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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第七章・面制圧と蹂躙戦。

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第165話 吸血姫は眷属達を養殖する。


 ひとまず女神達の会合は無事に終了し、私とシオンはログハウスに戻った。結局、行ったのは魔力経路の補強と情報共有だけだったわね。

 完全なる打開策が見つかれば良かったけれど、女神といえども惑星への過干渉は出来ない。

 それは私達も同じであり、命知らずのまま迫ってくる者や、近くに居る者ならともかく、あの場から直接罰する事は不可能だった。

 そういう仕組みがあるから出来ないだけね。

 それが出来るなら神罰代行なんて者は居ないから。今は代行ではなくなっているけれど。

 戻ってきた私はシオンと共に風呂へと入る。


「時刻は・・・ギリギリ目覚めの頃合いね」


 朝風呂となるけどこれは致し方ない。

 シオンが思い出したように滝行を行いたいと言い出したから。冷水ではなく温水で。


ぼぶべ(そうね)

「マキナは・・・ルミナの尻尾を抱いてるわね。ルミナがビクビクと酷い有様になってるけど」

ばばびぼ(私も)ばばびばびば(触りたいわ)〜」

「・・・滝行を止めてから会話しなさいよ!?」

「おっと・・・ごめんごめん」


 シオンは満足したのか打たせ湯から湯船に移動した。私とマキナが共有したエピソード記憶も意味記憶として定着したみたいね。そういうものと認識出来れば恐怖なんて感じないから。

 その後、私達の話題は先ほどの件に戻る。


「全ては残存兵。合国の分家筋が動いていたという事か。あの未知なる武装は祖国に戻して」

「あの武装は火薬が必要だもの。上界で獲れる物でもないしね。代わりとなる火魔石を使えばいいけど、そんな知識はあちらには無いから」

「無いからって・・・それ以上の武装を用意する必要があるの? 魔法だけでよくない?」


 話題は戻ったがシオンは否定派のようだ。

 魔法ありきの価値観が根付いているように。

 私はシオンの顔を見ず湯口をみつめて語る。


「あるのよ。身を守るなら特にね」

「魔法だけでも守れるでしょう? 物理防御結界で」

「守るだけならそれでいいけど、撃たれっぱなしも癪に障るでしょう? こちらの移動中なら邪魔にもなるし、時間の無駄にもなる」

「た、確かにそうだけど・・・」

「それに、あちらの武装はね物理的な数で押してくるの。魔法ありきの場合、魔力枯渇になれば蜂の巣よ? 昔みたいに」

「うっ・・・」


 シオンは思い出したようだ。

 瀕死の重傷を負った時の事を。

 私はそのうえで相手の戦術を語る。


「あちらは兵站も込みで進軍してくるから弾が無くならない限り撃ち続けるわ。それに飛空船も上界なら魔力消費が抑えられるから、補給船を背後に配置して延々撃ち続ける事も可能よ」

「・・・」


 シオンは沈黙ね。

 同じ事があったのだろう。

 沈痛な面持ちで湯に映る顔をみつめる。

 私はシオンの心情を理解しながら──、


「そこへ全てを無に帰する迎撃兵器があった場合、どう思う? かつての戦場であった方が良かったとは思わない?」


 微笑みつつ首を傾げシオンの顔を覗き込む。

 シオンは欲しかったとでもいうような表情に変わる。それさえあれば反撃出来たのにね?


「そ、それは、思うわね。うん」


 私は視線をシオンから天井に変える。


「あれはそういう類いの兵器なのよ。世界産の物質は全て女神の恩恵で生まれた魔力製。火薬であれなんであれ元に戻るのは魔力なの」

「・・・」

「物理の鉛弾を撃ち出して多数の兵が死ぬ。欠損アンデッドが湧いて神官達は大忙しね。その点、無に帰する兵器なら不発も無いし、当たった瞬間消え去るの。武装の一切がね? そのうえ魂が離れたら肉体も消えるのよ」


 そう、今回の蹂躙戦ではそれで撃った。

 細かく設定する場合はだけど。

 大雑把な設定なら悉く無に帰する。

 例外はユランスの加護だけね。

 するとシオンは反論材料を得たのか──


「で、でも、それだけ強大な兵器が鹵獲されたらどうするの? 私達の身に降り注ぐ事だってあるでしょう?」


 心配気に問い掛ける。

 私は唖然(あぜん)ののち、ため息を吐いてシオンに向き直る。


「あのさぁ? シオン? 肝心な事を忘れてなぁい?」


 シオンは呆れ顔を見てきょとんとなるが。


「な、なによ?」


 私は魔力膜を展開し、魔力量のシミュレーションをシオンの目の前の壁面に映し出す。

 一本辺り勇者一人分と仮定すればいいわね?


「あれは膨大な量の魔力が必要なのよ。撃ち出す時に重力から切り離さないといけないから。その魔力はどこから持ってくるの?」

「あっ!?」

「仮に下界が元に戻ったとしても消費し易いという概念が焼き付いているから直ぐに直ぐ同じ兵器をバカバカと撃てるものではないわ。それにこの兵器の弱点は積層結界なのよ。空間そのものが魔力還元したら意味ないでしょう?」


 そこでようやくシオンも理解した。

 シオンは結界保守を思い出したようだ。

 一応、魔法障壁という方法もあるが、これは局所的な還元魔法陣だけとなるので今回は適用されない。広範囲の面制圧には不向きなのだ。


「!? じゃ、じゃあ・・・」

「そ。物理兵器には物理防御結界で、還元兵器には積層結界で防御すればいいの。上界はそういう意味で常時積層結界で覆われているから」

「打ち込まれても跳ね返す?」

「そうなるわね。前回の保守で反射結界を追加したから、打ち込んだ矢先に自分達が蜂の巣か消え去る運命なのは変わらないわ」


 シオンを説得するために長湯してしまった。

 この子って頭でっかちだからね〜。

 誰に似たんだか? あ、私か。

 私も頭でっかちだったわね・・・昔は。

 私達は脱衣所が騒がしかったため風呂から出た。

 すると脱衣所から入れ替わりで女性陣が入ってきた。マキナは遅れて吸引中ね?


「みんな、レベルアップしたのぉ!?」×38


 全員が一斉に風呂場へと集まり、やいのやいのと騒いでいた。これは風呂場を拡充していなかったら全員が入れなかったわね・・・。


「主様のお考えが上手くいったようですね」

「お、お姉ちゃんはなにか知っているの?」

「もちろん。今回寝泊まりした場所は膨大な経験値を蓄えた特異点なのですよ。私達のスキルが寝ている間に稼働して吸引したようですね」

「な、なんだってぇ!?」×38


 どうも今回のレベルアップでナディとショウは総じて250に上がった。増やさないつもりが即日で増えたため、呆気にとられていた。

 リンスとユウカも220になった。

 ユーコとユーマも210になった。

 他の者達もとてつもない経験値を得て、下は10、上は90まで急上昇していた。

 それに伴いレイ達の制限レベルも上昇した。


「但し、マキナさんのように任意でスキルを止める事が出来る人や固定処理は対象外ですが」

「マリーちゃん乙」

「グスン」


 そう、マリーは固定なのでしょんぼり顔で脱衣所の外から風呂場の騒ぎをみつめていたが。

 それは隣に設置した男子風呂でも同じ騒ぎが巻き起こる。こちらは八人しかいないので女子達よりは静かだが。


「「経験値が膨大な分量増えてんだけど?」」

「ケン達もか?」

「「タツトも?」」

「おう。それも相まってレベルも上がったぞ」

「俺も俺も!」

「おぅ・・・嫁が来る前に育ったな? シロ」

「「確かに育ってるな・・・シロ」」

「コシロは元気いっぱいか〜」

「そっちのレベルアップじゃねーよ!? リョウもどこを触ってる!?」

「ほほう。これは中々のお手前で」

「やめい!」

「別にいいだろ? 俺は元女だし!」

「元女でもやめい!!」


 シロも確かにレベルアップしていた。

 彼女が合流したら喜びそうなほどに。


「これでようやくコウに迫れるな!」

「いや、まだ負けるっしょ?」×7

「なん、だ、と・・・」


 シスコンを拗らせた者も居たが全員が想定よりも多くレベルアップして満足した私だった。

 当然、マキナも──


⦅480にレベルアーップ!⦆


 素っ裸のまま自室でポージングしていた。

 誰も居ない部屋で大きな胸を弾ませて。

 右手人差し指と右腕だけを伸ばして。

 左腕を左腰に据え右足だけを折り曲げて。





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