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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第九章・女神達の過干渉。

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第194話 吸血姫は侵入者達を滅する。


 それから二週間後。

 私はニーユ魔王国とティシア王国との交易路を王都の一等地と古参四貴族の領地の一等地に設置した。一等地というのは魔王を始め、各領主が提供したからに他ならない。

 建物は極力この世界の外観を真似た。

 構造は異世界式としたため、揺れても壊れる事はないだろう。内装は問屋として棚を多くとった。必要な物があればレジで取り出して貰う仕組みとした。直接手に取る事は出来ないが。

 これも万引き対策と腐敗対策を兼ねており、棚の中は総じて亜空間庫である。万引き犯が手を入れたら最後、時間停止で捕まる仕様ね?

 私はハルミとサーヤを伴って──、


「本店と各支店という扱いで管理すればいいわね。従業員も限定解除したナツ達に行って貰えばいいでしょう。元々、亜空間の行き来も可能だし、仮に不審者がなりすましても亜空間の門で立ち往生だろうからね?」


 王都本店を訪れ、元勇者の肉片から再生した者達に従業員として命じていたところだった。

 必要以上に増えた人員を養うには資金不足が目立っていたしね? 資金調達のための店舗が用意出来たのも丁度良いと思った私である。

 膨大な数の食料を購入するには資金が有っても足りないくらいだから。全員が良く食うし。

 育ち盛りの子供も生まれたし。

 ハルミは銀髪碧瞳へと変化した末妹の服装を正しつつ下着の有無を確認していた。


「こんなところでナツ達が役に立つとはね〜」

「お姉ちゃん。大丈夫かな?」

「問題ないわ。というか棒読みって?」

「まだ感情制御が稼働したばかりだもの。開店までの間に喜怒哀楽がハッキリしてくるわ。各員、本支店の行き来は〈転移鏡〉を通ってね」

「承知しました」×10


 するとサーヤが店内に設置した羊皮紙を眺めつつ呟く。隣には尻を出したサヤが居た。


「各店舗、二人一組のローテーションかぁ。はい、穿()けたわよ」

「お姉ちゃん。お尻に食い込んでる」

「ごめんなさい。引っ張り過ぎたわ」


 どうもパンツを穿()かせていたらしい。普段はノーパンで過ごさせていたのね。

 私は妹達の準備に余念のない二人を眺めつつ、他の八人に従業員の制服を着せていた。


「マリーだけは対象外だもの。ソージはユウキが管理しているから、創薬時以外はこちらに置いていても問題ないしね?」

「そのマリーも転生したいって最近願ってるけどね。お姉ちゃんに願っては弄られてるね」

「そこはマキナに判断を委ねてるわ。ドジっ子だから店員とするには考えものだけど」

「ところで気になったのだけど、どういう意味での限定解除なの? サヤのお尻が成長したようにしか見えないけど? 胸はともかく・・・」

「私も気になってた。ナツの変化も銀髪碧瞳くらいしかないけど。おっぱいは変わらず・・・」

「種族と不死までは同じね。体型の変化は本人の望みが反映されたようなものね。レベルも総じて200以下で留めているわ。未だに180前後のゴウからすれば脅威ではあるけど」


 そう、従業員とするため限定解除したのだ。

 人族の姿のままでは粛正対象になるから。

 元々、アンディと同じ扱いをしていたが不自然な感情表現は不審と思い、昔の人格・・・姉達をエミュレートするよう指示を出した。ナギに関してはお姉風になってしまうが、これは致し方ないだろう。ナギサ自身が女だからね?


「200以下かぁ」

「並の兵士なら簡単に伸せるって事ね」

「まぁ兵士が出張って来る前にリーナが喝を入れそうだけどねぇ? 手を振ってるし・・・」

「「あぁ。目と鼻の先に生神殿が」」

「監視という扱いではないでしょうけど」

「それで魔神様はなんて?」

「サーヤに同じく、私も気になってた」

「ん? どういう事?」

「いや、改宗的な話?」

「ああ。それなら魔神自らが発したわ。自身が生死神の下になるから改宗せず宗派を併用しても構わないとの事よ。私を上に持ってきて」

「「あらら〜。カノン乙」」

「一応、地下の死神殿はシオンが統括するから両方を担うマキナが大変だろうけどね〜」


 まったく困った魔神である。

 この件は他の神殿でも同じ事が起き、各所の神殿で大混乱したそうだ。例外は魔神を祀る魔族国家や亜人国家だけね。元より生死を(つかさど)っていないと伝えていたから。

 だが、人族国家では相変わらずの大混乱。


『生死神は悪を好み、その魂を転生出来ないよう召し上げる。悪行を行った者は総じて罰が下るであろう』


 と、神託で伝えたからだろう。

 だから当然、悪行を行っていた神官共は発狂し、人格がぶっ壊れたから相当な効果である。

 いくら私でも悔い改める者なら救うけどね?

 その発狂は上界の知神殿でも起き、神官に限らず悪行を重ねた教会騎士が大陸縁から自死したのだから、言うに及ばずである。

 但し、転落した直後にシオンが回収して元居た場所に素っ裸で戻したようだけど。

 不必要な死は要らぬ。今は手一杯だから処理の邪魔をするな・・・が、シオンの思いである。

 それであっても無神論者は少なからず居り、相変わらずあちこちで悪行三昧なので私としても美味なる魂が減らないから安堵したけれど。

 ハルミ達はマキナが狼狽える姿を想像した。


「「・・・マキナ、乙!」」


 直後、マキナが鏡から勢い余った様子で出てきた。北部支店で〈遠視〉していたのかもね。


「乙って言わないでぇ!?」

「おつかれ、マキナ。支店の方はいいの?」

「おっと、そうだった。準備出来たよ〜」


 私はマキナの返事でもって──


「他は・・・問題なさそうね。ケンはマイカの御両親と挨拶中だけど」


 各支店を〈遠視〉した。

 そこでは種族改変を果たしたケンがキリリとした表情で頭を下げていた。

 そう、ケンは種族改変を願った。

 エルフのままだと春が来ないから。

 ウタハにも彼氏が居り破綻回復者の一人だったから。それもあって女のみが増える吸血鬼族として再誕を願ったのだ。まぁ再誕と同時に顔立ちが前よりマシになったけど。

 それを知っているマキナ達は──


「ケンにも春が来るかな?」

「セクハラを止めたら来るんじゃない?」

「マイカの元婚約者も廃嫡されていたもんね」


 マイカと共に挨拶しているケンの未来を予測していた。王族教育が滞りなく済めばなんとかなるだろう。不死の吸血鬼族。

 直系の眷属(けんぞく)は王の器だから。

 一応、種族改変した事はユルーヌとティシアに伝え、代わりとなる男性エルフを用意すると約束した事で・・・ユルーヌ国王は安堵した。

 吸血鬼族とのパワーバランスがあるから余計に不安に思ったのだろう。現状は女の方が多いからほぼ側妻扱いになると思うけどね?

 男吸血鬼はケンとアンディしか居ない事になるから。その代わり、この一件でウタハの彼氏がエルフで確定した瞬間でもあった。

 これは本人の意思もあるから仕方ない部類ではあるけどね? ただ、一歩間違えるとユルーヌ/ティシア間の戦争になっていたわね。


「マイカ自身も好みらしいし、無事に婚約出来れば関係を結ぶとまで言っていたしね。それもあって昨晩の内にリンスの権限でリバー公爵として叙爵させたそうよ? 王家になるかどうかはケンの功績次第だけど、仮に出来なくてもリンスの下で働く宰相にはなるって話よ?」

「ケンが公爵!?」

「信じられない!!」

「私は妥当な気もするけどね? 唯一の男だし、治政に関しては驚くほど詳しいし」

「あっ! そういえば政治家の息子だった!」

「忘れていたけど、そういう家柄だったわ〜」

「まぁいつかは春が来るでしょう。仮にセクハラしたら凍らせて愛でるとか言っていたし」

「マイカは氷結系が得意なヤンデレ嫁かぁ」

「「ケン、乙」」


 ともあれ、本日よりイリスティア商会の各店舗は無事にオープンした。あくまで問屋だから購入希望者は商人が(ほとん)どだけど。




  §




 それからしばらくして。

 本店前に大量の亜人が湧いた。

 それらはドワーフばかりで五十人居た。

 すると私の後から貴族の男が怒鳴りつけた。


「即刻、立ち退いてもらおうか!」


 しかも、あり得ない事を口走った。

 この時の私は店外にて掃除していた。


「立ち退けと言っているだろうが!」


 貴族は騒ぐが完全無視して掃除を続けた。

 一方のマキナ達は各店へと商品の融通を行っていた。予想以上に品物が売れるらしい。

 上界産の米と酒が一番売れているわね。

 各種和菓子も貴族達が買い求めていた。

 一応、余剰も確保しているが完売間近らしい。これはどこかしらで大規模な工場を設けないといけないみたいね。

 レリィの手作りにも限界があるし。

 私は空を見上げて思案していた。

 直後、私の左肩を男に握られてしまった。


「聞いているのか!?」


 だから面倒くさそうに亜人達を眺めた。

 程度の知れる者相手に武力行使しても意味ないから、ぶっきらぼうな女を演じたのだ。


「購入希望でないならお帰り下さい。営業妨害ですので」

「俺は立ち退けと言っているんだ!」

「文句があるなら城へどうぞ。この土地を用意したのは魔王様ですから」

「だとしても立ち退け!」


 だがヒートアップする者には効かなかった。

 私は演じるのを止め睨みつけた。

 肩からは隷属魔力が纏わり付いたので〈無色(むしき)魔力糸(まりょくし)〉を通じて握っている貴族の魔力源にお返しした。


「それは魔王様への不敬と捉えていいの?」


 するとみるみる内に青白くなる貴族。

 同じ事しか言わないのは壊れた蓄音機なのだろうか?


「くっ・・・だ、だが!」


 私の殺気と共に魔力返しが魔力源と心臓を鷲掴みしたのだろう。このまま握り潰しても良いが、頭を潰したとしても蘇る害虫みたいな者達だから、別の方法を選択する私だった。


「魔王様の用意した土地から出ていけと良く言えるわね? 人族風情がまだ蔓延るなんて困ったものね。一体どれだけ侵入しているんだか」


 私がそう言うと周囲に衛兵が集まってくる。

 実際にはリーナが呼んだみたいだけどね?


「!!? ち、違う! 我等はドワーフだ!」

「ドワーフは自身がドワーフだって言わないけど? 種族名を名乗る時点で人族だって言っているようなものよね? 大体、立ち退きの目的も建物内にある〈転移鏡〉でしょう?」

「な、なんの事だ!?」

「リンスの近くに集まって隷属させようと思う時点で判明しているわよ。人族共の思惑なんてね。上に登って国土を簒奪する事が本命でしょう? 二千年前と同じように・・・」

「な、なんの事だ・・・に、二千年前とは、ど、どういう、い、意味、だ?」

「ろれつが回ってないけど? 勇者が全て居なくなって集めるだけ集めた魔石は消滅した。終いには飛空船が使えなくなったから、これ幸いと最短ルートを狙うのは考えた方だけど。でもね? 残念ながら人族は一生かけても通れないわよ。生きて時の止まった世界を移動出来ればその可能性は無きにしも非ずだけど。その世界を管理する魔神がそんな事を許すと思う?」

「!!?」×50


 看破された途端、狼狽える貴族と亜人達。

 私は神力を解放しユランスの補助の元──


「魔族や亜人の目は誤魔化せても、女神の目は誤魔化せないわよ? 今後も邪魔をするっていうなら巣くっている人族は総じて・・・生死神の名に於いて命じる。この国に残存する人族はその場で自殺しなさい!」

「!? 承知! ぐわぁ!」×50


 魔王国内に蔓延る病巣を認識して命じた。


(あ! 甲板に居たマリーも自殺した? まぁ転生させればいいわね・・・)


 その代わり誤爆が一人だけ居たが、本人が望んでいた事もあり魂だけ回収した私だった。

 すると店内から様子見していたハルミ達が苦笑しつつ出てきた。


「わぉ! 流血沙汰だ〜」

「ゴミ共がこんなに居たなんてね〜」

「最初からこれをすれば良かったね。お母様」

「これもある程度認識していないと宣言出来ないのよね。魔神の手伝いがあって助かったわ・・・さて、片付けよ。マキナ達も手伝って」

「は〜い」×3


 マキナ達は店内から出てくると〈無色(むしき)魔力糸(まりょくし)〉を伸ばして転がった魂を召し上がり、残った肉体を魔力還元で消し去った。血液などの処理は周囲に居る同族達も手伝い〈無色(むしき)魔力糸(まりょくし)〉で頂いていた。残りの隠れている人族達も魔神自らが一括処理しているだろう。アンデッドが発生しても困るから。

 その間の私はフーコから念話を頂き──


「というか、マリーはどうしようかしら」


 困惑してしまった。フーコ自身は泣いてはいないが、困った顔で肉体を抱き寄せていた。

 これは蘇る事を知っているからだろうが。

 するとハルミ達が後始末を終えて戻ってくる。


「どうしたの? お母様?」

「実はね? マリーも一緒に死んだみたい」

「「あっら〜。誤爆じゃん!」」

「たまたま甲板に出ていたみたいね。フーコと寛いでいたら・・・突然、胸を貫いたそうよ」

「それで魂は?」

「一応回収済みだから、この際・・・フーコの」


 と、言いつつ亜空間庫内でフーコにソックリな美形男子とマリーの肉体を再構成した。

 魂はフーコの欠片を拝借した。

 彼もユウキと同じ扱いである。

 一方のマリーは吸血鬼族として転生させ、古い肉体は遠隔で魔力還元し、素っ裸のままフーコの隣に座らせた。また胸が育ったけれど。

 レベルは現状で一番最低の180とした。

 その様子を三人は〈遠視〉し──


「あ!?」×3


 別の意味で驚いていた。

 それはマリーと同時にフーコの弟としてフユキという名の美形男子も隣に座らせたからだ。

 フユキを見たフーコは驚きの余り──、


『お、おっきい・・・』


 なにか見て口元を押さえて呟くだけだった。

 一応、バスタオルも後から被せたので下着と洋服はフーコが自身で用意するだろう。

 一方、こちらで〈遠視〉していた一同は大興奮でアタフタするフーコを眺めていた。


「フーコ似の男の子だぁ!?」

「え? どういう事?」

「なんでお姉ちゃん似なの!?」

「例えるなら・・・ユウキと同じという事で」

「あっ!? そういうことぉ!?」×3


 急遽だが銀髪ボブカットの男子が増えた。

 それは吸血鬼族の女共をある意味で驚愕させるに至る事案だった。一応、フーコの(つがい)としたし、仲間内から奪う者が現れない事を願うばかりである。

 ただ、今回の一件で把握したのは──、


(総勢一億の人族か。ごめんね? シオン)


 侵入していた人族の総数だった。

 元々住んでいた者達も居ただろうが、侵入者との違いが分からないため総じて片付けた。

 それであっても流石に侵入しすぎでしょう?

 私は転生に忙殺されるシオンを思い出しつつも目前に転がる遺体の後始末を続けた。

 五十体中、片付けられたのは半分か。血の海が生神殿と本店の前に出来てしまったわね。





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