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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第八章・制空権を奪取しよう。

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第169話 吸血姫は後始末に尽力す。


「とりあえず制限レベルをマキナと同等に上げましょうか。この場に居る者は合都を出るまで無効化してっと」


 私はきょとんとする五人を放置しダンジョンコアを弄りまくる。マキナもそれほど触っておらず、インターフェースを閉じたり開いたりしていただけだった。

 するとマキナが思い出したように──


「え? お母様も主なの?」


 私に問い掛ける。

 私は作業を進めつつあっけらかんと応じる。


「私達の領域って言ったでしょう。元々、生神殿から死神殿の間にあるのが、この地下神殿なの。墳墓があるのも地下よね?」

「そうですね。先ほども見ましたし」

「で、生神殿はマグナ楼国(ろうこく)の表層に存在するけど、死神殿は全て地下なのよ。この世界でも火葬はあるし死んだ者は等しく地下に埋葬されるの。これも死を運ぶ者を祀るには丁度良いって事らしいわ。生死神の神殿に通いたいなら魔族国家に向かうか死を決してダンジョンを攻略するかって事ね。それと・・・死に戻りなんて生易しい機能はオフっと! この場で死んだら、そのまま召されなさい」


 そんな私の不敵な笑みを見たユウカは珍しく怯えを示す。今の制限レベルは480だから。


「わ、私達はどうなるんだろう・・・」

「そのまま再生されるだけよ。不死者だもの」


 私はインターフェースを閉じ、待機状態へと変更した。早々、触れる事なんてないけどね。

 魔物類はニナンスが設置済みのようだし。

 そう、徘徊モンスターが溢れる死のダンジョンが完成したのだ。あ、探索者の断末魔が聞こえてきたわ。しかも、ダンジョンに食われて魂諸共、惑星の生命力と魔力に変換されたわね。

 国王もいい加減脱出しないと死ぬだけよ?

 ユウカは私をみつめて思い出す。


「そうだった!」


 自分の性質を忘れた者が多かった。これも人族の価値観がまだ多分に残っているのだろう。


「大事な事なんだから忘れたらだめよ?」


 私は後始末・・・固めた真四角の置物を回収しつつ外に出る準備を行う。

 ユウカは目を泳がせたと思ったら──


「てへぺろ!」


 可愛く舌を出して微笑んだ。

 その後はいつものバカ騒ぎが発生した。


「ユウカのてへぺろきたー!」

「ショウうるさい!」

「てへぺろ!」

「・・・リンス、このあと時間ある?」

「はぁ? なんでしょう?」

「無視された!?」

「ショウ、どんまい」


 今回は予想よりも拍子抜けね。

 やはり過剰人員だったかしら?

 戦いが待っていると思って連れてきたけど。

 私はボス部屋の扉を開けながら逆走しつつ上を目指す。入ってきた扉は消えていたからね。

 現在地は地下150層。

 このままのんびりと登っていけばいいわね。


「さて、合都の次は・・・そのままルンライなのね。それだけこの国が大きいという事かしら」


 するとマキナとリンスが両脇から私の腕を掴む。背後にはナディとユウカとショウも居た。

 こちらもユウカの腕を抱く二人だった。

 ユウカはレベル差の関係で引き剥がせないでいたが。220のユウカと250の二人だ。


「というよりルンライが横に大きいだけだよ」

「そうなのですか?」

「うん。中心部に本国があるのは確かなんだけど、西部はマグナ楼国(ろうこく)がある関係で全体的に分散しているから」

「確かに分散していましたね。それだけマグナ楼国(ろうこく)が大きかったという事ですか」

「明確に国の大きさがぼかされているのも原因だろうけどね。と、早速おでましよ〜」


 そう、私達はこの国の成り立ちを話し合いながら階層を登っていった。途中、暇つぶしと称して魔物やら探索者を屠りながら。


「今度は魔導士かぁ〜」

「今回も魔毒でいっとく?」

「いえ。それよりもこれで・・・」

「今度はリボルバー!?」×4

「なんです、それ?」

「リンスは見てるだけでいいわ。丁度、六体居るし。無駄に時間も掛けたくないしね?」

「相手の戦術をあえて組み込むかぁ」

「この国の専売特許ではないもの。むしろ」

「私達の方が詳しいから! そーれ!」


 というように、ユウカとマキナに手渡して三人で動かない的を撃ち尽くしていった。動かないというのは比喩ではなく足元から這いずるスライムに絡めとられて動けないでいたからだ。

 魔導士共は炎で焼こうとするが不発に終わり、阿鼻叫喚という状態だった。これも魔力結合が叶わない地でよくやっている方だけど。

 この魔力結合が叶わないのも要石に巻き付いた粘土の影響ね。あと少しすれば解放されるだろうけど、それまでに何人の探索者が、このダンジョンの餌となるかしれたものではないが。

 リボルバーは殺傷を目的とした火魔石式だ。

 還元弾はダンジョン内では使えないしね。

 同じように鉛・・・否、オリハルコン弾を食らった魔導士達は一瞬で肉塊に化けた。

 強度そのものが異なるものね〜。


「積層結界を張っててよかった〜」

「肉片ドバーだわ。返り血どころじゃないね」

「思ったよりも威力が強かったわね。火魔石の分量はもう少し調整が必要かしら?」

「この空薬莢はどうする?」

「再利用可能だから回収しておいて。中身に粉砕した火魔石を入れているだけだから」

「ほへぇ〜。便利だ〜」

「これって狙撃銃も同じなの?」

「そうなるわね。口径が異なるからそれぞれ分けているけど。撃ち終わったあとの排莢も亜空間庫に戻る仕組みだしね」

「証拠を残さない徹底振り!?」

「流石は私達の主様だわ〜」


 私達はリボルバーを己が亜空間庫に片付けつつ、転がった肉片共をその場に放置した。

 これはそのままダンジョンが吸収するもの。

 今回の戦闘で得た経験値の方が高いしね?

 それから数時間後、同じような事を何度も行いながら私達は王城跡地に顔を出す。

 一応、人族の見た目に扮し探索者として潜ってましたという風に装備品の片付けを行った。

 まぁ降りられる者は城の関係者のみだけど。

 それもあってか──、


「なにやつ! なぜそこから出てきた!?」


 周囲を騎士達に囲まれた。全員が素っ裸で平民街から集めたような鉈を持っていたけれど。

 鉈でも様になるわね?

 女性騎士は恥ずかしそうだけど。

 私達は誰何(すいか)を無視しつつ会話に興じる。大きな皮袋をドカッと降ろし中身を物色していた。


「このドロップ品、使い道がないよ〜」

「要らないならそこらに捨てておきなさい」

「ほい! ポーンっと!」

「この防具もスカスカだね?」

「所詮は初心者向けの物なんでしょ」

「この盾は?」

「使い道ゼロね。それこそ貨幣以外はそこらに投げておけばいいわ。どうせ欲する者しか居ないし」

「はーい!」×5


 私達に無視された騎士達は放り投げた装備を大喜びで拾い上げていった。まるで私達がバカな探索者とでも言うような反応を示して。


「これほどの貴重品を捨てるとは」

「隊長! 全て奪いましょう!」

「当然だろう・・・貨幣と言ったが、それは我が国の資産だ。返して貰うぞ!」


 相手の力量に気づけない時点で三流以下ね。

 私達は貨幣をローブのポケット・・・亜空間庫に片付けつつ周囲を一瞥した。そこには妙に殺気立った下品な笑いを浮かべる騎士達。

 嬲り殺して全てを奪う・・・ね?

 私は腰にぶら下げ直していたリボルバーに右手を添え、早撃ちの動作で──


「!!?」


 彼らの足元めがけて銃弾を撃ち込んだ。

 足元の大理石は一瞬で砕かれ亀裂が入った。

 私は掌サイズのリボルバーを掲げて微笑む。


「この程度で驚くの? 貴方達の国では存在する武器でしょうに?」

「!? な、そ、それほどの大きさで、この威力だとぉ!?」

「そういえばピストルはあるんだっけ?」

「それでも大口径までみたいね」

「小口径だからか全員の目が点だわ」

「それならこれを見ても反応するのかな?」


 するとユウカは亜空間庫から狙撃銃を取り出した。洗練された見た目のそれはこの国にある狙撃銃とはなにもかもが異なっていた。

 この国のは火縄銃っぽい見た目だものね。

 逆にこちらは現代戦仕様の物だ。

 ユウカはそのままの体勢で騎士達に銃口を突きつける。


「!!? に、にげろ!?」


 騎士達は威力が目に焼き付いていたのか、怯えを示しながら距離を取る。ドSを顔に出したユウカは最大級の笑みで引き金を引いた。


「はい、ばーん!」


 ちなみに、ユウカが狙い撃った物は騎士達ではなく遙か上空を飛ぶ白いドラゴンだった。

 途中で銃身の向きを真上に向けたもの。

 直後、頭を撃ち抜かれたドラゴンは合都めがけて墜落した。これは還元弾ではなくリボルバーと同じ火魔石とオリハルコンの弾だった。


「これって、シャイン・ドラゴン?」

「レベル300から狩れるドラゴンだね。光属性の・・・というかこの国の象徴そのものだわ」

「あらら。象徴を撃ち落としたのね」

「騎士達が絶句だわ〜」

「これは滅びそのものを示したかもね・・・」


 私達は騎士達の士気が下がった事を把握するとドラゴンを一瞬で回収し〈希薄〉ののち姿を消した。相手には隠形した風にも見えるけど。


「き、消えた!?」

「ドラゴンも消えました!」

「さ、探せぇ! そう遠くに行っていないはずだ! 見つけだして締め上げてしまえ!」

「はっ!」


 そうしてダンジョンの入口から騎士の全てが居なくなった。私達は残ったままなのに。

 私達は半裸の騎士達を眺めつつ結界石のあった場所まで空間跳躍(くうかんちょうやく)した。総交換も依頼に入っていたからね?

 途中からは二手に分かれ、北東半分を私とユウカとリンスで回り、南西半分をマキナとナディとショウで回った。設置後の私達はマキナ達と念話を取り、帰還する準備を行う。


「さて、あとは拠点に戻って・・・」

「カノン? シオンさん達が待ちぼうけ食らって困ってるよ? ご飯まだ〜? って感じで」

「あ〜。少しゆっくりし過ぎたかしら? ユウカ・・・牛肉使用の許可を出すから」

「おっけー! って、レリィが大喜びで調理を始めたって! まだ一言も伝えてないのにぃ」

「素早いわね・・・」

「〈遠視〉してるからでは? 念話よりも前に口の動きを読んでるとか」

「読唇術まで持ってたのね。あの子」


 油断出来ないわね。

 元々持つスキルも侮れないわ。

 私達は機能の確認を終えるとマキナ達と示し合わせて同時に拠点に戻った。

 その瞬間、結界石は再稼働を始め──、


「ま、魔法行使が出来ません!?」

「スキルが使えなくなりました!」

「ど、どういう事だぁ! す、直ぐに魔導士長を呼べぇ!!」

「は!」


 問題の人物を呼び出す動きを始める王城跡地だった。以前の結界石は改変が行われていたようで彼らのみを除外する動きをしていた。

 今回はギルド本部と教会を残し、他は全面禁止した。様々な思惑で世界を滅ぼそうとしたのだもの。封じを受けるのは当然でしょう?

 私は拠点に戻るや否や、自動車を全て空間連結し自動運転に切り替えた。長い車列で一号車を中心にゾロゾロと合都を離れる。

 今は誰もがログハウスで寛いでいるからね。

 陽動のようでいて掃討戦の様相もあったので経験値でウハウハな者達が多かった。

 私は一号車の天井に座りつつ離れゆく合都の景観を眺める。これも見納めという感じね?

 マキナも隣に座ってステーキを食べていた。


「城跡にあれが到着したら」

「もぐもぐ・・・ゴクン。発するの?」

「ええ。同時発動なんてさせると思う?」

「思わないね?」

「どんな阿鼻叫喚が待ち受けているのやら」


 というところで魔導士長が城跡にたどり着いた。きょとん顔のまま周囲を見回しているわね? 装備は当然無く布を腰に巻いていたが。

 私は結界隅に到着すると全属性の魔力矢を魔導士長の身体めがけて上空から撃ち込んだ。

 直後、魔導士長の身体はブクブクと膨れあがり、各所に施した粒魔石と共に身体を変異させていく。周囲の騎士達や王太子は戦慄した表情で魔導士長だった者をみつめる。魔法もスキルも使えない都でどう足掻くか見物だわ〜。

 が、マキナも同じく戦慄した表情に変わる。


「あ、あれって討伐可能なの? 王太子達が勝てるか! って逃げ惑ってるけど?」

「どうかしら? ある程度したらボス部屋行きになるでしょうね。レベル450の魔物だし」

「ボス部屋・・・キメラアンデッドがボスかぁ」

「まぁね? それに他国でも連鎖したから西部にある合国の王家はどこも滅びるわね。一部の国王達はなぜかスケルトンになったけど、あれは会合でもあったのかしら?」

「封建制の終焉か・・・南無」


 私はマキナが拝んでいる姿を眺めつつ──


「それはそうと船を用意してるから手伝って」


 あることを思い出す。

 それは人員増加の対処だった。

 この後はずっと海だから。

 行う事は決まっていた。


「は? よ、用意って?」

「ん? 新造船だから?」

「は? しんぞう、船?」


 私はきょとんとするマキナを強引に立たせ、メンテナンス空間へと引っ張って行った。





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