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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第九章・女神達の過干渉。

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205/276

第205話 吸血姫は喧嘩を盛大に買う。


 なんとか、本当になんとか、全ての転生申請の拒否を終えた私とマキナは疲れ切ったまま、


「あんたが! もう少し! 考えていれば!」

「いたーい! いたーい! ごめんなさい!」


 ミアンス達の居る某個室へと訪れて某三女のお尻を叩いた。有言実行したくなるような大ポカだからね。これが最上層の知恵の女神というのだから私からすれば頭痛でしかないだろう。

 その間のマキナは初めて見る一室にてミアンスとユランスから案内をされている。


「何かマンションの個室にも見えますね」

「そういう見た目の方が行いやすいからね」

「そうなのですね。扉の奥には何が?」

「個室と私達が過ごす世界までの扉があるわ」

「え? 別の世界で過ごして居るのですか?」

「基本は当番制で様子見していたりするのよ」

「ここ最近は七(にん)揃って張り付いてばかりなので、下の妹達に丸投げですけどね」

「え? まだ下に居たんですか!」

「い、一応、居るわよ? 新神だけど・・・」

「個々に管理する世界が違うだけですね」

「そうなんですね」


 それを聞いているとアトラクションの管理人に思えるわよね。その管理で一つの世界、その中で人々が生活しているのだから、お人形遊びとか、オモチャと思われても仕方ないだろう。

 私は三女のお尻が倍近く膨れた頃合いで叩くのを止めた。これ以上叩いても痛覚が麻痺しているだろうから、叩いても意味は無いし。


「はい、最後のいっぱ〜つ!」

「ぎゃん!?」


 止めたと思いながら三女の気が緩んだ頃合いに思いっきり引っ叩いてあげた。倍近くから更に膨らんだわね。骨は無事だが表面肉は完全に別物の形状となっている。

 僧衣も着られなくなるほど腫れたお尻を眺めるのは三女と同じ顔立ちの四女と五女だった。


「おー、腫れましたね。真っ赤っかです」

「姉上、お尻を突いていい?」

「や、やめて、つ、つつかな、痛っ!? マインス!!? 痛いからやめてよね!?」

「てへぺろ!」

「姉上の自業自得ですので弁護出来ませんね」

「うぅ・・・」


 いつもなら顔を出さない下の妹達も別室の妹達を除いてこの場に来ていた。


(下にも居たのね。一体何柱拵えているのよ)


 どうも私が創った一括拒否魔法ならびに一括拒否魔術の受け取りに来たのだろう。

 魔法はともかく魔術まで必要なのかと思ったが、最上層では頻繁に勇者召喚を行う国があるそうなので、それを止める手段で使うそうだ。


(何人も求めたら一人に絞る用途で、か)


 この世界の魂魄は最上層と上層と下層の全てを巡って死と転生を繰り返しているようで、今のところは最上層を上の七(にん)で廻しているそうだ。一柱はお尻を腫らしてシクシクと泣いているけれど。


(リソースもそうだけど世界全体の保管庫のキャパシティも限界に近いのね。〈夢追い人〉の所為(せい)で一人に割り当て可能なリソースが三女のお尻のように膨れ上がって三億以上もあった。本来ならば、それだけの物量を収める空間はあったけど、ブクブク膨れ上がった風船に奪われた状態が続いていた、か。そこへ異世界からの召喚で増えて消えて、保管庫がいっぱいになって。お母様もそれを予期していたのかもしれないわね。死者が溢れたら世界の塗り替え、滅亡が始まってしまうから)


 滅亡が始まったら最後、全てを巻き込んで惑星が爆発して、管理も完全終了ってね。

 管理のゲームオーバーを手繰り寄せるのはいつの世も、住人というのはやりきれない話だ。


(風船のような魂が〈夢追い人〉となるなら精査して喰ってもいいわね)


 そうして一括拒否魔法等を手渡しながら、


「停泊中の間に経路がまた細くなったような」


 管理魔道具の表層に意識を割いた。

 それを聞いたミアンスが例えようのない表情でアインスを見つめ、アインスがレナンスをレナンスがユーンスをユーンスがニナンスをニナンスがミカンスをミカンスがユランスを見つめるという、視線だけの丸投げを示された。


「・・・」×7

「一体、何があったのよ?」


 私が呆れたように問い掛けると、


「け、経路封じが、強化された、みたい・・・って、マインスはお尻に何を挿しているの!?」

「えへへ、ガーベラの一輪挿し!」


 腫れたお尻を天井に向けたままの三女が代わりに答えた。真面目な空気が苦手な五女が三女のお尻に一輪挿ししているのは置いといて。


(この迷宮神ってば、全くもう!)


 一瞬だけ空気は弛緩したが気を引き締めた。


「封じを強化って、警報が鳴るはずでしょう」


 私の問い糾しを受けた七(にん)は、


「な、鳴ったのですが」

「同時多発的に発生してて」

「何処で起きたのか判別が出来なかったのよ」

「気づいたら広範囲で経路封じが起きていて」

「手も足も出ないまま状態が元に戻りました」

「どうも姉上の動きを察知してるようでして」

「実行犯にあたる者達は消滅したようですが、各経路の封じ潰しが必須となりました。面目ないです」


 上から順に自身の意見を述べた。

 それを聞いた私は管理魔道具に手を触れて思案しつつ呟く。


「該当箇所は旧来の封じ間に点在する各ダンジョン、その出入口または周辺に隠していると」


 現状、私達が通り抜けた地。

 マグナ楼国(ろうこく)のある大陸とニーユ大陸、ルーシス王国は除外となっているが、そこから先は密なほどの封じが起きていた。

 マグナ楼国(ろうこく)の要石から発する魔力圧はいくら封じようにも止められないので私達が行う対処が加わっていない場所を優先的に潰して回ったのだろう。

 そこで不意に思い浮かぶのは、


「ローナの殺害ももしかすると」

「お母様? まさか、意図的に?」

「足留めが狙いだったのかもしれないわね。敵の背後に何が居るのか知らないけれど、ただの〈夢追い人〉と思うなかれのような気がする」

「じゃ、じゃあ、私達の動きがバレていると」

「ええ、少なからずバレていたでしょうね」


 立ち回り方から全体を把握する動き。


(いかにもこれがゲームと思って動いているバカが居るのかも。女神達がポンコツ過ぎるが故に御しやすいと思って盤面上から見ていると)


 例外は死を運ぶ者、私達の存在だけだ。

 世界に現れた三柱の神。ゲームのシナリオには載っていない隠れキャラなのかもしれない。


(とはいえ私達の動きすらも読まれているのよね。二番船、いえ。それなら包囲網が出来ていても不思議ではない。先の蹂躙戦では敵対するのは魔族となっただけだもの。では〈夢追い人〉の中で大規模なクランが存在している?)


 それが一番妥当かもしれない。

 国家に属していない、全てを操る者。

 それがギルドの可能性は無きにしも非ず。


(今は目先の事よりも一つずつ潰すしか無いわね。幸い、手駒は全て潰した。遅れを取り戻すには該当物を把握して遠距離攻撃しかないか)


 私はそう思いつつ、三女のお尻に向き直る。


「例のやつを、使うわよ」

「例の? あ、あー、うん。仕方ないかな」


 お尻を振りつつと答える三女だったが。

 刺さったガーベラも揺れてるけどね。

 マキナを含む十(にん)はきょとんである。


「???」×10


 私と三女しか知らない案件だものね。

 私はこの場に居ながら二番船を管理魔道具より選択し船体が揺れないよう空間固定を行う。

 甲板下から迫り上がるように生える巨大な建造物。私の亜空間庫より出てきたのは円柱形の巨大な筒と大仰な支えを持った発射台だった。


「丁度、赤道近くだから手っ取り早いわね」


 甲板に居る者達が呆気に取られている様子が〈遠視〉スキル越しに見えているが彼女達を気にしていては手が出せない。

 私は〈スマホ〉を取り出して、


『甲板上から総員退避、船橋の外隔壁閉鎖、打ち上げ後までは、立ち入り禁止とする・・・』


 一通のメッセージを飛ばした。

 管理魔道具上でも何かが展開されている様子が見える。マキナはそれが何か気づいた。


「ま、ま、まさか!?」

「ええ、そのまさかよ」

「大陸間なんて用意していたの?」

「いいえ、一カ所を狙うならそれがベストだけど、今回は違うわよ?」


 そう言いつつカウントダウンは開始され、圧縮魔力の充填後〈希薄〉状態で立っていた巨大な円柱は大空に向かって飛び立った。


「違う? あ、発射した!?」

「!!?」×8


 甲板上は暴風を伴った嵐の中心部となった。

 赤道近くのアオリア洋上国も暴風で一方的にあおられるが知った事ではない。

 第一段が切り離され、魔力還元で消えた。

 次いで第二段から猛烈な暴風が吹き荒れる。

 第三段まで切り離しを終えると中から複数個の小箱が分裂し、事前に指定を終えていた軌道まで魔力的な誘導により個々に移動を始めた。

 ミアンス達は呆然とそれを見つめる。

 管理魔道具との連携も開始されたわね。

 すると私と三女の行いに気づいた者が、


「あ、姉上、まさか?」


 三女に声を掛ける。四女も知っているのね。


「あー、うん。静止衛星の神器だね。軌道上から目標を狙い撃つ的な、ね?」

「ね、狙い撃つ。ああ、そういう事でしたか」


 お尻からガーベラを抜きつつ浄めているが。


「これも、追々必要だって、お母様が、ね?」

「確かに必要ですね。後手に回っていますし」


 女神の身体は汚くないけど、気持ちよね。

 五女は知らなかったのか、ポカーンだけど。

 マキナも心配しつつ私に問い掛けた。


「静止衛星って、大丈夫なんですか?」

「問題は無いわよ。上層と最上層の境を通り抜ける代物で〈魔力場〉の補助にもなるからね」

「将来の交易で連絡が取りやすくなるしね。筐体自体は高温に強い神結晶で高高度の高純度魔力で稼働するってね。仮に落下しても魔力還元で消えるよ」


 三女も補足を入れ四女は安堵したようだ。


「通信衛星の意味合いもあったのですね」

「攻撃だけが主ではないと」


 マキナも同じように納得した顔になった。


「攻撃だけとかもったいないわよ。既存の通信魔道具を何処でも利用可能にしないとティシア間との交易どころではないからね。〈スマホ〉は亜空間経由で通信を行っているけど既存品はそうでは無いもの」

「それでも当面は攻撃なんですよね?」

「まぁね。通信と併用で潰していくわ」


 浮遊大陸を超える高度を飛び交う箱だもの。

 例外は意味不明を示す八(にん)だけだろう。


「???」×8

「潰すのはミアンス達のお仕事だけど」

「!!?」×7

「上は上、地上は地上で行わないとね」


 静止衛星のコントロールは管理室からでしか受け付けない。惑星側から操って仮に奪われでもしたら目も当てられないからね。

 〈夢追い人〉がプレイヤーとしてゲームを行うというなら、こちらは運営()としてサ終(現実)を示してあげるから、覚悟しなさい。





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