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第17話 吸血姫は船籍登録したい。


 異世界人達の行動に関しては、この世界の者達に任せる事にした私は中々目覚めないリンスを一時的に亜空間のログハウスに移し彼女自身のベッドで休ませた。

 一応、装備品は全て外し寝間着に着替えさせてから寝かせたので途中で彼女の素晴らしくも若さ(あふ)れる裸体を隅々(すみずみ)まで見たけどね?

 目の保養としては最高だったわ〜。

 リンスが目覚めるまでの間、私はログハウスの外にて船を用意していたの。

 一応完成はしたけど、その見た目は飛空船(ひくうせん)というよりも完全に──、


「クルーザーよね? 一応、中心の動力部が浮遊魔道具となってるけど」


 異世界式の白いクルーザーがその場に鎮座した。しかも三胴船(さんどうせん)という形状で中心部にはトイレや風呂、キッチンなどの水回りを(まと)め動力部の魔力還元タンクと直結している。

 右側にはダイニングと寝泊まりする部屋を設け、左側には錬金工房と装備品倉庫と食材倉庫を設置し、内部構造はともかく出入り口は全て亜空間経由とした。仮に赤の他人が侵入したとしても時間停止の影響を真っ先に受けるのだ。

 一応、中央上部の操船部には屋根と風防があり、基本は外に露出しているので〈浮遊魔法〉以外の稼働魔力を通常の者では絶対に操船出来ない燃費の悪いものとした。

 ようは操船用の風魔法と帆代(ほが)わりとした物理防御結界を維持し続ける魔力をバカ食いするのだ。

 私の場合なら一日の稼働で百万もの魔力を消費するが、私自身は三千万の保有魔力があるため外部魔力を含めると総量からすれば微々たる変化である。


 だが、それが赤の他人ならどうか?

 と、いえば操船以前の問題となるだろう。

 稼働前に(つい)えて死屍累々(ししるいるい)となるのが目に見えている。

 それと他の機構はログハウスと同様の魔力循環路を設けてるので余剰魔力を魔石に貯め込んで〈浮遊魔法〉の浮力として使っているのと、一時的に亜空間の一部を底部や桟橋の間に設置するので常時停泊も可能で墜落する事はない。

 あとはドラゴンが激突しても壊れない物理防御結界を表層に常時展開してる事ね?

 主な素材はフライパンのそれと同じで熱伝導性を下げた物とした。

 ともあれ、そんな異世界式の白い三胴船(さんどうせん)を用意した私は船の名前を考える。そして浮かんだのは・・・〈サーデェスト号〉という本名の家名とした。

 ま、あれよね?

 異世界人が聞けば震え上がるという意味ね?

 あとはバカ食いする魔力量で(つぶ)れてろという意味も込めてみた。私以外は絶対に動かせないドS仕様な操船部ね。

 その後は部屋で寝るリンスを三胴船(さんどうせん)へと移動させ、そちらのベッド眠らせた。すると移動した事を感知したのかリンスが(うな)されつつも──、


「う〜ん、カナデさん揉まないで〜。ハッ! あれ? ここは?」


 きょとん顔で目覚めた。

 今は装備品が無くて下着のない寝間着となっている事から、大慌てで私から距離を取った。

 酷いわね〜? 初めては奪ってないわよ?

 私は目覚めたリンスに対し、苦笑で応じた。


「やっと、お目覚め? ここは船の中よ?」


 リンスはきょとん顔のまま首を(かし)げた。


「ふぇ? 船? どういう事なんですか?」

「ん? リンスが寝てる間に用意したの。今はログハウスのある亜空間の中ね? 場所は第六十五浮遊大陸・ジーラの大陸縁(たいりくぶち)そばの公園よ」


 流石の私もリンスの反応が淡泊過ぎたので、仕方ないと現状を教えた。


「え? もう着いたのですか? というか・・・」

(すで)に一晩過ぎたわよ? お腹空いたなら隣に来てね? 朝食を用意してるから」

「えー!? 一日無駄にしたんですかぁ!」


 そう、リンスはあのまま目覚める事はなく、気絶から本眠したのだ。旅の疲れが溜まったのと嫌な空気を(まと)う第八十八浮遊大陸・イースティから離れた事が彼女の緊張の糸を(ほど)いたともいうけれど。

 リンスは私から聞いた事実に絶叫し、大慌てでベッドから飛び起き、ダイニングに現れた。


「あれ? ログハウスじゃないのですか?」


 だが、その反応は先ほどとは打って変わって完全に(ほう)けた状態であった。

 私はリンスの(ほう)けに対して(あき)れで返し、テーブルに置いた食べ物をリンスに示した。


「だから言ったでしょう? 船の中だって。それよりも朝食はアップルパイを作ったから食べてね?」

「ふぇ? アップルパイ? なんですそれ?」

「あー、知らないのね? リンゴを使ったお菓子だけど・・・昨日からなにも食べてないし、下手に重い肉料理よりはいいからね?」


 しまいにはリンゴを沢山(たくさん)買ってた割に、この菓子は知らないという。

 〈魔導書(アーカイヴス)〉にも()ってないから女神様達も知らない菓子だったのだろう。作り方が・・・今になって追加されてるしね? もしかすると同じように神界で作ってる可能性が無きにしも非ず?

 するとリンスは私が驚くような事を口走る。


「リンゴ? あれってマナ・ポーションの素材でしたけど、食べられたんですか?」

「え? ポーション素材だったの!? てっきり食べるためかと思ったわよ」


 私はそれを聞き自分の思い違いを察した。

 念のためアップルパイを〈鑑定〉すると、鑑定結果は最上級マナ・ポーションに匹敵すると出ちゃったわよ。なんでも素材に使ったバターと小麦が相乗効果を発揮するらしく、リンゴと共に使ったシナモンが・・・ポーション素材ではないが魔力源を刺激するとあったのだ。

 素材の全てが相乗効果で最上級に類する物となり私は苦笑が止まらなかった。

 この世界では異世界にある素材の(ほとん)どがなぜか存在しており、使い方次第で料理となる事を知ったリンスは──


「美味しいですぅ〜! 魔力が凄い増えます! ビックリです!」


 大絶賛と共に恍惚(こうこつ)とした表情でモグモグと食べていた。それこそ甘い物に目がない女子中学生を見てるようであった。

 実年齢はともかく見た目年齢がそうなのだから今更だが。


「ふーん。この世界ではリンゴジュースもポーションとなるのね〜。なら焼きリンゴとかならどうなるのかしら?」

「焼きリンゴってなんですか?」

「ん? この中身のリンゴをね? オーブンでジックリ焼いたものなの。甘みが濃縮してて甘酸っぱいから・・・はいはい。あとで作るから欲しそうにしないの!」

「はい! お願いします! お礼は胸を存分に揉んでください!」




  §




「さて、あとで船籍登録よね?」

「はひぃ」


 その後の私はベッド上で横になるリンスと共に話し合う。ちなみにリンスはシーツを(まと)った裸であり私は上半身だけの半裸だった。本格的な魔力供給の場合・・・あれね?

 組んず解れつな関係をしないとダメなの。

 リンスはまだ息切れしてるようだけど。

 私はリンスの息が整うのを待って──


「どこで登録すればいいの?」


 登録先を聞いてみた。


「で、でしたら、我が国で、お願い出来ますか? この大陸には大使館がありますから、そこを経由すれば、すぐ、ですので」


 すると返ってきた言葉はリンスの祖国だった。吸血鬼族の国家ということで私自身の身分を保障してくれるという事だろう。

 だから種族を明かす必要があるという事ね。


「大使館ね。ところで、その場合はギルドカードはいいの?」

「問題ありません。同族であるなら血液情報を登録するだけですから」

「血液情報? それって、魔力的なものも含むの?」

「はい。魔力量とレベルが記録されるので」


 そう、登録時に必要な物を聞けば血液だけとあり、ギルドカードは人族のみの物である事が判った私である。確かにそれなら無くても自前で飛ぶSランクが居ても不思議ではないわね?

 人族でSランクに相当する者は少ないと聞くし。

 

「それなら、あとで行きますか。王都なら空間跳躍(くうかんちょうやく)で飛べるしね?」

「はい! 到着次第、私自身がカナデさんの保障を行いますので安心してください」

「そうなの? それなら、お言葉に甘えようかしらね」

「はい! 甘えてください!」


 こうして、リンスは満面の笑みで胸を大いに揺らし私に抱きついた。リンスの身分的に保障は容易いだろう。なにせ・・・この子はティシア王国の第一王女殿下なのだから。





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