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隠形吸血姫、クラス転移で勇者達の敵になる?〜いえ、戦力差が過ぎるので私は旅に出ます!〜  作者: 白ゐ眠子
第七章・面制圧と蹂躙戦。

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第164話 吸血姫は妹達に驚きを示す。


「以上となります」


 ニナンスはそう締めくくった。

 苦渋のあふれる困惑顔で席に座る。

 ミアンスはレナンスと目配せして悩む。


「相当に不味い事になってるわね」

「解決策は封じを取り外す事・・・か」


 両者とも召喚契約で縛られているため、直接的な干渉が出来ないでいた。ミアンスも少なからず解放されたようだけど、直接干渉が出来ない状態なのは変わらないらしい。代わりに妹神であるユランスがあちこちに出歩く状態だから。

 アインスは惑星の一カ所をタッチし、地下神殿の様子を魔力膜で映し出す。

 場所は合都ネイリアの地下神殿だ。


「その封じも問題有りの代物なんですよね」


 そこにはレナンスを模した裸婦像が鎮座していた。それはかつてのミアンス像を思わせる、美的センスの欠片もない醜悪な石像だった。

 すると思案気なユーンスが茶器を口元に寄せていたミカンスに問い掛ける。口の中が乾くほどの大問題だもの。シオンもガブ飲みだしね?


「開封自体は誰が行っていたか判明した?」


 それはなんらかの封印物の事らしい。

 私の隣に座るミアンスがコソッと教えてくれたから。シオンに埋め込まれた・・・銀塊だと。

 ミカンスは茶器をソーサーに戻し逡巡したのち語り出す。


「判明は・・・しております」

「一体誰が行ったの?」

「・・・〈夢追い人〉・・・」

「つっ!?」×6


 私は神妙な表情のミカンスと、してやられたとでもいう表情の六(にん)を黙ってみつめた。女神といえども頻繁に下界を見ていない事が原因のようだ。これって・・・警戒装置が無いって事じゃないわよね? シオンもそう思う?

 それはお母様が常日頃、警戒装置は付けておきなさいと口を酸っぱくしていた件を思い出したのだ。過去の事とはいえ思い出すに至る状況を示され、呆気にとられてしまった。

 私は権限があるか分からないが、惑星へ触れる。権限が無かったら弾かれるからね・・・お母様の管理物と同じ代物だから。


「よかった。一応、あったのね・・・」


 ミアンスは私が触れた惑星の表面・・・魔力経路に気づき、きょとんと問い掛ける。そこは明るく光る生神殿と合国の中間地点だ。場所的には眷属(けんぞく)達がお休み中の広場ね?

 魔力と生命力が経路から溢れ出ている事から睡眠学習の要領で寝ながらレベルアップを促したともいう。あの場だけ、やたらと木々が育っていたのはその所為(せい)らしい。


「い、一体なにを?」


 他の姉妹も同じ表情ね。

 まさか、知らなかったとは言わせないわよ?

 シオンは思い出したとでもいう表情だけど。

 私は目をつぶり指先に全神経を集中させる。


「深部は・・・問題ない。経路表層・・・生命力と魔力の境は問題ない。異物の先は深部のみギリギリ生きてるわね。表層は崩壊手前・・・か」

「ああ。経路検査でしたか・・・」

「お母様が権限を与えておきなさいと仰有(おっしゃ)っていた意味がわかりました」


 私はミアンスとユランスの言葉を聞き流しながら検査を進める。だがここで、表層の一カ所に穴がある事に気がついた。穴というよりは亀裂ね・・・縦に伸びるパイプの局所が一直線に開いた状態だった。ギリギリ繋がっていて完全に漏れ出る事はないが、圧力が増している場所は溢れ出ていた。そんな空白地帯を発見した私は呆れかえった。

 その後は私から女神への説教タイムである。

 私は惑星から手を離し厳しい顔で向き直る。


「貴女達、大事な箇所が抜けてるじゃないの」

「え?」×7

「え? ではないわよ。え? では」

「ど、どういう事ですか?」

「アインスが代表して触ってご覧なさい」

「は、はい・・・」

「それで、なにかに気づかない?」

「え? えーっと・・・」

「表層に指先を集中して撫でなさい」

「表層に集中・・・ん? これは?」

「気づいたわね? 経路の表層にあるべき物が存在していない事を」

「あるべき物?」×7

「貴女達ねぇ・・・魔道具を作る時に気をつけてないの? 予定外の者が触れた時を対象とする警戒装置の事なのだけど?」

「そ、それは付けていますが・・・」

「同じ物をこちらにも付けるべきでしょう?」

「あぁ!?」×6

「そ、そういう事ですか?」

「アインスは事の重大さに気づいたようね?」

「これも油断・・・なのでしょうか?」

「そうよ。触れられないと思っていた油断が招いた事案ね? 自分達は問題なくても〈夢追い人〉という神をも恐れぬバカ達が居るのだから対処はすべきでしょう? 発見した直後でも」

「うっ」×7


 女神達が揃って俯いた。

 ミアンスの反省顔は妙な可愛げがあるわね?

 私は反省しているところにあえて追撃する。


「今回の大まかな原因は〈夢追い人〉で確定した。シオンへの銀塊もそう。あれは二千年前の騒ぎで上界に持ち込まれた物で間違いはないでしょうね。封印の地・・・禁忌庫の警戒装置が無かった事が主な発端だろうけど」


 そもそも禁忌庫がなんでそんなところにあるの? と思える場所だった。それは赤道、沈没大陸もといリリナ達が生まれた国家内だった。

 潜ってまで解放しようとするのは探索者としては当然なのだろうけど、ダンジョンと封印の地を混同するのはどうなのだろう?

 ニナンスもそこはダンジョンと見做しておらず、管理を担っていたアインスが日々頭を抱える事案となっていた。

 禁忌庫自体も魔力経路の要石で構築されており、封印魔力としても利用していたのだろう。

 それがおよそ二千百年前に開封され、封印していた各種禁忌物が流出した。この禁忌物も神器に類する代物で、上の三女が遊びで作った物らしい。ミアンスの呟きが聞こえてきたから。

 遊びで神器を作るなと叱りたくなるわね?

 私はしょんぼり勢の前で惑星に再度触れる。


「たちまち出来る事は合国から先、こちらの経路補強ね・・・私の余剰魔力をあてがって」


 これは魔力での対処しか出来なかった。

 もっとも使った魔力は下界で集めた物が(ほとん)ど使われるので元に戻しているともいう。すると暗かった場所が徐々に明かりを灯していくように変化した。

 これも一時しのぎにしかならないだろうが、異物除去後の大量流入で壊れるよりはマシなので全体的に補強した私であった。


「シオンも魔力を差し出しなさい!」

「え、えぇ・・・横がカノンだから?」

「縦の経路ね? 合都から南下する経路、途中の北上する国家間の経路も同様に。網の目だからそれぞれに補強を施さないとね? そうしないと高圧流入で経路自体が自壊するから!」


 一方、私達の補強作業をみつめるミアンスは呟く。ユランス達も食い入るようにみつめる。


「それをすればよかったんだ。お母様、教えて下さいよ〜。そうすれば悩まなくて済んだのにぃ!」


 教えてなかったの!?

 なんか、あちらでてへぺろしてそうだわ。

 忘れてたとか当たり前に言ってそう。

 私はミアンスの嘆きを聞き流しつつ最後の作業を終える。それは警戒装置の全面設置だ。

 現状では異物が残っているため完全に使う事は出来ない。この場に警報が出てしまうから。

 試しに使ってみると──、


「わぁ!? なんなの? 異物あり?」


 猛烈な轟音と共にミアンスがずっこけた。

 神装の中は素っ裸なのね。丸見えだったわ。

 大きく綺麗な胸と形の綺麗なお尻が。

 私はミアンスを一瞥すると警報を止めた。


「試験は成功ね・・・大丈夫?」

「これが付いていたら・・・姉上見えてます」

「おっと。粗末な物を・・・コホン! 直ぐに対処が出来たかもしれないわね?」

「昔の自分を殴ってあげたいわ」

「少し過去に行ってアインスを殴ってくる!」

「レナンスやめさない! 影響が出るから!」

「予見すれば良かった・・・」

「数十年先は大丈夫でも、数千年先はミカンスでもみえないわよ。お母様はともかく」

「お母様と同類になるには、あと数京以上は生きないと・・・痛っ!?」

「ユーンス・・・余計な事を言うから」

「時空を飛び越えて芋が飛んできたわね。焼き芋でも食べてるのかしら? 焼きたてだし」


 最後はお母様から大量の焼き芋が送られてきたけれど。これも除去後に有効化し再度触れるようなら転生出来ない死滅を与える物とした。

 その主なる対処は要石の表層に魔力ではなく、惑星の生命力を纏わせたから。

 生命力は私とシオン達の本質だ。

 生神殿と死神殿を巡る力を利用したまでだ。

 死滅条件は〈夢追い人〉とそれに類する者とし、私達と神族・眷属(けんぞく)は除外した。その後のシオンはミアンス達に使い方を示していた。

 私は経過を眺めつつ思案する。


(一応、魔力自体は要石から出入りしているみたいね。その量が微量過ぎて世界中で賄いきれていないみたいだけど・・・というよりダンジョンに設置した意図はなんなのかしら?)


 すると私の思考を読んでいたのかニナンスが応じてくれた。


「それはですね、姉上。元々はダンジョンが先だったのです。世界中にあるダンジョンで魔力の融通を行い、惑星の成長を進めてきました」

「じゃ、じゃあ、国家が出来たのは?」

「その後ですね。人族達が生まれて数を増やし、探索者ギルドが発足したのち、異世界からの転生者である〈夢追い人〉が現れて」


 だが、ここで聞き逃したら不味い単語が出てきた。私はきょとんとするシオンを眺めつつニナンスを問い質す。


「ちょ!? ちょっと待って? 今、なんて言った?」

「ですから〈夢追い人〉が」

「その前!?」

「あぁ。聞いてませんでしたか? 異世界からの転生者がその知識でもってダンジョン攻略に乗り出した事を?」

「聞いてないわよ!? アインス!!」

「あっ! 忘れてました・・・すみません」


 女神ってポンコツかもしれないわね。

 それが本当なら全ての辻褄が合うわ。


「それで今があるのね・・・上界の設置は?」

「今が時期だったとだけ。予定外だったのは私がミスした件ですけど」

「なるほど。ロードマップが事前にあったのね。となると上界がダンジョンだって話は?」

「その者達の妄想ですね。彼らが生まれいずる時節では設置しておりませんでしたし、国交を結ぶまでは知らせませんから」


 私はきょとんとするニナンスを眺めながら察してしまった。


(本来なら数千年後にダンジョン解放だった。それが異世界からの異物共がダンジョンがあると・・・ゲームだからと認識して解放前に見切り発車したという事かしら? レベルじゃなくて魔力量としたのもゲームの所為(せい)?)


 私はミズカ達が上界に上がった時、不意に発した呟きを思い出した。


「あ〜なんとなく理由が分かったわ・・・」

「なにかご存じなんですか?」

「ゲームと同じって事よ」


 すると七(にん)は揃って私をみつめる。シオンはきょとん顔のままだ。


「ゲーム?」×7

「ええ。異世界のゲームと世界観が似てたようね。彼女達の記憶を見る限り、浮遊大陸と呼ばれるダンジョンを攻略せよってあるから。無料で貰える魔力と課金した魔力を基準として、レベルの概念そのものが存在しないスキルに重点を置いたストラテジーゲームね。属性過多のクソゲーみたいだけど。なにがやりたいんだか」


 ニナンスは言い知れぬ困惑を滲ませる。


「で、では?」


 アインス(長女)から順に姉達が考えを呟く。


「そのゲームと混同して」

「ダンジョンの要石を封じて」

「火薬を用いる術を進めた?」

「魔法ありきの私達の世界へと進軍して」

「ダンジョンが無かったから帰った?」


 ミカンスは沈痛な面持ちで沈黙していた。

 私はきょとん顔のシオンの首根っこを掴みつつ、隣に座らせる。空気を読みなさいよ?


「滑稽だけどそれが本質でしょうね。とはいえ魔力の満ちる上界と魔力の少ない下界では」

「その世界そのものを欲したとしても」

「不思議ではないわね。現に下界出身の一族を数名ほど捕縛したし」


 そう、空気を読んだシオンと会話しているとミアンスが立ち上がって私に詰め寄った。


「そ、それって? 聞いてないんだけど?」

「落ち着きなさいミアンス。胸揉むわよ?」

「どうぞご存分に! それで聞けるなら安いものよ!」


 ミアンスはそう言って大きな胸を晒した。

 あぁミアンスも百合の気があったのね・・・。

 すると呆れ顔のユランスが怒れるミアンスの胸を片付ける。亜空間に胸部を納めたわね。

 局所的に反対側の布が見える・・・。


「安くないですよ! それでは姉上の胸と人族が同じになりますよ?」

「あっ・・・そうだった。ごめんなさい。というか、胸返して!!」

「反省するまでお預かりします!」

「そんなぁ〜! というか揉まないでぇ!」

「また育ちましたね。芋ばかり食べ過ぎです」

「この芋を食べて胸が大きく・・・」

「ユーンス、あれは太ってるだけよ?」

「アインス! 太ってないから!!」

「そう? それならお尻も回収しますか」

「まって!? そこはダメぇ!」

「モチモチになってますね。やはり太って」

「太ってない!! 二人して揉まないで!」


 ともあれ、私は身もだえるミアンスを眺めながら捕縛した経緯を語る。賑やかだわ・・・。


「それは流刑島の王族達の事よ。詳しく調べたら下界の者達と同じだったわ。魔力が多くてレベルが低い。第一から第二までは下界の者、第三から下は上界の者という違いが出てたけど」

「!!?」×8


 それを聞いた女神達は驚愕した。

 一人一人を一々検査する事ってないからね。

 というか、シオンまでも驚かなくても・・・。





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