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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第九章・女神達の過干渉。

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201/276

第201話 吸血姫は説明する。


 ひとまずの私とマキナは気絶したリリナ達の母親・・・陛下を連れ立って城内へと入っていった。近衛兵達も遅れてやってきたが私達の神々しさにあてられてしまい陛下同様に固まってしまった。この姿のままだと話が進まないわね?

 私は周囲の反応をみつめつつ──、


「一旦、宿り直した方がいいかしら?」


 マキナに相談した。

 この姿で出てきてしまった手前、従来の姿を示すのは少々面倒になると思ったが。

 するとマキナは首を横に振りつつ否定する。


「このままでいきましょう。吸血鬼の姿で海底を歩くのは余計な混乱を招きますから」

「マキナがそれでいいなら、それでいいわね」

「それに二人にとって御使いという立場が嘘ではなくなりますしね?」

「確かにそうね。吸血鬼のままなら眷属(けんぞく)となっただけになるし」

「不死という意味合いも理解が容易くなりますから。従来の吸血鬼は不死ではありませんし」


 私もマキナの言い分に納得してしまった。

 普段は必ずと言っていいほどパンツを穿()き忘れる可愛らしい愛娘だが、使命に準じる時はキリッとする娘になっていた。

 一方のマキナはパンツを思い出して顔が真っ赤に染まっていた。私の思考を読んだのね?


「お母様!? それはそれでしょう!?」

「はいはい。リリナ達が待ってるから急ぎましょう」


 そう、謁見室の一角でリリナ達が苦笑しつつ私達を待っていた。気絶した陛下の左右から腕を通し、玉座に座らせながら。

 しばらく待つと陛下も目覚め──、


「あら? ここは謁見室?」


 左右で漂っていたリリナ達が応対していた。


「「はい、お母様」」

「リリナ・・・生きていたのね」


 私とマキナは対面する場所に立っているだけね。不用意に近づくと事情を知らない近衛達が殺気立つから。どの国でも近衛兵が殺気立つのは変わらないらしい。神々しさにあてられたのは最初だけ、今は亜人と思われていた。

 するとリリナが苦笑しつつ応じる。


「生きていた、とは言い難いですが」

「い、言い難い?」

「はい。先ほどもお伝えしましたが、主様に救って頂いた事で、今があるのです」

「主・・・そういえば女神と名乗って」

「ええ。炎熱神様の姉上にあたります」

「姉・・・」

「それも長女という話です。炎熱神様の呼び捨てが可能なのも、そういう事らしいです」


 一方のリリカは沈黙したままね。

 姉を立てているともいう。

 リリナは経緯を陛下に語り出す。


「事の発端は・・・」


 私達は黙って聞きに徹するだけだった。

 それはここ数ヶ月の間に起きた事案だ。

 私達と出会って救われて、種族が変化した事も告げた。不死の一族と。


「そ、そのような事が・・・で、でも、死なないなんて信じられないわ」

「事実ですから受け入れて下さい」


 陛下も聞くだけでは信じられない様子だったので、私はその場で一人の雄を蘇らせた。

 時間停止結界で周囲を覆い、リリナ達と同類にしたうえで。年が若いのは仕方ないけれど。

 口元がリリナにそっくりね。


「記憶はどこまで覚えてる?」

「リリナを叱ったところまでですかね」


 彼もアインスが記憶を残していた事で蘇る事の出来た者だった。漂白された魂も漂ったまま保管庫にあったからね。それだけ人族の死人が多いのだ。亜人が溢れても仕方ないだろう。


「そう。それならあちらで狼狽している者に一言伝えてあげなさい。娘達も両隣に居るし」

「娘・・・達? !? ま、まさか?」


 リリナ達もこちらの様子に気づいていたのか涙を流しながら走ってきた。狼狽して固まる陛下を放置し〈変化(へんげ)〉を解いたうえで彼の元へと飛びついた。


「「お父様!?」」


 時間停止下の水中だと泳ぐより走る方が速いらしい。というより水も止まるから自身の周囲だけ等速化したみたいね。彼も私のお陰で動けるのはそれがあるし。陸上だと問題なくても水中の時間停止は問題だらけのようだ。マキナは唐突に行われる再会劇に苦笑しているが。


「リリナ!」

「私はリリカです!」

「リリナは私ですね」

「そ、そうか。そ、その髪・・・?」

「お父様も一緒ですね。再誕で不死になった」

「そう・・・なのか?」

「「そうなのです!」」


 私はまたも同じ反応になったので、詳細を彼に語ってあげた。


「まぁ不死属性だけを与えただけだから、同じ種族という訳ではないけどね? 御使いは変わらないけど」


 彼だけは吸血行為やらなにやらはしなくても良い存在となっているから。

 リリナ達はそれを聞いて、きょとんとする。


「「そうなのですか?」」

「ええ。〈変化(へんげ)〉までは可としているから、上でも過ごす事が可能になるわ。水中だけの生活は飽きるだろうし、魔王国とも関わる事が出来るでしょう?」

「「!!?」」


 リリナ達は理解したうえで喜んだ。

 すると今度は彼がきょとんとした。


「魔王国? それは魔族の国ですよね?」

「ええ。リリナ達も実質魔族と同じ扱いになるからね? 人魚族でありながら魔族という特殊な種族になっているの」

「魔族・・・この子達が?」


 ああ。魔族というと有翼族(ハーピー)が居たわね。彼はリリナを追っている間に有翼族(ハーピー)に襲われて亡くなったようだ。

 今は娘達が有翼族(ハーピー)に狙われないかという不安が彼の顔に出ていたから。


「怯えなくていいわ。〈変化(へんげ)〉で今みたいに人化すれば狙われないしね?」

「あ! 足が生えてる・・・で、では?」

「貴方も使えるわよ。宰相としては無理でも外交官にはなれるでしょう?」

「!?」

「まぁ・・・それもこれも目の前の女王様をどうにかしないとね?」

「女王様? あ、アリナ・・・老けてしまったのだな」


 彼は陛下が老けてしまった事で落胆が顔に出てしまった。実質、十三年の月日が流れたようなものだものね。人魚族は基本不老だから老けたというのは少々違うけれど。

 すると今度はマキナが──、


「ようは若返らせればいいんだよね? 不老でも徐々に老けるって事が分かっただけ・・・儲けものだけど」


 固まる陛下の若々しい肉体を用意した。

 私は唐突に始まる再誕劇に苦笑してしまう。


「いや、あれは苦労した結果、にじみ出た雰囲気だから、老けているというのとは違・・・って、やっちゃったか」


 マキナは私の見ている目の前で陛下の魂を引っこ抜き、新しい肉体に宿した。前の肉体はサラサラと魔力に戻っていき、不死属性を与えられた体だけがこの場に残った。

 すると陛下はその場で目覚め周囲を見回す。


「あら? ここは? 謁見室・・・ジルク?」

「アリナ! 会いたかった!」

「えぇ・・・生きていたの?」

「生き返ったんだ。主様のお陰でな」

「い、生き返った?」


 うん。まだ信じていないみたい。

 直後、この場にアインスまでも顕現した。


「信じなさい。姉上が生の女神なのは本当の事ですよ」

「炎熱神様!?」×4


 アインスの顕現を目撃したリリナを含む四人は唖然(あぜん)となった。

 アインスは私達に向き直りお辞儀した。


「見ていられなくなりました。幸い、時間停止下でしたので」

「助かったわ。頭でっかちなのね? 彼女は」

「申し訳ございません。姉上」


 陛下はアインスのお辞儀を見て強引に理解しようとした。


「ほ、本当に・・・」


 私はため息を吐き、理解させようとした。


「貴女が信用しないから蘇らせたのよ? 今後は不死の人魚族として海底を統べるといいわ」

「不死の人魚族・・・?」


 その後はリリナ達と彼が事情を説明し陛下はようやく理解したらしい。アインスはその様子を安堵の表情で眺めつつ、神界へと戻った。

 私は時間停止を解除し──、


「今後はリリナ達も定期的に帰国すればいいわね?〈転移鏡〉を居室に設置すれば直ぐだし」

「そうですね。それでいいですか? お母様」

「ええ。構わないわ。いつでも帰ってこられるなら、私からはなにも言えないから・・・」

「というよりお父様と愛し合えるからでは?」

「そ、そうね・・・ジルク」

「ああ。そうだなアリナ」

「若返ったからかイチャイチャ分が凄いねぇ」


 呆然とする近衛達を眺めつつリリナ達と話し合う。近衛達が呆然とする理由は陛下が銀髪になっている事と亡くなったとされる公爵家の者が居たからだろう。肝心の取り潰しも陛下の権限で無かった事にしていたようで、唯一の生き残りが近衛兵として雇われていたようだ。

 一応、民草や貴族でも直前で死んだ善人は銀髪の不死者として生き返らせたけどね。これで漸次、短命から長命の種族へと交代が行われるだろう。彼らを統べるのは陛下達の役目だが。

 外をうろつく悪人共は召し上げ対象だけど。





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