進み、目的地の一歩手前だった。





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