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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第八章・制空権を奪取しよう。

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第187話 吸血姫は愛娘の思いを知る。


「私は似てるけど、貴女の母親ではないわ」


 開口一番は問い掛けの否定だった。

 今は否定するしか出来ないもの。

 二人の関係から魂を呼び出して生まれさせる事は可能でも、私と同じ見た目の女王を寄越すと大変な事になりそうだしね?

 というか、マキナちゃん?

 そこに用意してるのは誰なのよ?

 二人の親!? ま、まさか!?

 マキナが実母を再誕させている件について。

 魂保管庫に転生する事なく漂っていたのね。

 記憶は消されているから娘達や眷属(けんぞく)達の記憶で補完しているし。

 完全な個を戻すには・・・というところでユランスからも人格情報と記憶が提供された。

 ユランスも用意周到よねぇ。

 戻せるのなら戻したいって事ね?

 私はマキナを手伝い即座に生まれ直させた。

 それは僅か数秒の出来事だけど。


「貴女の母親なら窓際に居るでしょう?」


 私にそっくりの先代魔王がお辞儀していた。

 下着と洋服は異世界式の物になるけどね?

 こちらの世界の衣服は遅れ過ぎているから。


「ルーナ、レーナ。久しいわね?」

「「お母様!?」」

「リーナ女王陛下!?」


 案の定、驚く娘達。

 亡くなったはずなのに、今や銀髪碧瞳の姿で蘇ったから。マイカも古い敬称で呼んでいた。

 娘が跡を継いで、魔王になっているものね。

 私としては複雑な心境だけど。

 マキナの気持ち、少しは分かったかもね。

 するとリーナは私に向き直り──


「此度は再誕させて下さり有り難う御座います」


 違う者との認識で行儀良く挨拶を行った。

 どうも女神の複製品という記憶は彼女にはあるらしい。というか、知らせる前に亡くなったため、後悔の念が残っていたようだ。

 私は妙にむず痒い気持ちとなったため、あっさりと受け流す。


「き、気にしなくていいわ・・・」

「そうは参りません。女神であらせられるカノン様には、この命に代えても仕える義務があります!」

「せっかく生まれ直したのに命を粗末にするんじゃないわよ! もう二度と死なないけど!」


 あ、素が出てしまった。

 マキナは苦笑し、ルーナとレーナはきょとんである。マイカもなにがなにやらという様子。


「だからこそです! 私は魔王としてこの地を治めてきましたが、今は娘が継いでいる身。今後はこの地に生神殿を設け、そこで神官として働く所存で御座います!」

「そうきたかぁ・・・まぁいいわ。貴女の決意は変わりそうにないし」

「お許しを頂きましたので、ジーヤの元に行って参ります!」


 どうも、私を真面目にしたらこんな感じと示されているような気がする。私もシオンも不真面目の権化だしね。お母様が笑ってそうだわ。

 ちなみに、ソミュテル候のフルネームはジーヤ・ソミュテルであり元宮廷筆頭執事という。

 老齢なのに出来る風格は魔王国の立ち上がりから関わっていたからだろう。古参眷属(けんぞく)故、真っ先に付与を終わらせたから。

 実年齢もマキナより年上だしね?

 するとマキナが、凄い勢いで出て行くリーナをみつめつつ、声を掛けてきた。


「ソミュテル候、腰を抜かすんじゃない?」


 それは呆れの色を含む声音だ。

 娘達も呆然としたままだしね。

 一人は素っ裸のまま。一人は扉から顔を出して離れゆく母親をみつめていた。

 マキナは〈希薄〉したままのため、周囲には私が独り言を言っている風に聞こえてるけど。


「まぁ一度死んだ者を生き返らせてるし、受け流すでしょう。ソミュテル候も神官に転じそうな気配がするし」

「ナギサ臭だね?」

「ええ。神聖視する者の手合いはどうも、ナギサの匂いを発しているのよねぇ。良い意味で」


 ナギサ臭。それはマイカにも感じる匂いだ。

 ナギサ本人が聞くと謙遜しそうな気がする。

 その直後、ようやくレーナが反応した。


「というか、私・・・湯浴みの最中でしたのに、なぜソミュテル領に居るのでしょうか?」

「娘が転移させてきたとしか言えないわね」

「転移!? あの、使える者が少ないとされる転移ですか!?」

「食いつくわねぇ。貴女の総魔力量なら普通に使えるわよ? 今や姉よりも多いし」


 するとマイカがきょとん顔で問い掛ける。


「え? 多いのですか?」

「経験値を稼いだだけ、多いわね。一時期の私と同等かしら? 今は三千万になっているわ。レベルも280だから使えない事はないわよ」

「やっぱり! レーナ、魔王を継いで! 私の代わりに国を引っ張って!」

「はぃぃぃぃぃい!?」


 寝耳に水とはこの事か。レーナは素っ裸のまま立ち上がり、姉に詰め寄った。


「ど、どういう事ですか! 私が今更魔王になんてなれる訳が!」

「なれるよ! 私は失策で追われた身だもん! 命まで狙われて・・・」

「命!? どういう事ですかぁ!?」

「もしかして、姫様は御存じない?」

「マイカどういう事なの?」

「銀貨流通禁止令・・・それが此度の政変未遂の原因のようです」

「はぁ〜。姉上はバカなの?」

「・・・(あれ? レーナが少しおかしい)・・・」

「そんなの手袋をすれば、なんとでもなるでしょう?」

「・・・(胸が育ってる!?)・・・」


 素っ裸で姉へと詰め寄る妹。

 羞恥という概念は王族故か無いらしい。

 逆にルーナは羞恥の概念があったけど、この差は一体? やはり冒険者として男共の中で過ごしていたからだろうか?

 が、自身の胸が予想よりも育っている事にようやく気づく。転移直後は平面だったわね。

 姉に詰め寄ってムニュとした感触に気づいたともいう。


「ん? この感覚は・・・えーっ!? そういえば裸だったの忘れてましたわ!?」


 するとマキナは余りの反応にツッコミを入れる。


「反応するのそこ!? 胸が育ってるでしょ!? お尻もデカデカと!」

「はぇ? 姉上がもう一人?」

「あっ・・・」


 というかハゲ頭の処置はどうしましょう?

 私は困惑するマイカをみつめつつレーナに下着と服を着せる事にした。


「丁度良いし、これでも着せましょうか」

「あの? 下は分かりますがそちらの布は?」

「胸を覆う下着よ。先が擦れないから便利よ」


 私はそう言いつつもレーナに下着を着けていく。きょとん顔のレーナはなすがままだった。

 今はマキナと姉を見比べて頭をひねっていたから。マキナもどうしたものかと思案中ね?


「そういう物だったのですねぇ。魔王様が窮屈だって外していたので、なにかと思いました」

「窮屈って・・・この子にはヌーブラが無難かしら?」

「ヌーブラ?」


 私はきょとんとするマイカの前でルーナの上半身を剥いた。ルーナは一瞬の出来事でポカンとしたが、私が胸を押さえ込み、ヌーブラを着け終えると、嬉しそうな表情に変化した。


「先が痛くない!!」

「やっぱり擦れていたのね」

「なるほど。そのような布だったのですね」

「とりあえず下着以外も着せましょうか」

「はい! あとで私にも」

「はいはい。差し上げるわよ」

「やった!」


 ともあれ、きょとん顔のレーナはマキナと自己紹介したのち、これまでの経緯を知った。

 魔王を辞める経緯から、お鉢が回ってきた経緯まで。その後のレーナは渋々とルーナと抱き合い、なんらかの儀式を終わらせた。

 あら? 権限移譲? 眷属(けんぞく)への全権がレーナに移ったわね。

 ルーナ達と私達の関係は継続だけど、こうやって引き継いでいたのね。これもリーナの亡くなる直前に交わしたのだろう。

 そうして儀式を終えたレーナは──


「この者が諸悪の根源だったのですね。罰してやりたいのは私も同じですが、お母様は生き返りましたし、この者の事は(すで)に眼中に無かったので、追放処分で良いでしょう」


 ハゲに向き直り魔王として命じた。ルーナは出来た妹を持った事で嬉しく思っていた。


「私だったら死刑だけど、流石はレーナだわ」

「姉上? 今回限りですからね? 私が亡くなったら絶対に戻ってきて下さいね?」

「レーナなら大丈夫だよ。永世魔王として頑張って!」

「は?」

「だって、レーナも私も死なないし。太陽の下も歩けるし、これ握って!」

「はぁ? って!? 銀貨!! あら、痛くない? どういう事ですの?」

「だって、私達は不死となったもの。髪が銀色なのはそういう事らしいよ?」

「あ! 今、気づきました! なんで銀髪碧瞳なんですか!?」

「レーナも同じだよ?」

「ふぇ?」


 そういえば不死者となった件を伝えて無かったわね。私は仕方なく二度目の実演を行うと別の意味で驚かれてしまったが、必要な事なので受け流した。結果、意図せず永世魔王となったレーナは如何ともしがたい気分となった。


「ま、まぁ・・・怯え暮らす日々が無くなったのなら儲けものでしょうか? 少々複雑ですが」

「たまに戻ってくるから安心していいよ?」

「私も御一緒しますね。ルーナ様」

「二人して出奔ですか・・・私の側仕えは?」

「メイカが担当するでしょう。あの子はいつまでもレーナ様の側仕えですから」

「そ、そうなのね・・・はぁ〜。ドジっ子だから先が思いやられるわ」


 今までの経緯でいえば死して継承が常だものね。それが自身の代で生きながらに継承だ。

 仮に娘が生まれたならば、そのような関係を続ける事になるだろう。

 ということで私達は問題解決となったためソミュテル候の元へと向かい、挨拶を行った。


「また機会が御座いましたら、是非立ち寄って下さい。いつでも歓迎の宴を御用意致します」

「ま、まぁ、ほどほどでいいからね? しばらくの間は休ませてもらうけど」

「それで構いません、この館はいつでも準備を整えておきますから」

「そ、それと〈永年商業許可証〉もありがとう。関連する品物が届けやすくなるわ」

「いえ。それは心ばかりの品ですから。先代様を蘇らせて下さった、なによりのお礼です。ですよね? 魔王様」

「ええ。そういう事です。今後は姉上の事、よろしくお願い致します」


 ん? 今、なんて言ったの?

 マキナ知ってた? 知らない?

 私は突然の申し出にきょとんとしつつ隣のマキナと目配せしてしまう。どういう事?

 先代とソミュテル候、レーナは知っている素振りだ。するとルーナがしたり顔でマキナに抱きついた。これは・・・やられたわね〜。


「マキナ姉上に同行させて頂きます!」

「はい?」


 あ〜。真新しい関係だからか記憶が流れ込むのに時間が掛かったわ。マキナに惚れ込んだのね。姉が居なかったから姉欲しさが悪さしたともいう。同じ見た目の姉妹が出来た・・・私とシオンみたいだわ。経緯はどうであれ・・・ね?

 一応、亜空間への転移門も開通させたし、上界への行き来も可能になるでしょう。私達もしばらくの間はこの地で休むから、リンスが訪れた際には条約締結でもすればいいわね?

 あの後もレーナに〈触飲(ドレイン)〉の使い方を教え、悪辣な者を罰するならこれでと返したら喜んでいた。この国も一筋縄ではいかないバカが多いようだ。レーナは冒険者として見てきたから良く分かっているらしい。

 なお、善人に行ったら強烈な快感が身体を突き抜けるという事も伝えたところ──、


「それは願ってもない事ですが・・・公務に支障が出るので私生活で試してみます!」


 妹故かシオンの気質がここにきて出ていた。

 ということはルーナがドSなのだろう。

 先ほども死刑って言葉が出ていたし。

 マキナとしては丁度良い相手よね?

 違う? アキナを思い出して辟易するか。

 まぁ、今後は魔王ではない妹として可愛がるしかないわね。血縁は無いけど。





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