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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第九章・女神達の過干渉。

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第206話 吸血姫は手段を高度化した。


 某個室での段取りを終えた私はマキナと共に船へと戻った。発射台は打ち上げと同時に片付けたから問題こそ無かったが、あまりの暴風により甲板は荒れに荒れていた。偵察機は前もって格納庫へと片付けていたので難を逃れたが、


「急遽だったからあれだけど」

「甲板の塗装は全面塗り直しですね」


 打ち上げ時の暴風で塗装が剥がれていたようだ。ステルス機能自体には影響は出ていないが滑走路の表記が同心円状に掻き消えていて塗り直しが確定した。


「ええ。ここだけ地が出ているわね」

「こうなると発射場所を固定式とするか移動式にした方がいいと思う」

「そうね。後部にフロートを繋いで海上発射が無難かもね、直ぐに直ぐ打ち上げる代物では無いけれど・・・」


 そう、衛星を打ち上げる予定は無いが、これを反省点として今後に活かすしか無いだろう。

 仮に打ち上げるとしても商業衛星くらいね。


(娯楽的な映像を配信しても誰が見るんだって話になるだろうけどね。この世界では血生臭い殺傷を好むような者達しか居ないから・・・)


 なお、今回打ち上げた静止衛星は軍事衛星的な面が強い。主に軌道上からの遠隔攻撃と位置情報の把握、遠隔通信網の確立だったから。

 利用者達はミアンス達が提供し、エルフの国で製造される通信魔道具を持つ者に限られ、地上では魔族国家に置かれた冒険者ギルドと各国に潜む間諜や大使館も衛星通信の対象となる。

 但し、地表の人族国家と、落下した際に発見された破損品等は自動的に除外されるが。

 すると甲板へと避難した者達が出てきた。


「ちょっとカノン! さっきのあれは何?」

「いきなり巨大なミサイルが出てきてびっくりしたよぉ!」

「フーコ、あれはミサイルではなくロケットですって。指揮所に問い合わせたら発射指示は出てませんでしたし関連の計器も無かったので」

「そうなの? ミサイルとロケットって何が違うの」

「そ、そこからですか・・・」


 それは珍しく船内に居たミラー姉妹とフーコであった。本日は非番ということもあって三人で日光浴でもしていたのだろう。吸血鬼が日光浴するのはあれだが揃って水着のままだから。

 ユーマがフーコに対してこんこんと説明している間、ユーコが説明を求むという表情で、私とマキナの前に立って、仁王立ちしていた。


「で?」

「そうね、どのみち説明の必要があるから、っと。説明でつらつらと伝えるよりも、この場でデモンストレーションでも、しましょうか?」

「は?」


 私はそう言いつつ、きょとんとするユーコの前を横切り船橋脇にある小さな箱から受話器を取り出して、マキナを含む四人に示す。


「今から簡単な手順を教えるわね」

「「手順?」」


 そしてマキナとユーコに対して簡単にだが扱い方を教える。ユーマとフーコも私の動向に注視していた。残りはそれぞれが伝えて教え合うだろうから最初の説明はこの場限りとしたが。


「この受話器は船内とのやりとりでしか使って無かったと思うけど、実はここにあるスリットに、下の引き出しから取り出した、このカードを差し込む仕組みになっているの」

「あぁ!? そのスリット、何かと思ったら」

「色は灰色だけど明らかに公衆電話じゃん!」

「若干、造りが違うような気がするけど?」

「違うというか違いますよ、お三方・・・」

「ま、まぁ、これは差し込むだけで中まで入る事はないわよ。それで、このカードは冒険者ギルド・ジーラ支部の名が書かれているわね?」

「「「「あっ!?」」」」


 現時点で浮遊大陸の冒険者ギルドが出るとは誰が思っただろうか? マキナですら驚いているしね。あの場でどういう代物か教えたのに。

 実は一番船もそうだが二番船のユランス像がアンテナの役割を果たしていて、今回打ち上げた静止衛星のお陰で通話が行えるようになったのだ。今までは北極近辺までしか使えなかったが今後は何処であろうと使えるようになった。

 これを使っていた者は主に私だけだけどね。

 今みたいに遠い場所では不通となり、内線しか使えなかったけれど。これは亜空間を通さない仕組みでもあるので〈スマホ〉のようにはいかない。あくまでアナログ的な扱いだからね。


「このカードを差し込むと、自動的に発信がなされて、相手の姿が発信者だけに見えるのよ」


 私はそう言いつつ、支部に連絡を入れる。

 そして本日支部にいるであろう、


『あら? カノンさんどうかなさいました? 今はログハウスからですか?』


 リンスに取り次いでもらった。

 というより支部を経由して私達の住処だったログハウスに転送してもらった、だけだけど。


「いいえ。今は船上よ」

『はい?』


 リンスは音声通信だったためか、慌てて映像通信に切り替える。そして画面上に映る光景に開いた口が塞がらないでいた。


『はぁ?』


 私はそのうえで受話器をユーコに持たせる。


「はい、交代」

「え? あ、うそぉ!?」

「え、なになに? 何が見えるの?」

「リ、リンスが居るの目の前に」

『そりゃあ居ますよ。って、本当に船上じゃないですかぁ! 一体何が起きたんですか!?』


 その後は一人ずつ交代していってどういう代物であるか知ったようである。リンスの隣にはユウカも居て呆然顔で目前の海を眺めていた。


『赤道が目の前に・・・』


 なお、通信に際しての通話料は掛からない。

 必要なのは最初に発信した者の魔力のみだ。

 私やシオンなら何時間もかけ放題となるが、他の者なら一時間に六十万MPが消費される。

 仮にユーコが使うと出力上限の関係で使えはするが、およそ数時間でバテてしまうだろう。

 この場での長電話は身を滅ぼすのだ。

 逆にあちらから掛けてもらうだけならそこまで消費はしない。登りが消費するだけだから。


「メリットもあればデメリットもあると」

「ユウカの呆然顔って見てて飽きないね?」

「むしろ珍しすぎてずっと見ていられるかも」

『ユーコ! それってどういう意味!!』


 というところでリンスと替わってもらい、


「交易の通信魔道具を手配してもらってね。今後は交易国のみで稼働するよう設定するから」

『は、はい! 直ぐにでも発注します!』


 指示を出したのち通話を切った。

 実際に試してみないことには理解出来る代物ではないからね⦅そういう仕組みでしたか⦆ユランスのアホ毛がアンテナ⦅うっ⦆だけどね。

 二本の内、一本が通話用、一本が映像用ね。

 私は受話器を置いて、カードを抜き取る。

 ユーコ達に向き直りつつ笑顔で応じた。


「これが打ち上げた代物の回答よ」

「まさか本当に静止衛星だったとは・・・」

「こ、これって〈スマホ〉とは別口なの?」

「別口ね。主に民生用と言えばいいかしら?」

「「「民生用・・・」」」

「一応、受話器から〈スマホ〉への通話も可能よ。〈スマホ〉から受話器へは個室毎に割り当てた内線番号を知らないと通話自体が出来ないから、これだけはよ〜く、覚えておいてね?」

「「わかった!」」

「ところで船内にありましたっけ?」

「各部屋にあるでしょ? 通話カードの代わりになるのは各自が持つ冒険者のギルドカードで、その時は相手の電話番号を押すか、支部名を思い浮かべてからかけるの」

「「「!? わっかりました!」」」


 説明を終えると三人は嬉しそうに船内へと入り、そのまま船員達に教えてまわるだろう。

 何らかの理由で〈スマホ〉が塞がれている時に己がギルドカードで連絡が取れるのだから。


(これで呼び出しが気軽になったかもね。船橋からも常時使えるから、緊急時はそれで呼び出そうかしら? 強制的にシオンを、ね・・・)


 最大発信量は六十億まで同時発信が可能だ。

 用いるのはあくまで当人達が発する魔力だ。

 一応、発信点がバレないよう偽装と隠蔽は常時展開だけどね。どんな形であれ見えない糸が常時繋がっている事と同じだから。

 私とマキナはそのまま甲板に残り、


「世界中の空を巡る静止衛星の神器・・・か」


 剥がれた塗装を塗り直すことにした。

 後始末としては少々、地味だけどね・・・。


「その実、兵器的な機能も有するけどね。早速始めたみたいよ」


 直後、上空にチラチラと光りが瞬いた。


「あ、光の柱が!?」


 見た目的には流れ星だろう。

 実際は違う代物が流れ落ちているが。


「魔力の一瞬照射ね。見える者には見えるけど見えない者には見えない光線だから、あれも」


 その総数は言わないけど上空を飛び回る静止衛星から一瞬で焼き切る高温の光が届いた。


⦅はっけーん! 次も燃やすわよ〜!⦆


 それはまさに神の怒り・神の光そのものだ。

 惑星を私物化しようとして封じを行った罰。

 何処のバカが発した命令かは知らないが思うようにはいかないと心得てほしいもの。

 ミアンス達が嬉々として処理を始めた頃合いに私は私で〈スマホ〉を取り出しつつ調べた。


「さて、次の機能確認は」

「全惑星測位システム?」

「ええ。現在地は地図魔法で示される位置よりも南下しているわね。これで正確な位置情報が判別しやすくなったわね」

「そ、そんな代物まで?」

「一応ね。通信と兵器と測位を一基に纏めたわけではないわよ? それぞれに二種類の機能を載せていて、兵器と測位、通信と測位という二系統で大量散布しているのよ。兵器の場所は簡単に特定されないよう〈希薄〉付きだけどね」

「そ、それは」


 流石のマキナも呆然としている。

 塗り直しが終わっていてよかったわ。


⦅地図魔法にズレがあったなんて・・・⦆


 ユランスも呆然としているわね。

 それでも誤差と呼べる範囲だけどね。

 海を知るリリナ達が寝ている状況だと船も安易に動かせないからね。いくら浮遊する揚陸船であっても高度維持には限度があるから。


「次は水中用の通信魔道具を用意しないとね」


 それはルーシス王国とのやりとりに必要な代物だもの。ただ、海底から海上へと伸びる通信アンテナは必須となるだろうけど。


(それこそ要石の周囲に柱でも立てて・・・)


 生神殿としましょうかね?

 人魚族の神官が管理するように。

 それと発信時の魔力だけは亜空間経由で〈還元転換炉〉を使えるようにしますか、あれも今では無尽蔵な魔力源となっているからね。


⦅賛成!⦆×7





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